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魔界の少女  作者: YossiDragon
第二章:六月~七月 護衛役『現れし青髪の脅威(後)』編
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第三十九話「プール開きの悲劇」・1

 現在の時刻、十二時四十分……。

 これより体育の授業――プールが始まる。水着を家から持ってきた男子や女子が、更衣室も設置されているプール室へとプール道具を持って向かう。

 ここ――光影学園には様々な施設も完備しており、教室棟などのある本館には、それ以外に食堂やホールなどもある。また、北館には旧校舎。西館には先程のプール室。東館には体育館。南館には中庭などの自然豊かな物が存在する。

 現在俺は、亮太郎と一緒にプール室へと向かおうとプール道具を探していた。瑠璃達は女子のため、雛下に任せることにした。ドジな部分が多々ある彼女だが、いざという時には本領を発揮して本当に委員長並の力を出してくれる。今回はそれを是非とも出して欲しいものだ。

 ふとプール道具を探している手を止めた俺は、亮太郎に「どうした?」と様子を訊かれて口を開いた。


「やべぇ……。亮太郎どうしよう」


「何かあったのか?」


「……プール道具がねぇ」


 俺は顔面蒼白となってそう悪友に告げた。


「な、ななななあぁああにぃいぃぃぃいいいいいいいっ!!?」


 忘れた本人である俺以上に、亮太郎はオーバーリアクションをしてくれた。


「どうすんだよッ! それじゃあ、俺と一緒に女子のプールで泳ぐ姿を拝むという約束が――」


「そんな約束した覚えねぇぞッ!!!」


 俺は激しいツッコミをかました。


「まぁ、それはおいといて。マジどうすんだ? もう授業始まっちまうぞ? 水着に着替える必要があるからって、体育教師の『織田(おだ) 剣吾郎(けんごろう)』が集合時間を五十分に設定してくれてるとはいえ……もう後十分程度しかねぇんだぞ!?」


 亮太郎が腕組みしながら俺に今現在の時刻を伝える。


「くっそ~。こんな時、ド○え○んの秘○道○で『取○寄○バ○グ』みてぇなのがあったらいいんだけどな~。そんな科学の進んだ科学者みたいなのがいるわけないし――って、いるッ!!」


「ん? どうした神童?」


「わりぃ亮太郎! 先に行っててくれ! すぐに戻ってくる!!」


 あることを思い付いた俺は、疑問符を浮かべている亮太郎を先に行っておくように言って公衆電話へと向かった。緑色の受話器を取り、カードを挿入口に挿入する。そしてツーッという音が聞こえたところで、俺は携帯を家に忘れていたので自分の電話番号をプッシュしていった。


ピポパポ!…プルルルル!プルルルル!


 独特のプッシュ音が鳴った後に発信音が流れ出す。

 しばらくして、誰かが電話に出てくれた。


「あっ、もしもし俺だけど?」


〈は? 俺俺詐欺?〉


「ちっがぁああああああああああああう!! 俺だ俺、響史だよ!! って、その声はルナー?」


〈……そうだけど?〉


 少し間が開いたのが少々気になったが、今はそれどころではない。しかも、本人が出てくれれば俺としては好都合だ!


「あのさ、お前に実は頼みたいことがあるんだけど」


〈ふ~ん、何かしら?〉


「何か企んでないだろうな?」


 ルナーが何かを企んでいるかのような不気味な喋り方をしてきたので、少し不審感を抱いた俺は、警戒しながら相手に訊いた。


〈もっ、もちろんよっ!!〉


 少し答え方が怪しかったが、気にしている暇はないので俺は構わず続けることにした。


「それでさ、実はプール道具……家に忘れちゃってさ~。今からプールの授業なんだよ!だから、その……出来ればプール道具持ってきてほしいなぁ~、みたいな?」


〈それが相手に頼む態度?」


「いやホント、今そんな冗談にかまってる暇ないんだって!! 体育教師の織田はメッサ怖い先生なんだぞ? お前は知らないからいいかもしれないけどさ!」


〈うん、知らないわよ?〉


「とにかく、持ってきてくれよ!」


 俺が必死にルナーに懇願していたその時だった。カツカツと誰かが背後から歩いてくる足音が聞こえてきた。しかも、俺がルナーに懇願した声が、自分の口と後ろから聞こえたのだ。


「ま、まさか――」


挿絵(By みてみん)


 嫌な予感を感じ取りながら後ろをギギギ! とゆっくり半眼の眼差しで振り返る俺。

 そこにいたのは、自慢気な表情を浮かべ腰に手を添え、もう片方の手に俺の携帯を持って自身の耳に当てているルナーだった。相変わらずの白衣姿に細く白い首から垂れているアクセサリーと作業用ゴーグル。おまけに、頭には赤縁のメガネ。もう既に白衣がチャームポイントと化してしまっている。また、その小柄な体に似合わぬサイズの白衣のため、少し屈むと普通に地面に白衣の裾が着いてしまう程だった。そして、一番俺が納得がいかないのが、小柄で童顔のこの少女――ルナーの胸が異常に大きいことである。何よりも、瑠璃より大きいのが不思議だった。カツカツと靴底から鳴る音をわざと出しているかのように、俺の目の前にやってくるルナー。しかも、背負っているのは青地に白い線がいろいろ入っている防水性のバッグ――俺のプール道具だった。


「はい!」


 ムスッとした顔で頬を膨らませ、口をへの字に曲げたルナーが俺に半ば強引にプール道具を押し付けてくる。思わず俺は感動してしまった。何よりも俺がプール道具をここに持ってきてくれと頼む瞬間にプール道具を持ってきてくれたのが、俺の心をブルブルッと動かした。


「お、お前……わざわざ持ってきてくれたのか! あ、ありがとう!!」


 俺はあまりにもの感動に冷静な判断力を失ってしまい、目の前に立っているルナーを抱きしめてしまった。


「ちょっ! は、離してよ! ていうか、勘違いしないでよねっ! べ、別に頼まれたから持ってきたわけじゃないんだから!!」


 と、ツンデレ発言。これはまた様々な要素が含まれていること。


「じゃあ何のためにここに来たんだ?」


「ちょ、ちょっと用があったのよ!!」


 そう言って腕組をし俺から無理に視線を逸らすルナー。


「ふ~ん、まぁいいや! じゃあありがたくこれは受け取るぜ!! マジサンキューな? あっ、それと、真っ直ぐ家に帰るんだぞ? あまり校内をウロチョロされちゃ困るからな!!」


 と、俺はルナーに念を押した。すると、その言葉に何を思ったのか、顔を真っ赤にさせてルナーが文句を言ってきた。


「な、何よっ! そんなこと分かってるわよ!! 小さい子じゃないんだから、いちいち言わなくてもいいじゃないっ!!」


「いや実質、チビだろ?」


「なっ、ち……ちちちちチビなんかじゃなあああああああい!!」


 そう言ってルナーは腕で顔を覆いながら踵を返して走り去ってしまった。


「まぁ、あれだったら真っ直ぐ帰るだろう。よしっ、急いで水着に着替えねぇと!!」


 独り言を呟き、俺はプール室へと急いだ。




 プール室へと到着した俺は、男子更衣室への扉を開けた。


ガチャッ!


 と音を立てて開く扉。その先には男子共が声を荒げながらいろいろと変態発言をしていた。


「おっ、神童! 随分早かったじゃねぇか!! まさか、本当にド○え○んに頼んだんじゃねぇだろうな?」


 変態発言している男子生徒の群れの中から変態の一人――もとい、亮太郎がやってきた。


「んなわけねぇだろ? 第一俺は、○○太じゃねぇよ!!」


 と、俺は軽く冗談半分に受け流す。


「てか、急げよ神童? 早くしねぇと織田が来ちまう!!」


「ああ、そうだな!!」


 亮太郎に言われ、俺は急いで水着を着用した。


「ん?」


「どうした?」


「いや、しばらく見ない間にお前も随分と逞しい体つきになったな~ってな!」


「やめろよな、そういう危ない発言は。どこで誰が聴いてるか分かんねぇんだからさ」


「おーっ、そうだったな! 思わず腐女子を喜ばせてしまうところだったぜ!!」


 口元を手で覆いそう言う亮太郎に、俺は半眼でさらに付け加えた。


「腐女子だけとは限らないけどな」


 そんな他愛もない会話をしながら水着を着用し終え、更衣室を後にした……。




 男子が男子更衣室から出てプールへと向かうと、そこへ女子もやってきた。

 同時に歓声を上げだす男子生徒と、汚らわしい物を見るような眼差しを向け出す女子生徒。すると、プール室の中に二人の教師がやってきた。男子の体育教師『織田(おだ) 剣吾郎(けんごろう)』先生と、女子の体育教師『北斑(きたむら) 秋奈(あきな)』先生だ。


「お前ら何をやっとる、早くプールサイドに並んで準備体操を始めないか!」


 織田先生が俺達男子生徒にそう言い放ち、腕組みをして仁王立ちする。その声にビビッた俺達は、急いでプールサイドの右側へと向かった。ちなみに、女子は左側だ。蛇足だが、このプールは半分で両側に分けられていて、毎年クジでどちら側をどっちの生徒が使うかを決めている――なぜかは知らない。それにより、今年は右側が男子、左側を女子が使うことになったのである。


「では、準備体操を始めるぞ! 女子もラジオ体操の音に合わせて体操しろ! いいな?」


『はいっ!』


 女子の気合の入った声。昼休みなどのテンションとはまた違った空気を感じる。そして、ラジオ体操のBGMが流れだし準備体操が始まった。


〈ラジオ体操第一~♪〉


 とラジオから曲と一緒に声が流れる。右側には男子生徒が、左側には女子生徒がずら~っと左右に広がってラジオ体操をする。すると、俺の隣でラジオ体操している亮太郎が話しかけてきた。


「なぁなぁ神童!」


「何だよ?」


 俺は織田先生にバレないように体操をしながら小声で応答した。


「やっぱ水連寺さん達姉妹って、瑠璃ちゃんや麗魅ちゃんに負けず劣らずの美少女だよなぁ~! 何よりもあのキメ細かい白い肌。ツヤツヤの青い髪に青空の様に青く美しい瞳。だが、俺的にはやはりあの胸がたまんねぇ~!!」


「へいへい」


 あまり関わっていると俺まで被害を被るので、軽く相槌を打つ感じで応える。しかし、それが気に食わなかったのか、亮太郎が声を荒げてきた。


「うぉおおおいッ!! なんだその反応は!? 神童らしくねぇ!」


「俺らしくないってどういうことだ」


「特に体操する度に揺れるあの胸。霄ちゃんにいたっては水着で胸を押さえられてねぇもん! サイズが合ってないんじゃねぇか?」


「えっ? まぁ、そう言われてみれば……」


 俺は亮太郎に言われてふと霄を見た。なるほど確かに霄の水着はサイズが合ってないような気がする。だが、そんな俺にはお構いなしで亮太郎はさらに話を進めていた。


「いや~それにしても、どうしてお前の知り合いはこうも美少女揃いなのかね~?」


「さ、さあな」


 亮太郎が言うところによると、俺の知り合い……まぁつまり、瑠璃達悪魔や雛下のような幼馴染、玲の様な部活のよしみのことを言っているのだろうが、瑠璃達はともかく雛下達の事は昔からの付き合いのためか、ずっと一緒にいるからなのか美少女かどうかは俺には判断出来なかった。

 と、その時である。織田先生が亮太郎が浮かれて鼻の下を伸ばしているのに気付いて声を荒げた。


「くぅおらぁあああああッ!! 藍川ぁああああ! 何を浮かれておるかッ!!」


「ゲッ! 織田!?」


「か~つッ!! “織田”ではなく“織田先生”だろうがぁ!!」


 凄まじい声量。言い過ぎかもしれないが、プールの水面が少し水の波紋を作っていたように見えた。そう、つまり空気が振動して水面を波立たせているのだ。まさに凄まじいの一言に限った。


「俺はただ女子の健康な体つきを見ていただけであります!!」


「それはただの変態の発言だ!!」


――先生、それはご最もです!



 と俺は思いながら半眼で隣の亮太郎の反応を見ていた。しかし、亮太郎は負けじと言い返す。


「変態で何がいけないんですか先生! 男は皆、欲望に飢えた狼です! 肉食系なんです!!俺のことは放っといてください!!」


「いんや、ますます放ってはおけなくなった!! このまま貴様を放置していたら間違いなく女子を食うに決まっておる!! 教師としてそれだけは防がなくてはならんッ!!」


 織田先生はそう言うと、まるでハンターの様に指先をピンと伸ばして猛ダッシュで亮太郎の元へ駆けだした。それを見た亮太郎は、慌てて警戒態勢に入る。


「うおおおおおおおおおッ!!」


 大声を上げてこちらに猪の如く猪突猛進してくる織田先生……。俺はそれを何とか回避した。そして、そのまま織田先生の勢いは留まることを知らず亮太郎の方へ――。


ガシッ!!


 一瞬だが、俺には亮太郎が織田先生を逆に拘束しているように見えた。いや、しかしそれは見間違いではなく、事実であり現実だった。亮太郎が、あの剛腕と巨体のムキムキの体つきをしている織田先生を拘束しているではないか!? 俺は夢か幻でも見ているのかと自身の頬をつねった。


――痛い。



 夢ではなかった。となると、やはりこれは現実……。何と言う事だ。変態とはいざという時には変態パワーを出して強い教師をも超越してしまうものなのかと俺は思った。

というわけで、プールが始まりました。そして、またしても登場ルナー。いやはや、結構いろんな属性をお持ちですよねこの人。ツンデレも含めて。ここで新たな情報をここでさりげなく。八女の零なんですが、実はヤンデレだったりします。え? どこにヤンの部分があるかって? のちのちわかります。そして、体育教師のお二方がここで登場です。しかし、いいですよねプール室って。大抵の学校で室内じゃなくて屋外ですから、プールの時期になって掃除する度に虫の死骸やらなんやらで嫌になるんです。みなさんもそんな思い出、ありませんか?

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