出会い
ぺしぺし、と頬をはたかれる感触に意識がふっと深い闇の底から蘇る。
「あなた大丈夫?顔真っ青だけど」
意識がはっきりするまでには少しだけ時間を要した。それだけ、とても長い夢をみていたようだ。
目の前で誰かが心配そうにわたしに向けてしきりに何かを言っている。
わたしに向けられた言葉なのに、どこか他人事のように意識はまったく違うところにあった。
先ほどまでみていた夢をどうしても忘れてはいけない気がしていた。何かを思い出さないと、そう焦る心とは裏腹に、結局何一つ思い出せるものはなかった。
「ここらへんじゃ見ない顔やな。……人攫いにでもあったんやろか?」
一緒にいる”女性”がまさか!と声をあげる。
不思議な言葉を話す小麦色の肌をした鋭い目つきの男は、わたしの顔を覗き込みながら、隣の”女性”に目配せをする。
「あなた、話せる?どこか痛むなら医者を呼ぶけど……。あたしの言ってること、わかる?」
返事をしようと口を開きかけて、初めて喉の違和感に気づいた。声を出そうと試みるが、出たのはヒューヒューという微かな息遣いのみ。
目の前の2人にぱくぱくと口を動かし、喉を指差して声がでないことを伝える。
「ほな、とりあえず一旦宿に戻ろか。この辺りは夜になると物騒やし」
「そうね。そうしましょ!カイザー、あたしの荷物お願いしていい?この子、足を怪我してるみたいだからアタシが運ぶわ」
申し訳なくて、ぶんぶんと勢いよく頭を横にふる。
しかし彼女は何てことないようすで、軽々とわたしを抱き上げてしまった。
視線が近くなり、戸惑いながらも彼女の肩に手を置くと、ニッと口角をあげ、綺麗な笑みを浮かべる。
長い綺麗な黒髪が、彼女の美しさを際立てていた。
び、美人さん……!
同性なのにドキドキしちゃう。
「ん、いい子。しっかり掴まっててね?」