第8話 魔術師、弱る
今日もパーティは仕事である。
野良ドラゴン狩り。
この辺りは、ドラゴンが多いのである。
アズモナは、ドラゴンを攻撃したり、レオンたちを治療したりしていた。
そんなアズモナは思うのである。
「頼りにされている充実感はある。しかし…」
そう、しかしである。
アズモナは、レオンたちが仕事に慣れていけばいくほど、この疑問が大きくなるのであった。
「しかし、コイツら、アタシのことを、魔法が使えるだけの便利な道具ぐらいにしか、思ってないんじゃないか…」
レオン・パーティは、今日は休み。
レオンは、何日かに一日休みを設けることにしたのだ。
休みを作り、しっかりと休息をとったほうが、逆に能率が良いと気づいたからだ。
こういうことを打ち明けるのは、休日のほうが良い。
アズモナは2人に、「あること」を伝えることにした。
「魔法が使えなくなった?」
アズモナが喫茶店で、レオンたちにそのことを告げると、驚いていった。
「ウソだろ?」
「いや、ホントなんだよ…」
「なんか呪文を唱えてみろよ」
アズモナはデタラメの呪文を唱えてみせた。
「ゴニョゴニョ…」
そして、あきらめていう。
「…やっぱムリ」
2人の驚きは隠せなかった。
「マジか…」
「ごめんね…」
アズモナは顔を伏せながらいった。
「魔法が使えないアタシなんか、お払い箱だよね…」
レオンが決意したようにいう。
「いや、おまえには、いままで世話になった恩がある。魔法が使えなくなったからって、見捨てるワケにはいかない」
アズモナは驚いた。
正直レオンが、そんなことをいうとは、思わなかった。
「…案外、いい奴なんだな」
アズモナはそう思った。
レオンが続ける。
「それに、また魔法が使えるようになることだってあるだろ」
「いや、どうなるかは、わからないよ」
「とにかく、しばらく様子をみよう」
次の仕事を入れたが、いい仕事は取れなかった。
当然、危険や難度の低い仕事になる。
「ついていこうか?」
アズモナはいったが、レオンたちは止めた。
「いや、つれていけるワケないだろ。魔法の使えないおまえは、ただの…」
レオンがいい淀む。
「ただの…、なんだ?」
「ただの…人なんだから…」
人という言葉ではなく、もう少し別の言葉、例えば「のろま」だとか、「グズ」というような言葉を、いいたげだったような気もしたが、アズモナは聞きながすことにした。
アズモナが仕事に行かなくなってからは、食事も食堂で食うのを止めて自炊に変えた。
レオンの部屋で、3人で食べる。
レオンたちは、アズモナにその日の仕事を話して聞かせた。
それをアズモナも楽しく聞いていた。
そんな食事の折、アズモナが不平をいった。
「なあ、メシの量、少なくないか?」
「悪いな。稼ぎのいい仕事に出られないもんだから…」
別の日には、こんなことをいった。
「また魚かよ~」
アズモナは魚料理が嫌いなのである。
「すまん。食事代がな…」
また、別の日には、こんなことをいう。
「なんだよ、この野菜?」
「せめてと思って、野草を摘んできたんだ…」
「こんなんじゃ、魔法取り戻せねえよー」
その日も食事が終わると、アズモナは自室に帰っていった。
レオンは、ブラムの耳に口を近づけるといった。
「もう1か月だぞ。どうするんだよ、あいつ」
ブラムもため息とともにいった。
「正直限界だな…」
レオンが目を光らせた。
「オレに考えがある」
「なんだ?」
「ギルドの奴らは、アズモナが魔法を使えなくなったことを知らない。ただの体調不良だといっているからな…」
「ああ…」
「だから、奴らはまだアズモナがスゴイ魔術師だと思い込んでる」
「うん」
「だから奴らにアズモナを高値で買わせる」
「うん」
「そしてオレらは、金をせしめて、トンズラする」
「うん、いいな、それ」
「明日にでも…」
「…オイっ!」
後ろから、女の声がした。
それは、アズモナの声に、よく似ていた。
不思議なことである。
アズモナは部屋に帰ったはずなのに。
レオンたちは、ゆっくりと後ろに振り返る。
後ろには、怒りに震えるアズモナが立っていた。
「…ちょっと、オモテ出ろや」
「え…と…どうなすったんでしょう?」
「じつはさぁ、アタシ、魔力が戻ってきたみたいなんだよ…」
「それは良かった」
レオンは笑顔を崩さずにいった。
「これから、じゃあ、ボクたちとまた仕事できますね」
「はあ?」
「あの…ボクたちと…」
「土下座しろや」
「……」
「謝罪だよ、謝罪!」
2人は床にひれ伏した。
「罪深き我々をお許しくださいッ、アズモナ様!!」
と、レオンとブラムは顔を見合わせた。
「っていうか、タイミング良すぎじゃね?」
ガバッと立ち上がると、アズモナに詰め寄った。
「おまえ、さては最初っから?」
「……」
アズモナが、2人の視線から、目をそらす。
レオンたちは嘆いた。
「おまえ、オレたちが、今日までどんな思いでいたと思ってるんだよ!」
アズモナがキレる。
「うるせーッ!! だまれッ!! だまれッ!!」
「冗談じゃねえぞ!」
3人は取っ組み合って、拳を振るう。
「おまえ、よくも、1か月も!」
「うるせえ! バカども! だまりやがれ!」
悪態のオンパレードだった。
拳も飛び交って、宿屋の主人から注意を受けても、3人の格闘はなかなか収まらなかった。
そうして、ようやく格闘が終わった後、レオンがいった。
「アズモナ、治療魔法!」
アズモナは、2人のケガを治す。
そして、レオンはいった。
「おい、明日から、仕事だ。いいな!」
アズモナは、うなづいた。
einde




