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魔界の少女  作者: YossiDragon
第一章:四月~五月 護衛役『現れし青髪の脅威(前)』編
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第五話「居候」

 俺の部屋に入ると、霄がまるで自分の家のようにすっかりくつろいで、コンビニで買ってきたツナマヨおにぎりを見つめていた。すると、俺が戻ってきたことに気付き、俺に話しかけてきた。


「響史。そういえば、これは何という食べ物だった?」


「えっ? あ、ああ……おにぎりだけど?」


「そうそう、おにぎりと言ったな。なかなか美味だな、また食べさせてくれ!」


「あ、ああ……」


――そんなに気に入ったのか? まぁ、いいけど。



 俺はひとまずあぐらをかいてその場に座ると、拳をグーにして床につけ霄に訊いた。


「なぁ。そういえば、護衛役ってのは十二人いて、全員同じ血を持った姉兄妹弟(きょうだい)で、最強の一族だって言ってたよな?」


「ああ、私以外で後十一人いる……」


「……」


 俺は心の中で考えた。


――それはつまり、後十一回程俺は命を狙われるということ。



 そんなこと、考えただけで嫌になる。そのためにもなんとかしなければならない。

 その時、ドアノブが回り部屋の扉が開いた。すると、頭の上にフワフワの白いタオルを乗せたルリがやってきた。湯上りで少し顔が火照っており、体から湯気が立ち(のぼ)り、上に行くほど薄くなって最終的には全く見えなくなる。


「ふぅ~……凄く気持ちよかった。ありがとう響史、ちょーどいい温度だったよ?」


「そうか、そりゃ良かった」


 俺はとりあえず、さっきの話も踏まえてルリに一つだけ質問する事にした。


「なぁ、ルリ。訊きたいことがあるんだが、これからお前らどうするんだ?」


 俺の質問に、ルリはハッとして霄を見つめ、その後俺の方に視線を戻して言った。


「そうだね。とりあえず、響史の家にいさせてもらいたいけど……いいかな?」


「えっ!? い、いや、別にいいけど……」


「本当にいいのか? 響史」


「ああ……どうせこの家、"今は"俺以外誰も住んでいないし、部屋もまぁ数個分余ってるし……ただ、問題はこの屋根だな。ローン残ってんのに……」


 参ったなぁといった顔をしながらポッカリ穴の空いた天井を見ていると、同じように顔を上げた霄が、ふっと笑って腕を組み俺に言った。


「そのことについてなら、さっきも言ったが私が直しておくから大丈夫だ。魔界から渡されているこの金でな!」


 やけに自慢げに膨らんだ袋を突きつけてくる霄。揺れる度に聞こえるそのジャラジャラ音から察するに、中に入っているのはお金なんだろうが……。


「ならいいんだが」


「人間界には、大工とやらはいるのか?」


「ああ。それなら、元々この家を建てたことがあるおっさんに訊いた方が早いだろ。おまけに、幸運にも近所に住んでるって話だし」


 俺は開けっ放しだった窓を閉めながら言った。


「ちょっと待てよ……? ってことは、お前ら俺の家に住むってことか? っていうことは……要するに居候。食費は何とかなるが、問題は生活だ。学校はまだ連休で休みだが、休みが開けたらどうするか。もう一つは、何処で寝るかだな」


 ブツブツと独り言を口にし俺が考え込んでいると、ルリが元気よく手をあげて提案した。


「じゃあ、このベッドに寝ればいいよ!」


「えっ? でも、このベッドは元々一人用だし……」


 確かに一人用にしてはやけに大きい俺のベッドだが、さすがにそれは無理があるような……。

 そもそも、一つ屋根の下どころか同じベッドで男女が就寝を共にするのは如何なものか……。


「三人ぐらい、頑張れば入るよ!」


「だが、体重制限が――」


「それはつまり、私達が太っていると言いたいのか?」


挿絵(By みてみん)


 俺は霄に殺気混じりの視線を向けられ、慌てて弁解した。


「違う違う! 俺はただ……、一人用に三人も入るのはどうかって話をしてるだけで」


「ならいい」


 どうやら納得してもらえたようだ。


「ふぅ……」


――全く、こりゃ結構大変そうだな。



 今のいざこざで考える気力が無くなり、仕方なくルリ達の考えでいくことになった。


「今日はもう遅いし、寝るか」


 俺は魔界から来た二人にパジャマを渡すため、姉ちゃんが俺ぐらいの時に着ていたパジャマを姉ちゃんの部屋から持ってきた。

 運のいいことに、姉ちゃんが昔の洋服などを持っていっていなかったため、いくつか代用することができた。他にもいくつか私服が残っていることも確認済みである。


「じゃあ、これに着替えておけ! 俺、ちょっとこのお茶を下に戻してくるから……」


「うん!」


 霄は何も返事をしなかったが、ルリは明るく返事をした。俺は眠たくてよろよろ動く体を無理矢理動かし、急いで一階へ行った。

 台所の冷蔵庫にお茶を戻すと、一階の電気を全て消した。これで光は二階の俺の部屋から届く淡い照明の光だけになった。

 階段を一段一段上がりながら、俺はこれからの生活について考える。しかし、眠気が思考の邪魔をし、上手く考えがまとまらない。今はとにかく寝たい。

 部屋に戻った俺は、パジャマに着替え終えた二人と一緒に一人用のベッドに入り、ふわふわの掛け布団を被せると(うずくま)りながら寝た。


「おやすみ……」


「おやすみ」


「おやすみ~」


 俺、霄、ルリがそれぞれ一言残し、就寝する。

 こうして、俺の(あわただ)しい一日が終わったのだった……。

というわけで、響史の長い一日が終わりました。一人用のベッドに三人。実際にやったことはありませんが、すんごく窮屈だろうなと思います。

次回は、新たなキャラが登場すると思いますので、よろしくお願いします。

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