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魔界の少女  作者: YossiDragon
第三章:六月~七月 体育祭『変態軍団アスメフコーフェッグVS体育祭実行委員会』編
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第四十七話「江口久熊と星空叶亞の関係」・3

《うむ、そうだな……では入らせてもらおう》


 自分の家だというのに何故か少し遠慮気味に久熊くんは脱衣所へと向かった。




 それから十五分が経過したくらいに、久熊くんは戻ってきた。


《……ふぅ、なかなかいい湯加減だった。にしても、赤の他人である女子が入った後の風呂というのもまた格別だな》


《きゃあああああああああああ! この変態っ! 何言ってんのよ!》


《何って……感想だが? いやはや、普段は味わえない体験をさせてもらったよ。こんな体験は今後二度とできそうになかったからな》


《くっ……あなたって人は! それで、まだ制服乾かないの?》


 私は歯噛みしつつ、さっさとこの家から出ていきたいと思い久熊くんにそう問い詰めた。


《うむ、後数分だ》


《何でわかるの?》


《先程ここへ戻ってくる際に見てきたからだ》


 相も変わらずそういうところは抜かりがない。やはりよく分からない男だ、久熊くんは。


《……》


《……》


 話題が途切れてしまい、私と久熊くんはリビングでずっと黙ったままだった。先に髪の毛を乾かすよう促されたので、私は久熊くんの近くでドライヤー片手に髪を乾かしていたのだが、終始その姿を見られていたので何だかすごく緊張した。普通ならば他人――しかも異性に髪の毛を乾かすところなど見られないのだから。

 それを終えると、私は少し熱を逃がそうと丸首の部分を人差し指と親指で掴み、パタパタと風を服の中に送った。今の私は裾の長い服一枚という状態だ。ホントはスカートでも履きたい気分だったのだが、あいにくと男一人の家にスカートなんてあるはずもなく、母親のを貸そうかとも言われたが、サイズが合わないだろうということでやめておくことにした。ちなみに、ズボンを貸そうとも言われたが、下着を履いていない以上それは何だかアレなのでやめておくことにした。


《はぁ……》


 ふとため息をつく私。すると、そのため息に何を思ったのか久熊くんが髪の毛を乾かし終えてドライヤーのスイッチを切ると同時に尋ねた。


《幸せが逃げるぞ?》


《そ、そんなのあなたには関係ないでしょう? ……まだ雨はやまないのかしら?》


《そうだな……》


 私の言葉に久熊くんがその場に立ち上がって窓へと近づき外の様子を眺める。


《どうやらまだまだやみそうにないな》


《そう……》


 途方に暮れる私。服が乾かないと下着もつけられないし、雨が止まなければ家に帰ることも出来ない。何よりも、家に帰っても開いていなければ意味がないのだ。そうだ、もしかすると叶愛ちゃんがいい加減家に到着しているのではと思い、私はふと通学バッグから携帯を取り出した。


《ん? 何をしているのだ?》


《え? あぁ、電話よ電話》


《ま、まさか通報か!?》


《ち、違うわよっ! 妹が先に帰ってるかもと思って確認の電話をしてるだけよ!》


 焦ったように目を見開き挙動不審になる久熊くんに、私は電話の相手が誰なのかを伝える。それを聞いて、ほっと安堵した久熊くんは台所に向かった。それを見届けてから私は携帯電話で妹の叶愛ちゃんの電話番号をプッシュする。


プルルルル……。プルルルルル……ガチャ!


《あ、もしもし叶愛ちゃん?》


〈お姉様? どうかしたんですか?〉


 まるでメイドの様な丁寧な喋り方に相変わらずだな~と感じながら私は状況説明をした。それを聞いて、焦燥に駆られた様子で叶愛ちゃんが私に警告してきた。


〈お姉様、急いでその場からお逃げください! そこは危険です! 相手は変態軍団の現ボスなんですよ!? 何をされてもおかしくありません!! それに、一つ屋根の下に思春期真っ盛りの男女二人だなんて、危なすぎます!! 私が急いでお迎えにあがりますので、急いで外に出てくださいっ!!〉


 余程姉の私が心配なのか、叶愛ちゃんが物凄く心配そうに私の事を気遣うような言葉を述べた。確かにそうだ。ここは変態軍団のトップの家。しかも、二人きりなんていう美味しいシチュエーション。何が起こっても不思議ではない。いやむしろ、先程裸を見られた際に押し倒されてもおかしくなかったのだ。ホント無事でよかった。


《……でも、まだ私の制服濡れたままで》


〈何をおっしゃっているんですか? 制服と自分の身とどちらが大切なのか分かっています!?〉


《それに、服は乾燥機の中で……》


〈か、乾燥機? まさか、服を乾かしている最中なんですか? と、ということは……今、お姉様は……は、裸なんですかっ!?〉


《なっ! そんなわけないでしょう!? ちゃんと江口くんに服を借りてるわ!》


〈で、ですよねー。よ、よかったです……ん? あ、あのお姉様……今、誰に服を借りていると?〉


 私が服を着ていると知って安堵する叶愛ちゃんだったが、即座に次の新たな疑問を感じて問うてくる。


《誰って……江口くんだけど》


 相手の名前を告げる私。すると、その言葉にまたしても叶愛ちゃんが声を荒げた。


〈な、ななっ! え、江口久熊に服を借りているっ!? そ、そんなのダメですお姉様!! 今すぐに服をお脱ぎになってください! そんなの着てたら変態が感染(うつ)ります!! 嫌ですよ、私はお姉様が変態になるだなんてっ!!〉


 まるで病気を感染されるかのような言い方で叶愛ちゃんが言う。しかし、ここで服を脱ごうものならまず肌を晒してしまうわけで、そんな姿を台所から戻ってくる久熊くんに見られないわけがない。そんなのダメだ。


《か、叶愛ちゃん落ち着いて? 私は大丈夫だから……それに、一応服は洗ってあるみたいだし……》


〈ほ、本当ですか? 何か変な臭いとかしませんか?〉


《え? ええと、……すんすん》


 一応臭いを確認してみるが、普通に洗剤の匂いが――と思いきや、誰かの匂いがした。そう、時折匂う久熊くんの――。


《ん? 何をやっているのだ?》


《ふぇっ!? こ、これはその……ち、違うんだからっ!!》


《ふごぉ!?》


 私は思わず顔を真っ赤にして久熊くんの顔面にグーパンをきめてしまった。久熊くんはそれを躱せずにそのままモロにくらい、その場に倒れて気絶してしまった。


〈だ、大丈夫ですかお姉様!? い、今の可愛らしい悲鳴は何ですか!? ま、まさかエロ変態に襲われたんじゃ!?〉


《だ、大丈夫よ……叶愛ちゃん》


――私の痴態を見られて恥辱を感じた私が思わず殴っちゃっただけだから。



 と、心の中で説明しつつ、私は電話の向こうで心配そうにしている叶愛ちゃんに訊いた。


《ところで叶愛ちゃん……今どこにいるの? 私よりも先に学校出てたわよね? 家、開いてなかったんじゃ……》


〈ああ……申し訳ありません、お姉様。実は、帰宅中に家に誰もいないことを思い出して友達の家で待たせてもらっていたんです〉


 それを聞いて私は納得していた。


《そ、そうだったの……。それで、お母様たちはいつ戻るの?》


〈はい、確か……後十五分くらいには〉


 時間を聞いて私は時計を確認する。うん、どうやら遅くなる前には帰れそうだ。


《分かった、ありがとう叶愛ちゃん》


〈いえ、でも……本当にお迎えにあがらなくて大丈夫ですか? やはり、私がそちらに行った方が……〉


《大丈夫よ、心配しないで?》


 余程心配なのだろう。小さい時から叶愛ちゃんは私にべったりだったから、その分私を大事にしてくれているのだと思う。でも、少し過保護のような気もしないでもない。ちなみに、私と同じ体育祭実行委員会の副委員長に叶愛ちゃんがいるのもそういった事が関係している。

 その時、乾燥機が私の服を乾かし終えた合図の音が聞こえてきた。


《服、乾いたみたいだから切るわね? 制服を着たら家に帰るから》


 そう言って私は電話を切った。


《うっ、うぅ……ん? 俺は一体――》


《あ、大丈夫江口くん?》


 私が気絶させたのに、まるでそうではないように振舞う。しかし、久熊くんはそんなこと大して気にもしていないようにその場に立ち上がった。


《乾燥機、終わったみたい》


《ん? そうか……ちょっと待っててくれ》


 さりげなく取ってこいと言っているようにも捉えられるのだが、久熊くんはそれも気にも留めずに後頭部をさすりながら私の服を取りに行った。

 それから数分経って久熊くんが戻ってくる。


《制服、乾いてた? 後、変なことしてないでしょうね?》


 一応の確認のためにと私が尋ねると、久熊くんは一瞬ビクッと体を震わせた。


《な、何の話だ? お、俺は何もしていないぞ?》


 明らかに棒読み……。これは確信犯だ。


《変態っ!》


 久熊くんの手から強引に私の制服と下着を奪い取った私は、それと同時にもう片方の手で久熊くんの頬を叩いた。軽快な音がリビングに響き渡る。

 私は制服と下着を確認し、まずはずっと何も履いていない状態だったのを終えるために下着をつけて、それからブラウスを羽織りボタンを留め、スカートを履く。それからリボンもつけてブレザーを着て制服は完了。後は髪留めを……あれ? 髪留めがない。

 辺りをキョロキョロ見渡す私だが、やはり髪留めがない。髪の毛を結んでいるリボンもない。どこに行ったのだろう?

 と、その時、探し物をしている私の視界に何かが映った。それは、私の探している物をヒラつかせている久熊くんのドヤ顔だった。


《お嬢さん、あなたが探している物はこれですかな?》


 などとまるで芝居めいた口調で尋ねてくる久熊くん。


《か、返してっ!》


 私はバッとさっきの制服を奪い取った時と同じ要領で動いたが、今度はあっさりと躱されてしまった。どうやら、相手も学習したようだ。


《ふっふっふ、そう何度も同じ手に引っかかるほど俺も馬鹿ではないぞ、星空叶亞さん?》


 その言葉に私は奥歯をギリッと鳴らす。何とかして取り戻さねば! そして、ここからさっさと退散して自宅に戻るのだ。


《私、そろそろ帰らないといけないの! だから早くそれ返して!!》


《ふっ、ならば条件だ》


《え?》


 何かを企んでいるかのような不気味な笑みを浮かべる久熊くんに、嫌な汗を浮かべる私だったが、向こうから来た条件内容はあまりにもどうでもいいものだった。


《懇願しろ》


《は?》


《だから、髪留めとリボンを返してくださいお願いします、江口久熊様! と、そういうのだ!!》


 何でそんなことをしなければならないのだろう? と思いつつ、私は嘆息して言った。


《髪留めとリボンを返してくださいお願いします、江口久熊様》


 私は何の感情も含めずに、そう抑揚のない口調で言った。すると、納得のいっていない久熊くんがムッとして私を叱責した。


《違う! もっと感情を込めて懇願するんだ!! 君は人に物をねだったりする時やサンタさんにお願い事をする時にそんな態度で言うのか!!》


 何で怒られないといけないのかと不思議に思いつつ、私は言われたとおりにもう一度同じセリフを口にした。今度はアヒル座りをして、少し胸を強調するかのように前に突き出し、片手を太ももの間に置く。それから眉毛を八の字にして目を潤ませ、もう片方の手を軽くグーにして口元に添えお願いする。


《お願い、江口くん……その髪留めとリボンがないと私……帰れないの。だから、返して? お・ね・が・い》


 今までで一番恥ずかしいセリフだと思う。ここまでの恥辱はない。

 一方、相手――久熊くんの反応はというと……目をオロオロと動かしたかと思うと、顔どころか耳まで真っ赤にしてそれから大量の鼻血を吹き出してその場に倒れた。


《お、おのれ……何という破壊力! くそっ、さすがは星空叶亞さんだ。くっくっく、これはますます体育祭本番が楽しみになってきた!! いいだろう、約束通りこの髪留めとリボンは返そう!》


 そう言って久熊くんは私に髪留めとリボンを返した。私はそれを髪の毛につけると、鏡で確認し異常がないことを再度確かめてから通学バッグを手にとった。


《ん? 帰るのか?》


《ええ。妹もこれから帰るみたいだから……。あっ、でも……雨がまだ降ってるわね》


 玄関扉を開けて空を見上げてからそう呟く私。すると、久熊くんがスッと何かを私に差し出した。それは一本の傘だった。


《え、いいの? でも……》


《また今度返してくれればそれでいい》


 遠慮してもどうやら受け取るつもりはないらしい。ならば、せっかくだからと私は受け取っておくことにした。そして、その傘をさして振り返る。


《じゃあ、さよなら。明日返すから》


《ああ》


 こうして私と久熊くんはそこで別れた。その時、私は一つの不安が生じていた。久熊くんの顔がずっと赤らんだままだったのだ。目もどこか虚ろだった。最初はてっきり私と一緒にいたせいで気が動転して興奮が収まらないのかとも思ったのだが、その可能性は次の日には消えていた。というのも、ある人物が姿を見せなかったのだ。


《え? 江口くんが……風邪?》


 私は江口くんのクラスの担任の先生からの言葉に仰天していた。やはり昨日のあれは勘違いではなかったのだ。まさか本当に風邪をひいてしまうなんて。間違いない、先日の雨に濡れたのが原因だ。

 こんなことならば、是が非でも久熊くんを先に風呂に入れてあげるべきだった。


《大丈夫か、星空? にしても珍しいな。江口とは敵対関係にあるんじゃなかったのか?》


《そ、それは……》


 確かにそうだ。私は体育祭実行委員会の委員長。対して久熊くんは変態軍団アスメフコーフェッグのボス。私たち二人は互いに相容れない状態にいるのだ。

 私は担任の先生にお辞儀してその場を後にすると、クラスへと帰還した。




 その日の放課後、私はあることを決心してある場所へと赴いた。

ピンポーン♪

 玄関チャイムの音。それから扉が開いて、ある人物が姿を現す。


《あら……どちら様? その制服、ウチの子と同じ学園の制服ね》


《あ、こんにちは。私、江口くんに、その……先日お世話になりまして。それで、あの、傘をお返しに……》


 私は少ししどろもどろになりながら説明をした。最初は少し戸惑っている様子の久熊くんのお母さんだったが、傘を見てすぐに納得の声を漏らす。


《ああ……あなたね? 昨日うちの息子が言っていた女の子は》


《え? あ、はい……。それで、お見舞いに……》


《わざわざありがとうね? さぁ、あがって?》


 優しい笑みを向けてくれる久熊くんのお母さん。私は軽く会釈して玄関から家へとあがった。これで二日連続ここへとやってくることになったわけだが。


《息子は二階だから。多分寝ていると思うけど、起きてたら話してあげて?》


《はい》


 私は、ゆっくりと階段をあがっていき、久熊くんの部屋と思われる扉をノックした。


《ゴホッ、どうぞ》


 部屋の主に入室の許可をもらい、私は部屋の中に入った。そこは私の部屋よりも物凄く狭く、ベッドやタンスがほぼ部屋の面積の多くを奪ってしまっていた。


《わざわざ、来てくれたのか? ゴホゴホッ!》


《だ、大丈夫? だからあれほど早く風呂に入るように言ったのに……》


《ははは、まさか馬鹿が風邪をひこうとはな……》


 自身を小馬鹿にしながら久熊くんが外を見る。

てなわけで、何だか如何にも恋愛ムードな感じで三部が終わりましたが、全く持って内容的には体育祭の関連じゃないような感じになってきてます。

一応四部めで体育祭のことについても触れるので多分大丈夫だと思います。また、今回四十七話は一気に書き上げるのではなく、間に日をまたいでますので、途中途中で口調とかが変になったりしている可能性があります。

では、引き続き四部をお楽しみください。

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