第四十一話「幼き体験(前編)」・3
※注意! 幼女化した露さんが暴走気味です! 変態行動の数々にお気を付けください!
「り、霖……。ち、違うんだ……こ、これは!」
「お、お兄ちゃんが……そんな変態さんだったなんて」
霖は消え入りそうな小さな声で涙ぐみながら言った。
「いやそれはその……ところで、どこから聴いてた?」
「ぐすっ……最初からだよ? お兄ちゃんが幼女を襲うとしてたところあたりから……」
「それ最初じゃねぇよ! てか、なんちゅう勘違いしてんだ!! 襲おうだなんて言って――いや言ったけど、あれはただの冗談なんだって!! なんて誤解を招きやすいところから聴いてくれちゃってんの!? 案の定誤解なんだって!! お前は勘違いしてんだよ、霖!!」
俺はツツ~ッと涙を流す霖に必死に言った。
「そんな無理しなくていいよ、お兄ちゃん。わ、私はその…………平気だから」
「いや、その間からして絶対に平気じゃねぇだろ!! その証拠にさっきから俺から徐々に遠ざかってるし!!」
少しずつ床に座ったまま遠ざかって行く霖を見て俺は言った。
「私はお兄ちゃんが……その、ロリコンの……変態さんでも、嫌いになんかならないから……心配、しないで?」
「いや……言ってることと行動が合ってないんですけど! どんどん遠ざかってるんだけど! 言うならハッキリ言ってくれ! いっそのことトドメをさしてくれ!! 惨めになればなるほどよけいに苦しくなるッ!!」
俺に気を使ってくれているのか、はっきりと大嫌いと言ってくれない霖に俺はありがたみを感じる反面、言葉とは裏の行動を取っていることに心への大ダメージを受けていた。
「せめて、せめて弁解させてくれ!! これにはわけがあるんだよ! それと、こいつはどこかの幼女じゃなくてお前の姉なんだって!!」
「そんな嘘つかなくていいよ、お兄ちゃん。だって、お姉ちゃんはお胸は小さいけど身長は大きいんだよ?」
「……あの、ちょっと。わたち今軽くきじゅつけられたよね?」
露さんが霖の最後の一言がひっかかり俺に訊く。
「霖、それはあまりにも言い過ぎだ」
という俺の同情するような一言に、露さんは顔を明るくさせて「きょうちくん……」と顔を明るくさせて言った。しかし、そこで俺はすかさず一言。
「確かに本当のことだが、言っていい事悪い事がある!」
「がぁあああん! ひ、ひどいよきょうちくん!!」
「俺の心の痛みに比べればマシなものでしょ!? 俺はどんどん信頼を失っていってるんですよ!!?」
悲しむ露さんに、俺は露さんよりも自分の方が苦しんでいるという気持ちを込めて強い口調で言った。
「………なんか、その、ごめん」
露さんは俺のズタボロの心を見たのか、かわいそうな物を見るような目で謝った。
「いや……」
「本当に露お姉ちゃん……なの?」
鼻をすすりながら小さくなってしまった姉に恐る恐る尋ねる。すると、自分の名前を呼ばれた当人はぱぁっと表情を明るくさせて笑顔で頷いた。
「うん、しょうだよ霖ちゃん!」
「…………お姉ちゃんみたいだね」
「その間は何っ!?」
露さんは軽く傷付きながら驚愕の表情を浮かべた。
「でも、どうしてそんな体になっちゃったの?」
「それがその……。ルナーが作った発明品の『老若変換機』ってやつでこんな姿にされちまったんだ。それで、これ以上被害が拡大しないようにルナーを捕まえようと思ったんだが、なかなか見つからなくてな。――あっ、そうだ! 霖、お前も一緒に探してくれないか?」
「えっ、私も?」
霖は不意を突かれたような表情を浮かべた。
「ああ……ダメか?」
「ダメってことはないけど」
モジモジと胸の前で指をいじる霖。何か問題があるのだろうか。しかし、時間的にもう昼過ぎ。そろそろ昼ご飯を作ったりしないといけないのだろう。霖がこっちに来てからはずっと彼女が料理担当を務めてきたからな。もしかしたらそんな暇はないのかもしれない。
「忙しいんなら無理にとは言わない。ただ、ルナーを見かけたりとかしたら連絡してくれ!じゃあ――」
「待って!!」
俺達二人が行こうとすると、突然霖が俺の背中にくっついて服を引っ張り動きを止めた。
「えっ、……あの霖?」
「わ……私も探す。ルナーさんを見つければいいんだよね?」
「ああ、そうだけど」
急に背中にぴとっとくっつかれて俺はドギマギした。何しろ、こんなちっちゃいのに、少なくとも露さんよりは霖の方が胸があるため、その仄かな柔らかさが背中に直撃してくるのだ。それにより、少し戸惑いながら俺は頷いた。すると、俺の意思を確認してさらに強く自身の気持ちを伝えるかのごとく意思表明してきた。
「私も行くっ!!」
「そうか! そりゃあ助かる!!」
気が変わったのか、霖は真剣な面持ちで俺達と一緒にルナー捜索に協力してくれることになった。露さんだけでは頼りないと思っていたところで、期待の出来る助っ人。これは思ったよりも早く見つかるかもと俺は思った。あれ? ふと思ったが、この兄妹。何か、下に行けば行くほどしっかりしてね? ふと俺はそんな感情を持った。
――☆★☆――
私――水連寺露は、幼女化……もとい、幼児化してからず~っと歩きっぱなしだった。家の中とはいえ、歩きづめは疲れる。しかも、普段はあんまり辛いとは思わなかったのだが幼児化しているためかもしれない、すんごく立っているのが辛かった。しかし、この姿でもメリットがあった。それは、可愛い可愛い妹――霖ちゃんのこれまた可愛いらしい薄いピンク色のパンツが見えるからだ。
――ああ~っ! 幼児姿ってのもたまにはいいかも……! 身長が小さい分、屈まなくても見えるしぃ~♪ でも、やっぱり歩くのがだんだん疲れてきた。もう、歩けない……。
と、想ったその時だった。私はいいことを思い付いた。
「ね、ねえ~二人とも~! ちょっと待ってよ~!!」
「ん? どうかしたんですか露さん?」
響史くんが立ち止まって後ろを振り返って訊いた。
「ちょっときゅーけーちない? もう歩きしゅぎてちゅかれちゃった」
「それもそうだね。結構ずっと立ちっぱなしだったし」
「たちっぱなち!?」
「何考えてんですか、露さん!!」
また怒られてしまった。でも、どうもこういうことに関しては理性よりも先に欲望が先に口から出てしまう。自重しろと言われてもなかなか難しい。
「ねぇ~、疲れたぁ~!」
「どうする? 少し休憩する?」
霖ちゃんが響史くんに相談する。私は現在八才児の姿のため、二人よりも身長が低い。そのため、少しばかり頭を上げないと二人の顔が見えなかった。しかし、これは少しキツいためあまり長くは続けていられない。昔はこうは思わなかったのだが、今となってはこれを辛いと感じてしまう。べ、別にもう歳だからとかじゃないわよ!?
「そうだな……う~ん、でも早くしないと新たな被害が出ちまいそうだし。すみませんけど露さん、我慢していてもらえますか?」
「しょ、しょんなぁ~!! もう歩けないよ~」
「う~ん……そう言われても」
困り顔の響史くん。ああ、困った顔もちょっと可愛いかも。
「あっ、ぢゃあ抱っこちて?」
「えっ? だ、抱っこですか?」
「うん! そうすれば、きゅーけーするひつよーないよ?」
私は頭の中で考えていた通りの計画を実行しようとした。
「まあ確かに。じゃあ霖、頼めるか?」
――ふっ! 計画通り……。
心の中で悪質な笑みを浮かべる私。我ながら悪魔のようだった。……あっ、私悪魔か。
「うん、分かった!」
霖ちゃんは満面の笑みで頷き、私の目の前で背中を見せてしゃがんだ。
――あれ、計画と違う……。
「あの~わたち、おんぶぢゃなくて抱っこがいーんだけど」
「え~? お、おんぶじゃ……ダメ?」
――ぬわぁあ! か、かわいいっ! ウルウルした瞳で眉毛を少し下げて、口元に手を持っていくなんて! そ、そんな可愛い仕草と姿見せられたら……。わ、私、興奮して覚醒しちゃうぅぅぅぅぅっ!!! だ、ダメだわ! しっかりするのよ露! ここで「うん、いいよ!」なんて言ったら、せっかく立てた計画がおじゃんだわ!! ここは我慢!
「……ど、どーちても抱っこがいいの」
「………わ、分かった。じゃ、じゃあ抱っこね?」
「うん!」
私は満面の笑みで頷いた。抱っこがしてもらえるということよりも、自分の立てた計画が実行されるという期待が私の表情をよりよい物にしてくれていた。
そして私は、小さな両腕を上げて手を広げると、霖ちゃんに抱っこしてもらった。昔は立場が逆だった。私が霖ちゃんを抱っこしたりおんぶしたりなど。今までこれの逆をずっとしたかった。それがついに叶うのだ。
「霖ちゃんの体、すんごくふわふわできもちーよ?」
「……ゃ、お、お姉ちゃん。く、くすぐったいよ~」
――ふふふ、すべてはこの計画のため。なぜ私がおんぶではなく抱っこを強要したのか――。それは、抱っこじゃなければ出来ないことだからだ。そう、後ろではなく前。即ち、小学生のくせに高校生である私よりも胸の大きい霖ちゃんの体に触れることが出来るのだ!
小さい子が抱っこしてもらった際に少しばかり胸に手が触れたくらいで怒られたところなど見たことが無い。何よりも、この愛くるしい姿ならば誰にでも許してもらえるはず。私はそこに賭けていた。頬を摺り寄せても抱っこしているのだから自然の道理だ――許されるはず。
さっそく私は霖ちゃんの胸に頬を摺り寄せた。
「ひゃっ! く、くすぐったいよ、お姉ちゃん」
「うわぁ~霖ちゃんの胸すんごくあったかいよ? ドクドクって心臓の鼓動も聞こえる――感じてるの?」
ニタァと我ながら怪しいおっさんのような笑みを浮かべる。すると、私の言葉にカァァ! と、盛大に顔を真っ赤に紅潮させた霖ちゃんが可愛らしい悲鳴をあげた。
「ふえっ!?」
「……って、何やってんですか露さん!」
またもや響史くんにいいところを邪魔されてしまった。何ともタイミングのいい人物だ。
「何って……スキンシップ?」
「歩くのが疲れたから抱っこしてもらってたんじゃないんですか?」
「そーだよ? でも、せっかく幼児化したんだし。こーゆーのもやってみたいぢゃない?」
「そんなうらやま――じゃなくて、ルナーを探してるんですよ? そんなことやる元気あるなら降りて探すの手伝ってください!!」
「やーだよ! せっかく滅多にないちゃんしゅが来たんだから、今の間に楽ちまないといけないんだからっ!!」
私は響史くんが止めるのも聴かず、そのまま霖ちゃんの小ぶりながらも形のいい胸に顔をうずめ、小さな両手で胸を揉みしだいた。
「っひゃあ! や、やめてよお姉ちゃん! お、お兄ちゃん、た、助けてぇ~!!」
「露さんッ!!」
「ぶーっ! 分かったわよ、やめればいーんでしょ、やめれば!」
これからという時に響史くんに珍しくキレかかられたので、私は渋々霖ちゃんの体から降りた。
――☆★☆――
様々な騒動があってから俺は二階の階段近くにやってきていた。
と、その時、どこからか煙が流れてきた。しかも俺は、その煙に見覚えがあった。そう、リビングでも見たあの煙である。つまり、これを吸ってしまった者は幼児化してしまうのだ。
俺は急いで霖に煙を吸わないように忠告しようとしたが、時すでに遅しだった。霖はその煙を吸い込んでせき込んでいた。
――くっ、遅かったか。
せっかく未幼児化人物を見つけたというのに、またしても俺だけになってしまうのか、と俺が途方に暮れていると、そんな俺の肩をポンポンと叩く人物がいた。それは、幼児化していない霖の姿だった……。
というわけで、霖を交えてルナーを捜索することになったのですが、いやはや露さんは今回も暴走してますね。妹に対して変態行為ばかり働いてます。
抱っこと見せかけて胸を揉むって姉としてどうなんですかね。しかも、悲鳴をあげて嫌がっているのに。
う~ん、まぁそれはともかく前編と書いてあるようにこれ、後半の四十二話に続きます。そして、短編をちょろっと挟んで四十三話から体育祭編です!




