銃声2
直家の前にやって来ると秀清は頭を下げ、俊通は銃を肩に掲げたまま胸を張った。二人が敵将を狙撃したのは疑いようもなかった。
「お久しゅうございます、直家様……。俊通、お前も頭を下げろ」
弟をにらんだが、頭を下げたか確認する間もなく話をつづけた。
「我ら兄弟、中山信正様の仇を討とうと、戦場を渡り歩いていた所、敵将を追う直家様の姿を見つけて、城へ潜り込ませていただきました。籠城している方を撃つ心算が、別の的を撃つことになりましたが」
「それで……、誰を撃ったのだ?」
「もちろん……尼子晴久でございますよ」
「何だと! ……いや、そうだな。……それで、死んだのか?」
聞かずにはいられなかった。
鉄砲の威力は知っている。だが、乱戦の中で敵将を討ちとれるなど、合戦の意味合いが根本的に変わってくる。それが八か国の守護職の尼子晴久をたった一発で討ち取ったのだとしたら……。
「あの距離では、傷は負っても、死んではいますまい」
「だから、火薬をもっと増やそうと言ったのだ」
「火薬を増やせば、外すだろう」
「外さねえよ!」
「外す!」
「外さない!」
遠藤兄弟の口論も聞こえないかのように鉄砲に見入っていた。
少し変わった飛び道具程度に思っていたそれが、無限の使い道を見せるど道具にも思えたのだ。合戦のありようを変えれるかもしれないと。
そんな直家の視線に気づいたのか、遠藤秀清が首をかしげて声をかけた。
「直家様、鉄砲はそこまで万能な道具でもありませんよ」
弟との口論の続きのように気軽に話しそうになった声を、咳ばらいを一つ入れて言葉を正す。
「威力はあっても二枚の盾は抜けませんし、もっと柔らかい、陣幕なんかの布でも、穴をあけた後、どこに飛ぶかは運次第なんですよ」
「どういう事なんだ?」
「そうですね、木でも鉄でも、一枚目の盾に穴をあけると、弾が割れるからです。まぁ、割れた弾が刺さって、貫けるような物なら二枚目も抜けますがね。布は少し違って、風で舞うような物は簡単に穴が開いて弾は傷つきませんが、弾の軌道が変わるんですよ。真っすぐ突き抜けるか地面に落ちるか、分からないって事です」
「距離があっちゃどっちも抜けませんが、並みの腕じゃ当たりはしませんし。そもそも、こうやって距離を測るのが一番難しいんですがね」
まっすぐ伸ばした腕の先で水平に曲げた人差し指と中指に、垂直に立てた親指を添えて、距離を測る動作をする。
「火薬さえ増やせば、あの距離でも貫通できるんだ……」
「お前が調合したら、音ばっかりで届きもしなかっただろうが!」
しかし、どれだけ欠点を並べられても、銃の可能性は有り余る魅力を感じさせ、中山信正も同じ思いで遠藤兄弟を雇い入れようとしたのだろうかと考えさせられた。
(だが、合戦で使うなら、必要な物があるな……)
直家も新しい武器が飛び交う戦場を思い描き、万軍を率いる覇者の夢を見るのか。




