第2章番外編 Ⅱ『ゼロの記憶の欠片』
ゼロの書EX
私は少年の魂に権能を埋めたことで今の時代に少年がいないことが分かっていた。次に少年にあった時は少年を脅かすものから全て守る、そして少年の刃となって生きると決めていた。
...が、この時代に少年がいないのであれば私が力を振るう必要がない。そうなると私はもう一つ決めていたことがあった。
普通のごく普通の少女として生きたかった。戦いとは無縁の人生、平和な日常、そんな人生を送ってみたかった。この村ならできる。そう確信があった。
私は日が経つにつれて村の人たちに心を開いた。この村はみんな優しい。過去の私も知ってる。だからもう隠すことなんて何も無かった。
畑の手伝いをしたり、一緒に魚釣りをしたり、村で数少ない子供たちの面倒を見たり、鬼ごっこをしたり、山菜を取りにいったり、毎日が楽しかった。少年と一緒にいた頃のように。
でも、楽しい時間はそう長くは続かなかった。
私が村のお婆さんに言われて林檎の間引きの手伝いをしに行った日だった。その頃には私は心を開いていて村の一員として生きていた。
私がお婆さんの林檎を育てている場所に向かう時、村は静まりかえっていた。いつも子供たちの声や大人達の話し声でうるさいはずの村がやけに静かだった。
私は嫌な予感がしていた。私が急いでお婆さんの元へ向かうと、林檎がたくさん植えられているそこは一変していた。
かつて辺り一面林檎の木で埋め尽くされていたそこは林檎の木が根元から切られ、まだ青い林檎はところどころ血で赤くなっていた。地面の血をたどると瀕死のお婆さんがいた。
私が急いでお婆さんに近づいて治療をしようとしたが無理だった。お婆さんの傷は深かった。臓器を貫かれ、この傷は癒えない傷だった。
この傷には見覚えがあった。お婆さんは最後の力を振り絞って、私に召喚した本当の意味を教えてくれた。
「イリヤ様を悪用しようとしている組織があります。私たちはその組織からイリヤ様を守ること、そして前述べたように私たちの罪償いです。.....ごめんなさい。イリヤ様ごめんなさい。もう私は...」
息を引き取る前にお婆さんは私にまだ青い林檎を渡してきた。それを渡すとお婆さんは満足したかのように笑顔になり息を引き取った。
私はただ普通の少女として生きたかった。この人たちと仲良く戦いとは無縁の生活を送りたかっただけなのに.......運命はそんな私を許してくれなかった。
私は許さない。この事件の犯人も私を許してくれない運命も。
私は林檎の木を抜けて山の斜面にある広場へ向かった。前のように。ここから広場まではすぐついた。
「出てこい。私はお前を許さんッ!!」
「まぁ、そうカッとなるなって、ゼロさんよ。...お久しぶりだねゼロ。あの時は名乗り忘れていたね。私はルシファー500年ぶりかな?」
私を殺したや奴はそう名乗ったのだった。私は許さない。こいつは私が殺す。
「貴様。何故500年も生きている。」
「あん?簡単な話だよ。貴様の亡骸を食った。.....な、簡単な話だろ?」
そういうことか。神から授かった10の権能、私を食べたことで奴の本能が望んでいる権能の1部が奴に与えられたのだ。
奴は500年生きている。身体はだいたい20歳前後で成長が止まっていることから私の条件付きの不死身の権能が与えられた様だった。
私を食ったということは奴の強さは格段に違うはずだ。神に作られた私を食べたことで奴はすでに人間の領域を超えている。神に近い存在になっているはずだ。
でも、攻略法は必ずある。だから何が何でも殺す。私から全てを奪う貴様は.....ここで死ねッ!!
「懐かしいね、ゼロ。また君を殺してあげる。君にはまだ権能はあるのだろう?私のゲイボルグは癒えない傷を負わせる。だから君は不死身の権能は役にたたない。今回も前のように……死ね。」
「ふっ。笑わせてくれる。死ぬのは貴様の方だルシファー。私から全てを奪う貴様はここで私自ら殺す。」
「他の村の人はどうした。」
「みんな仲良く死んだよ。無様にね。」
私の魂が許さないといっている。奴を殺せと。
「ゲイボルグ・オルタナティブッ!」
「クリスタル・プリズンッ!!」
ゲイボルグがくるであろう道に私は氷の壁を作った。
「そんなの効かんわッ!!何にも成長しないな貴様はッ!!」
ゲイボルグが赤黒いオーラを纏って一直線に飛んできた。ゲイボルグは氷の壁を簡単に破壊しさらに突き進んできた。壊された氷は砕けて地面にばらまかれた。
「残念だったな、ルシファーよ。貴様の負けだ。.......我が権能は時空をも歪めるッ!!第1の権能ワープホール発動ッ!」
私の目の前の時空が歪みゲイボルグを黒いワープホールの中に飲み込んだ。これで邪魔は排除した。.........あとは殺すのみ。
「くそっ!だがなッ!ゲイボルグはセットなんだよ!!」
ルシファーはもう一つのゲイボルグを取り出した。ゲイボルグは1メートルを超える赤い色の槍。まだ、もう1つあるとは。……でもやることは変わらない。
「クリスタル・フィールドッ!」
野原は一瞬にして氷に覆われた。
「貴様はいてはいけない兵器なんだよ!!」
私は魔法によって作った剣でゲイボルクとの近距離戦を対抗していた。
たった、一瞬。奴に隙ができればいい。
「死ねぇー!兵器ッ!!」
私はあえて槍を体で受け止めてた。
「この程度では死なぬ。」
ゲイボルクは肩に刺さり大量の血があふれていた。……でもこれでいい。神の兵器である私はこの程度では死なない。故にこれで、奴の隙を作ることができた。
「貴様の負けだ。我が権能解放。……穿てッ!ゲイボルクッ!!」
私の権能はワープホールによって消すものではない。ワープホールに留めておけるものだ。それを解放し、超至近距離でゲイボルクを奴の地面から放った。
「ぐはッ!?」
奴は一瞬にして下がったが放ったゲイボルクは奴の肩を貫き致命傷を与えた。
奴の判断は正しいかった。タイミングも完璧。確実に避けれていた。…が、氷に覆われたこの地面ではどんなにタイミングがよくても少しだけ遅れる。これが奴の運命を左右した。
死を意識し始めた奴は逃げようとするが氷と自分の血で覆われた地面では滑って逃げられなかった。
「貴様の弱点は不死身になり死の恐怖を克服したことで、徐々に死に対する意識が薄れていったことだ。故に貴様は死が近くなったことで自分をコントロール出来なくなっている。」
「貴様によって生まれた我が最悪の魔法。…これは我が憎悪によって磨かれた禁呪。……喰らえッ!!ライトニング・フレア・デュヘインッ!!」
「ぐはぁぁぁぁあ!?」
ルシファーは私の禁呪によって勢いよく燃えた。我が禁呪の炎は消えることない憎悪によって作られた炎。だから、奴も同じだけの苦しみを与える。
炎をあとにした私は奴の部下20名ほどの前に出た。そして、お婆さんに貰ったまだ青い林檎をかじった。
……まだ熟れていないから苦い。まずい。でも、自然に涙が出た。また私は救えなかった。私の大事なものはみな手からこぼれ落ちていってしまう。もう、私は何も救えないのだろうか。
……いや、まだやることはある。私を守ってくれた村の人たちにもまだ死ぬ訳にはいかない。
私はまた林檎をひとかじりしてからルシファーの部下たちに名乗った。
「我が名はゼロ。全ての始まりと終わりを司る魔女……ゼロの魔女であるッ!」
こうして今後災厄の化身と呼ばれるゼロの魔女が誕生したのだった。
これで番外編は終わりになります。
いままでのに比べたら長かったですね。読者の方お疲れ様でした。
今回はゼロについて深く掘り下げてみました。いかがだったでしょうか?面白いといって頂けたら幸いです。
次回からはまた本編に戻ります。これからも幼女LIFEをお楽しみください✩°。 ⸜(* ॑ ॑* )⸝
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