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魔界の少女  作者: YossiDragon
第二章:六月~七月 護衛役『現れし青髪の脅威(後)』編
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第四十話「大掃除」・2

「はぁ。やっと戻ったぜ」


「あ~あ、戻っちゃったぁ!」


「普通のあんたなんて面白くもなんともないわねっ!」


 元の姿を取り戻して満足する俺に対し、瑠璃と麗魅の二人は大層つまらなそうな顔をして顔を背けてしまう。その行為に俺は少しどころかめちゃくちゃ心が傷ついた。


「な、何でそこまで言われないといけないんだよぉおお!!」


 二人の態度のせいで、このように叫んでしまう始末である。

 とそこに、さらなるルナーの追撃が加わる。


「ていうか、そもそもあんたが勝手にこの老若変換機を扱わなければよかっただけでしょ?」


「うっ! い、いやこれは、俺が操作したわけじゃなくて勝手に――」


「勝手に動いたとでもいうわけ? 機械が? どうせつくならもっとマシな嘘をつきなさいよ!!」


 ルナーは嘆息しながら腰に手を当て言う。


「ほ、本当のことなんだが……」


 どうやらルナーは、俺の話を信用していないらしい。まぁ無理もないかもしれないが……。俺が無言で正座していたその時だった。突然麗魅が話題を転換し、ルナーに訊いた。


「あのね、叔母様!!」


「叔母さん言うな!! ……で何?」


――今一瞬、軽く諦めてたよね?



「この老若変換機ってさ、中身を変えずに外見だけ変えることが可能なのよね?」


「そうだけど……」


 ルナーが片方の目を瞑り、もう片方の瞳で麗魅を見る。麗魅が何を企んでいるのかまでは把握できないが、恐ろしいことを考えているに違いない。

 俺はなぜかそう思った。


「つまり、未来の姿にも変えられる――ってこと?」


「とどのつまり、何が言いたいわけ?」


「私にも使わせてくれない?」


 両手を合わせ、眉を少し下げてウルウルしたオレンジ色の双眸で懇願する麗魅。しかし、それに対しての叔母の答えは冷たいものだった。


「ダメよ!」


 即答だった。ルナーはプイッとそっぽを向き腕組みをする。


「ど、どうしてよ!?」


 納得できない――麗魅の言い方はそう言わんばかりの口調だった。まぁ確かに、あんな欠陥のある道具をいろいろと使われたら敵わない。そう思えばこそ、ルナーの使用を禁止するという考えは妥当だった。


「ダメって言ったらダメなの!! たった今そう決めたの! 私が決めた事は絶対よ!」


「いいじゃない少しくらい貸してくれたって!! 叔母様のケチ!!」


「なっ、お……おば、おば――叔母さん言うな!! 私はまだ十代なのよ?」


 顔を真っ赤にして自身の胸に片手を当てて自身を示すかのような仕草をするルナー。そこに俺は半眼で思わず思ったツッコミをかます。


「叔母さんと十代はそこまで関係ないと思うが。第一、十代で叔母さんなんていなくもないしな」


「あんたは黙っててよ!!」


 怒られた。何故? 理不尽なものだ。


「欠点だらけでもいいの! ホント一度、一度だけでいいからっ!!」


 必死にルナーを説得しようと試みる麗魅。なぜそこまでしてあの老若変換機が必要なのか、俺には点で理解できなかった。一つ分かる事――それは、ルナーは頑固で渡す様子は微塵もないということだ。


「しつこいわねぇ~! 渡せないったら渡せないの!! あ~もうメンドくさくなってきた! こんな機械、こっちから願い下げだわ!!」


 さすがに老若変換機を麗魅の欲望にまみれた手から死守するのに疲労感が芽生えたのか、ルナーは老若変換機を高々と両手で頭上に抱え上げると、勢いよく空き部屋の床に叩きつけた。大半の人間はあぁ、もったいない、と某海賊一家の息子の一人の口調を思い出すだろうが、俺の心の中の心境は違った。


――ぬわあああああッ!!? 俺ん家の床を傷付けんなぁあああああああああああッ!!



 頭を抱え心の中で叫ぶ俺……。勢いよく叩きつけられ耐える事が出来なかった老若変換機は、そのまま雷をバチバチ鳴らしながらボンッ!! と、一つ大きな音を立て黒い煙をあげた。


「……はぁ、はぁ。ハッ! 私は何てことを~っ!!」


 肩で息をし、その乱れる呼吸を整え終えたルナーが顔を青冷めさせて声を荒げる。


「いろいろ忙しいやつだな……」


「どうしよう。これ確か、壊れたら誤作動で――」


 刹那――老若変換機が変な音を立てゴトゴトと動作を始めた。――何かの直感。そんなものが俺にあるか――は分からないが、少なくとも一つ言えること。それは、何か危険な臭いがするということだ。

 俺は瑠璃と麗魅とルナーをその場に残し、一人早く部屋に設置されている窓をガラリと急いで開け放ち、慌ててベランダへと避難した。

 と、同時にボォオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!! と大きな音を立てて眩い真っ白な光が空き部屋を包み込んだ。

 しばらくして音が収まると、白い煙がモワモワと窓から漏れて空気中に逃げ出す。


「ゴホゴホ!」


 俺はせき込みながら煙を吸わないようにハンカチで鼻と口を軽く押さえ、空き部屋内へ戻った。周囲に瑠璃、麗魅、ルナーの三人の姿は見えない。


――どうやらあいつらも危機本能を察知して咄嗟に部屋から脱出したみたいだな……よかっ――。



 その時だった。足元に何かの感触を感じた。ふと足元に視線を下す。そこには、白い煙に覆われてよく見えないが、三つの小さな人影が見えた。


――ちょっと待て。小さいって――まさか!?



 俺がハッとなりあることを思い出す。


《壊れたら誤作動で》


 そんなルナーの言葉が脳内を何度も駆け巡り、絶賛リピート中になる。まだ信じ切ってはいないものの、ほとんど確信的だ。しかし、俺は実際に見えた物しか信じない主義だ。現に俺は幽霊も信じていない。悪魔は信じている。現に俺の家で絶賛居候中だからな……。俺はガララッ! と、空き部屋にある窓を全部開け放った。

 今日は風通しがいいため、空き部屋内の白い煙がヒュウッ! と風に流され一気に視界が良好になる。

 そして、もう一度同じ場所を確認してみると、そこには小柄で小ぢんまりとした瑠璃、麗魅、ルナーの三人の姿があった。


「けほけほ……も~うっ! どうにゃってるんだよ、これ!!」


「ほんちょうよっ! いきなりばくはちゅするち……」


「だからわたちは危険だって……」


 コホコホとせき込みながら会話する瑠璃、麗魅、ルナーの三人。まだ自分達の今の体の異変に気づいていないらしい……。しかし、それはほんの少しの時間。すぐに三人は自分たちの今の姿に気付いた。


「うわあ!」


「にゃ、にゃに!?」


「な、なんなのよこれぇ?」


挿絵(By みてみん)


 悲鳴を上げ騒ぎ出す三人は先刻の俺同様、小ぢんまりした姿で振舞っていた。外見は八才くらいで中身は変わらぬ十代の高校生や発明家。そんな三人が今、俺の目の前でずんだれた服をフリフリと動かしながら(わめ)いている。


「だから気をつけろって言ったのに……」


「やった~っ! わたちも小さくなりぇた~!!」


――あれ、反応違ってない!? よ、喜んでる?



 俺は瑠璃の驚くべき反応に思わず戸惑った。

 ん待てよ? よく見てみたら三人とも微妙に髪の毛の長さが違う? しかも、瑠璃は髪の毛結んでないし。ルナーもいつものツインテール姿は変わらなくても長さが微妙に短いし……昔に戻ったからか?

 三人の幼女姿を見て複数の疑問符を浮かべる俺。


「何難ちい顔ちてるの? あっ、分かった! かわいい幼女ちゅがたになったわたちたちを襲おうとちてるんでちょ?」


 麗魅が、顎に手を添え深く考え込んでいた俺に小さな指をピシッと向けて言う。麗魅のその顔は丸々としていて、頬は少し赤みがかかり大きく丸い瞳は潤んでいる。

 どうやら少し恥ずかしがっているらしい。

 俺が小さくなって抱き着いてきた時の顔とはまた違う一面……。最近どうも麗魅の様子がおかしい。特に俺に対して……。

 何かあったのだろうか?


「ち、違うって! お前らの髪の毛の長さとかが変わってたから驚いて……」


「ちょう言えば叔母しゃま。顔が少し幼げになっただけでしんちょーあんみゃり変わってにゃいよね?」


「ガーンッ!! うわあああああんっ!! おばしゃん言うなぁ~!!」


 目元を潤ませポカポカと麗魅を軽く小突くルナー。


――和むな~…。



 ふとそんな感情が出てくる。すると、それを横目で見ていた麗魅が鋭いツッコミを入れる。


「あ~っ! 今あんた、へんちゃい的な目でわたちたち見てたでちょ?」


「うえっ!? い、いや見てないって!! つ~か、変態的な目じゃなく温かい眼差しと言え!!」


「うっちゃい!! おばしゃまもいいかげんやめてよ!」


 俺を指摘しながら隣から未だにポカポカと優しく殴っているルナーへ文句を言う麗魅。しかし、対してルナーはやめる気など毛頭ないらしく、殴りながら口を開いた。


「うっちゃい、うっちゃ!! あなたに分かんないわよ! 牛乳をにゃんど飲んでもしんちょーがいっこーに伸びないわたちの気持ちなんかっ!!」


「ふんっ! 栄養がちゅべて胸にいってりゅんじゃないの? まぁ、ちょれも幼くなったちぇいでペッタンコになっちゃってるけどねぇ~?」


 嫌味をさらりと口にする幼女姿の麗魅。さすがの俺でもこれは効く。


「ガガーンッ!! くっくぅ……ふ、ふんっだ! あんたなんか今も昔もペッタンコのままじゃない!!」


 お返しとばかりに麗魅の胸を指差して精神攻撃を繰り出すルナー。それは麗魅にも大ダメージのようだった。


「うぐっ!!? にゃにかが……にゃにかが深く、深くわたちの心にちゅきささったっ!!!」


「いい気味だわっ!!」


 涙目でふっ、と口の端を釣り上げるルナー。見た目が幼女姿とはいえ、俺には二人の中身が十代後半なのだということがはっきりと理解できた。


「まぁまぁ、二人とも落ちちゅいて?」


 言い合う麗魅とルナーをまぁまぁと宥める仲介役の瑠璃。そんな三人の光景を見て、俺は思わず思ってしまったことを口にしてしまう。


「何だか幼稚園にいる気分だ……」


「にょんきな事言ってないできょうちも手伝ってよ~!!」


「お、おう。おい二人とも、そんなに暴れるなって。そんなに暴れたら、ただでさえちっこくなっちまって服のサイズが合ってないんだから――」


「「ペッタンコじゃないもんっ!!」」


 同時に涙目で頬を膨らませ大声を上げる麗魅とルナー。

 刹那――麗魅とルナーの服が一気にバサッと床に脱げ落ち、仲介役となっていた瑠璃も麗魅とルナーの手に妨害され巻き添えをくらった……。

 その結果、三人は幼女姿で俺の眼前で真っ白な産まれたままの姿を晒してしまった。

 まぁ無論、その次に三人から発せられる言葉はお決まりなわけで――。


『……き、きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!』


 幼い三人の悲鳴が俺の耳の鼓膜に甚大なダメージを与える。おまけに幼女姿とはいえ、見知った人物の裸体を完全に見てしまった俺は、顔を真っ赤にして大量の鼻血を噴出して倒れた……。

というわけで、はい。やはり主人公が幼児化するなら周囲の人間も小さくするべきだという神のお達しがあったので。ちっちゃくなりました。全員八歳児です。そして、体は小さくなっても服は縮まないのがお約束。さらに、そこから発展するお約束といえばこれ――。そう、洋服が脱げるというアクシデント。はい、バッチリ見えちゃいましたね。これ、主人公の状況を変態軍団が知ってたら完全に血祭りワッショイですよ。

では引き続きお楽しみに。

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