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戦国異伝~悠久の将~  作者: 海土竜
天廻争乱
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美作三浦氏

 慌ただしく浦上家の重臣たちが当主・浦上政宗の前に集められていた。

 弟の浦上宗景、宇喜多能家に代わって大きな勢力を持つようになった島村盛実、西備前を支配下に収めていた松田元盛が続き、沼城の中山信正、それに続く家臣たちの列の末席に宇喜多直家がいた。


「皆の者、集まったか。出雲の尼子晴久が再び侵攻を開始した。尼子家の暴挙を見過ごす訳にはいかないが、皆の意見を聞きたい」


 浦上政宗の力強い声は、既に戦をすると決めつけているようで、当主として家中の者の意見も聞かなくてはならない、と言った様子であった。


「確かに、尼子家の支配を容認する事は出来ませぬが、奴らの狙いは月山富田城を攻められた腹いせに、毛利元就の居城・吉田郡山城を攻めるだけではありませぬか? 我らが下手に手出しする必要もありますまい」


「そうですかな、毛利元就に恩を売っておくのも良いかと」


「毛利家も大内家も、尼子家と変わらぬ。我らにとっては、どちらも殺しあって共倒れになればいいものだが、それとも松田殿は毛利に肩入れせねばならぬ理由でもあるのかな?」


「それは、どう意味ですかな……」


「まぁまぁ、お二人とも。今は備前の国人衆でいがみ合っている場合ではありませぬし、尼子家だけでなく、赤松家や小寺家の動きも気になりますしな」


「だからこそ、無駄に兵を動かせんと言っているのだ!」


「申し上げたき事があります」


 重臣たちの議論に割って入った直家に、島村盛実はあからさまに嫌な態度を見せて睨み返したが、浦上宗景は彼の実力をよく理解していた。


「申してみよ」


「尼子家の侵攻目標が吉田郡山城だとしても、その通り道となる城を攻める筈です。先の戦いで荒廃した城でなく、拠点として使える城となれば、三浦氏の高田城を狙いに定める筈です」


「なるほど、高田城か。三浦貞久もこれまでは尼子家の兵力が分散していたため持ちこたえてはいたが」 


「三浦貞久は尼子家と争いはしているが、我らに帰順するでもない態度を取っている手助けする言われはないぞ」


「毛利攻めの足掛かりとはいえ、高田城を落とされれば備前も安泰ではいられませぬ。三浦貞久が持ちこたえている間ならば、少数の兵を送れば城を守れましょうが、尼子家に落とされた城を取り戻すには数万に兵力が必要になります。それに尼子晴久の城攻めがどのようなものか、お忘れか!」


 尼子晴久の城攻めは過酷を極めていた。険しい山城を攻めるのに周囲の村を焼いて孤立させる。村を焼かれた人々は行く当てもなく、山の木の実を食べたりして飢えをしのいだが、すぐに食べられる物もなくなり、谷を死体で埋め尽くしていく。

 それを見過ごせぬと正義感を振りかざして、他国の援軍に出向き自らの兵を使って戦った所で領地を取れるはずもなく。それは戦国大名の行動として、褒められたことではない。


「うむ、やはり見過ごせぬな……」


「宗景殿、そうは言っても、我らとて動かせる兵がおりませぬ……。どうなさる御つもりで?」


「そうだな……。直家、高田城へ行ってくれるか」


「はっ、仰せのままに」


 誰もが避ける戦いでも出向かねばならない。

 僅かな手柄を積み重ねてでも、序列を上り詰めるために。

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