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魔界の少女  作者: YossiDragon
第二章:六月~七月 護衛役『現れし青髪の脅威(後)』編
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第三十二話「変態男襲来!」・2


――☆★☆――


「ったく、響史はホント心配性だよな~! あたし一人でも大丈夫だって言ってんのに」


 ぶつぶつと呟きながら左右をブロック塀に囲まれた狭い道を歩く霙。そして、親方こと樹ノ下毅の家にやって来た霙は、少しオドオドしながら誰もいないことを確認すると家の中に入って行き、静かに目的の物を探そうと近くを漁り始めた。その姿はまさに空き巣や泥棒といわざるを得ない。


――どうして。別にあたしは悪い事やってるってワケじゃないのに。こんなにも緊張するんだ? でも何だろう。なんだかこういうのワクワクする。



 霙は今まで体感したことのない感覚を感じていた。探求心……何か目的のあるものを探し追い求める心。それに少なからず目覚め始めているらしい。

 と、その時、霙はハッとしてあることを思い出した。


――そういや、道具一式って何だ?



 そういえばと頭の中に思い浮かべる霙。確かに悪魔である彼女にとって、樹ノ下の言う道具一式が何なのかは分からない。そうなってくると、彼女は困惑するしか行動のしようがなかった。


「はぁ、しくじったな。響史に訊いて来ればよかった」


 はぁとため息を洩らし髪の毛をワシャワシャとかき乱す霙。少しメンドくさいなと心の中で思っている、そんな感じのする仕草だった。しかしこんなことをいつまでもしていたとしても時間が無駄になるだけ。時間は有効活用するべき。時間は待ってはくれないのだ。第一、遅くなればいつまでもあの変態男が家にいることになる。それは自分にとっても困る、そう思ったのか、霙は意を決して来た道を走って戻って行った。


――☆★☆――


 陽もすっかり上がりそろそろ昼ごはん時。しかし、今はそれどころではない。

 俺はメジャーで庭の面積を測り終え、デッキに腰かけるとはぁと気が抜けていくようなため息をし、団扇(うちわ)――ではなく、手で自分の顔を(あお)いだ。顔もすっかり赤くなり、汗もビッショリかいている。体中が汗ばんで気持ちが悪い。屋根の修理とやらが終わったらとりあえずシャワーを浴びたいものだ。何よりも、この汗臭い臭いを漂わせたまま側にいる瑠璃達と触れ合いたくなかった。

 俺はそこまで激しくはないものの少し潔癖症の部分がある。その証拠に床が汚れいていたり物が散らかっていたりすると、どうしてもすぐに片づけて綺麗にしたくなるのだ。


「疲れたな」


「はいお兄ちゃん、お水だよ!」


「おうサンキュー!」


 俺は霖が親切にも注いでくれた新鮮なミネラルウォーターをゴクゴクと喉を鳴らしながら一気に呑み干し、口元から垂れてくる水を手の甲で拭いふぅ~と息を吐いた。


「ああ……。おお~、なんか体の熱が抜けてく感じだぁ~」


「よかった。お兄ちゃん随分頑張ってるみたいだからね……。でもその感じだとまるで畑仕事終えたお爺ちゃんみたいだよ?」


 笑顔で言う霖に、食卓のテーブルを囲んでいるうちの一人である霄がふっと小さく笑った。

 その声が俺に聞こえ、俺は少しムッとして訊ねる。


「おいそこッ!! なんで笑ってんだよ!」


「いや、響史が……お爺ちゃん。……ぷぷっ!!」


「いや笑いごとじゃねぇだろ!!」


 俺はちょっとちょっとと言った風に霄を指さす。

 と、その時、霙が息を切らしながら戻ってきた。


「はぁはぁ、きょう……し!」


「ど、どうしたんだ? そんなに息切らして。ん? あれ、お前道具一式は?」


「その……道具一式、のこと……なんだが、……道具一式って何だ?」


 両膝に両手をつき、荒い呼吸を整える霙。


「分かんないのに行ったのか?」


「ああ、しくじっちまった。響史、それで道具一式って?」


「俺もよく分かんねぇ……」


「だったらそう言えよ! ったく……無駄な時間だった」


「そうだ! 親方に訊いてみよう!」


「げっ!? あ、あの……変態男に?」


 明らかに嫌そうな顔をする霙。


「仕方ねぇだろ、どっちも知らねぇんだし。訊くとすればあの人に訊いた方が早いだろう?」


「そ、そりゃ……そうだけど」


 霙はついに観念した。

 そして俺は二階へ重い足を上げ向かった。霙もその後に続く。

 俺の部屋の前に立ち扉を開けようとしたまさにその時である。俺がドアノブに手をかけると、中から奇妙な声が聞こえてきた。

 俺達二人は互いに顔を見合わせドア越しにその声を聴いてみた。


「これ……気持ちいいんですの?」


「ああ、そこそこ! そこがいいんだ。もっとこう、強く押さえて……」


「は、はいですの」


「ちょっ、霰……そんなに強く握っていいの?」


「だってこの方がこうしろと」


「猫耳のお嬢ちゃんは下の方を握ってくれないか?」


「ふえっ? し、下を!?」


「大丈夫だ、怖くないからな。ほら早くしてくれ」


「う、うん……」


 中から聞こえてくる何とも言えない会話。その会話を聞いていた俺達二人は互いに顔を見合わせ、顔を真っ赤にするとバンッ!! とその扉を激しく開け放ち声を荒げた。


「ちょっと! 親方何してんですか!!」


「霊姉ぇと霰も何やってんだよ!!」


「み、霙お姉さま!?」


「にゃっ! 霙!? それに、響史も!」


「びっくりしたな~、脅かすなよ坊主」


「そんなことよりも、この二人に何させてたんですか!」


「何って、見りゃ分かるだろ? マッサージだ」


「ま、マッサージ?」


 俺は今まで上がっていた熱が冷めていくのを感じた。冷静になるにつれ、きょとんとしてしまう。


「ど、どういうことだ?」


「だから、俺はこの二人にマッサージを頼んでたんだよ!」


「でも、下の方握れって……」


「ああ、ふくらはぎのことだ。最近歩き詰めのせいかよく凝るんだよなぁ~。だからふくらはぎを猫耳のお嬢ちゃんに、肩や背中をこっちのツインテールのお嬢ちゃんに頼んでたんだ……」


「な、な~んだ、マッサージだったんですか……」


「何だと思ってたんだ坊主? まさか、アレだと思ってたのか?」


 親方が悪質的な笑みを浮かべ俺を見る。


「ち、違いますよ!!」


「ん? ていうか、道具持ってきてねぇじゃねぇか!」


「そのことなんですけど、道具一式って一体何のことなんですか?」


「はぁ、ったくそんなことも分かんねぇのか、しょうがねぇな……。とりあえず庭の面積は計り終えたか?」


 マッサージを終え、肩慣らしということで腕を回し首を左右に傾ける。


「ええ、まぁ一応……」


 俺は親方の大きな手に小さな紙切れを渡した。


「おう、確かに! んじゃ、一旦俺んちに戻って道具一式がどれか教えるからついてこい!」


「は、はあ」


「ま、まさか……あたしも行くのか?」


「あったりめぇよ! お嬢ちゃんの怪力は俺が見込める程の力だからな!! それ相応の働きをしてもらわにゃならん!!」


 そう言って親方は俺達二人と一緒に一階へと降りていき、再び親方の家へと向かった。




 家に着くと、俺達は道具一式を持たされた。


「親方、わざわざ戻ってきたんですから親方が運んでくださいよ~!」


 俺は重たい道具一式を何とか持ち上げながら言った。


「何言ってんだ! 俺はこれからやることがあんだ!! ちょっとそこどけ! 今から木材出すから」


 親方はその強靭な腕に立派な木材を抱え込み、それを表に出した。


「こんなにたくさん、……確か親方車持ってなかったし、歩いて運ぶとしても一体何度運べばいいのやら」


「ん? 何言ってんだ? 無論、俺が運ぶに決まってるだろ? それも向こうにわざわざ行かずにな」


「そんな無茶なこと出来るんですか?」


「まぁ見てろ!」


 自慢気に鼻を人差し指で触り、鼻をすする親方。そして、木材を軽々持ち上げると、まるで投げ槍のようにその木材をブンッ!! と、空へ向かって勢いよく投げた。


「なっ!!?」


「ちょっ、何やってんだよ!!」


 俺と霙の二人は親方が何をやっているか理解できず訊いた。


「何って、坊主の家に木材運んでんだよ」


「木材を――って! それ、俺ん家に被害が出るんじゃ……!?」


「大丈夫だって! 坊主が測ってくれた面積がちゃんとあってれば……の話だがな」


 親方はボソッと横目でそう呟いた。


「ああ、それで測れって言ってたんですね!」


「おうよ!」


「な~んだ……ただの変態男じゃなかったんだな!」


「その呼び名はなんとなくアレだがな」


 親方は少し肩を落としてそう言った。

 そして木材を全て投げ終えると、俺達三人は再び俺の家へと向かった。




 俺達が家に着いた時には、走り過ぎのせいかもう体力の限界だった。無理もない。本来ならば、この時間帯は昼ご飯を食べて失った体力も回復しているはずだが、今日はまだ食べていないため、体力を回復できていないのだ。それではこうなってしまうのも仕方がない。その上、足の筋肉がパンパンでもう歩ける状態ではなかった。親方がしてもらったみたいに霰と霊にマッサージしてもらいたいくらいだ。


「はぁはぁ、疲れた。って、うわぁ! 本当に木材がちゃんと届いてる!」


「す、すげぇ! あたしにもこんなことできないぜ」


――悪魔にも無理って、一体どんな力なんだ? 親方って一体……。



 庭に親方よりも一足先についていた俺達は、親方の到着を待つためにデッキにとりあえず座った。何度も走って足が限界な俺達二人は、デッキに座ると霖に冷水をもらった。それを飲みながら一息つく。すると、冷水を飲み干したところで親方が帰ってきた。


「おう! どうやらちゃんと届いたみたいだな!!」


 庭のグリーンカーペットに敷かれた木材を見て親方が言う。


「さてっ! んじゃあ、そろそろおっぱじめるか!!」


「屋根の修理ですね?」


「おうよ! さあ坊主、とりあえず屋根の上に上がらにゃいかねぇから、ハシゴ持ってきてくれねぇか?」


「梯子ですか? ん~、あったかな……」


 俺は過去の記憶を頭の中から探りながら倉庫の方へ向かった。

 それからしばらくして、俺は自分の身長以上ある梯子を両手でしっかりと抱えて庭へ向かった。


「も、持ってきましたよ」


「おうご苦労様! じゃあここに置いてくれ!」


「は、はい」


 俺はよっこいしょっとはしごを置き、屋根に先端部分が架かるように梯子を立てかけた。


「これでいいですか?」


「おう! んじゃ、ちょっくら屋根の穴の大きさ見てくらぁ」


――さっき二階にいた時見なかったのか?



 心の中で何故二階で確認しなかったのだろうと思いながら俺は再びデッキに座った。

 五分くらい経ってだろうか。親方が梯子をガタガタ言わせながら降りてきた。無理もない、この巨体だ。この重さが動けば、鉄の頑丈そうな梯子も弱弱しい普通の梯子に思えてくる。


「よし、屋根の穴の大きさは測り終えた。後は、その大きさに合わせて木材を切って打ち付けりゃあ屋根は修理出来んだろ。後、足りない分の瓦は知り合いに頼んどいた。五時くらいに届くらしいから、その間に玄関も直しといてやるよ!!」


「ありがとうございます!!」


 俺は深々とお辞儀をしながら言った。




 幸いにもドアを修理するのはほんの短時間で済んだ。

 曲がったネジは余っている物を使い、後は壊れた鍵の部分を換えればいいだけだった。

 そんな時だった。


「ちょっくら坊主、取りに行ってきてくれねぇか?」


「えっ、俺がですか?」


「俺も今手が離せねぇんだ、頼む!」


「わ、分かりました。じゃあ麗魅、他の奴らのこと頼んだぞ?」


「え、ええ……」


 少し意外だったのだろう。まさか自分に頼んでくるとは思っていなかったのか、麗魅は戸惑い気味に頷いていた。すると、俺の頼んだ相手に納得がいってないのか、麗魅の双子の姉である瑠璃が頬を膨らませて俺に文句を言ってきた。


「ちょっと響史! どうして私には頼んでくれないの?」


「悪い瑠璃。今、そういうのにかまってる暇ねぇんだ!! 帰ってきたら付き合ってやるからそれまで大人しくしておいてくれ!! んじゃな!!」


 俺はそう言って半ば不安な気持ちを抱えながらも鍵屋へと向かった。




――☆★☆――




 昼ご飯を食べる時間はとうに過ぎ、もう時刻は三時近くという時。

 突然、親方こと樹ノ下がふっふっふっと笑い出した。


「さてと、これで邪魔者はいなくなったな……」


「邪魔者?」


 霄が腕組みをして樹ノ下に訊く。


「ふん、そうだ。ずっと家にいられちゃこっちとしても困るからな。ようやく護衛役だけになった。まぁ、二人の悪魔の姫君もいるみたいだが?」


 悪魔の少女達は驚いた。無理もない。ただの人間に自分たちの正体を既に知られていたからである。


「どうして私達のことを?」


「俺は樹ノ下毅。太陽系の『木星の守護者』だ。これからお前達にはある試験を受けてもらう」


「し、試験?」


「そうだ、試験だ。この試験はただの試験じゃあない。お嬢ちゃん達には俺と戦ってもらう。そんで、お嬢ちゃん達の力が如何ほどのものか見極める。もしもアウトだった場合、試験は不合格。この守護者の指輪は渡さない」


 そう言って樹ノ下は、大きな指で小さな指輪を見せた。


「ここで戦うの?」


「んにゃ、ここで戦えば周りの住宅地にまで被害が出ちまうからな。場所は変える」


「どこにするの?」


「そうだな、光影中央公園……ってのはどうだ?」


「それで構わない。その代わり、昼ご飯をまだ食べていないからその後でも構わないか?」


「そうだな、いいだろう。では、集合場所は光影中央公園。時刻は三時三十分だ! それともう一つ、坊主にはこのことを伝えてはならない。以上だ!!」


 樹ノ下はそう言い残すと、扉を開けどこかに行ってしまった。


「ま、まさかあの人が守護者だったなんて……」


「あんな変態にそんな力があるなんて到底思えないんだけどな~」


「まぁそう言わずに。響史くんに伝えちゃいけないってことは、つまり私達だけであの人を倒さないといけないってこと。皆出来そう?」


 今いる中で一番年上である露が、妹や二人の姫に訊く。


「出来るも何も、やるしかないだろう。第一、相手はたかが人間。私達の敵ではない!」


 霄が腕組みをして頷きながら言った。


「でも、金星と地球の時は手こずったわよね?」


「むっ! そ、それは……そうだが」


 姉に弱いところをつかれ、少し後ずさる霄。


挿絵(By みてみん)


「とりあえず、昼ごはん食べない? 私、お腹空いちゃった! 簡単なもので済まさないと、三時半に間に合いそうにないからおにぎりにしよっか!」


 重い雰囲気を脱するように霖がそう提案する。すると、若干一名がある単語に過剰反応を示した。


「何!? おにぎりだと?」


「えっ?」


「おにぎりは絶対にツナマヨだぞ?」


「あっ、うん……」


 霖は姉の霄に詰め寄られコクリと頷いた。そして急いで台所へ向かい、せっせと残ったご飯でおにぎりを作った。

というわけで、樹やぁ、こんな変態がまさか守護者だとは誰も思わないでしょうね。でも、これが守護者だったりするわけです。ちなみに次に出てくる土星の守護者はまだまだ先です。その間に学校行事のイベントだったり家でのトラブルだのいろいろあるのです。

にしても、マッサージのシーンはいろいろと想像してしまうものがありますね。しかし、セクハラされたのに霊と霰はよくマッサージに応じましたね。不思議です。

そして、昼ごはんがおにぎりだけという。なんという軽食。でも相変わらず霄はツナマヨ好きですねー。まぁ自分も好きですが。

さて次回はいよいよ木星の守護者とのバトルです。ちなみに次回ではあの人も登場します。

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