第2章10話 『集スペシャル!?』
ゼロの書Ⅸ
この世には証明出来ない事が存在する。
例えば異能もその一つ。異能が使える者は極少数で生まれつき持つ者もいればある段階で使えるようになる者もいる。
………が、異能を持つ者たちはどの時代でも人々に恐れられていた。昔、異能持ちによって世界が征服されていた時代があり、未だに異能持ちへの偏見が根強い。
………きっとこの異能持ちも何か企んでいるに違いないと思う者が多かったからだ。
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勢いよく下の岩に水を叩きつけている滝の下で未だに体が濡れていないことに気づかない者が1人いた。
「おーい集ーーー!聞こえるかー!!一旦戻ってこーい!!」
俺の声が聞こえたのか目を開けると驚いた表情で固まっていた。
「くう!この私の周りにあるやつなーに?」
…………いや、知るかっ!逆に知らずに使ってたのかよ!?ある意味すげーな!!
「そのことも話したいからこっち来い。」
集は無言で頷いてから立ち上がり俺らに向かって歩いてきた。その間もバリアの効果は健在だった。集が歩くとそれに合わせてバリアも動いて水を弾いていた。
なんであいつもう一つチート能力あるわけ?そういうイベントは俺に訪れるものじゃないの?………それになんで俺だけこんなに不利なのさ!?
「くうーこれってなに?」
「バリアじゃないの?そういう魔法使った?」
「いえ、くう様これはあっつーがもともと持っている異能です!」
………………えっ。なっ、なんだとぅ!?マジで集もともとチートかよ!ずりーな俺によこせよ!
この可哀想なことに見た目が幼女で剣のもともとの適正が全くなくて、おまけにまだユメと顔を合わせるのが気まずい俺によこせよぉ……泣くぞ。
「ですがあっつー異能はできるだけ隠してください。まだこの世界では異能を受け入れていない人が多いので隠さないと不利益になります。」
「そっか。ありがとうユメちゃん。私はこの芸で生きていくよ!!」
……人の話聞いてたか集。ついさっき使うなって言われてなんでそれで食っていこうとするんだよ!?
「はぁ、集はもういいや。きっとこいつはなにやっても大丈夫だろ。………でさ、お坊さんどこいった?」
「あそこにいますよ。」
「おっおう、そうかありがとうユメ………あっ。」
俺が振り返って目に飛び込んできた風景に写っていたのはりすに向かってお経を唱えて教えている可愛い一面があるお坊さんの姿だった。
……お坊さん可愛いすぎるだろそれは。その手のひらサイズのりすに一生懸命………いや、俺らに教える時よりも明らかに一生懸命に教えてるとか可愛いすぎるだろ。…………うん?俺らより一生懸命に教えるとかどういうことだよ!?俺らりすに負けたの!?
こうして主導者が一切教えてくれないままこの奇妙な修行は終わったのだった。
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修行最終日……
最終日にもなると集とユメは最初に比べて明らかに変化があった。今ではお坊さんの警策を目をつぶり座禅を組んでいる状態でも当たる瞬間にかわすことができるようになっていた。
………うん、すごいよすごいんだけどさ足組んでてどうして横に綺麗にスライドできるわけ?まじで変なとこだけは鍛えたな。
もうこいつらを置いて帰ろうか悩んでいた時、俺たちの近くの床に1人分の大きさの魔法陣が現れた。
「緊急事態です!くう様今すぐ王都に戻りましょう!!」
魔法陣から現れた白いローブを深くまで被り顔がイマイチよく分からない魔法使いはそう言ったのだった。




