表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦国異伝~悠久の将~  作者: 海土竜
戦国異伝
18/124

鶴翼の陣

 時は来た。

 将軍を奉じて京を攻め取り天下に号令を下す時だ!

 相手はどの戦国大名よりも先んじて大和・河内を平定し機内9か国を支配する三好長慶。

 とは言うものの、印象は薄い。

 父上に聞いた話では何でも簡単に蹴散らして京に入ったそうだし、道中で城を作った話が長くてあまり聞いていなかったから強いのか弱いのか分からんが、天下人であるこの俺の敵ではない。

 筈だ!


「秀頼よ、いよいよ戦だな!」


 ひどく機嫌がよさそうに話しかけてきたのは、仏像の後光のように刀を十数本背負った足利義輝だった。

 流石は将軍えらく気合の入った格好だが、そんなに合戦が楽しみだったのか?

 血に飢えた剣豪め。


「もう京は間近だが、そんなに刀を背負って戦えるのか?」


「何を言う、合戦とは刀の数で決まるのだ。俺のコレクションの名刀は天下五剣だけではないぞ、他にも……」


 要らぬ心配だったようだ話が長くなりそうなので聞き流そう。

 無駄に金をかけたコレクションの話など聞いていて面白いものでもないからな。


「しかし、相手は細川家を始めとする有力大名を次々と倒した三好長慶だぞ? 何か作戦はあるのか?」


「心配は無い、この天下人に相応しい堂々たる布陣を見よ! 左に松永久秀、右に小田氏治を配した鶴翼の陣だ!」


「これは素晴らしい!」


「古来より、一に鶴翼、二に魚鱗と言われるように、鶴翼の陣はもっとも優れた最強の陣とされている」


「ほう、それで三番目は?」


「いや、鶴翼の陣は相手を包み込むことによって、包囲・殲滅する事が出来るのだ」


「なるほど……。三番目はないのか?」


「しかも、ただの鶴翼の陣ではないぞ、俺は長年この陣を研究していてある事をひらめいたのだ、鶴が翼を広げたような陣であるなら頭があってしかるべき。そして、鶴の頭に当たる重要な部分に総大将である将軍を据えるべきなのだと!」


「おお! まさしく将軍の役目に相応しい!」


「では引き受けてくれるか、鶴翼の陣の要となる鶴の頭を!」


「任せていろ、この剣豪将軍・足利義輝以外の誰にその役目が出来ようか!」


 ふっふっふ……ちょろいな。

 そもそも鶴翼の陣が優れているのは、相手の数倍の兵力があるからこそ使える陣だからだ。同数では余程有利な地形が無ければ機能しないが、そこで考えたのが鶴の頭よ。総大将が孤立して前に出ていれば狙いたくもなるもの、それを中央に配置する事で殺到した敵軍を左右から挟み撃ちにしてしまえるのだ。

 何と言っても目立つ格好をしている足利義輝は囮には好都合だ!


「ふはっはっは、この戦、勝ったも同然よ!」


「それで、三番目は?」


「黙れ! 早く行きやがれ!」



 兵の足音が地に伝わり、ぶつかり合う殺気が天を穿つ!

 ついに三好勢との天下をかけた合戦が始まった。


「始まったか……」


 先陣で上がった最初のトキの声に秀頼は一人静かにつぶやく。

 勇ましい声が上がる度に、誰にも看取られる事無く死んでいく兵士たちの手向けとして……。


「秀頼様~」


 ……兵士たちの手向けとして…………。


「秀頼様~、寝てらっしゃるのですか?」


「寝てないはっ! 今のは死んでいった兵士たちを想ういい所だったのだ」


「そうなのですか~。でも、こんな後ろに居てよいのですか?」


「大将たるもの気軽に先陣に出たりはしない、全軍の動向を見定め、戦の行く末を見守るのが責務よ」


「なるほど~、でも将軍はあんなに前に居ますよ~。大丈夫なんですか?」


「うむ、よく見ろ。足利義輝にはまだ刀が十五本もある。あれが全て折れるまで奴は死ぬ事は無い、それに雑魚相手ならボタン連打しているだけで何とかなるものだ」


「なるほど~次々と敵兵を斬り伏せていますね……あっ刀を捨てて新しいのに変えました、ボスが出たみたいです!」


「もう三好三人衆が出て来たか、どれどれ……」


 味方の兵でさえ押しのけるようにして現れたのは巨大な槍を軽々と降り回す全身に古傷を刻んだ大男だった。

 何だあれは、めっちゃ強そうだけど……。


「誰だあれは? あれが三好三人衆か?」


「えーっと、あの方は幾たび傷を受けても倒れない十河一存様です。十河額というヘヤースタイルを流行らせて、美容界のカリスマ・鬼十河と呼ばれている方ですよ」


「まじか! あんな髪型見た事ないぞ」


 いや髪型だけじゃない、足利義輝が押されている。

 あいつ強いぞ……。

 これが本当に父上に蹴散らされた三好三人衆なのか?


「足利将軍の剣ゲージが十本まで減ってます!」


 まずいぞ、後二人いるというのにここで将軍が負けでもしたら誰が戦うんだ!

 考えろ、よく考えろ……、相手は大男ならば、下段から攻めれば、奴の攻撃は届くまい!

 下段だ! 下段を攻めろ!


「やりました! 足利将軍が十河一存を討ち取りましたよ!」


「やったか……」


「将軍の必殺技ゲージが溜まっていたみたいで、それで倒したようです」


「ふ~、予想通りだったな」


 ハラハラさせやがって、そんな物があるならさっさと使え。しかし、これでしばらくは雑魚戦で一息つけそうだな。


「秀頼様、直ぐに次のボス・安宅冬康が出てきましたよ」


「なんだと! まだ将軍の態勢が万全ではないというのに……、こうなったら松永久秀を投入だ!」


「はい、右陣の松永様出番です~」


 松永久秀の必殺技・天冥火羅蜘蛛は、戦場にいる兵士を全て混乱させる!


「なんかよくわからんが強そうだ! 混乱しても孤軍奮闘中の足利将軍の周りは敵だらけだから関係ないしな」


「やりましたよ~、混乱した安宅冬康様は三好長慶様に斬りかかって、返り討ちに合いました!」


「よし、後は三好長慶だけだ、一気に畳み込むぞ!」


 だが三好長慶の目前まで迫った足利将軍の前に三人の武将が立ちはだかった。


「三好家の長老・三好長逸!」


「三好家の謀将・三好政康!」


「三好家の鉄砲玉・岩成友通!」


「我ら、戦国の腹黒い三人衆! ここを通りたくば我らを倒して行け!」


「ジェットストリームアタックをかけるぞ!」


「なにー! 岩成友通が俺を踏み台にした?」


「政康、仲良くせんか」


「だって、こいつが……」


「目の前にいるから、つい」


「ついじゃねーよ!」


「新当流・一の太刀!」


「ぎゃー!」


「秀頼様、お茶が入りましたよ~」


「おぅ、今丁度イベントムービーが終わった所だ」


 見てなかったけどな……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ