表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王様と神様と  作者: 佐川ネンリ
2/2

1 森の中で

 そこは、焼け付くような世界だった。

 自分がここにいる事は分かる。鼻につく、焦げついた様な匂いも分かる。自分を囲む、炎の暑さも感じる。

 でもーーーーーー

 視覚が否定する。聴覚が停止しようとする。

 鳴り止まない悲鳴、紅く染まった世界。そして、なにより地面を埋め尽くす、圧倒的な死体の数。

 絶望という言葉を表すに相応しい『悲劇』がそこに広がっていた。

「なんで・・・どうして・・・・」

 口を開いて出るのは、情けない言葉ばかりだ。

「逃げないと・・・・早く逃げないと・・・!!」

 冷静に導き出した答えさえ、「どこに?」の一言であっけなく崩れてしまう。

 周りの暑さとは裏腹に、頭だけは急速に冷え切っていく。

 認めたくないと目を逸らす。聞きたくないと耳を塞ぐ。しかし、頭の中の事実だけは消えない。

 つまり、ここで、俺は、

 『死ぬ』のだとーーー

 









「・・・きてください。あのー、貴方、このままだと死にますよー」

 頬に伝わる振動。朦朧としていた意識がゆっくりと覚醒していく。少し開けた目から入ってくる光が眩しくて、目が開かない。

「あ、気づきました?良かったですね。あと少しで死ぬところでしたよ」

 聞こえてくるのは女の子の声。どうやら助かったようだ。

 少し体を動かそうとすると、激痛が走る。しかし、この痛みが生きているという事を実感させてくれていた。

「ここ・・は・・・?君は・・・誰?」

 たどたどしく質問をする。実際、相手に聞こえているのか不思議だったが、どうやら大丈夫なようだ。

「ああ、ここは先程まで貴方が居た村を少し出た森の中ですよ」

 少女は澄んだ声音でゆっくりと話した。とても優しい声だ。

「それと、私の名前ですが、私はニレイ。ニレイ・ロ・ラースです」

 口の中でニレイ、と繰り返す。どこか懐かしい、と思ったのは気のせいだろう。

「あと、もう一つ。貴方に伝えることがあります」

 先程とは違う、落ち着いた口調でニレイは喋りだした。

「貴方にはーーーー王になってもらいます」

 毅然とした口調でそう言い切ったニレイは、その蒼白な瞳で俺の目を真っ直ぐと見つめていた。

 次第に意識が遠のいていく。どうやら、また深い眠りの中に沈むらしい。

「ちょっと!大丈夫ですか!?しっかりしてください!!」

 ゆっくりと消えていく意識の中で、ただただ『王』という単語だけが、耳の中で反響していた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ