第2章5話 『約束』
ゼロの書Ⅳ
黒蛇、やつは最悪の魔獣だ。やつの腹が満たされることはない。しかしやつは暴食であり永遠に食べ続ける。
………否、やつの食事は周りの生き物から魔力を奪い続けることであり、やつの腹は満たされないように作られているが故やつが救われることはない。
やつに勝つには…………
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「では最後の確認をします。まず最初に黒蛇に気づかれていない間にまず魔法で攻撃を開始します。そして、弱ってきたところで無の魔石を使い黒蛇の魔力吸収を一時的に無効化するのでそこで一気に叩き込みます。」
となると、俺は後半からか。……本当に勝てるのだろうか?すごく不安だ。
「各自準備っ!1時間後に出発する!!」
「くうさんこれを。これは真魔石と言ってきっとその時がきたら役に立つはずです。」
それは青色で拳サイズの魔石だった。
「それとくうさん頼みがあるのですが最初の攻撃の後黒蛇を引きつける役をやっていただけませんか?」
……………いやいやいや、そんな事したら幼女は泣くよ?…ってのは嘘で近づいたら死ぬわ普通に。
でも、カナリアが俺がいいと言うならやってみせようじゃないか男の……いや幼女の名にかけて!!
「でも1つだけ約束。絶対に勝って全員で帰ってこよう。」
「もちろん!最初からそのつもりです!!」
こうして俺たちは城を出たのだった。
.....絶対に全員で帰ってくると心に誓って。
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でかい。誰が見てもそう言うだろう。これを見ると人間なんてちっぽけな生き物にしか思えないくらいに。
「ではくうさんご武運を。」
「あぁ、カナリアも気をつけて。」
俺はカナリアから貸してもらった王都の竜車に乗っていつでも行ける準備をしていた。竜車には荷台はなく身軽で動き回れるようになっている。
「よし。よろしくな相棒!名前は……そうだな。黒いからクロちゃんな。」
黒竜…俺の相棒は気安く触るんじゃないわよと言わんばかりに俺の手を振り払った。
そして作戦が開始した。
「戦闘用意ーっ!放てッ!!」
『ライトニング・フレアッ!』
カナリアのかけ声を聞いてたくさんの魔法が放たれた。黒蛇の横に盛大にぶつかり燃え広がった。
………いったか!?かなり効いたはず!!これなら!!
…………………な!?効いてねぇ!!火が少し収まり姿を現した黒蛇には傷1つついていなかった。全く効いていなかったのは残念だったがここからは俺たちの出番だ。
黒蛇は魔法を当てられると大きな目玉でぐるりと周りを見回してようやく事態を把握するといままでおとなしかった黒蛇が暴れ出したのだった。
「行くぞクロちゃん!やつの目の前くるくる回れっ!」
クロちゃんは俺の合図で勢いよく駆け出し黒蛇の魔力吸収範囲ギリギリを保ちながら挑発していた。黒蛇が俺らに気がつくと重いはずの体を動かしものすごい速さで近づいてきた。
……………うぉぉおぉお!?やばい。やばい。やばい!!なんであいつあんなに速いの!?こっちは全力で走ってるのにものすごい速さで距離を縮められたんだけど!?
「走れ!走れ!走れ!クロちゃん!!」
「今だっ!放てッ!」
『ライトニング・スパークッ!』
二発目の魔法が綺麗に黒蛇の横にあたり黒蛇が少しよろけて速度が減少した。
「まだだ!まだ弱っちゃいないっ!!やっちまえゼロっ!」
「了解しましたマスター。……我が最悪の最強の術を喰らえっ!!ゴッド・ブレードッ!」
ゼロの周りに無数の光る剣が出現し一気に黒蛇に叩き込まれた。
ゼロはすかさず魔法で作った擬似カリバーで黒蛇に突っ込んでいった。
…………………えっ!?あいつ死ぬぞ!!
「待って行くなゼロッ!………あれ?」
ゼロは普通に黒蛇の魔法吸収範囲に入っても平気な顔して戦っていた。
「私は完全な肉体は持たぬ者。貴様ごときに魔力を奪われるほど落ちぶれてはいない。」
……もうなんでもありだなゼロは。抵抗すれば奪われないものなの?ゼローお前だけ次元が違うぞー。
ゼロは黒蛇の尻尾を剣で見えない速さで振るっていた。ゼロさんすごく顔が輝いてて怖いんだけど。いつも無表情なのに。
黒蛇が少しずつ弱ってきた。ゼロの剣がかなり効いてるみたいだ。これなら行ける!
………そう思ったのもつかの間だった。




