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戦国異伝~悠久の将~  作者: 海土竜
戦国異伝
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謀聖、地に落ちる!

 尼子経久だけでなく、将軍・足利義輝まで出て来るとは、やはり銀山は黄泉に通じているのか?

 あの穴の奥には、亡者どもが群れを成しているに違いない。銀を掘り出すのも一苦労という訳か。


「どうした? 銀山はもういいのか?」


「どうしたもこうしたも、足利義輝まであの世から這い出て来たぞ!」


「なるほど、将軍か、大名の紛争の調停を頻繁に行っていたからな」


「なるほどじゃない、ちゃんと成仏させとけ! この生臭坊主」


「うむ、そうだな……って、将軍はまだ健在だぞ」


「何を言っているんだ、今をいつの時代だと……」


「もちろん天文に決まっている。天皇は後奈良天皇、室町幕府の将軍は足利義輝だ」


「なっ……」


 何を言っているんだ?

 デカすぎる頭巾で脳みそが蒸れてしまったのか?

 とっとと、即仏身になってしまえ、この……、いや、こやつ本願寺顕如と名のったよな、それが本当なら俺が生まれる前にとっくに死んでいる。

 こんなに若々しい筈が無い!

 

「まさか、ここは既にあの世なのか!」


「どうしたんだいきなり?」


 あの時、逢坂城で介錯されてしまったというのか……、そんな筈が無い!

 この生きている実感、触れた感触。


「きゃぁ、何するんですか!」


 うむ、間違いない、ここは現実だ。

 ……だと、すると?


「本当に天文なのか?」


「そうだと言っとろう」


 ならば、俺が時をさかのぼったとでもいうのか? 

 まさかそんな事が本当に?……。だがしかし、それならば、こやつらが豊臣家を知らぬのも、天下人たる豊臣秀頼を知らぬのも納得がいく。

 俺はもちろん生まれていないし、父上もまだ織田信長の下っ端であろう。

 と、言う事は逢坂城もないのか!

 何という事だ、天下人のこの俺が城なしなどと……。

 ……いや、これはチャンスかもしれん。

 狸爺の徳川家康も今なら、赤子の手をひねるも同然。

 ついでに、田舎者の伊達も始末しておけば、俺の天下は揺るぎないものに……。


「ふっふっふ、ふっはっはっはっは」


「秀頼様、笑い方が凄い悪人になっていますよ」


「物の怪に取り付かれたか!」


「何とでも言いやがれ、城など何度でも建てればよい。大名を名乗っていても、徳川に味方するのは負け戦が約束された連中に、鼻を垂らした小僧どもでしかない。一度も負けた事がないこの俺が、負ける要素など在りはしないのだ!」


「秀頼様、大変です! 尼子経久が攻めてまいしました!」


「あの死にぞこないの爺め! 性懲りもなくおめおめと、だが、死人でないなら倒しようもある。今度こそ返り討ちにしてくれるは! 直ぐに兵を集めろ!」


「はっ!」



 文武に秀で謀に長け謀聖と呼ばれるに至った尼子経久だが、俺には秘策がある。

 丁度主君の大内義隆が死んで暇をしていた陶晴賢を配下に加えたのだ!


「晴賢、尼子経久が攻めて来たぞ。合戦だ! 貴様の実力見せてもらおうか」


 ふっふっふ……。

 尼子経久は、陶晴賢に敗れ命を落とした。

 その晴賢を配下にしてしまえばおそるるに足らんのだよ!


「お任せください! 秀頼様のために、この晴賢、どんな相手でもぶっ殺しますよ!」


 ただ、武闘派というだけあって、かなり物騒な奴だった。

 こんな脳みそまで筋肉な相手に敗れるとは、謀聖などと言っても尾鰭が付いて伝わった話なのかもしれんな。

 まぁ、勝てれば何でもよい。

 そろそろ敵の先陣が来るか、天下人の戦を見せてやろう!


「よし行け、晴賢!」


「はっ、行ってまいります!」


 晴賢が槍を振るう度に、数人の兵が弾け飛ぶ。

 敵の隊列を切り裂いて突き進む晴賢に幾重にも構えられた槍が襲い掛かるが、雑兵の槍など物ともせず、一振りで纏めて圧し折り、その勢い止まることを知らず、鬼神のごとき働き。


「凄いぞ、晴賢! これほどの者がいたとは、軟弱な大内家では、とても扱えまい」


 大内家で浮いてたお前がこれほど活躍できるのも、天下人であるこの俺の采配あってのおかげだな!

 さぁ、存分に戦うがよい!


「ぶっころー! ぶっころー!」


 ……あの鬨の声だけは何とかならんものかな。


 晴賢を先頭に順調に勝ち進む。

 今にも逃げ出して総崩れになりそうな敵兵が、突然士気を取り戻し、次々と秀頼の兵を押し返し始めた。


「こやつらにまだこんな力が残っていたのか!」


「秀頼様あれをご覧ください」


「まさか、あれは……」


「ふわっはっは、小僧! わしの銀山から盗んだ銀を返してもらうぞ!」


 敵の総大将、尼子経久自らが出陣して来たのだ。

 老齢でありながら武勇に優れ老いてなお盛んな経久は、兵士たちを鼓舞しながら前線を飛び回り……ん?……飛び回り?……。


「おい! あいつ飛んでるぞ! やっぱ、人間じゃねーぞ!」


「あれは、尼子家に代々伝わる天女の羽衣です。入浴中の天女から盗んだ羽衣で、尼子家の当主は自在に空を飛ぶことが出来るのです」


「まじか! ありえねー!」


 まさか、尼子経久にこんな奥の手があったとは、地味で話題に上らないためよく知られていなかった隠された実力、恐るべきマイナー武将。


「弓だ! 弓で射落とすのだ!」


「はっはっは、当たらぬはっ、そんな物当たりはせん!」


 くそう、どうすればいいんだ……。

 晴賢も士気を取り戻した兵に押され始めている。

 このまま籠城に持ち込むか?

 ……ダメだ、いくら城壁があっても、上空から攻撃されてはひとたまりもない。

 恐るべき航空戦力……。

 天下統一の野望がここに潰えてしまうのか……。


「秀頼様~。尼子経久が落ちてきました」


「え?……なんだって?……」


「ぬかったは……、黄泉の神域から離れ過ぎた、活動限界が……」


 …………。


「よし、六三四、殴れ!」


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