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 ガチャリ…


 ギー…ギー…バタン!


 何もない部屋…誰もいない部屋…


 今度ばかりはベッドの奥側を覗いてみても誰もいなかった。

 そして壁面のひとつに、ハンガーに洋服だけが吊るされていた…それは悪い冗談みたいだった、あたかも幽霊である『私』がそこに浮かんでいるかのような…服装は同じく普段着のシャツとズボンであった…


 二つの可能性の同居は許されない…


 先程の彼の言葉…

 ここは誰か居るのか…それとも私だけでいいのか…


 躊躇したが、しかし私はこの部屋を出ることに決めた。


 やはりこのぶら下がった普段着が、幽霊のようで気味が悪かったのかもしれない。


 ガチャリ…


 ギー…ギー…バタン!


「!!」


「ん?」


「…あ…あなた…」


「ああ、もう迷い込んでしまいましたか?」


「私は別のドアを選択した…なのに…」


 部屋に居たのは最初に遭遇した彼であった。

 

「私は戻った訳じゃない!」


「だから言ったでしょう、戻ることは出来ないと」


「では何故!戻ることが可能なら、私は以前の私の部屋へと戻りたい!」


「まあ…辿り着く先はあるさ…どこかにね、それが人生ってもので」


「ドアを遡ればいいんだろう、ならば…」


「やめて置きなさい…」


 ガチャリ…


 私は興奮して彼の制止を聞かなかった。

 

 ギー…ギー…


 そして現れたのは…


「!!!」


 崖……


 深淵にまで通ずるくらいの深い深い渓底となっていた…


「ドアを戻ることは出来ない、だってそこは行き止まりだからね…」


 徒労感が襲った…なぜだろう?

 これ程長い間単調な暮らしを続けていた…ひとつの変化が刺激となり、これまでの集積に一気にこたえてしまったというのか?

 それは自分でも抱えきれぬ謎の感情であり、軈ては衝動へと変わっていった……


「行き止まりというのなら、どうなっているのでしょうかね?」


 私は口調を強め彼に言い放っていた…

 同時に私は身を投げ落とした……


 風圧!


 私は無限とも思えるような長い転落を身に受けながら…知らない間に意識を失ってしまっていた……


 ……ドシャッ!!! 

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