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魔界の少女  作者: YossiDragon
第三章:六月~七月 体育祭『変態軍団アスメフコーフェッグVS体育祭実行委員会』編
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第四十三話「体育祭に向けて」・1

 いつものようにやってくる朝……。

 梅雨を越えて夏がやってくる時期。


「呼んだ?」


 露さんが俺の顔を覗き込んでくる。つゆはつゆでも“露”ではなく“梅雨”だ。まぁ、ジメジメと鬱陶しいのは同じだが。


「何か悪口言われてる気がするんだけど……気のせいかしら?」


「気のせいですよ」


 首を傾げる露さんに、俺は満面の笑みで返した。にしても、なかなか勘の鋭い人だ。人の心まで読んでくるのだから、末恐ろしい。

 ちなみに場所は俺の家。

 俺は現在、テラスから庭を一望し、足を投げ出して空を見上げている。


「ああ……飛んでみたいな……空」


 俺は遠くを見つめるようにそんなことをふと呟いてみた。すると、霄がそれを聴いていたのか、急に妖刀『斬空刀』を振り下ろしてきた。


ジュンッ!!


「ぬわぁおッ!!!?」


「ちっ……外したか」


「うぉおおい! ふざけんな、何人を殺そうとしてんだテメェは!!」


 冷静にそう口にする霄に、俺は素早くツッコむ。


「いや、空を飛びたいって言うから……望みを叶えてやろうとな」


 刀を鞘に納めながら、霄は不敵な笑みを浮かべて答えた。


「いや、死にたいって意味じゃないよ? 実際に空を飛んでみたいって……」


 手を振りながら俺は必死に霄に説明した。指切りの件といい、霄は誤解しやすいタイプのようだ。


「心配ない響史。死ねば幽霊になって空を飛べる。この人間界を鳥瞰出来るのだぞ?」


「いやいやいや、幽霊になってじゃなくて、人間のままで見たいんだよ!!」


 まったく、相変わらずの霄のペースに俺は一気に気力を奪われる。


「どうかしたの霄?」


「ああ、姫……。響史のやつが空を飛びたいって言うのでな……。少しばかり殺してやろうと」


「へぇ~そうなんだ、頑張ってね?」


 満面の笑みでそう答える瑠璃に、俺は目を幾度かパチクリさせて瑠璃に訊く。


「んん? あれ? すまねぇ瑠璃、聞き間違いかもしれないが、今なんて?」


「え? だから、頑張ってね? って……」


「いやいやお前……人の話聴いてた? 俺殺されそうになってたんだぞ? そこ普通助けるトコだろ!!」


「あはは、ごめんね? 冗談だよ冗談!! 全く響史ったらムキになっちゃって……」


「いや、これ冗談のレベル越えてんだろ……」


 ジト目で俺は瑠璃に言った。こいつの天然さには呆れ返る。

 すると、空を飛ぶという言葉が引っかかったのか、人差し指を顎に当て、う~んと瑠璃が何かを考え始めた。


「どうした?」


「そーいえば、響史一度だけ空飛んだことあるじゃん!!」


「え? あったか?」


 首を捻り、う~んと記憶を振り返る俺に、瑠璃は急かすように口を開いた。


「ほら、わたしと初めて会った時!!」


 俺の体を揺さぶり、早く思い出すのを心待ちにしている様子の瑠璃。その衝撃のおかげか、俺もようやく思い出すことが出来た。


「ああ、あの時か!! だが、あれ厳密的にはお前が飛んでるだけで、俺抱え上げられてるだけだからね?」


「まぁ細かいコトは気にしない気にしない!」


 明るく振舞い、瑠璃はどこかへと駆けて行った。


――あの仕草一つ一つが普通の女子高生に見えて仕方がない。しかも、俺と同じ学校の制服。それが一人だけじゃなく数人。普通ならありえない。まぁ、悪魔だからありえるのか? そんなことよりも、早く出発しなければ学校に遅刻してしまう!!



 俺は急いで身支度を済ませ、家を飛び出した。食パンを口にくわえ学校へと猛ダッシュ。

 本来ならばこれは女子が担当する役目で、俺は交差点の角からわざとらしくぶつかるというのがセオリーなのだろうが、生憎と俺はそんなことになるつもりはない。


――いや、待てよ? 響子になればそれも可能に――って、何考えてんだ俺は!!



 一瞬、女になった自分の姿が脳裏に浮かびあがり、俺は激しく首を振ってその姿を消し去った。

 と、その時、交差点から本当に制服を着た少女が飛び出してきた。


「マジかよッ!?」


ドンッ!!


「いったぁ~……もう、どこ見て歩いてるの? 気を付けてよね!」


――ん? この声には聴き覚えがある。



 俺はまさか? と思いながら恐る恐る顔を上にあげた。すると、俺に文句を言ってきたのは、案の定俺のクラス一年二組の学級委員長兼、幼馴染――雛下琴音だった。


「って、雛下! お前、何でここに?」


「あれ、響史くん? なぁ~んだ。てっきりサラリーマンのおじさんかと思っちゃったよ!」


 ぶつかった相手が俺だと分かった途端、突然表情を一変させた雛下は、後頭部をさすりながら俺に冗談を言ってきた。


「俺どんだけおっさんなんだよ!! とまぁツッコミは置いといて――」


「相変わらずいいツッコミ捌きだね! 私も毎度毎度ツッコまれてばかりじゃダメだよな~」


「雛下……その言い方は少し危ない気がする」


「えっ、何の事?」


 ポケ~ッと不思議そうな表情を浮かべる雛下に、「ああ、分からないならいいんだ」と、俺は変な方向に話がこじれていかないように、そこで話に終止符を打った。どことなく、こいつと瑠璃は似たような匂いがする。




――☆★☆――




 ようやく学校に辿りついた。場所は自クラスの一年二組の教室。俺は窓側の席だ。後ろには雛下が座り、前の席には吹奏楽部所属の『阿部(あべ) 千夏(ちなつ)』が座っている。

 ついこの間席替えをしたばかりなので、まだどこに誰が座っているのかを上手く把握しきれていない。


「響史くん、いつになったら私のこと琴音ちゃんって呼んでくれるの?」


「は? 突然何言ってんだ?」


「だって、私達はその、幼馴染なんだし……あの、その。……下の名前で呼び合うのもいいかな~って」


「いや、別に雛下でいいだろ?」


 メンドくさかったので、俺は軽くあしらおうと軽く考えてそう言った。しかし、雛下はそれでは納得してないらしく、ふくれっ面になって俺に文句を言った。


「ぶ~っ、そんなんじゃ嫌だよ! ちゃんと琴音ちゃんって呼んでくれないと返事しないよ?」


「別にいいけど」


「ええ~っ!? ダメダメ、それは困る」


 俺が真顔で平然とした調子で答えると、琴音はいやいやと首を振ってそれを拒絶した。


「どっちなんだよ」


――呆れて物も言えない。周りのやつらにこんな姿を見られたら何て思われるか。特に亮太郎……。あいつは曲者だ。一番警戒しなければ。



「も~っ、どうしたら琴音ちゃんって呼んでくれるの?」


「いや、そもそもその“琴音ちゃん”ってのがどうも呼びにくいって言うか――」


「あっ、今琴音ちゃんって呼んでくれた!! わ~い、嬉しいよ響史くん!!」


 俺は呼び方を指摘したつもりだったのだが、どうやら雛下はそのことを名前を呼んでくれたと誤解しているらしい。まったく、おめでたいやつだ。


「え? いや、これは呼んだ内に入らな――」


「えへへ、そんな照れなくてもいいよ~」


 満面の笑みでそう言う雛下は、ぎゅ~っと俺に抱き着いてきた。


「ちょっ、おま……やめ――」


「あの~、お取込み中のとこ申し訳ないんだけど、プリント取ってくれる?」


 最後まで俺の言葉を喋らせずに遮ってきたのは、俺の前の席に座っている女子、阿部だった。


「あっ、悪い……」


 申し訳なく頭をかきながら俺は阿部に謝罪した。その際、ふと阿部が前を向く時に「クソ、リア充が」と何やら黒い言葉が聞こえた気がしたのは気にしないことにする。


――さ、最悪だぁああああああああ!! よりにもよって一番聞かれたくないとこ聞かれちまったああああ!! やべぇええ……。どうしよう、亮太郎にバレたら校内中に広がっちまうぞ? あいつは、動く噂流し(フロスト・ゴシップ)だからなあ……。



 どんどん不安になる俺に対して、雛下は能天気に俺の腕に自分の腕を巻きつけて満足そうだ。


「はぁ……。前途多難だ」


ピンポーンパーンポーン♪ ピーンポーンパーンポーン♪


 チャイムが鳴り、ガララと引き戸が開いて担任の下倉先生が出席簿を手に持って入ってきた。


「さぁ皆さん、席についてください……。学級委員、挨拶を」


「はいっ、きりーつ!」


 急にキャラが変わり委員長モードになった雛下が、キリっとした目つきで号令をかける。全員がガタタッと椅子を足で後ろに下げてその場に立ちあがる。

 そして、雛下の「れーい! お願いしまーす」という号令で皆がお辞儀をした。

 このように、今日も嫌な学園生活が幕を開けるのだ。


「えー、今回はもう間もなく開催される体育祭に向けて話し合いを行います。今日は一時間目二時間目と続いて私の授業ですので、ここを使って話し合いをしてもらいます。そのためにも、まずは体育祭実行委員を決めなくてはなりません」


 そう、俺の最も嫌いとする行事――。それが体育祭だ。何故嫌いなのか。それは単に動くのが嫌いだからという訳ではない。異常なまでの日射量だ。

 近頃の太陽の日差しは物凄く強く、肌にもよくない。毎年行われる体育祭の後の入浴は地獄と何ら変わらない程の激痛を伴うのだ。湯にちょっとつかるだけでも酷い激痛なのに、体全身を湯船につけようものならひとたまりもない。それこそ、お湯釜にドボンと入れられた気分だ。しかも、体育祭がある日までに繰り広げられる体育祭の練習も地獄と言える。


「はーい、はいッ! せんせー!! 体育祭実行委員は、この俺――藍川亮太郎にやらせてください!!」


 ドワアアアッ! と教室中が驚きの声に沸いた。俺もその一人である。まさかこの変態の王とも称された亮太郎がこのような行事に自ら志願するとは、明日は地球最後の日に違いない。とまぁ、冗談はともかく、何故亮太郎が体育祭実行委員になりたがるのだろうか? これには何かしら裏があるに違いない、と俺は考えた。


「体育祭実行委員は男女それぞれ一人ずつ決めねばなりません……。後一人、女子の実行委員を決めてください。ちなみに、実行委員となった生徒には今年行う光影学園の体育祭で行う種目も決めてもらいます」


 種目決めというのは、百M走や、ムカデ競争などそう言った類の種目を、自分たちで決めることを言う。この学園は変わっていて、毎年毎年自分達で行う競技を決めるのだ。中には、初めて体験する種目もあるため、一部生徒の中にはそれを楽しみにしている人も多い。だが、俺はそんなのお構いなしに反体育祭委員会の味方だ。無論、そんな委員会は存在しない。俺の架空の妄想だ。逆に実現していたら恐ろしい。


「はい、先生! 神童さんがいいと思います!!」


「ほう、神童さんですか?」


「何ィッ!?」


 俺は思わず声をあげてしまった。当たり前だ。何故に俺が実行委員なんぞやらねばならんのだ。ただでさえ体育祭をやりたくないと思っているのに。


「よろしいですか神童さん?」


「ちょっ、冗談やめてくださいよ! 俺なんかにそんな委員務まるわけありませんって!! もっと他の――体育会系の生徒にやらせるべきです!!」


――おっ、今俺珍しくもっともらしいこと言ったんじゃね?



 と俺は自画自賛した。しかし、担任――下倉から返ってきた言葉は、思いもよらない言葉だった。


「いいえ、体育会系の部活の人は部活のことで忙しいので委員にしてはいけないと、校長先生から指示を受けていましてね。やるなら、文科系か帰宅部の生徒にやってほしいと……」


――あんのオカマ校長がああああああッ!!!



 と、俺は片手で握り拳を作り、今すぐあの校長を殴り飛ばしに行こうと思ったが、そんなことをすれば即退学ものなのでやめておく。

というわけで、さぁ始まりました! 体育祭編! いやはや、ついにここまで来ました! そして、とうとうストックがなくなりました。こっからは恐らく相当更新遅れるかと思います。なにせ、夏休みも終わるわけですから。

まだ、この作品は夏休みすら入ってませんがね、ハッハッハッハはぁ~。

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