ユニーク能力(笑)
投稿が遅れて申し訳ありません。
俺達は今街に向かっている。
近くにあった道をマリーを引きずりながら歩いているので全然進まない。
私は神なのよとか信仰はどうしたのとか色々うるさいがそんなものは知らん。
しかしここで緊急自体が発生した。
なんか気持ち悪いまだら色の蜘蛛が後ろにいたのである。
ちなみに巨大だ。
思わず、
「あっ、どうも」
「これはこれはご丁寧に」
というやりとりが生まれたが数秒の沈黙の後おぞましい雄叫びをあげながら変な粘液を飛ばしてきた。
それを見た俺は最善の手を打ってから戦略的撤退をすることに決めた。
「マリー隊員!スクランブルだ!目標、まだら色のデカイ蜘蛛!私は街から援軍を呼んで来る!暫く時間を稼いでくれ!」
マリーは非常事態を悟ったのか真剣な表情で了承してくれた。
チョロい。
言葉通り俺は街に救援を呼びに(戦略的撤退)道を駆け出した。
俺が地味に地球の陸上記録を上回る走りを見せてから5秒、状況を把握したのか顔を赤くしたり青くしたりしながらマリーが追いかけて来た。
最初はさながらサッカーのゴールキーパーのような構えをとっていたので不覚にも笑ってしまったが…。
「ゴキっ!騙したわねっ!幾ら女神だからっていても置き去りにするのは人間としてどうなのっ!?」
……流石にちょっと悪い事したなとは全く持って思わず俺は次なる策を考えた。
「置き去りにしてごめん。今度はもっといい案がある!」
危機的状況に陥って走っているので声が必然的に大きくなり俺の声は絶叫しているように聞こえたかもしれない。
「なによーっゴキ!私を騙そうとしているねっ!もう騙されないわよっ!私は天才でやれば出来る子って言われてきたんだからっ!」
……なるほど残念な感じはよく伝わった。
まだら巨大蜘蛛は後20m後ろまでに迫っている。
マリーはいつの間にか先に走った俺と並走していた。
残念でも神だ。
少し見直した。
「大丈夫だ!これからその方法を言うからよく聞け!二手に別れて逃げるぞ!どっちに蜘蛛が行っても恨みっこ無し!どうだ!というか撃退出来ないのっ!?」
「無理よっ!私の力がリセットされたみたいだわ。信仰が集まればすぐにこんな蜘蛛ぶっとばせるのにっ!ゴキの提案だけど乗ったわ!私は日頃の行いが素晴らしいからゴキの方に行くはずだから!」
盛大にフラグを建てた上に走りながらのドヤ顔である。
了承して貰ったのならそんな些細なことはどうでも良い。
「分かった!ツッコミたいことが色々あるが取り敢えずこの状況をなんとかしよう。せーので二手に別れるぞ!せーのっ!」
俺達は二手に別れて逃げ出した。
蜘蛛島太郎(仮名)は案の定フラグを盛大に立てたマリーの方に向かって行った。
「こんなのおかしいわよーっ!やり直しを要求するわ!っ危なっ!粘液を吐くなぁーっ!ゴキー!チェンジよっ!」
上手く行って良かった。
何故俺が一見リスクがでかいような賭けに出たのか。
理由はマリーの姿にある。
俺は最初にマリーを見た時神々しいと思った。
あの残念オーラを見て何故そんなことを思ったのか。
理由はただ一つ。
周囲に光のオーラとキラキラした粒子が漂っていたからである。
俺は威厳が無いためであろうと自己完結することにした。
どこかのエセナルシストキザ若頭よりキラキラしていたので蜘蛛島太郎が興味を示すのはマリーであると俺は思ったからこの提案をしたわけである。
つまりこれの賭けは、ほぼ俺の勝ちが確定していた訳である。
俺はマリーにエールを送ってやることにした。
「流石日頃の行いが良い奴は違うなぁ。アドバイスするけどその無駄なキラキラをやめた方が良いと思うぞ!グッドラック!」
マリーは500m先から、
「むきーっ!!」
怒りを露わにしていた。
しかしスルーだ。
すでに対岸の火事である。
適当に街を目指すことに……目があった。
豚見たいな二足歩行の生物と。
俺は見なかった事にしてそのまま駆け出した。
気付いたら遠くに見えていた城壁が近くにあった。
豚男(仮名)はついの間にかいなくなっていた。
諦めたようだ。
門へ入ろうとする人の列に並びつつ息を整えることにしよう。
その時俺の背後からこの世の物とは思えない声が聞こえて来た。
「クハァーフハァーツハァー死ぬ……ハァーあんのゴキブリ…」
粘液塗れのマリーがいた。
とても女神とは思えない(元から)
列の人達はドン引きである。
門の衛兵も見なかったことにしたようで鬼気迫るオーラでさっきまでの3倍の速度で仕事を始めた。
某少佐が乗っている機体か。というツッコミが入りそうだ。
キラキラオーラがない今マリーはただの残念粘液貧乳女でしかない。
「その顔ゴキね!お前わぁー!」
俺はここでマリーの忘れていることを言ってやることにした。
「恨みっこ無しと言う話だったはずだが」
マリーは狂犬のような表情で押し黙った。
「そい言えばなんでゴキもボロボロなのよ」
その質問はもっともである。
何故なら蜘蛛島太郎はマリーの方に行ったからである。
「あれだ。あれが(豚男)これで(追っかけてきて)それ(今の状況)なんだ」
マリーは理解してくれたようだ。
「お互いの事を分かり合った事だし、街に入ろう」
マリーは納得した様子で了承した。
並んでいる列の人々は一斉に道を空けた。
「「……」」
「行こうか」
「そうね」
ボロボロの俺とヌメヌメのマリーは爽やかな笑顔で衛兵の元まで歩き出した。
街に入った。
家々はレンガ作りと木造とで雑多な感じだ。
屋台などが出ており非常に活気があり様々な人種で入り乱れている。
街の中心部には白亜の城が聳え立っているのは圧巻だ。
門に並んでいる時は疲れていて気づかなかったが、獣人や小人みたいな髭もじゃ、耳が尖っている人、などファンタジーに本当に来たということが実感される。
既にファンタジーに沢山あっているが(主に生物関連)感動出来たのがこれが初めてだ。
マリーも楽しそうだ。
既に粘液は無くなっている。
衛兵達のサービスのお陰だ。
誰も毒々しい粘液粘液を取ろうとしなかったのでマリーがブチ切れてお湯とタオルと通行証を強引に獲得!
服はちゃっかり不思議パワーで乾いている。
おかげで無一文でも街に入れた。
マリーに感謝だ。
流石女神である。
もう一度言うがマリーは女神なのだ。
決してモンスタークレーマー絶壁女ではない。
「衛兵達によれば身分証は大陸連合組合で登録するか役所に行って市民権を獲得すれば良いらしいが……市民権は一年以上この街で暮らさないと無理みたいだ。組合に行こう。」
マリーも了承したので組合に行こうとしたが…場所を聞くのを忘れた。
そこで俺は道行くマダムに聞いてみることにした。
おっ第一マダム発見。
「お時間取らせて申し訳ないです。組合の場所はどこか分かりますでしょうか?」
するとマダムは指を差し、
「あの角を右ザマす」
「「……」」
「ありがとうございました」
……なかなかにキャラが濃い恰幅の良い御年配のマダムはずっしりと去って行った。
俺達はマダムに言われた通りに右に曲がった。
すると要塞のような大きな建物があった。
看板には『大陸連合組合イスイ支部』と書かれている。
あれ?何故読めるんだ。
「おい、マリーなんか知らない文字が「あの衛兵街の名前も教えず……」
ブツブツ言っている……怖い
「何か言った?」
「イエイエナニモイッテイマセン」
入るのに少し勇気のいる建物だが俺達はドアを開けた。
そこには様々な姿をした人々でいっぱいであった。
鎧を着ている戦士系の人、ローブを着ている知的な人など様々だ。
ちなみにマリーはピンクのローブで俺は黒スーツ姿である。
場違い感が半端ない。
呑んだくれている者も居たが情報収集の為に呑んでいる人の方が多い様に見える。
俺達は受付らしき所にいる茶髪のお姉さんの所に行った。
「何か御用でしょうか?」
小動物ぽい可愛らしさのある人だ。
きっとファンがいるだろう。
「衛兵の方に登録すれば身分証が手に入ると聞いたもので…登録をお願いします」
「畏まりました。犯罪などを犯すと没取されますのでご注意ください。お二人供お名前をお願いします。」
俺達は普通にフルネームを言った。
そして拍子抜けするほどあっさり登録は終わった。
「お二人共ご自分のステータスはご存知でしょうか?すぐ近くに教会があるのでオープンの魔法を授けて貰う事をお勧めします」
やっぱりあるのかステータス。
「色々ありがとうございました」
可愛らしいお姉さんは笑顔を見せて、
「イスイの街へようこそ」
衛兵も言ってくれなかった言葉を言ってくれた。
俺はこの人のファンになることを決めたのであった。
教会の前まで来た。
しかしここで問題がある。
教会が二つあるのだ。
煌びやかな地球の物と比べてかなりセンスの悪く巨大なゴシック様式の教会。
派手過ぎず堅実な感じが漂うロマネスク様式の教会。
ゴシック様式の教会にはどこか既視感を感じるので迷わすロマネスク様式の教会に入ろうとしたがマリーに抵抗された。
「あっちのスタイリッシュな方が良いわ!」
俺は無視してロマネスク様式の教会に入った。
教会の中はマリーの謁見の間より神聖な感じがする。
そこそこの人数の人が教会で祈りを捧げていた。
俺と空気を読ます走って来たマリーは目に付いたシスターさんにステータスをどこで測るか聞いてみることにした。
「あのステータスはどこで測るのでしょうか?」
シスターさんは女神みたいな笑顔で、
「私が測れます。少々お待ちください」
と言った後奥に行った。
……何やら視線を感じる。
あのシスターさん、俺が見た中で一番の美人でスタイルも肉感的で人気があるだろうと思っていたがまさか素人の俺に感じ取れる程の殺気を出すほどのファンがいるとは思わなかった。
辺りを見回していると世紀末なモヒカン共と目があった。
しかし女神シスターさんが戻って来た。
すると途端にモヒカン共は顔を真っ赤にして照れ出した。
世紀末モヒカンが照れるな。
しかし美人だ。
明らかにやばそうなモヒカンが照れるのがわかるぐらい美人だ。
シルバーブロンドのロングストレート。
教会に来ても男なら必ず邪な感情を抱くはずである。
正直これが地球なら一目惚れだ。
今は落ち着いたといえよく現実を理解していないので惚れなかったが…。
オープンの魔法はここで行使出来るようである。
「ゴキの体は私が復元したのよ!チートよ!チート!」
……不安が増して来た。
前科があるマリーゴールド(本名)に言われても不安しか感じない。
「マリーゴールド。フラグを建てるな。お前の名前長いからマンゴーで良いな」
「良くないわよ!?私を南国のフルーツにするとはどういうつもりよ!?」
どういうつもりもこういうつもりも無い。
あるのは只々ゴキと呼ばれた仕返しである。
こうしているうちに準備が出来たようだ。
「我が神シルバー様の祝福あれ!」
体が光った。
マリー改めマンゴーは何故か露骨にいやそうな顔をした。
「終わりました。オープンと言って見てください」
マンゴーはいち早くステータスをオープンした。
【名前】マンゴー
【レベル】1
【種族】女神
【職業】女神(堕天中)
【生命力】不死
【魔力】1000
【力】500
【頑強】測定不能
【敏捷】500
【知能】−999999
【信仰心】天上突破
【運】−999999
【称号】駄女神、悪運、最厄、自称美的センスの塊、ゴールド教主神、やっても出来ない子、神界女神公立学校中退、自分を信仰する女神。
「「……」」
シスターさんはニコニコしているようで気付いていないが俺は見てしまった。
バッチリ隅々まで見てしまった。
マンゴーは凍りついている。
というかステータスシステム作ったの誰だ。
俺の番である。
ギャグ要因が1人いると言うことはそこまで酷いステータスではないだろう。
俺は少し安心しながらオープンした。
【名前】ゴキ
【レベル】1
【種族】人間?
【職業】ゴキ
【生命力】1
【魔力】500
【力】30
【頑強】1
【敏捷】30
【知能】500
【信仰心】0
【運】500
【称号】巻き込まれた人間?ゴキブリ以下、元ラッキーマン、元資産家、やれば出来る子、神は死んだ。
「「「……」」」
今度はシスターさんも見ていたようだ。
ゴキブリ以下の下りで人間を見る目では無いような目で見られた…
ヤバい、ファンクラブ入ろう。
カエ君の気持ちが分かってきた。
後であのモヒカンどもに聞かなくては。
シスターさんは正気に戻ったみたいで血相を変えて話かけて来た。
「生命力1!?いけません安静にしてください!」
俺は何故だろうという気持ちでいっぱいである。
人の命は1つである
不思議なことは何もないではないか。
「ゴキさん転ばないように気をつけてくださいね!死にますから!?」
ん?どういうこと?
「手を切ったり打ったりしても死にます!息切れしたら死にます!風邪を引いても死にます!よく生きてますね…」
え、何それ怖い
ゴキブリって生命力ヤバいじゃん。
何で低いの、もう死にかけじゃん。
俺は気が遠くなり始めぶっ倒れた。
最後に感じたことは柔らかな感触とシスターさんの香りであった。
……どうやら気を失っていたみたいだ。
無理もない。
いきなり異世界に連れて来られてたらゴキブリ(人間)になってましたとか。
俺のキャパはそこまででかくない。
どうやらここは教会の中ほ一室のようである。
マンゴーは難しげな顔で唸りながらステータスを見つめていた。
マンゴーはこちらに気付いたようで、
「起きて早々悪いけどゴキのせいで私の華々しい名前が常夏のフルーツになったじゃないの!どうしてくれるの!?」
奇遇である。
俺も起きて早々言ってやりたい事があった。
「お前が言うな!?俺の名前がいつの間にかゴキになってるじゃないか!?…まぁいいよ、名前くらいなら。良くないけどあだ名だったし。けどステータスは別だ!誰がステータスまでゴキブリにしろていった!?まぁいいよ、ゴキブリステータスくらい。けどなんでゴキブリ以下なんだ!?」
俺は叫んだ
某ドラゴンなボールでクリクリ頭が死んだ時のショックを表す言葉より大きく叫んだ。
きっと今の言葉を簡単に訳すとこうなるだろう。
ゴキは激怒した、と
某走って『メロ』ってなった『ス』のような表現である。
これに対してマンゴーは、
「あれよ、ちょっと、あれ(魔法)がこれで(暴走して)それに(おかしく)なったのよ」
なるほど理解した。
どうやらこのフルーツにも思うことはあったようである。
「過ぎたことはしかたがないことはないけれど、まああれだ、お互い不運なだけだ。問題はこれからどうするかだ」
マンゴーも何時になく真剣だ。
俺は嬉しい。
こんなに成長してくれて。
付き合いはほんの数時間であるが駄目な子供が成長するのをみた親の気持ちを俺は知った。
「組合で仕事を受けられるらしいからそこで仕事して金を稼ごう」
マンゴーもこれなら乗り気のはずである。
こんなに真剣なのだ。
きっと将来の事を考えているに違い無い。
「私は嫌よ。なんで私が働かなくちゃならないのよ。私は女神よ!I'm女神なのよ!ゴキが働くのが当然でグハァァァ」
俺は無言で立ち上がり窓際にあった花瓶でマンゴーの後頭部を殴りつけた。
そして俺は窓を明け足跡をつけて外部の犯行を装いつつ何気ない顔で戻りそのままヘッドで寝た。
俺は何も知らないし何もしていない。
OK、完璧だ。
せめてこの状況から抜け出すことを目標に異世界を生き抜くことに決めた。
その日からイスイの街シルバー教会で奇妙な噂が流れ始めた。
曰く、絶叫する男の声とこの世の物とは思えない女の声が聞こえると言うのだ。
これをきっかけにシルバー教会七不思議が生まれるのであった。
部屋の惨状をみた女神シスターは勿論気絶した。
後に彼女はこう日記にこう記している。
『あれは開けてはならないパンドラの部屋だった』
文章に不備などありましたら報告してくだされば。