第2章6話 『さつまいも』
ゼロの書Ⅴ
かつて、大昔に黒蛇が目覚め地上を大暴れしたことがあったそうだ。人々は協力し黒蛇を倒すとまではいかなかったが撃退し事なきを得たがその時代の占い師が人々にこう告げた。
次に黒蛇が地上に出てきた時にはより凶暴に凶悪になって出てきて、内に潜む人類にとっての悪が解き放たれるだろうと。
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俺らは黒蛇に先制攻撃を仕掛け優勢に見えていた………が、3大魔獣の体力は馬鹿みたいにあった。俺らはやれるだけの攻撃を仕掛けたが、黒蛇の方が1枚上手だった。
……嘘だろっ!?ゼロの攻撃を食らってるのに全く効いていねぇっ!!黒蛇の鱗が硬すぎる!!あれをどうにかしない限りは剣での攻撃は無理だ。
「ゼロっ!一旦こっち戻れっ!」
俺がさつま芋を持ちながらゼロに手を振って合図した。
ゼロが俺の声を聞いて攻撃をやめて一直線に綺麗な弧を描きながら飛んできた。ゼロとは距離があったがゼロは自分の下に風を起こす魔法を使って飛んできたのだった。
そしてゼロはすかさず俺の手ごとさつま芋に食いつき始めた。
小動物みたいで可愛い……じゃなかった。まずはあの鱗をどうにかしないと。
「なぁゼロ、あの鱗をどうにかする事は可能か?」
「えぇ、時間さえ稼いでくれればできますよマスター…むしゃむしゃ…そうですね5分でいいので時間稼ぎしてきてください」
ゼロはそう言ってさつま芋を美味しそうに食べながら魔法の詠唱を始めた。それと同時に俺は時間稼ぎをするために竜車にしっかり座って合図を出した。
「行くぞ相棒っ!!ぐるぐる回れー!!」
100メートルほど距離がある黒蛇に一直線に近づいてゼロに近づけないためにできるだけ魔法の射程内をぐるぐるしていた。黒蛇が俺らに気がつくと重いはずの体を素早く動かして近づいてきた。
近づき過ぎると魔力吸収の範囲に入り死ぬ。遠過ぎるとゼロの魔法の射程内から出てしまう。俺は見えない境界線を感覚で把握しぐるぐる回っていた。
……そろそろか!?ずっと見えない境界線を回ってるのはきつい。周りの魔法使いからの魔法の援助があってもきつい!
「準備できましたマスター!!」
「よし!放てッ!」
「喰らえ!マナ・ブレイクッ!」
ゼロの魔法が黒蛇を包んだかと思ったのもつかの間だった。魔法を喰らった黒蛇が急に目を赤く染めて怒り狂い始めた。
……やばい!いままで以上に暴れるぞあれは。俺はその場を離れてゼロのところまで戻った。
「ゼロ、今の魔法は何?」
「あれは喰らったものの魔力の伝達を一時的に狂わせる魔法です。魔獣のほとんどは体の大半を魔力が占めています。そしてその魔力を体の一部に促してあげることでその部位を強化することができます。」
「……ということは魔力の伝達を狂わせたことであの黒蛇は弱体化してるってこと?」
「はい、その通りですマスター。今のうちに仕掛けるのが1番かと。」
「でかしたゼロ!!まじゼロ好き!キスしちゃいたいくらい!」
「……そんな恥ずかしいです。私はマスターの指示に従っただけですから。……キスはまた今度してください」
……キスはありなの?冗談でつい口任せで言っちゃっただけなんだけど。ゼロ可愛い過ぎるだろ。
気を取り直して
「今だカナリアっ!弱体化させる魔石使って!!」
「はい!無の魔石用意ー!……放てっ!」
拳サイズの無の魔石が黒蛇にいくつかあたると黒蛇の周りに変化が起きた。いままで周りの植物から魔力吸収を行なって灰にしてきたが魔石があたるとその現象が止まった。
無の魔石はその名の通り一時的に魔力吸収の能力を無力化する魔石だ。よってゼロの魔法、無の魔石によって無力化された黒蛇はいままでにないほど怒りを露わにしていた。
さぁ、第2ラウンドの始まりだ!!




