第2章11話 『テレポート依存症』
少年の記憶Ⅱ
あぁ、また一つまた一つ自分の手から大切な何かがこぼれ落ちていく。俺の手からサラサラと落ちていくそれはかけがえのない何かが。
でも俺はそれをただ呆然と見ていることしか出来ない。自分にとって大切なはずだったもの。気がつくと手から全て流れ落ちて無くなってしまう。
俺は目が覚めると自然に涙を流すことがある。思い出せない何かに対して。
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座禅を組んで修行していた部屋の近くの廊下に突如として現れた魔法陣の中から現れた1人の魔法使い。
「………あのーどちら様でしょうか?」
……まじで誰だよ。ローブ深く被りすぎてて分かんねぇー。怪しすぎるわ。
「私は王女カナリア様に使える者。……そう!我が名はティナ!!」
……なんでそんなにかっこつけてるのさ。どうどう今の良かったよね?みたいな顔してこっち見ないで!反応に困るわっ!!
俺より背が高く年は18近くであろう魔法使いはティナと名乗ったのだった。
「で、緊急事態ってなに?」
「あっ。そうそうそれを伝えに来たのでした。一瞬忘れちゃいましたよ……てへぺろ」
………忘れるほどってよほどの緊急じゃねーなこれ。てか、緊急事態の内容忘れるやつに伝言お願いして良かったのか?
「実はですね。繭の状態だった蛇に変化があったんです。なので今すぐ王都に戻りましょう。」
………………それさ超緊急事態じゃねーか!!よくそれ忘れてたな!?ティナ絶対頭どうかしてるぞ!!1回病院行ってこい!!
「あぁ、もちろんいくよ。じゃあ今すぐテレポートよろしく。」
「……えっとですね。今日朝起きるじゃないですか。」
「うん?それがどうかした?」
「朝起きてすぐって動くのめんどくさいじゃないですか。だからトイレや食堂などなど行くのにテレポートつかったんですよね。そしたら急に行けとか命令されて来たんですけど…」
………なんとなく先が読めた。こいつまさか!?
「さっきのテレポートで今日分の魔力使い果たしてしまいました。これぞ魔法使い特有の症状、テレポート乱用負のスパイラルっ!」
………なんじゃそりゃどんなスパイラルだよ。テレポート依存症かっつーの。
……てか、やっぱりこいつ馬鹿なんじゃねーの?確かに城の中広いけどさそこは歩こうよ。それ以前に職業柄、昼に魔力切れはやばいでしよ。
「では、くう様ここは私がテレポートしますね。」
「おお!ナイスユメ!」
「では、気をとり直してテレポートっ!」
この先のことに不安を抱きながらテレポートしたのだった。
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「カナリア!状況は!?」
俺は城に着くなり真っ先にカナリアの元に行き聞いたのだった。
「落ち着いてくださいくうさん。極めて状況は最悪なのに変わりありません……が、そろそろ蛇がかえる頃なのでティナに頼んで伝えて来てもらいました。」
「そうか、いつ頃かえる?」
「はい。多分明日の朝にはかえるかと。」
体が完全に起きてないから早朝のバトルはきついな。でも、仕方ない、やる以外に選択肢は無いしな!!
そうして俺らは夜中に100人ばかりの兵士を連れて万全の体制で蛇の近くで待機することとなった。




