第5話 生徒会は戦う
「さぁ、次は1階で薫さんの所ですね」
俺が笑顔で言うと、隣を歩いていた京子さんがクスッと笑った。
「まさくん、薫の事ずいぶんと気に入っているのね」
「この学校の天使ですからね!
薫さん、容姿端麗で性格も良くて天使の二つ名にも相応しい人ですし」
「加奈子といい薫といい、そんなに女の子に節操ないとどっかの生徒会副会長とキャラ被るからやめなさい」
俺前を歩いていた会長がジトッとした目で俺を見ながら言った。
「大丈夫ですよ!
俺は幽霊の美少女も大歓迎ですから!
皆が俺大好きなハーレムじゃなくてもいいですけど、皆と仲良くしていきたいです!」
「あら、じゃあ巴も可愛がってくれるの?」
「もちろんです!
巴ちゃんだけじゃなく京子さんも大歓迎です!
巴ちゃんの恥ずかしがりながらも素直な所、俺としては大好物ですから!」
「ふふっ私もなのね、ありがとう」
京子さんが微笑みながら俺にお礼を言った。
やった!これは好感度のメーターが上がった気がするぜ!
「ま、政宗、そのハーレム私も入ってあげようか?」
目の前の会長が、モジモジしながら俺に言ってきた。
「あ、いえ・・・会長は間に合ってます」
「間に合ってるって何!?」
「だって、加奈子さんに薫さんに京子さんに巴ちゃんですよ?
会長の入る隙なんてあると思いますか?」
「そ、それはそうだけど。
でもほら!私容姿端麗だし!」
「さっきの4人も容姿端麗ですよ?」
「うぐっ・・・ほ、ほら私他の人に優しいし!」
「薫さんのほうがプライベートまで使って皆からの相談受けてるので、会長より優しいと思いますよ?
巴ちゃんだって死ぬ前にあんなことあったのに、京子さんのために力を使っているし。
どちらもなかなかできることじゃないですよ?」
「そ、それはそうだけど・・・」
「それに、薫さんは人一倍他人に優しい、巴ちゃんは望んでないもしれないけど特別な力を持っててそれを人にために使ってる、加奈子さんは聞き惚れるほどのピアノの腕を持ってて、京子さんは高校生にして小説を連載するほどの頭脳の持ち主。
さぁ!会長にこの布陣に勝つスキルがあるのだろうか!?」
「うっ・・・うわぁーん!
京子ー!政宗がいじめるー!」
会長は京子さんの胸に飛び込んで泣いている。
「よしよし。
こら、まさくん、いくら陽奈世に良いところがないからってそんな言い方したら可哀想よ?
もっとオブラートに包んで言ってあげなきゃ」
「えーん!
京子の鬼!悪魔!天然ドS!」
「陽奈世、落ち着いて?
こんな陽奈世にだって、いえ陽奈世ごときにだって良いところはあるはずよ?
きっと・・・多分・・・何かの間違いで」
「どんどん不安になってるじゃん!
さっきの事謝るからどうか良いところがあると言ってー!」
「ふふっ、嘘よ陽奈世。
私は陽奈世の良いところをちゃんと知ってるわ」
「・・・本当に?」
会長は京子さんの顔を上目遣いで見ている。
「えぇ、本当よ。
だからもう泣かないで笑顔になって?」
「やっぱり京子は優しいよー!」
会長が京子さんをギュッと抱き締めた。
京子さん、具体的な事を言わないってことは会長の良いところ多分見つけれてないんだろうなぁ。
「と、まぁこの話しはこの辺にしておきましょうか」
「政宗が最初に始めたんでしょ!」
会長は俺を見て言ってきたが、個人的にはそれどころじゃない。
さっきから寒気というか悪寒みたいなものがする。
空気が冷たく感じる。
「まさくん、大丈夫?」
「は、はい、大丈夫です・・・」
京子さんが心配して尋ねてきてくれたが、正直大丈夫ではない。
あえて表現するなら、殺気で満ちた空間にいる感覚だ。
「そろそろだと思ったけど、今日は一段と凄いな」
「こんな空気の中で毎回薫は活動してるんだから、あの子は本当に凄いわね」
会長と京子さんが階段から1階の廊下を見つめて言った。
「あの、これ何ですか?
最初の時と明らかに空気が違うんですけど・・・」
俺は、体を震わせながら会長と京子さんに訊いた。
「・・・政宗、今から行くところは今までの場所とは少し違う場所だから気を付けて」
「まさくん、もしかしたら見たくない物を見ることになるかもしれないけど絶対に目を逸らさないでね?」
会長と京子さんがいつになく真剣な顔で俺に言ってきた。
「わ、分かりました」
そう言ったものの、俺の体は未だに震えたままだった。
呼吸する度に吸い込む空気が冷たくて肺が痛くなる。
「大丈夫、政宗は私が守るよ」
会長は笑顔でそう言うと、俺の手を握った。
会長の手から体温が伝わる。
とても温かくて、そして安心できる。
「会長・・・」
俺は会長の顔を見た。
俺の勘違いかな、会長の頬が少し赤くなっている気がする。
「会長・・・かっこ良くてもハーレムには入れませんよ?」
「何で良い雰囲気なのに政宗はそういうこと言うかな!?」
「ふふっ、さすがまさくんね」
会長は俺の手を無理矢理引っ張ってそのまま階段を降りていく。
そのあとを京子さんが面白そうに笑いながら追いかけて来る。
そのまま俺たちは1階の廊下を歩いていった。
「さてと、ここのようだな」
そう言い会長は1つの教室の扉の前で足を止めた。
「ここって、名無しの教室ですよね?」
「そう、薫は見回りの時は大体はここの教室にいるんだよ」
名無しの教室とは、職員室や音楽室などそう言った名前が無くこれといって特定の時に使う訳でもなく何のためにあるか分からない教室だ。
何でも、この校舎を作るときに設計をミスして作ってしまったらしい。
「それじゃあ開けるね」
そう言って会長は扉を開けた。
「・・・」
扉を開けた先には薫さんがいた。
教室のちょうど真ん中であろう場所に、直立不動で立っていてなぜか目を閉じていた。
ただ、その姿は窓から射し込む月明りによってとても神々しく見えた。
これは確かに天使と言われるな。
「薫、毎度の事だけどご苦労様」
会長が薫さんに声をかけた。
すると、薫さんは静かに目を開けて俺たちの方を見た。
「あれ?皆さんもう見回り終わったんですか?」
「こっちはそんなに大したことじゃないからね」
「薫の方はどうかしら?」
京子さんが尋ねると、薫さんは笑顔で答えた。
「今日はそんなに多くないですから、いつもと比べたら楽ですよ。
さっきも1人来ましたけど、すぐに終わりましたし」
「じゃあ、さっきの空気が冷たかったのって・・・」
俺が言うと、薫さんが苦笑いした。
「さっきの人の影響だね。
ごめんね、政宗君慣れてないから怖かったよね?」
薫さんが心配しながら言うと、会長が俺の手を握っている方を掲げて薫さんに見せた。
「薫、大丈夫だよ。
政宗は私が守っているから」
会長はなぜか誇らしげに薫さんに言った。
「あ、そうなんですか?
良かったね政宗くん!陽奈世さんが一緒なら安心だよ!」
薫さんが嬉しそうに笑顔で言ってくれたので、俺も笑顔で返した。
「はい!
俺の苦しいことや悲しいこと、会長の楽しいことや嬉しいことも共有していく勢いです!」
「何で基本的に私が損してるの!?」
「デフォルトですから仕方ないですね」
「却下!」
会長とそんな会話をしている時だった。
また、階段の時に感じたような悪寒を感じた。
「・・・薫、何人くらいいるか分かる?」
会長が先ほどとは違い、真剣な顔で薫さんに訊いた。
「・・・5、6人くらいですね、そんなに強くはないです」
「そっか。
じゃあ、政宗の練習にちょうど良いね。
京子、私と一緒に廊下まで来て餌役になってくれる?」
「分かったわ、じゃあまさくんと薫は2人でお楽しみにね」
「何かその言い方は嫌だけど薫、政宗に使い方を教えてあげて。
私と京子で時間は稼いでおくから」
「分かりました、なるべく早く行きます」
そう言うと、会長と京子さんは教室を出た。
そして、薫さんが俺の目の前に来ていた。
「それじゃあさっそくだけど始めよっか」
薫さんは俺を見て笑顔で言った。
「は、はい。
それは良いんですけど、何をするんですか?」
「霊力の扱い方を練習するの。
悪霊と会った時の護身術としてね」
そう言うと、薫さんは俺の右腕を掴んで胸の高さくらいに上げた。
「手のひらは上に向けたままこの高さを維持してくれる?」
「は、はい」
俺は薫さんに言われた通り、腕を指定場所で固定した。
「政宗くんは確か右利きだったよね?」
「はい、そうです」
「じゃあ、今から私がやるのをよく見ててね」
そう言うと、薫さんは俺から2歩くらいの距離まで後ろに下がった。
そして、俺と同じように右腕を胸の高さくらいに上げて手のひらを上に向けた。
「良い?手のひらの少し上あたりをよーく見ててね」
俺は言われて薫さんの手のひらの上あたりを見た。
すると、見たことのない小さな球体が見えた。
その球体は少しずつ大きくなっていって、レタスくらいの大きさになった。
「どう?見える?」
薫さんに尋ねられて俺は頷いた。
「はい、何か丸い物が見えます」
「うん、大丈夫だね。
これは体に流れる霊力を集中して作ったものだよ。
これの扱いがもう少し上達すると、こんなこともできるの」
そう言うと、薫さんの前にあった球体の形が変わっていった。
剣、槍、拳銃、ムチ、その他色々な物に。
「すごいですね。
そんなことまでできるんですか」
「政宗くんも練習すればできるよ。
さあ、まずは球体を作る練習をしてみようか。
まずは目を閉じて」
俺は薫さんに言われた通り目を閉じた。
「体を覆っている流れを手のひらに集中させるのをイメージしてみて。
最初は形とかは気にしなくて良いから」
「分かりました」
体を覆っている流れを手のひらに集中させる。
・・・こんな感じかな?
「うん、政宗くん目を開けてみて」
薫さんに言われて俺は目を開けた。
手のひらを見てみると、蒸気のような湯気みたいな物が出ていた。
「・・・なんだこれ」
「それは、霊力を放出している状態だよ。
それを少し形を変えると、さっきみたいな球体だったり色々な物に形を変えられるんだよ」
「へぇ、じゃあ俺もこれを薫さんのみたいに球体にすることができるんですね。
でも、どうすればいいんてすか?」
「やり方は簡単だよ。
螺旋○を作るイメージでやってみて」
「薫さん、それやり方は分かりますけど難易度はクソ難しいですよ?」
「そうかな?
ナ○ト君やミナ○さんや○カシ先生や自来○先生は使ってたよ?」
「あの人たちは一般人じゃありませんよ」
あの人たちは忍って人種だからね、俺たちは色々と違うからね。
「じゃあ、ハン○ーハ○ターの念をイメージするとやりやすいよ!
ゴ○君のジャジャン○パーとか、レイ○ーさんのあのボールみたいなのとか!」
「同じ作者ならなぜ幽○白書のほうをとらない!」
あっちのほうがまだ分かりやすいようなものなのに!
幽霊相手か妖怪相手かはとりあえず置いておくけど!
「とりあえずそんな感じだから頑張ってね!」
「投げやりになりましたね!?」
何か知らないけど、薫さんがまとまらないまま俺に渡してきた。
仕方ない、とりあえず螺○丸方式でやってみるか。
えっと、手のひらの上にチャクラを集中させるんだっけ?
この場合だとそれが霊力だよな。
それを手のひらに集中させて、回転させる。
そしてこれをその場に留める。
「・・・薫さん、こんな感じでいいですか?」
俺は自分の手のひらの上にできた球体を見ながら薫さんに尋ねた。
やってわかったけど、これ集中力を使うから維持してるのすごい疲れる。
「うん!政宗くん初めてなのに上手だよ!」
「あ、ありがとうございます。
それで、これ作ったらどうするんですか?」
「手のひらを前にして対象に向かって撃って!」
「ど、どうやってですか?」
「サイ○ガンのように撃つとやりやすいよ!」
「サイコ○ンの撃ち方なんて知りませんよ!」
「政宗くん・・・あなた忘れたの
サ○コガンは指じゃなくて心で撃つのよ」
「いや忘れたもなにもそもそもサイコガ○を撃ったことがないんですけど!?」
「うーん、今思ったら対象も何もないね。
よし、そのまま廊下に行ってみよう!」
「え!?ちょっ!薫さん!?」
薫さんは俺の霊力を集中していないほうの腕を掴んで教室の扉を開けた。
廊下に出ると、会長と京子さんが廊下の真ん中に立っていた。
「あ、薫ごめん。
皆自我がなかったから残しておく余裕なかった」
会長はこちらを見ると、苦笑いしながら言った。
「え・・・そうですか。
政宗くんごめんね、今回はそれを撃つ機会ないみたい」
薫さんが俺の方を見て謝った。
「そんな謝らないで下さいよ。
また今度、時間があるときに教えてください」
「うん、ありがとう」
薫さんは微笑みながら俺に言ってきた。
・・・可愛いなぁ。
あ、気を抜いたらさっきの霊力の球体が消えた。
「ところで政宗、それはいったい何?」
会長がこちらを指をさしてきたので、俺はその先を見た。
すると、薫さんが俺の手を握ったままだった。
「何って・・・手繋いでるだけですよ?」
「何で手を繋いでるか訊いてるの」
何でだろう、会長が少し不機嫌そうに言ってくる。
「何でってそれは・・・俺と薫さんがラブラブな証拠ですよ。
ね?薫さん」
「え?そ、そうだね」
薫さんは俺に訊かれて少し戸惑っている。
「薫が完璧に戸惑ってるじゃん!」
「えー、照れ隠しですよ」
「そうよ陽奈世、あの二人なんだかんだいって仲が良いからあり得ないことではないわよ?」
京子さんが会長の隣で笑いながら言っている。
何か、ものすごく意地悪な笑顔だなぁ。
「うっ・・・もう!早く体育館行くよ!」
そう言うと、会長はプンプン怒りながら体育館のほうに歩き出した。
そのあとを笑顔のまま京子さんはついていく。
「薫さんすみません、少し悪ふざけが過ぎてあんなこと言ってしまって」
俺が謝ると、薫さんは首を横に振った。
「ううん、私は大丈夫だよ。
それより、陽奈世さんの機嫌直しに行ってあげて。
いつも何かあってもわざと京子さんに甘えたりしてるけど、本当はちょっとだけ落ち込んでるから」
薫さんに可愛くお願いされた。
これは男として断るわけにはいかない!
「分かりました!この男政宗に任せてください!」
「うん!頑張れ政宗くん!」
俺は薫さんの声援に後押しされて、前を歩く会長の元へ向かった。
そのあと何があったかは詳しく言わないが、体育館に着く前になぜか会長にキャメルクラッチをされました。