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魔界の少女  作者: YossiDragon
第二章:六月~七月 護衛役『現れし青髪の脅威(後)』編
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第三十二話「変態男襲来!」・3




――☆★☆――




 場所は光影中央公園。ここは周りを住宅地に囲まれているためによく小さな子供がやってくる。しかしなぜか今は人っ子一人いない。

 その公園の中心に一人の人影。樹ノ下毅である。

 樹ノ下は腕を組み側にスコップを突き刺して仁王立ちしていた。そして、ふと横目で時計の針が指し示す時刻を確認する。針が約束の時刻を指示しているのを見ると、ニヤッと白い歯を見せ再び正面を向いた。すると目の前には、護衛役と二人の姫がはぁはぁと息を切らしながら立っていた。


「ふんっ! ……来たか。待っていたぞ?」


「はぁはぁ、体力も回復したし、力は十分に発揮できる!」


「ほう? そいつは楽しみだ! じゃあさっそく始めるか!!」


 そう言うと樹ノ下は一気に力を解放し一気に突っ込んできた。

 瑠璃と麗魅の二人は時計が設置されている場所の付近にあるベンチに座り、護衛役と木星の守護者との対決を見守る。

 護衛役の七人はそれぞれ武器を構え相手の攻撃を躱した。すると、樹ノ下の近くにいた霄が攻撃を仕掛けた。しかし、樹ノ下はそれにいち早く気付き、腕で剣を受け止めた。本来なら霄の妖刀――斬空刀で樹ノ下の腕は切り落とされているはずだが、何故か切り落とされていない。その理由は明らかだった。斬りつけていたのは彼の腕ではなく、その腕を覆っている木だったのだ。


「な、何だ!?」


「ふん! 『木製の豪腕(ウッド・アーム)』!!」


 そう言って樹ノ下は木を纏った腕を勢いよく振るった。すると、鞭のように払われたその木は霄の鳩尾に見事命中し、吹き飛ばされた霄はアスレチックに背中を強打した。


「ぐあっ!!」


「霄ちゃん!」


 露が武器の槍を構えながら名前を叫ぶ。そして、キッと敵を睨み付けると魔力を込め槍を振り回した。


「はあっ! 『千連水槍』!!」


「くうっ! うおおお!」


 樹ノ下は力を込め、露の攻撃を受け止めた。


「なかなか力はあるようだな。だが、次はどうかな?」


 その言葉と同時に片手を地面につく。すると、樹ノ下が突いた手の少し離れた場所の地面がモコモコと盛り上がり、そこから太い木材が姿を現した。さらにその木材の先は手のような形をしていた。


「『木製の巨手(ウッド・ハンド)』!! いけぇええええええ!!」


 樹ノ下の叫び声と共に動き出す木材の手。その手は近くにいた露とその後ろにいた霰を標的にし、二人を掴んだ。そしてその手は高々と上空に掲げられる。


「ぐうっ!! だ、大丈夫? 霰……ちゃん」


「わ、私は大丈夫ですけど、お……お姉さまは大丈夫ですの?」


 霰が、背中合わせに姉の露に心配の言葉をかける。


「ええ。でも、ずっとこのままってわけにはいかないわね!!」


 そう言うと露は、自らの手に水の魔力を張り、木材に手を当てた。


「はぁっ!!」


 声を張り上げると、木材から一気に水があふれ出し、腐敗して腐り落ちた。それにより二人は見事拘束状態から抜け出すことに成功した。


「ほう? そのような力もあるのか」


「私はここにいる中じゃ一番年上なのよ? これくらいの上級技くらい、普通に使えるわよ!」


「なるほど、だったらこれならどうだ!!」


 樹ノ下はさらに力を強める。すると、指輪が眩い光を解き放ち、強力なオーラを放った。同時に護衛役に強風が吹きつけた。強風によってその長い青髪がなびく。視界が強風で良好ではない中、護衛役が見たのは、彼の周囲に出ている木材の手だった。

 護衛役はその手に注意しながら至近距離に接近した。そして標的に向かって霄と零の二人が攻撃しようとした。しかし、二人の剣戟をいとも簡単に受け止めた樹ノ下は、その場から距離を取ろうと動く霄と零の二人の足をガシッと掴むと、二人を勢いよく足を引っ張って持ち上げ、公園の渇いた地面に叩きつけた。


「ぐあっ!!」


「がはっ!!」


 二人は地面に叩きつけられて負傷した。


「くっ、強い!」


「このままじゃ、私達が負けちゃいます……!」


 地面に武器をつき、杖代わりに自分の体を支える霄と零。その近くで他の護衛役も唇を噛み締めながらどうすれば目の前の敵を倒すことが出来るかを精一杯考えていた。




 その頃、護衛役の一人である雫はというと、呑気にハミングしながらポケットに手を突っ込み路地を歩いていた。

 そんな時、雫はふと横を見た。そう、彼が通っている道は、偶然にも光影中央公園の近くだったのだ。そのため雫は、ふと横を見た瞬間に映る衝撃的瞬間を見つけてしまった。それは、あまりにもの恐怖でその場から逃げ出すことの出来ない状態の九女、霖に対して勢いよく突進してきている大男の姿だった。それを見た雫は急に眼の色を変え、瞬間移動すると瞬時に妹の霖の目の前に現れ突っ込んでくる大男を水のバリアで防いだ。


挿絵(By みてみん)


「てんめぇぇええええ! 人の妹に何してやがんだッ!!」


「ふんっ! 坊主、お前も護衛役か? 妹ということは、お前はここにいるお嬢ちゃん達の兄貴ということか」


「くッ! おい露!」


「な、何? 兄さん……」


「あのバカはどうした」


「き、響史くんのこと?」


「そうだッ!」


 覇気のある言葉一つ一つにビクつく露。雫のキレかかった声音を聞くのがあまりにも久しぶりだったからだ。


「それなら、鍵屋に新しい鍵をもらってくるって鍵屋に行ってるけど?」


「なぁにぃ? あのボケぇ……もういい! あいつには一度ビシッと言っておかねぇとな……。だが、それよりも今はこのデカブツを倒した方がいいみてぇだな」


 雫は拳にグローブをはめ、関節をボキボキと鳴らす。その表情はまさに鬼としかいいようがない。


「覚悟しろッ!!」


「おもしろい!! お前は少しくらいこの俺を楽しませてくれるんだろう?」


 そう言って樹ノ下は地面に手をつき、木材の手を出現させた。その手、雫の行く手を阻む。


「ちッ! メンドくせぇな……。これでもくらいやがれ!! 『水速』!!」


 雫は脇を閉め拳を握ると、一旦それを後ろに引き、勢いよく突き出した。また、それと同時にその拳に水の魔力が纏う。それにより、樹ノ下の出現させた木材の手が粉々に粉砕された。


「ほ~ぅ! これは驚いた。なるほど、そこそこやるな。ではこれはどうだ?」


 そう言うと樹ノ下は、両手をパンと音を鳴らしてくっつけると、一気に魔力を高めた。すると、腕に木材が纏わりついた。


「くらいやがれ! 『木製の豪腕(ウッド・アーム)』!!」


「そんな攻撃、俺には効かねぇぜ?」


「そいつはどうかな?」


 樹ノ下はニヤリと何かを企んでいるかのような不気味な笑みを浮かべると、そのゴツい腕を思いっきり真横に振るった。すると、腕に纏わりついている木材が釣竿の様にグニャッとしなり、雫の脇腹に直撃した。


「ぐうッ!!」


 雫はそのままアスレチックに激突した。


「ぐはッ!! ……ってぇ!」


 脇腹を優しく擦りながら苦痛の表情を浮かべる雫。その眼には少しばかり涙が浮かんでいた。


「どうした? もう終わりか?」


「てめぇだけは許さねぇ。こいつでしめぇだ! はぁ~~っ、『万連水拳』!!」


 雫はうんと魔力を高める。それにつられて周囲の小石がガタガタと揺れだしふわぁ~っと浮かび上がる。そして一気にその魔力を解放すると、目の前の敵に向かって目にも留まらぬスピードでパンチを繰り出した。

 しばらくしてその攻撃が止むと、樹ノ下は体中打撲の痕だらけになっていた。


「ぐうっ……! ぐ、が……ぁ」


「諦めろ人間。てめぇの負けだ!」


「何を言う! 俺はまだ戦える!!」


「その人間を操っているのか知らねぇが、その人間の体はもう限界だ! これ以上やれば体の方が朽ちるぞ?」


 雫に忠告を受ける樹ノ下だが、決して首を横に振らない。その上彼はまだ雫に抗おうと抵抗の意思と言わんばかりの攻撃を見せる。そのことに呆れたのか、雫ははぁ~とため息をつくと樹ノ下の顔を鷲掴みにし、自分の手から顔面を包み込むように水泡を出現させた。


「しばらくその水で頭を冷やしやがれ!」


 そう言うと、雫は樹ノ下の顔面を握る力を強めた。親方と言われる彼もさすがに悪魔の力には敵わないのか、すっかり諦めたような表情を浮かべてぐったりしている。その苦しそうな顔を見て居た堪れなくなったのか、霖が兄である雫の腕をガシッと掴み、ウルウルした目で兄の雫を見つめ言った。


「もうやめてお兄ちゃん! これ以上やったらこの人死んじゃうよ!!」


「こいつはお前らを、何よりもお前を殺そうとしたやつだぞ? 例え非力な人間であってもそればかりは許せない」


「お願い!!」


 霖の必死な懇願に、だが断る! という程鬼ではない雫は、仕方なく拳の力を弱め水泡を消した。

 樹ノ下はその大きな巨体をフラつかせその場に前向きに倒れた。ドスンという音と共に砂煙が舞い上がる。


「し、死んじゃったの!?」


「いや、死んでない。気絶してるだけだ……」


 雫がそう言うと、樹ノ下が目を覚まし口を開いた。


「み、見事だ……。さすがは護衛役、その力を認めよう。この守護者の証を受け取るがいい」


 そう言って樹ノ下は雫に守護者の証である指輪を渡した。しかし、雫はまるで興味ないというようにそのままバケツリレーのように霖へと手渡した。


「えっ?」


「それが欲しかったんだろ?」


 そう言うと雫はその場からさっさと消えようと公園の入口へと歩いて行った。それを露が止める。


「待ってお兄ちゃん!」


「ん?」


「どこに行くの?」


「家だ。……そうだ露、ついでにあのバカに伝えておけ! お前には話があるから後で家に来いとな」


「わ、分かったわ……」


 露は雫のその険しい表情を見て少し後ずさりしながらも頷いた。

 みんなが沈黙してその場に佇んでいたその時、突然樹ノ下が訳の分からないことを口走り始めた。


「おい、お嬢ちゃん達……俺、どうしてこんなとこにいんだ?」


「はっ? 何言ってんだ! あんたが急にあたし達を襲ってきたんだろ?」


「俺がお嬢ちゃん達を? ガッハッハ!! 冗談はよしてくれ!! 俺は女の子に手を上げるようなヤボなマネはしねぇ!! 絶対にだ。何でこんなとこにいんのかよく分かんねぇが……おっと! もうこんな時間だ!! 急がねぇと坊主が首を長くして待ってるかもしんねぇぞ?」


 彼は時計の針が五時を指し示しているのを見て慌てた様子で言った。

 樹ノ下――いや、親方は響史が鍵屋に向かう前の状態に戻っていた。とすると、さっきまでの親方は一体誰なのだろうか? 火星の守護者である鈴の場合、武器を構えると人格が変わり別の人格が出てくる。この男もまた玲と同じパターンであろうか。




――☆★☆――




 悪魔の少女達と親方が家に帰ると、響史の家の玄関前に響史本人がいた。

 響史は家に帰ったはいいが他の皆がいないために、その場でず~っと皆が帰ってくるのを待っていたのだ。


「あっ、お前ら! 一体どこに行ってたんだ? ったく、親方もいないしどこに行ったのかと思ったぜ!」


「ごめんね響史?」


「まぁいいって! あっそうだ! 親方鍵持ってきましたよ? 後、瓦は庭の方に……」


「おうそうか! んじゃあすぐに終わらせるからお前らはゆっくりしてていいぜ?」


「いいんですか? 手伝いますけど?」


「素人にやらせるよりかは一人でやったほうが早く終わるからな!」


「まぁ、それもそうですね!」


 俺は親方に言われ納得し庭に残すと、なぜか無言の瑠璃達と一緒に家の中に入って行った。


「どうして誰も喋らないんだ? それに、元気なさそうだし」


「いや、その」


「あっ。お、お兄ちゃん……」


「ん?」


 霖が俺から視線をそらすようにして俺に何かを言おうと近づいてきた。


「どうかしたのか?」


「こ、これ……」


 そう言って霖から受け取ったのは、紛れもない守護者の証だった。


「どうして霖が!?」


「それについてなんだけど……」


 今度は露さんだ。一体何を言うつもりなんだろう。いつもなら俺に何かしらの冗談の言葉を述べて俺のリアクションを楽しむ露さんが、なぜか今はしょんぼりして暗い感じだった。


「どうしたんですか? 露さんらしくない」


「その……兄さんが、響史くんに用があるって……」


「雫が?」


 俺は首を傾げた。一体何用だろうと思った。


「確か隣だったよな」


 そう独り言を呟き、俺は玄関扉に手をかけ外へ出ると、隣に新しく出来たアパートの三二五号室の扉の前に立った。


――何だろう。ドキドキする。ていうか、どうして霖達が太陽系の守護者の証である指輪を持ってたんだ? まさか、あの時爆発音が聞こえてた時か!?



 俺は様々な思いを頭の中で駆け巡らせ呼吸を整える。そしてピンポーンとチャイムを鳴らした。そこから出てきたのは、青髪で蒼い瞳をした雫だった。すごく目つきの悪い眼差しで俺をじと~っと睨みつける雫。そっちから呼んだくせに何様だ!? と俺は思った。


「よ……よう!」


「てめぇ、よくもッ!!」


 そう言うと、急に雫は俺の胸ぐらを掴み、グイッと上にあげた。

 俺の体が宙に浮かび足がブランと垂れる。


「ど、どうしたんだよ!? 急に」


「どうしたんだよ? じゃねぇ!! てめぇ、よくも俺の妹に怪我負わせやがったな?」


「な、何の事だよ!?」


「てめぇ、いつもあいつらといて気付かないのか?」


 雫に言われ、俺は咄嗟にさっきいつも騒がしいあいつらがショボンとして喋っていないのを思い出した。


「まさかあれが……」


「やっぱり思い当たる節があるみてぇだな!!」


「一体、何があったってんだよ!!」


「ふんッ! 霖に何か渡されなかったか?」


「そういえば、守護者の証を――まさか!?」


「そうだよ! あいつらはてめぇの代わりに守護者のやつと戦ってたんだよ!! そして、あいつらは相当やられていた! 俺が見つけて助けに行ってなかったら恐らくやられてた! なぜあいつらがやられたか。その理由は単純だ。てめぇがあの場にいなかったからだよ!!」


「そ、そんなの……俺のせいじゃねぇだろ!! 俺は親方に頼まれて、鍵を……」


「異変に気づきもしなかったってのか!?」


「そ、それは……」


 俺は思わず顔を俯かせた。雫は呆れたような顔で俺の胸ぐらを掴んでいる手を放した。


ドサッ!!


「いてっ!」


 俺は体を地面に打ち付け、打ち付けた場所を優しく擦りながら雫を見た。すると、雫は俺に言った。


「まぁいい。本題はここからだ。てめぇには俺の妹を傷つけた罰を受けてもらう」


「ば、罰!?」


 俺は少し冷や汗をかいた。悪魔の罰ゲーム、それは一体どんなものだろうと少し恐怖を感じたからだ。


「というわけで今度の日曜日、朝の十時に俺の家に来てもらう。いいか? 必ず一人でこい。それが条件だ……じゃあな」


 そう言うと雫はバンッ! と扉を荒々しく閉め、ご丁寧に鍵まで閉めた。

今日はもう外に出ないと言う意味だろうか。とりあえず俺は、はぁと嘆息してマジかよと一言呟き家へと帰った。


「お帰りお兄ちゃん! どうだった――って、うわあ! どうしたの? 随分顔やつれてるけど?」


「ちょっとな……」


 心配そうに声をかけてくれる霖に俺はそう返した。


――やべぇ……。罰ゲームが不安でならない。一体、罰ゲームって何なんだ!?



 俺はそんなことが頭の中でグルグル回転したまま眠りについた。その夜、俺が罰ゲームの内容が気になってなかなか寝付けなかったことは言うまでもない……。

というわけで無事決着です。親方もどうやら操られている?節があったようです。まぁ、鈴の場合は二重人格者だったのですが、今回の親方はどうなんでしょうね。そして、妹のピンチに颯爽と登場イケメン兄貴の雫登場。

しかし、毎度毎度この人が登場するたびに雫はシスコンなのではという疑惑が浮上するという。しかも、響史をわざわざ自宅に呼び出して罰ゲームを与えるとまでいう始末。これはもう確信犯でしょ。

てなわけで、次回は響史が雫による罰ゲームを受けます。しかも、ちょっとの間出てきていなかったあのちっこい少女も出てきます。

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