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魔界の少女  作者: YossiDragon
第二章:六月~七月 護衛役『現れし青髪の脅威(後)』編
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第三十五話「家宅捜索」・1

 陽もすっかり落ちて真っ暗な路地のあちこちに点きはじめる電灯。その狭い路地を、ロケットというよりかはミサイルと言った感じの拘束された状態の女性が低空飛行を続けていた。そして、その後ろを警部がロープに引っ張られて連れて行かれていた。


「ぬおおおおおッ! 止まれぇええええい!!」


「ふっ、残念やけど……一度発射したら約一時間は止まらへんで?」


「な、ぬわぁにぃぃぃぃぃぃぃぃッ!?」


 警部は引っ張られながらとんでもないと言わんばかりの声を上げた。銃口から出る炎が威力を増しさらに速度を加速させ、先へと進んでいく。




 それから約三十分が過ぎ、警部もそろそろ腕の筋肉がつりはじめてロープを握る手の感覚がなくなりつつあった。それにより、だんだんとロープを掴んでいた握力を緩め、最終的にはそのロープを手放してしまった。手放せばどうなるかは大体想像できる。警部は想像通り、地面に叩きつけられたままその場に放置状態にされた。


「……っぐ! おのれぇ、警察をバカにしおって!! あの女、許せんッ!!」


 警部はアスファルトの地面に拳を強く叩きつけた。


「~~~~ッ!!?」


 どうやら痛かったようだ。まぁ当たり前だが。




 その頃未だにアスファルトの地面すれすれを滑空し続ける青髪の女性はというと。


「どうやら握っている手が疲れてロープを手放してしまったようだな。よし、そろそろ止まっても良い頃だな」


 そう言うと、女性は引き金を引いていた指を離した。それと同時に銃口から出ていた炎が消え、女性はその場に着地した。


「ふぅ。ん? この近くから懐かしい魔力がすんなぁ……。この気配、まさか霄達!?」


 女性は隣の塀に視線を移した。どうやら、このブロック塀の先から魔力の気配が漂っているらしい。


「ちょっと見てみるか」


 少し興味が沸いたのか、女性はブロック塀に飛びかかり壁をよじ登った。そして上り終えると、そこから中の様子を窺った。そこはごく一般的な家で、中からがやがやと騒がしい話し声が聞こえてくる。しかし、窓で声を遮られているせいか、少しこもった感じの声で聞こえるために、その声が聞き取りにくかった。そこでもう少し近くでその声を聴こうと身を乗り出した、その時である。


「よっ――うわっ!?」


 女性は思わず体のバランスを失い、ブロック塀の上から家の庭の草木の生い茂った地面にドスンと大きな音を立てて落ちた。


――☆★☆――


「ん? なんだ?」


 家の中にいた俺は、その大きな音に反応しその場に立ち上がると、窓ガラスに手を伸ばし鍵を開けた。そして窓ガラスを開き外の様子を確認する。左右を確認したが、怪しい人物の影は見当たらない。最後に正面を確認する。

その時である。俺の視界に飛び込んできたのは、草木の地面に尻餅をつき、お尻や頭を優しくさする女性だった。青色の髪の毛に青い瞳をしており、髪の毛の所々には緑色の葉っぱがまとわりついていた。その様子から、ブロック塀をよじ登って中に侵入したのだと言う事は、容易に理解できた。


「あなたは……」


 目上の相手だということで丁寧な口調で尋ねる俺。

 が、向こうが名乗る前に背後から声が聞こえてきた。


「お、お姉ちゃん!?」


 露さんが声を上げた。どうやら、目の前にいる女性は露さんの姉のようだ。となると、あてはまる人物は完全に絞られる。まず、青髪と青眼という時点で水連寺一族……つまりは悪魔。更に、露さんの姉ということは、見た目的に長女である澪はないとして、残る位置は次女しかないのだ。なぜなら露さんが三女だからである。次女ということは、相当な力の持ち主だと俺は思った。しかも、ここに来たということは俺の命を奪いに来たに違いない。瞬時に俺はそう理解し警戒態勢をとる。すると相手は攻撃をするどころか意外な反応を見せてきた。


「ちょっ、ちょ待ちぃや! ウチは別にあんたと戦うためにここに来たんとちゃうんよ!それよりも、少しウチをかくまってくれへんか?」


 かくまう。つまりそれは誰かに追われているのを助けろいうこと。悪魔ともあろう人物が一体何に追い掛けられているというのだろうか。まさか、他にも悪魔が来ているのか。

 俺は自然とそういう考えに行きついた。しかし、次に関西弁を話す女性の口から出て来たのは違う言葉だった。


「実はウチ、警察っちゅうやつらに追われとるんよ!!」


「け、警察!?」


 なんでまた人間界の治安を守るための組織の人達から彼女が狙われるのだろう、と俺は思った。

 と、その時である。ウゥ~! と大きなサイレンが鳴り響き、俺の家のブロック塀の方に赤い光が見えた。


――あれは警察のパトカーのやつだ!



 俺はこれは確実に彼女が追われているのは間違いないなと確信した。また、それと同時に彼女を助けてあげようと思った。命を狙われているのならば助けはしないが、違うのであれば助けないことなどない。逆に助けてあげたら何かお礼でももらえるかもしれないと、俺はその時考えたのだ。


「早く! こっちです!!」


 俺は露さん達の姉である女性の白い手をガッシリと掴み自分の方へと引っ張った。


「お、おう!」


 女性はそのまま俺に引っ張られるようにして庭から俺の家へと入ってきた。いや、これでは少し語弊があるかもしれない。厳密的に言えば、俺が彼女を招き入れたような物なのだから。サイレンも鳴りやみ、俺は警察の人達が付近にいないことを確かめると、安堵しながら女性の方に向き直った。


「もう大丈夫ですよ? とりあえず、深呼吸して落ち着いてください……」


 優しくそう告げると、女性ははぁ~と大きなため息をつき、大きく深呼吸した。その様子を見て、まるで肩に乗っている重荷が取り払われたかのように俺は思った。


「うぅ~ん! っは~、ごっつ疲れたわぁ~! いやぁ~、人間界っちゅうもんも、あんまりいいところちゃうな! 平和にやっとってゆっくり出来る思っとったんやけど、誤算やったわぁ~!!」


 緊迫感がなくなるかのように突然流暢に話し出す女性は肩慣らしをしながら言った。


「は、はあ」


 俺は軽く相槌を打つことしか出来なかった。


「せや、まだ自己紹介しとらんかったな! ウチは水連寺一族の次女『水連寺(すいれんじ) (かすみ)』や! ヨロシクな!! え~っと……」


「ああ、神童響史です」


「響史!!」


 霞さんは俺と友好的に握手してきた。会ったばかりでどんな人かも分からず、本来なら警戒しているはずなのだが、なぜか俺は霞さんには安心感が持てた。それがなぜなのか俺には分からなかった。この、しっかりものの姉という感じが露さんよりも安心感を抱かせたのか、悪魔とは思えない感じに友好的に接してくるのが俺の気分を良くしたのかは分からない。


「とりあえず、ここにいれば安全ですから」


 ソワソワと未だに外の様子を気にする霞さんに、俺は安心できるように教えてあげた。それを聞いた霞さんは少しは安心出来たのか、俺に軽く笑みを見せた。


「ところで、さっきから気になってたんですけど俺の命を狙いに来たんじゃないんですか?」


「えっ? ああ、ちゃうで! ウチはな、ただ単に丸くてアツアツで、外はカリッと中はフワッとしたアレを食べたかっただけやねん!!」


「外はカリッと中はフワッとって……もしかしてたこ焼きですか?」


「おぉ~、それやそれや!! そのたこ焼きっちゅうもんを食べに来たんや!!」


「それだけのためにわざわざ人間界へ?」


「……つっても、元々別の任務でここへ来とったんやけどな。でもほら、知っとると思うけど今魔界では大魔王が冥界へ侵略を開始しとるやんか~? せやからその任務も無しってことになって、魔界へ帰るにしても手ぶらで帰るのは何だかウチも気が引けてん」


 その霞さんの話を俺の隣で聴いていた露さんが、笑みを浮かべて口を開く。


「そりゃそうよ! 手ブラで魔界へ帰るだなんて、そんなのあまりにも変質者すぎ――モグググ!!!」


 露さんのそのベラベラと喋る口を、笑みを浮かべて手で強引に塞ぐ霞さん。


「手ブラやのうて手ぶらや手ぶら!! 分かったか?」


 表情はそのままで口調を強める霞さんの顔を見て、俺はさすがは次女だなと思った。その気迫があまりにも強すぎたのだ。


「ご、ごめんお姉ちゃん! だからお願い離して!!」


「そう簡単に離す思たら大間違いやで!!」


 ニタァといたずらっぽい笑みを浮かべて背後から首に腕を回し拘束する霞さん。すると、苦しそうにしながら露さんが声をあげた。


挿絵(By みてみん)


「ぐうぅっ!! お姉ちゃんの胸が大きいから、背中にお姉ちゃんの胸が……っ!!」


「ふっ、あんたは霄達よりも胸が残念やから、あんまり密着せんでも胸が当たらんもんねぇ~」


 その言葉が露さんに引っかかったのだろう。ムキになって声をあげる。


「なっ!! た、確かに私は霄ちゃん達よりも小さいけど、でも胸が大きすぎて肩こりが酷くなることはないわよ!?」


 そう自分で言った直後、ズーン!! と露さん急に暗くなって抵抗力を失った。


「自分で言って悲しくなるなら、言わなければいいじゃないですか」


「う、うるさい! そんなこと言われなくても分かってるわよっ!! うわぁ~ん!」


 半眼で言う俺に露さんは首を振って言い返すと、拘束している霞さんの腕を振り払い、泣きながらどこかに行ってしまった。


「すまんな、騒がしい妹で」


「いえ。逆に賑やかな方が独りぼっちだった俺にとっても楽しいですから」


「そうか、せやったらええねやけど……ん? くんくん、あれ? 響史、あんた、たこ焼きかなんか買っとるん? なんかええ匂いがすんねやけど」


 頭をかきながら言う俺に、突然霞さんが、俺が昼頃に買っておいたたこ焼きの匂いに反応した。


「ああ、昼に露さんに頼まれて買っておいたんですよ。食べます?」


「えっ、ええんか?」


 目を爛々と輝かせながら許可を取る霞さん。何故かその時の表情は少し子供っぽかった。


「ええ。どうせ一パックはたこ焼き屋のおやじさんにタダでもらった物ですから」


「そうか、せやったらありがたく頂戴させてもらうわ」


 そう言って霞さんは俺から爪楊枝を受け取ると、透明のプラスチックの入れ物に十二個入っているたこ焼きの一つに突き刺してパクリと食べた。


「ん~! いや~、やっぱ美味いわ!! この味が何とも言えへんなぁ~!」


 霞さんはリアクションにしては少しオーバーな感じではあったが、このたこ焼きが美味しいということには全く持っての同意だった。


「霞さんはたこ焼きが好きなんですね」


「そうなんよ。ウチ、これだけあったらどこでも生きてけそうな気がするわ!!」


「それはちょっと無理かと思いますけど……」


 霞さんが本当にやりそうな雰囲気を出していたため俺は少し不安だった。


「あの~そういえば、霞さんは俺の命を狙ったりしないんですか?」


「あんたの命? 別にそんなもん狙ってへんよ? 第一、あたしはこういう派手な事はせぇへん主義やねん!! そもそも、戦いっちゅうのもあまり好きやあらへんしな!」


 どうやら霞さんは他の悪魔とは少し異なり、戦いをあまり好まないタイプのようだ。


「へぇ~、ちょっと意外ですね」


「そんなにウチが情けもない非情な悪魔やと思たんか?」


 少し悲しそうな顔をして訊いてくる霞さん。目を潤ませて泣き出してしまいそうな感じがした俺は、慌てて両手と首を振って否定の言葉をあげた。


「い、いえ! 悪魔って結構容赦ない種族だというイメージがあったので」


「なるほどな。確かにそう言う風なイメージも持たれがちやけど、ウチらって案外そこまで卑劣なことはせぇへんねん! どっちかというと、人間の方が恐ろしいで?」


「えっ、どこがですか?」


 俺は自分の知らない人間の一面があるのかと少し興味が沸き、霞さんに質問した。


「人間は人間を食ったりするんやろ?」


「それって随分昔のことじゃないですか?」


「そうなん?」


 たこ焼きを頬張りながら確認を取る霞さん。俺は確信性はないので少々曖昧な感じに答えた。


「お、恐らくですけど。それよりも、問題はこれからどうするかですね」


「せやな。いつまでもここにおったら、あんたにも迷惑かかるやろし」


「迷惑っちゃ、迷惑なんですけど。そこまで迷惑でもないっていうか――あれ?」


「ふふっ、あんた言っとること訳分からんようなっとるで?」


「そ、そうですか?」


 頭をかきながら少し頭の中を整理する俺。とりあえずこれからのことを考えなければならない。


――警察は今も尚霞さんのことを探し回っている。ここがいつバレるのかも時間の問題だ。だが、少なくとも一時間ほどでは見つかることはないだろう。よっぽどのことが無い限りは。とにかく今の間に何か作戦を練っておかなければならない。まずは、これから霞さんをどうするか。このままここにいさせてもいいのだが、仮に見つかった場合、自分達も共犯者として逮捕などという可能性も無きにしも非ず。となると、ここは一旦霞さんのこれからではなく、仮に警察が俺の家に来た場合を想定して考えることにしよう。



「警察が来たらどうしますかね」


「せやな。やっぱ見つかるわけにはあかへんし、隠れたりなんかした方がええんとちゃう?」


「そうですね」


――やっぱりそうなるか。だが、この家で隠れる場所といえばルナーが研究所にしてしまっている屋根裏部屋しかない。しかし、そこに警察が踏み込めばどうなるか。想像しただけで身の毛がよだつ。というのも、ルナーが作り出した発明品に彼ら警察が巻き込まれて大変なことになってしまわないかどうかが心配なのだ。それで彼らが驚いて引き揚げて一連の事件の事をきれいさっぱり忘れてくれればそれはもう万々歳なのだが。そう上手くいく世の中でもないわけで。



「どうしましょうかね」


 と、途方に暮れていた俺の背後から、露さんが歩み寄って来て背後から抱きついてきた。


「響史く~ん!!」


「ちょっ、こんな時に遊ばないでくださいよ!」


 背後から慎ましい胸と体を密着させて首に腕を回してくる露さん。一応年上ではあるが、俺よりも慎重が低い露さんがこんなことをしてくると年下にしか見えない。

 そして、俺の言葉に対して文句を言うように駄々をこねる言葉を発してきた。


「え~っ、いいじゃない! だって誰も遊んでくれないんだもの!!」


「えっ? 瑠璃とか麗魅とか、その他にも霄達とかいないんですか?」


「いないわよ!!」


 そう言われて俺は急に背中に悪寒が走るのを感じた。


「いないってどういうことですか?」


 少し緊迫感が走ってくる。もしかすると、何かあったのではないかと俺はゴクリと唾液を飲み下す。


「だからいないのよ!」


「二階は?」


「いない!」


「風呂場は?」


「いない!」


「じゃあルナーの研究室は?」


「そこは見てない!」


「じゃあそこですね」


「何よ! その、明らかにそこしかねぇだろ! みたいな顔は!!」


「いやだって、いるとすればもうそこしかないじゃないですか」


 俺は露さんが何をしたいのかがいまいち理解出来なかった。とりあえず、適当にあしらって話題を戻そうとする。すると、先程までの俺と霞さんの話を聴いていたのか、露さんが口を開いた。


「どうせなら、その警察とかいうやつらの記憶を抹消出来ればいいのにねぇ~!」


「そんな奇跡とも思えるようなことが出来るならとっくにやってますよ!! 第一、この時代にそんなこと出来るわけない――って、出来るじゃないですか!!」


「そうよ! ルナーちゃんなら出来るわ!!」


「ルナー?」


 霞さんはたこ焼きを頬張りながら首を傾げる。


「ああ、ルナーっていうのは五界を総べる支配者の一人で、鏡界の支配者なんです。それで、瑠璃と麗魅の叔母でもあって――」


「おばさん言うな!!」


「うわっ! いたのか」


「いるに決まってるでしょ? 大体あんたの声大きすぎるのよ! 屋根裏まで聞こえてたわよ?」


「そういえば瑠璃達ってそっちにいるのか?」


「え、ええ。いるけど……それがどうかしたの?」


 ルナーは俺におばさんと言われてプンスカ怒って頬を膨らませていたが、俺に瑠璃達の居場所を聴かれると、急に気を落ち着かせ自分の研究室に姪達がいるということを教えてくれた。

というわけで、響史達の前に現れた次女、水連寺霞。霞と露だとたまに見分けつきにくいですよね。申し訳ありません。

そしてこの次女さんは今回たこ焼き好きというわけで関西弁にしてみました。まぁ、喋り方が被らないようにするためには方言も仕方ないとです。

そんでもって、今回はルナーも活躍します。前回に引き続きお疲れ様です。

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