第1章 3話 『魔法騎士』
森の中にある直径100メートルはあろうかという開けた場所。
そこだけ地面に植物が生えておらず硬い地面に覆われていた。そこの中心にいた食虫植物ハエトリグサのような見た目の食肉植物がいたのだった。
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やばい、やばい、やばい、これはマジでやばい。
異世界に来て初日で大型の敵を前にして集は負傷、俺はまだ剣の扱いに慣れてない。
異世界が楽なはずがなかった。
舐めていた。
いくら神器でも扱いに慣れてなければ使い物にならない。.......でも、集だけは絶対に守ってみせる。
「かかって来いやッ!!化け物さんよぉ!」
食肉植物の10本以上もある触手が一斉に襲いかかって来た。
剣を持ち上げようとした瞬間、俺の手から剣が地面に落ちた。
.....やばい、やってしまった。
体が幼女の俺には聖剣はあまりにも重すぎた。
触手が勢いよく俺めがけ迫ってくるのを見て、俺は初めて死を覚悟した。
……が、俺の目の前1メートルにまで触手が近づいた時にそれは起こった。
俺の目の前に上から騎士のような格好をした女性が舞い降り、触手に向かって手を突き出した。
「フラッシュ・ライトニング!!」
女性がそう唱えると女性の手の周りの空気が、変わった。まるで、静電気のように空気がパチパチとしていた。
女性が、作り出した巨大な静電気のような空気に食肉植物の触手が触れた瞬間、触手が一瞬にして燃えたのだった。
……すげぇ、あの化け物を一瞬にして蹴散らすなんて。ただ者じゃない。そう俺は確信した。確信できるほど強かった。
化け物はいきなり触手が燃えたことでパニックになり、木と木の間に絡まみついていた触手も地面に引っこんだ。
...今なら逃げれるっ!!
「今のうちににげます!」
「はっ、はい!」
俺たちは女性騎士によって命を救われたのだった。
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俺たちは怪我の治療をするために女性騎士の家に招かれていた。
家の中にはピンク色のバラや、紫色のイチゴが小さな植木鉢に植えられていた。
……紫色のイチゴ!?何それ美味しいの?めっちゃ毒毒しい色と迫力を放ってんすけど笑笑露骨に気になる要素満載じゃないですか。
「えっと、お名前は?」
急に女性に声をかけられて俺はびっくりしながら答えた。
「はい。名前はくうと言います。」
「くう?……くう様ですか。くう様は何故あんな危険な所にいたのですか?あそこは食肉植物のボス、エルドラいるところとして有名なんですよ?」
……まじかよ。道理で初心者が倒せるわけないわ。そして、何故分かったかのような顔をしてくう様呼びなの?
「えっと、今日初めてのクエストでして……。」
「そういうことでしたか。では、あの少女が起きたらいろいろと基礎を教えて差し上げます。私はユメと申します。」
...ありがたい!大変ありがたい!!本当に助かる。
茶髪で俺たちよりも少し年上に見られる美少女、ユメは俺に熱い眼差しを向けていた。
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集が、起きてから俺たちはスキルについて教わっていた。
「スキルとは、経験値をためて記憶石でスキルを選ぶことで覚えることができます。スキルは職業によって異なるものや、職業に関係なく覚えられるものがあります。」
「くう様だと、剣の扱いが上手くなるスキルなどを覚えればより戦いやすくなります。」
なるほど、そうすれば剣を落とすこともないわけだ。
「えっと、あなたの名前は?」
「集です。」
「じゃあ、あっつーさんはヒーラーのクレリックですからより効果を高めるスキルなどがオススメですね。」
「じゃあ、頑張ってスキルとろうね。あっつー。」
「うん。ってなんでくうまであっつー呼びなの?」
「いいあだ名だなーって。」
呼びやすいし、いいじゃん。
「くう様、お願いがあるのですが……」
なんで俺だけ様扱いなのさ。なんか関わったことあったっけ?……いや絶対ないわ、ここ異世界だったわ。
「くう様、あっつーさん、私をパーティーに入れてください。」
………は?
「えっと、もう一回言ってください。」
「私をパーティーに入れてください。」
「ちなみにユメさんの職業ってなんなんです?」
「私は魔法騎士です。きっとお役に立てるかと。」
騎士か、このメンバーなら確かにバランスは取れているかもしれない。
……俺さっそくハーレムじゃね?あっ。俺幼女だったわ。実質ハーレムパーティーでも周りからはただの女子パーティーだったわ。
「じゃあ、よろしくお願いします。」
「はい。任してください、くう様。」
頼れる様な頼れない様な仲間が、加わったのだった。
「では、さっそくドラゴンを狩りに行きましょう!くう様!!」
……馬鹿かな?なんで初心者がドラゴン狩れるのさ。植物すら勝てなかったんだぞ。
「嫌だよ。行かないよ。」
「ダメですか。残念です。」
そんなに、うるうるして泣き落とそうとしてもいかないからな!
植物ですら勝てなかった俺らだぞ!?
「では、魚釣りに行きましょう!」
「嫌だ!.....って魚釣り?」
「はいっ!」
この魚釣りがまさかあんなことになるとはこの時は思いもしなかった。