貢物は星の数だけ
大体準備は整った。
後は信長を京都に呼び出して戦国時代最大のイベント本能寺の変を起こすだけだ!
「秀頼様~お客様がお見えになりましたよ~」
「何だと、もう信長が来たのか?」
「違います~。何でも北の方から来た安東愛季様と言う方です~」
安東? 誰だそれは。しかし愛季という名前からするとかなり可愛らしい相手だろう。ここはひとつ天下人の度量を示して会ってみるか。
「秀頼様、凄いですよ~。貢物がこんなに」
「おお、流石は北の地から来たというだけあって毛皮が多いな」
「これは野獣の毛皮だそうですよ~」
「野獣って……えらくざっくりしているが、それでいいのか?」
「あったかくてふかふかですよ~」
「ほうどれどれ。確かに生きているかのようにあったかい、いや、この毛皮動いている! まだ生きているぞ!」
山のように積まれた毛皮が、山のように動きだす!
山のようにってなんだ? 山のようにどうやって動く!
「秀頼様、その方が安東愛季様です」
「な、ん、だ、……と?」
全身毛に覆われた巨大な……熊? 人ではない何かだが熊でさえない。
いや、これこそ野獣か!
そうまさに野獣。――野獣のごとき野獣だ。
「出やがったな野獣め……この天下人を謀ろうとは……。貴様のような愛季がいるものか!」
「落ち着いてください秀頼様、遠方からわざわざ貢物を持ってきてくださった方ですよ」
「そう、我が名はちかすえ! 北天の斗星の宿命を背負う四兄弟の末弟・安東愛季である!」
「ほら見ろ! あれは間違いなく、一子相伝の拳法とか使う奴だぞ!」
あの構えただ者ではない……。
見える! 見えるぞ! 奴の頭上に輝く北斗七星が!
天下人の星の元に生まれたこの秀頼の宿命が疼く!
「天に極星は二つは要らぬ! 天下人の星に屈するがよい!」
二つの巨星の前に、今、天が割れる!
「秀頼様、天下人の星ってどれですか~?」
「……天下人座があってだな、それの右の方の星だ」
「天下人座ですか~? 聞いたことないですよ~?」
「父上が作ったからな。大体、星座何でものはたくさんあるから適当に線を引いて好きな星座を作ればいいのだ」
「そうだったのですか~。私も星座を作りたいです」
「星座というのはな、選ばれた物が卓越したセンスで作るものだ……。この俺のようにな!」
「出来ました! 『□』です」
「何だそれは? ただ四角く線を引いただけに見えるが」
「座布団座です」
何というセンスのなさ!
ここまで痛い娘だったのか!
「ダメだろうとは思っていたが、まさか、ここまで酷いとは……」
「え~、それでは、秀頼様はどんな星座を作ったのですか?」
「俺は幼少の頃から天下人としての英才教育を受けていたからな、作った星座の数も星の数ほどある! だが、その中でも傑作と言われた星座を見せてやろう。……それは……『□』だ!」
「同じじゃないですか!」
「分かっていない様だな千絵。俺の星座『□』は、座☆布団だ!」
「そんな~。それなら、私も座☆布団座にしますよ!」
「ダメだ! すでに商標登録を済ませているからな。おっと、『□』角座糖も登録済みだぞ?」
「先に登録するなんてずるいです~。それなら……『□』ご座にします!」
「やるな千絵! だが、黄道十二宮の全てをオリジナルで作ったこの俺にはかなうまい!」
「秀頼様の動きが次々と星座を描き出して行く!」
「星の動きをなぞる事で天と一体化し、大宇宙の力を取り込むのだ!」
「ならば私も今作った星座で十二宮を、……三十二宮くらいを作るのです」
「アイドルみたいに数だけ増やせばいいってものではないぞ! 浅はかな貴様に本物の星座を見せてやろう!」
「千絵の真の力を開放するときが来たのです!」
ついに天下人と町娘、天上と地上の戦いの火蓋が切られる!
「……あの~。安東愛季様はお帰りになられましたが、いかがいたしましょう?」




