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戦国異伝~悠久の将~  作者: 海土竜
日ノ本燎原
113/124

近江八幡の戦い 出陣 1

 日差しが力強く照りつけ、地面に濃い影を残すようになった頃、京都の京極家では、慌ただしく出陣の準備が進められていた。

 地方の武家から来た子弟たちも熱気を帯びた雰囲気に当てられ、自分の武器の手入れに勤しんでいた。

 尼子経久も例外ではなく。出雲を出る時に持たされた荷物を広げて、隠岐に流れ着いた南蛮人から手に入れたという武器の入った包みを取り出していた。


「これだ……意外と重いな……」


 引っ張ると布が少し捲れて、飾りのついた握りが見える。手にしっかりと馴染む握りを掴むと、一息に箱から引き抜く。

 刀剣だった。

 握りは片手で握るのにちょうどよい大きさだが、刀身は分厚く大きく反り返って、先に行くほど幅広くなり、真っ直ぐ構えるには重心の位置が悪い。


「刀か……でかく重いが……」


 少し期待外れだった。

 南蛮の武器と言うからにはもっと驚くようなものが入っていると思ったのだが、不格好な形の刀では、戦の雰囲気に高揚した気分もなえるというもの。他に何か入っていないかと包みに目をやると、短い手紙が入っていた。


「……何々、父上の手紙か…………銘は死見多。この刀の使い手は、時に鳥のように軽やかに跳びはね、時につむじ風のように回転し、踊り舞うように数多の敵を屠る。武を極めるさだめならば、見事使いこなし、戦で手柄を立てよ…………無理だろ!」


 思わず独り言を手紙に向かって言ってしまう。

 片手で持てない事もないが、ずっしりと腕全体にかかる重さは、振り回せる代物ではない。


「どうせ、父上が、珍しいと言うだけで買ったのだろうが、南蛮人との取引も考え物だな。まったく、訳の分からない物を買うのは止めにしてほしい……鞘はどこだ?」

 

 せっかく出雲から持ってきたのだから、使おうかと思ったが包みの中には鞘もなく、刃も鈍っている。


「とりあえず……砥ぎに出すか…………」


 ため息混じりに、曲刀を肩に担ぐ。腰に吊るすには重すぎるし、持って歩くにも片手では負担が大きい。だが、幸運なことに片刃なため刃を上に向けて肩に乗せれば、刀身の反りもあって収まりが良かった。

 部屋から廊下に出ると、若い家人の一人が縁側に座り込んでいるのが目に入った。

 俯いてふさぎ込んでいても普段なら気にも留めなかったかもしれないが、皆が戦の高揚した気分でいる中では珍しい。

 しかもそれが、京極家の中でも武闘派の多賀家の跡継ぎであればなおさらだ。


「高家じゃないか。そんな処で何をしているんだ?」


「ん?……経久か」


 呆けたような気の抜けた返事で、空を見上げた。


「今度の合戦の総大将は、父上の多賀高忠様だろ? 高家も兵を率いて出陣するのだろう。準備は良いのか?」


「……考えてたのは、まさに、その事さ。……おお、何だ、それは」


 ゆっくりと振り向いた視線が、目の前を通り過ぎ、肩に担いでいる巨大な曲刀に止まると、身を仰け反らして驚いた。


「これか? 出雲から持ってきた、南蛮の刀だ」


「凄いな! 凄そうだ! 切れ味も凄いのか?」


「いや……、使ってなかったから、砥ぎに出さないと」


 戦の前の重圧に落ち込んでいた高家が、人が変わったかのように豹変したのに、思わず後退ったのだが、下がった分、ぐいっと顔を近づけて寄ってくる。


「ふむふむ……。こんな武器で戦っているのか……。是非、試し切りをしてみたいものだ」


「それじゃあ、一緒に行くか?」


「良いのか? 砥ぐところも見てみたいと思っていたんだ」


 一人で考え込んでいるよりは、気晴らしになるだろうと誘ってみたが、予想以上に喜んでいるようで、なんだか後ろめたい気分になった。砥ぎに出すと言っても、どこの砥ぎ師に頼めばよいのか。

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