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生徒会は兼業です  作者: 羽田共也
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第2話 生徒会はフラグを気にする

会長の発案により、学校の見回りをすることになった日から少し経ち、ついに約束の日を迎えた。


授業が終わり、帰りのホームルームも終わったので俺は教室を出ようとした。


ちなみに、俺の席は一番後ろの一番窓側である。


「待て独眼竜、お前をここから先に通すわけにはいかないな」


そんな俺の目の前に、青木が立ちはだかった。


「・・・お前か。

毎回懲りずに立ちはだかって、暇なのか?」


青木は俺が生徒会に入って以来、毎回放課後に俺が生徒会室に行くのを阻止してくる。


「ふふふっ、お前が生徒会に入ったあの日から、放課後にお前を生徒会室まで行かせないようにすることが俺の学校へ来る目的へと変わったからな!」


「ちなみに、その目的の前は?」


「良い成績取って親を喜ばせたい」


「・・・なんかすまん!

俺のせいでお前の目的が歪んだ方向に行ったことは、今度お前の親御さんに謝るよ!」


「まぁ、それは置いといて。

今日は俺一人でお前を止めに来た訳じゃないぜ」


青木はそう言って、右腕を上へ伸ばして指を鳴らした。


「今こそ集まれ!我が同志たちよ!」


青木が叫ぶと、いつの間にか何人かの生徒が俺を取り囲んでいた。


「な、何だお前ら!?」


「こいつらは俺に賛同して、お前を止めるべく立ち上がってくれた同志だ」


俺は周りを見渡した。


「赤西、青木、黄川、緑屋、桃瀬。

・・・何でこうも都合良く、戦隊もののような色の名字の集まりになったんだ」


「やっぱり悪を止めるのは、ヒーローの役目だからな!」


「いつから俺は悪役になったんだよ!?

ていうか男だけならまだしも、桃瀬さんは女子だぞ!」


腕を組んで高笑いをする青木に、俺は指摘した。


「気にしないでください二島さん。

私は自分の意志で、ここにいるんですから」


背後から声が聞こえたので振り返ると、桃瀬さんが真剣な目で俺を見ていた。


この人普段は大人しい人なのに、何で周りの人に止められながらも主人公についていって敵のアジトに行くヒロインみたいになってるんだ?


「桃瀬さんは、俺たちとは少し違う理由でここにいるからな」


「少し違う理由だと?」


「そうだ、まず俺たちがお前を止める理由。

こんなやつにラノベの主人公ロードを歩ませていいのか!?」


『絶対にならない!』


「俺たちもハーレムルートを歩みたい!」


『そうだそうだ!』


桃瀬さん以外のレッド、ブルー、イエロー、グリーンが声を合わせて私利私欲を叫んでいる。


「うん、お前らはヒーローにはなれないな」


「私が言うのもなんだけど、最初同じ事聞いたとき私も思ったよ」


桃瀬さんが笑顔で俺に言ってきた。


「・・・桃瀬さん、何で俺を止めるんだ?」


「生徒会に、三石薫さんっているよね?」


「ん?あぁ、いるよ。

薫さんがどうしたの?」


「・・・私の初恋の人なんだ」


桃瀬さんは、恥ずかしがりながら呟いた。


「私、入学式の日に校内で迷子になってたんだ。

その時、薫さんが声をかけてくれて目的地まで案内してくれたの。

そのときの事が、今でも忘れられなくて」


「好きになったと?」


「うん!」


子どものように、嬉しそうに桃瀬さんは頷いた。


読書の皆様、先に確認しておきます。


桃瀬さんは女子です。


薫さんも女子です。


つまり・・・百合です。


「あのー桃瀬さん、一つ確認するけど薫さんが女子だって知ってる?」


「もちろん!

むしろ女性だから好きになったの!」


あ、この人完全にそっち側の人だった。


『さすが桃瀬さん!

俺たちじゃ言えないことを平然と言ってのけるッそこにシビれる!あこがれるゥ!』


他の四色が某有名マンガのような、称え方をしている。


あれ?おかしいな。


桃瀬さんの背後に、特徴的な効果音が見えるぞ。


「薫さんの事は調べられるだけ調べたよ!

身長、体重、スリーサイズ、住んでる場所、普段の行動、色々な好み、好きな異性のタイプ、その他もろもろ!

薫さんの事を知っている人で、私以上にあの人の事を知っている人なんていないわ!

そんな私以外の人に、薫さんをとられるわけにはいかない・・・」


桃瀬さんが不敵な笑みを浮かべている。


何でだろう、ピンクの精神が一番ピンクより遠い気がする。


「ということで二島君、あなたにはここで死んでもらって私と生徒会役員を交代してほしいの」


「いやそんな笑顔で言われたって内容が物騒すぎて了承できんわ!」


「どちらにしろ、お前をここから出すわけにはいかないけどな!

同志たちよ!敵を拘束しろ!」


青木の命令に従い、立ったまま残りの四人が俺の手足にしがみついて固定した。


「さて、さすがに学校で殺すのはマズイが動けないようにはなってもらうぞ」


そう言って、青木はポケットから何かを取り出した。


「お、おまえそれは!?」


狼狽える俺に、青木が得意げに笑って言った。


「そうだ!手裏剣だ!」


「何でそんなもんもってるんだよ!」


「しかも刃も本物だ!」


「お巡りさーん!!」


「しかもお前の手足の数に合わせて4本だ!」


「自分の手足が4本じゃないみたいに言うな!」


青木は手裏剣を両手の指の間に挟み、胸の前で腕を交差させた。


「さぁ、独眼竜よ。

最後に言い残すことはあるか?」


「お前は俺を殺す気ないんじゃないのか!?」


「万が一間違いがあったら困るからな。

遺言くらい聞いておいてやろうかと思って」


「・・・じゃあ、聞きたいことがあるんだが」


「ん?何だ?」


「お前、手裏剣投げるの練習したか?」


「したぜ、周りの人に刺さったら大変だからな」


「で、成功率は?」


俺が聞くと、青木は胸を張って堂々と言った。


「結局最後の最後まで一個も的に当たることはなかった!

ということで、ぶっつけ本番にかけることにした!」


「万が一どころか一が一で間違いがおきるレベルじゃねぇか!

皆良いのか!?このまま俺を押さえてたら絶対ケガするぞ!」


俺は手足を押さえている四人に指摘したが、四人とも動く気配がない。


「いいんだ二島!

俺たちはお前を止めることができれば、この身がどうなろうと構わない!」


「何でこの状況でそんな熱いセリフ言ってるの赤西!?」


「赤西と青木ばかりに良い格好はさせらないな。

レッドとブルーに任せてばかりじゃ、イエローこと黄川の名が廃る!」


「お前のご先祖様はそんなことのために黄川って名字にしたんじゃないと思うぞ!」


「俺の人生今まで良いことなかったけど、やっと生きてきた意味を見つけることができたよ!」


「緑川!?何でお前だけそんなに重いの!?

何よりこんなのが生きてきた意味は悲しすぎるわ!」


「皆が言ったとおりよ!

私たちは強い意志を持ってここにいるの!

それにここで怪我したら、もしかしたら薫さんが看病してくれるかもしれないし!」


「もう桃瀬さんはピンクじゃないよ!

何か黒に寄ってきてるよ!」


ダメだ、もうこいつらを止めることはできない。


「ふふっ、そろそろ時間だな。

さらばだ独眼竜!」


そう言って、青木から俺に向かって手裏剣が放たれた。


その手裏剣は俺に迫ってきて、次の瞬間には俺に刺さ・・・らずに俺の手足を押さえていた四人の額に綺麗に刺さっていた。


『あべし!』


手裏剣の刺さった四人は、床へと崩れ落ちた。


「み、みんな!」


青木が急いでみんなに駆け寄った。


「お前、よくもみんなを!」


「その言葉、そのままお前に返すよ」


涙を流しながら言う青木に、俺は冷静に返した。


「じゃあな青木、俺は行くぞ」


俺は青木に背を向けて扉を出ようとした。


「待て独眼竜!

お前を行かせるわけには・・・」


「行っとくが、俺はこのあと生徒会室行かないぞ」


「・・・え?」


「用事があるからな、今日はこのまま家に行く」


「マジか?」


「マジだ。

じゃあな、また月曜日に」


俺は青木に別れを言って、教室を出た。








その日の夜、俺は制服姿で学校の校門前にいた。


ちなみに右手には、スポーツバッグを持っている。


中身は・・・まぁ後で説明することになるからいっか。


「おーい、奇妙丸くーん!」


少しすると、左の方から声がした。


見ると、会長が手を振りながらこちらに歩いてきていた。


「何であなたは戦国時代の武将とかから名前をとってくるんですか」


「そりゃ、政宗君だからね」


「まぁ、そこまで気にしてないですけど。

ところで、それは何ですか?」


俺は、会長がここに来るまでに転がしてきた物を指差した。


「ん?何ってキャリーバッグだけど?」


「いや、それはわかるんですけど。

俺、今夜この学校に生徒会役員の皆で止まるって会長から聞いたんですけど」


「そう言ったよ?」


「一晩なのに、そんなに荷物必要なんですか?」


俺が聞くと、会長がモジモジしながら答えた。


「そ、そんなの女子に聞いちゃダメだよ?

政宗君」


「そ、そうですよね。

すみません、女子には色々必要なものとかありますもんね」


そうだ会長だって年頃の女子なんだから、そこらへんは色々あるもんな。


「そうだよ!

○○○○とか、○○○○○とか、○○とか!

今夜は皆を寝かせないぞ!」


俺は会長のキャリーバッグを開けて、伏せ字にしなきゃいけないものをすべてまとめてごみ捨て場に捨ててきた。


「何をするんだ政宗くん!」


「それはこっちのセリフだ!

仮にも生徒会長が学校で何しようとしてるんだ!」


「学校だからこそ、昼の学校じゃ教えられないような事を夜の学校で教えてあげようと言うんではないか!」


「いらんわ!

ていうか、それは某役員共の会長がいるからあなたがやったら被っちゃうでしょうが!」


「被りが怖くて何が小説だ!

何がラノベだ!」


「明らかに向こうのほうが人気なんだから、被りだしたらこんな小説見向きもされんわ!」


俺が叫ぶと、空から声が聞こえてきた。


その声は、何だかすすり泣いているような声だった。


「会長、これ何の声でしょうか?」


俺が訪ねると、会長は空を見上げて言った。


「これは・・・作者のすすり泣く声だな」


「何で!?」


「政宗君の言葉が傷ついたんだろうな。

作者を泣かせるなんて、なんて罪深いんだ」


「罪深いとかそういう問題じゃないでしょ!

ていうか、何で作者が泣いてるの!?

自分で書いてるくせに!」


「多分、自分で書いてて悲しくなったんだろうな」


「心弱すぎだろ作者!

ていうか、世界観壊れるからどっか行け!」


俺が叫ぶと、すすり泣く声が聞こえなくなった。


「ふぅ、色々大丈夫なのか?

この小説」


「おーい、政宗ー、会長ー」


俺たちを呼ぶ声が聞こえた方向を見ると、京子さん、水葉さん、薫さんの三人がこちらに歩いてきていた。


三人ともバッグを持っているが、やはり会長よりは小さい。


「これで全員集合したな!

よし、それじゃあ中に学校に入るぞ!」


会長が先頭をきって歩いていく。


俺たちは、そのあとについていく形になった。


「何か、緊張してきましたね」


俺が言うと、みんなの足が止まった。


みんなの視線が、俺に集まる。


そして、薫さんが俺に頬笑んできた。


「大丈夫だよ、リラックスして平常心でいれば怖いことはないよ」


「あ、ありがとうございます」


俺は、薫さんにお礼を言った。


この人、本当に人に優しいなぁ。


「そうだぞ政宗!

男なら堂々と楽しむくらいがちょうどいいぞ!」


水葉さんが俺の背中を叩きながら言ってくれた。


「まさくん、誰だって最初は怖いし失敗することもあるかもしれないわ。

でも、大切なのは失敗したその後だからその事を忘れないでね?」


「は、はい!」


京子さんは、大切なアドバイスをくれた。


「まぁ、もし何かあったら私を頼れ!

いざとなったら、政宗君を守ってあげるから!」


「か、会長」


あれ?何でだろう、会長が頼もしく見える。


「ありがとうございます!

俺、頑張ります!」


俺の言葉に、皆が微笑んでいてくれた。


俺は、このみんなの笑顔に勇気付けられた。


よし、これなら何があっても大丈夫だ!


「ねぇ、今思ったんだけど」


京子さんが、呟くように言った。


「どうしました?」


「今の・・・何だか死亡フラグみたいよね」


「言わないでくださいよ!

せっかく、良い雰囲気だったのに!」


「でも、京子の言う通りだ。

このまま学校に行ったら、一人ずつ死んでいくホラーゲームのような展開になってしまいそうだ」


「大丈夫ですよ!

きっと政宗君の主人公補正で何とか・・・」


「でも薫、良く考えてみろ?

主人公って言っても政宗君だぞ?」


「・・・何か対策しないと危ないですね!」


「二人ともひどいですよ!?」


何か、皆がフラグを踏んでしまいそうな事についてざわざわしだした。


大丈夫だろ、いくらなんでもこんな序盤で主人公を殺さないだろ。


・・・殺さないだろ?


「じゃあ仕方ない、政宗君に私から最強の護身の術をしてあげよう!」


「そんなのあるんですか!?

ぜひお願いします!」


会長に頼むと、会長は明後日の方向を見ながら叫んだ。


「次回!政宗死す」


「ある意味一番の護身だけど死にかけるの確定じゃねえか!」


こうして俺たちは、学校の中に入っていった。

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