第1章 6話 『俺は銭湯に行けない』
衝撃の新たな魔王誕生を見届けた俺たちは未だギルドの中にいた。
「………………………。」
「………………………………………。」
静かな沈黙がギルド内で続いていた。
あーあ、王様やらかしすぎだろ。王様のせいでいままで騒いでた俺たちのテンション返してよ〜。
「………………………………………………………………………………。」
未だギルド内に沈黙が続いている中、くいくいとユメと集に服を引っ張られながらギルドを出た。
「このままギルドに居ても空気が重すぎます。くう様。新たな魔王が誕生してしまったのは残念ですが、とりあえず気分転換しましょう。」
「そうだよ。くう。気分転換だいじ。」
確かにあのギルドは空気が重すぎる。みんなやっと終わったと思ったのにこれだもんな。
「そうだな。じゃあ気分転換しよう。」
ユメはキラキラと目を輝かせて
「では、もう夕方なのでたまには銭湯にでも行きましょう!」
と、そう言ったのだった。
街の一角にある大きな銭湯。その銭湯の入り口にまできて俺はあることに気づいてしまった。銭湯の入り口に男湯、女湯で別れていることを。
………………俺さ見た目は幼女、中は男子なんだけどどっち入るの?これで女湯入ったら犯罪じゃね?男湯入ったらそれはそれで警察くるんじゃね?
………………入れねぇじゃん。
...........どうしましょうか。
「さぁ、入りましょう。くう様!」
おいおいっ!引っ張るなぁ!なんでそんなに入りたがったんだよユメ!?
周りは大丈夫かも知れないけど俺が死ぬ!俺が!
その時、急に視界が暗闇へと変わった。
うわっ!?これは……目隠しか。
「くうー、目隠ししたままで入ろ♪」
あぁそれなら問題ないか……って問題あるわ!!
周りから見たら目隠しした幼女が入ってくるとかどんなプレイだよってなるじゃん!!
「くう様は、何故目隠しするのですか?」
……やばい。絶対なんかあるって思われる!
「……なるほど。くう様は見えないで体を洗いあうというドキドキプレイがしたいのですね?では仕方ありませんこの私自らお相手して差し上げましょう。」
………どうしてこうなる。おしとやかな雰囲気だけど実際ユメって馬鹿なのか?
そして、目隠しをした俺の抵抗も虚しく湯船に浸かっていた。
「ここの銭湯は乳白色のにごり湯なんですよ。昔の人がたまたまここを掘ったら温泉が湧き出て、その湯は傷が癒えたり、アンデットが嫌ったりといろんな効果があるそうですよ。」
へーいい湯だな。目隠しされてて色わかんないけど。じゃあ、もう上がろうかな。このままいても嫌な予感しかしないし。
そうして俺は視界が塞がれているなか頑張って湯船から出ようとした時、ユメに手を掴まれた。
「なんでもう上がるんですかくう様。ってか見えないから危ないですよ。私が背中を流して差し上げますね。」
「いや、気にしないで温泉楽しんでていいよユメ。ホント気にしなくていいから。」
じゃないと、俺はいろんな意味で死ぬぞ!
「あっつー!足捕まえてください」
「らじゃ!」
「ちょっと!?何するの!?ねぇねぇマジで何する気!?」
俺はユメに両手を掴まれ、集に両足を捕まって抵抗する間もなくユメと集の2人がかりでプロレス技のように取り押さえられながら体を洗われていた。
死ぬッ!これはやばい、やばい!女子2人に取り押さえられながら体を洗われているとかやばい状況なんだけど!?
しっかりつけられていたはずの目隠しが取れ、目の前に俺を洗って楽しんでいる一糸纏わぬ集の姿が目に飛び込んできた。
集が、顔を上げて俺と目があった。
「……………………?…………なっ!!」
俺は顔を赤くした集によって湯船へと背負い投げをされてた。
俺は湯船から顔を出すとバスタオルを巻いて真っ赤に茹で上がっていた集がいた。
………………どうしてこうなった。
「くうのえっち。」
………………………ホントどうしてこうなった。
次の日になるまで集が口を聞いてくれることはなかった。
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次の日、俺たちはギルドを訪れるとギルドにいた人たちはやっと立ち直ったのかギルドの中は盛り上がっていた。
それにしてもやたらと騒がしいな。なんかあったのかな?
「くう様!くう様!聞いてくださいっ!」
やたらとテンションの高いユメ。
「とりあえず落ち着いて。ユメ。…で何かあった?」
ユメは深呼吸してから
「はい。今日はなんとですね。なんとトマトの収穫日なんですっ!」
へー、トマトかぁートマトねぇ。.....って、こんなにトマトの収穫で騒ぐものなのか?