第2章番外編 『GWスペシャル!!』
GW特別編
あぁ、また今年もこの季節が来てしまった。楽しいような悲しいような嬉しいような辛いようなあの連休が。
何故こんなに複雑な気持ちなのかって?
それは数ヶ月前のGWが大変だったからだ。
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数ヶ月前のまだ異世界に行く前のGW前日
「ねぇくうーGW空いてる?」
「あぁ空いてるよ……むしろやることなくて暇。」
「じゃあさ!一緒にキャンプしに行かない?」
「おっキャンプか!行く行く!」
俺と集は幼馴染で家族ぐるみで遊びに行くことがよくある。正直なところ集と似ていて集のお母さんも天然。だから少しやりとりが疲れる。
「よーし、くう!GWは遊びまくるぞー!」
…………はぁ、教えたくない。教えたら俺もその事実を認めてしまうことになる。でも言ってあげるか………言いたくないなー。
「集、そのーだな。言いたくないんだけどさ。俺らの代から土曜日学校あるから……その連休の間に学校あるぞ。」
集の表情が一瞬固まって、次に集が発した言葉は
「……よし、校長を殺そう。」
と物騒な言葉だった。……殺すな殺すななんでそうなる。
「よし、一番偉い校長を脅してその日を休みにしよう。」
だからー!だめだから!!やったら次の日取り調べされてカツ丼出されるやつだから!
「やるなよ。絶対やるなよ!」
「やるなと言われるとやりたくなる症候群」
………フラグじゃねーよ!!馬鹿か!!
しばらく間があいてからようやく現実を受け入れ始めたらしく
「あぁぁぁぁぁあ!!やだよぉーなんで学校あるのさぁー!!」
……情緒不安定すぎるだろ。確かに学校あるの知って殺意湧いたけど!とりま落ち着こうな?
こうして騒がしいGWが幕を上げたのだった。
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空気がとても澄んでいて、町とは違い自然が近くで感じられ、どの植物も力強く育っているそんな山の中にあるキャンプ場。ここにいるだけで自分も負けずに頑張らないとって思う。
そんな俺は服をくいくいと引っ張られて振り向くが誰もいない。
……と思ったら引っ張っていたのはまだ小2くらいの幼女で小さくて視界にはいってなかった。この幼女、実は集の妹である。名前は集有彩。あんな集が姉だからこの子も少し天然……いや、幼いだけに集以上に天然だ。
この子は危険だ。前に集や俺と一緒にバトミントンをした時はいきなり「バトミントンってどんな音するの?」って真剣な顔で聞いてくるもんだから驚いてしまった。さらにとどめと言わんばかりに集の家で飼っている大型犬の背中には歯型がついているくらいだ。
………いうまでもなくやばい。この姉妹は間違いなく危険だ。きっと将来世界を脅かす存在になるだろう。今のうちにどうにかしないと手遅れになってしまう。
「ねぇ、くぅ兄あれは食べれる?」
有彩が目を輝かせながら指さしたものは………木の下にいたカエルだった。
……だめだこれ。もう手遅れだったわ。いや、今からでもダメなものはダメと教えてあげないと!
「よっしゃあー!見てみてくう!食料を手に入れたよ!!」
俺があれは食べちゃダメと教えるより先に集が捕まえてしまった。
「流石姉ちゃん!!それうまい?」
「うん。美味しいよ!」
「あぁぁぁぁぁあ!!集のばかぁー!それじゃあ、有彩まで変なもの食べ始めちゃうだろ!」
「くうったらひどい!カエルだって美味しいんだよ!内臓取り除いてから焼いたり、干したり、煮込んだりすると美味しいんだよ!」
………なんでそんなに調理法知ってんだよ。絶対今までに何匹か食ってるだろそれ。
その後ちゃんとカエルを逃してやってからもいろいろと大変だった。
俺が集の母親に「これ生で食べれるわよ」と言われて食べてみた野菜が生では食べれない野菜だったり、夜に作ったカレーの肉は実はカエルだと言われたり、有彩がいつの間にか虫を取ってきて食べれる?とか聞いてくるなどなど……
この家族にまともな人はいないのか!?もう疲れた誰か助けてー!!そんな俺を見て集のお父さんが近づいてきた。
「疲れただろうに空夜くん。これでも食べて元気だして。」
おお!まともな人がいた!………いやちょっと待てそれはなんだ?集のお父さんの手に乗っていたのは赤黒い色をしたいかにも毒ですと言わんばかりのきのこだった。
俺はそのきのこを山に向かって投げ捨てた。……まじでこの家族ロクでもないな!!前から知ってたけど最近さらに酷くなってるぞ!?
「あぁ勿体無い、あれは食べると笑いが止まらなくなるきのこだよ。」
……もう確信犯だな!俺を精神的にも肉体的にも殺す気か!!
こうして数々の災難に見舞われた俺はさらにキャンプファイヤーもやらされて今になってやっと落ち着いたところだった。時間と共に小さくなっていく火を見つめながら俺は持参した唯一安全なコーヒーを飲んでいた。
あぁ、疲れた。一年分くらいの体力消費したわ。もう当分キャンプは行きたくない。そんな俺の横に座ってきた集はニコニコしながら
「楽しかったねくう。またみんなで一緒に来ようね…約束だから!」
一瞬で疲れが吹き飛ぶその笑顔は反則だろ。……でも確かにつまらなくはなかった。疲れたけど。
「そうだな。またいつか来ような。」
うん!と集は頷いた。…やっぱ可愛い。この笑顔が見れるならまた来るのも悪くないなと思った。そうして俺は一気にコーヒーを飲み干したのだった。




