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「んん……?」
頬を優しく撫でられるような感覚がして、重たい瞼をゆっくりともちあげる。
この人、誰……?
知らない男の人がにこにこしながら、私を覗き込んでいる。
「いや〜驚いたなぁ。寝顔もかわいかったけど、起きたら更にかわいいね。天使みたいだ!きみ、名前は?」
「え、あの……、あなたは…?」
「あぁ!申し訳ない、俺としたことが。きみがあんまり可愛いからすっかり挨拶するのを忘れていたよ。失礼、俺の名はレオン。世界を旅する旅人さ」
「レオン?わたしはシャロンていうの。……わたし、村以外の人に会うの初めて」
「シャロンか。名前までかわいいんだね。そうか、シャロンは村に隠された大事なお姫様って訳か」
レオンと名乗るその男は、わたしの言葉にたいそう驚いたようすだった。
よくわからないことを言っているけど、特に悪意は感じられない。
わたしは尚もぼんやりしながら彼を見上げ、無意識に右眼にしている眼帯へそっと手を伸ばした。
「ケガ、しているの?」
「あぁ、これ?いや、これはお守りみたいなもんでね。何でもないんだ」
綺麗な装飾が施されたそれは、レオンの言う通り、ただの眼帯には見えなかった。
右眼に伸ばした手を包み込むように、レオンはわたしがそれにさわるのを優しく止める。
触られるのは嫌だったのかな……。
お守りっていってたもん、きっと大事なものなんだよね。勝手に触られたら嫌だよね。
そこまで考えたところで、ハッとする。なぜさっきからわたしはレオンを見上げているんだろう。
「ご、ごめんなさい!」
彼の膝の上勢いよく起き上がろうとすると、まだお酒が残っているようで、目の前がチカチカした。
「急に起き上がらないほうがいいよ。ゆっくり、ほら」
「……ありがとう」
肩を支えられて、ようやくしっかりと起き上がることができた。
たしかジェードのところに行こうとリリア達と別れて……。そのあとの記憶がぷっつりと抜けてしまっている。
「光と音楽に誘われて森を歩いてたら、君が倒れていたんだ。眠っているだけみたいだったから、起こさずにそっとしておいたんだけど」
起こした方がよかった?と人懐っこい笑みをむけるレオンをあらためてまじまじと見つめた。
辺りが暗いから見えづらいけど、この村では見かけない金色の髪にとても整った顔立ちをしている。
まるでどこかのおとぎ話の王子様みたい。
「わたし、誕生日パーティに浮かれて、お酒を飲みすぎて眠ってしまってたみたい…」
「誕生日パーティ?きみの?」
「そう、この村では17歳は特別なの。だから村全体で今日は夜通しパーティをしているのよ」
「そうか、そりゃいい時に来たな。パーティは大好きだ。おめでとう。ねえ、俺もきみの誕生日を祝いたいんだけど、まずは村長に挨拶したいんだ。案内してくれる?」