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魔界の少女  作者: YossiDragon
第一章:四月~五月 護衛役『現れし青髪の脅威(前)』編
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第二十六話「二人の守護者」・1

 今日もいつもの様に学校に登校する俺…。ちなみに今日は金曜日…、今日学校に行けば明日は週休日で休み…。

 俺は、いちごジャムを乗せた食パンを口の中に頬張り寝起きの悪いやつらのことは放っといて、しっかりしている零に鍵を預けて先に学校へ向かった。


「はぁはぁ…、走れば何とか間に合うか…」


 今現在、例の秘密の抜け道は通行止めで行けないため、俺は今日も別の道を通って学校へと向かう。全く早く終わってほしいものだ。

 そして、学校へ一直線に続く大きな道へ出るために目の前の角を左に曲がろうとしたその時、急に誰かがぶつかってきた。


「いてっ!」


「うっ…っつ~あっ! すみませんッス! あ、あああのちょっと急いでいますんでこれで失礼するッス!!」


 そう言って、うちの学校の制服を来た男子生徒は、まるで何かから逃げるように逃げて行った。


「ったく…なんだったんだ今の…。あの制服の色…三年生?」


 俺は先ほどの生男子生徒のネクタイの色が黄色だったことを思い出し、即座に二年生であることを確認した。


「でも、一体何から逃げてたんだ?」


 と、一人で呟き先へ進んでいると、またしても誰かとぶつかった。


「いった~…ったく何なのよもうっ!」


「いってぇな…ちゃんと前見て歩けよ…」


「何よ…そっちこそちゃんと確認しなさいよね!!」


 俺がヒリヒリ痛む腰をさすりながらゆっくり顔を上げると、目の前にいたのは金髪でセミロングヘアの碧瞳をした少女がいた。また、その少女もうちの学校と同じ生徒で二年生だった。


――ったく…二年生はこんなにもおっちょこちょいのやつらがいるのか? そんなんで本当に大丈夫か?



 などと俺は心の中で思いながらゆっくりその場に立ちあがった。


「立てますか?」


 一応俺は相手が先輩だということで敬語で対応した。


「え、ええ…。ありがとう…私の名前は『金城(きんじょう) (ひとみ)』生徒会所属なの…。ところで、ひょろっとした弱気の高等部の二年男子生徒を見かけなかった?」


 俺は先ほどの少年かと思いそのことを話した。すると金城先輩は、しばらく考え込むとさらにその少年について追及してきた。


「その人って…こう、前髪が少し長くて…細身で変な口調の人?」


「ああ…、まぁそんな感じです!」


「…分かった、ありがとう! ごめんね、時間取らせちゃって…あなたも急いで学校に行きなさいよ? 神童響史君…?」


「はい…えっ!?」


 その金城先輩の最後の一言に俺は引っかかった。なぜ初対面の相手が俺の名前を、しかも苗字まで知っているのかということに…。

 俺はふと腕時計で時間を確認した。もう時間がない。俺は急いで学校へ走った。




 昼休み…。俺は珍しく亮太郎と弁当を食べていた。

 その時、ふと生徒会の話題になり、俺は今朝生徒会の一人と会ったことを思い出し、亮太郎にそのことを話した。すると、俺に羨望の眼差しを向けて目を輝かせてこう言った。


「それって、金城瞳先輩だろ?」


「なんだ、知ってるのか?」


「知ってるも何も…有名だろ?」


「そう…なのか?」


「ったく…お前何にも知らないんだな…」


「悪かったな…」


 俺は少しムッとした。


「それで、その金城瞳…先輩? って、生徒会で何の仕事をしてるんだ?」


「え~と、確か…美化委員長じゃなかったか? どうして、そんなこと聞くんだ?」


 亮太郎が不思議そうに俺に理由を訊ねた。


「えっ…いや、ちょっとな…」


 実は、今朝彼女の首からさがっているネックレスの先端に、見覚えのある指輪があるのを見ていたのだ。だが、それが見間違いかもしれないということで、もう一度会って確かめてみようと考えていたのだ。

 と、その時、完全に病気から回復した瑠璃が俺の首に腕を回してきた。


「響史~…何の話してるの?」


「ん? ちょっとな…」


 そんな俺達二人の様子を羨ましそうに眺めていた亮太郎の怒りのパラメーターが最高潮に達したのか、大きなさ叫び声を上げて俺の顔を指さし言った。


「神童ぉぉぉぉぉおおおおおお!! もう我慢ならねぇ! お前ら、こいつを殺っちまえぇェェェエエエエエエ!!!」


「うおぉぉぉぉぉぉぉおお!!」


 いつの間にか周りから自クラス、他クラスの男子生徒が集合し、亮太郎を大将…俺を対象にして獰猛(どうもう)な猛獣のように襲い掛かってきた。俺はそれを何とか(かわ)し、急いで教室から抜け出して昼休みの廊下をダッシュで駆け抜けた。


「待てえぇぇぇぇぇええええ!!」


「くそ~どうしていつもいつも…」


 俺は、食べたばかりで脇腹が痛くなるのを必死にこらえながら長い廊下を走って行った。


――☆★☆――


「あ~あ、響史行っちゃった…」


 退屈そうな声で瑠璃が木の椅子に体をもたれかけて言った。すると、霊が両腕に大量のサンドイッチを持って戻ってきた。どうやら、売店に行っていたらしい…。


「あれ~響史どっか行ったの?」


「うん…。クラスの男子生徒に追っかけられてどっか行っちゃった~」


 机にあごをくっつけて言う。


「そうなんだ~あっ、そういえば…響史に用があるんだった!」


「用?」


「うん…実は、お金が足りなくて後一個でシール100枚貯まるんだよ!」


「シール貯まったらどうなるの?」


「うんとね~…確か、何かいいものがもらえるって響史は言ってたよ?」


「へぇ~…だったら、廊下走って行ったから行って来れば?」


 瑠璃にそう言われ霊はうんと頷くと、大量のパンを自分の席の机の上に置き、響史を探しに廊下に出て行った。


――☆★☆――


「はぁはぁ…やばい疲れてきた…」


 俺は、一旦廊下の突き当りで休憩した。呼吸を整え、それから再び走り出す。階段を駆け上がり、上の階へと上がったその時、どこからか霊の声が聞こえた。しかし、彼女らしき姿はどこにもない。


「どこにいるんだ?」


「こっちこっち!」


「ん?」


「下だよ、し・た・!」


 声の言うがままに俺は視線を下に落とした。すると、そこには猫化した霊がいた。


「なんでこんなとこで猫化してるんだよ! 他のやつらにバレたらどうすんだ!!」


「だって、こっちの方が速く走れるし、楽なんだにゃん……」


「そんなことよりも、ここに何しに来たんだ? 俺今忙しいんだが…」


「あのね、シール100枚集めたら何かもらえるって響史言ってたにゃん?」


「ああ…それが?」


「だから、あと一枚で100枚に達するんだにゃん! でも、お金が足りなくにゃっちゃって…。そこで、響史にお金を借りたいにゃ~と思って…」


「今それどころじゃないし、それに財布は教室なんだよ!!」


「金目の物は肌身離さず持ってにゃいと危にゃいよ?」


「わ~ってるよ! とりあえず教室に戻るから…だが、そのためにはあいつらをまかないといけない!」


「あいつら?」


 霊はきょとんとした顔で首を傾げて俺に訊いた。


「亮太郎達だよ…、追い掛けられててさ…とにかく、ここから逃げないと…」


「分かった! 私も協力するにゃん!」


「本当か?」


「にゃ! でも、その代わり…お金貸してにゃん?」


「分かった、分かったから!」


 俺は急いでこの状況を打破したかったため、同じ言葉を二度繰り返して話を先に進めた。


――☆★☆――


 午後0:20分…昼休み終了の時間まで残り20分…。

 その頃、屋上では…青い髪の毛を風になびかせながら双眼鏡越しに向かいの棟の中の様子を観察している某変態――水連寺露がいた。


「…ふふっ、可愛い女の子いないかな~。ん~…おっ、あれは響史くんだ! お~い…って聞こえるわけないか! あはははは!! 楽しそうに追いかけっこしてる~。私も混ざりたいなぁ~」


 そんなことを言っていたその時、(つゆ)は響史の背中に乗っている動物に注目した。そう、その動物…それは猫だった。しかも、その猫がただの猫ではなく猫化した霊であることは、姉である露自身が一番分かっていた。


「どうしてタマちゃんが? まぁいいや…、響史くん羨ましいな~あんなにくっつかれちゃって…。いろいろと密着して……うふふふ。まぁ猫の状態じゃ分からないかぁ~。おっと、それよりも何で追っかけられてるんだろ…それに、あんなことしてたら“あの子”に何されるか分からないわよ?」


 などと、ぶつぶつ独り言を呟く露…。


――☆★☆――


「くっそ~…神童のヤロー、どこに行きやがった……探せ! いいか? 草の根かきわけてでも探し出せぇぇぇぇぇええええ!!」


「あいかわぁぁぁぁああああ!」


「なんだぁぁぁあああ!!」


 仲間の一人が大声で叫び亮太郎の名前を呼んだのでその声に亮太郎が反応してお返しとばかりに叫び返した。


「学校の中に草はないぞ?」


「…うっ! 今はそんなことはどうでもいいんだよ!! 冗談言ってる暇あったらさっさと探せ!!」


「お、おう!!」


「ぷぷっ!!」


「ん?」


――しまったぁぁぁぁぁぁああ!!



 俺は、霊の噴き出す声が亮太郎達にバレたといち早く気付き、急いでその場から逃げた。


「ったく何やってんだよ! おかげさまでバレちまったじゃねぇか!!」


「ごめ~ん! でも、あのヒトのツッコミが結構面白かったのにゃ……」


「待ちやがれ! さっきの失態まで見られたからにはぜってぇ生きて返さねぇぞぉぉぉぉおおおお!!」


 亮太郎はダダダッと階段を駆け下りて、猪の群れの様に仲間を引き連れ追っかけてきた。そのむさ苦しい集団の波は、俺を後少しで飲み込みそうになっていた。

 と、その時、前から“天井を”走ってくる女子生徒がいた。

 俺はそれが誰なのか一瞬で分かった。なぜなら、そいつはツインテールに青い髪の毛…そして青い瞳――もとい、赤い瞳…って、えっ?

 俺はその瞳に困惑した。


――ウソだろ!? 目の色まで変わるって…、まるで風○○○ナ○○カの王○じゃねぇか!!



 と、俺は心の中で叫んだ。霊は別の意味で怯えていた。


「い、いやにゃ…霰だにゃ……」


「くそ…引き返せねぇし…ああ! もういい、突っ込め!!」


「ちょっ…――」


 霊は何かを俺に伝えようと思ったのだろうが、俺にはその言葉を聴けるような余裕はなかった。


「お姉さまと密着など許しませんわ!!」


――何ってこった…変態がまさか二人もいたとは…。




――☆★☆――


「ハックション! うぅ…今、何かものすごく失礼なことを言われたような…」


 露は身震いをしながら鼻をすすった。


――☆★☆――


「やっと追い詰めたぜ、神童!」


「もう逃がしませんわよ、神童響史…」


「くっ、万事休すか?」


「こうにゃったら、コレでもくらえにゃぁぁぁああああ!!」


 そう言って霊は猫化を解いた。


「ば、バカ! こんなとこで猫化解いたら…――」


 俺が止めるのも無視して、霊はさっさと猫化を解いた。しかし、それは霊の作戦だったのだ。猫化を解くと同時に、眩い光が今にも襲い掛かりそうな変態集団の目を奪ったのだ。


「ぐぅわぁぁぁあああああ! 目が目がぁぁぁぁあああああ!!」


――どこかで聞き覚えのあるセリフが……おっと! それはまぁおいといて…。今がチャンスだ!



 俺は、変化の解けた霊にカッターシャツを羽織らせその場から急いで逃げた。


「はぁはぁ…なぁ霊…お前自分の制服…どこに置いてきたんだ?」


「猫化した時だから…、女子トイレかな…?」


「……自分で取って来いよ?」


「分かってるよ! それよりも響史…そんな格好で大丈夫?」


――それはこっちのセリフだよ! お前、自分の今の姿見てみろよ! ったく…。



 と、俺は心の中で呟きながら霊と一緒に突き当りの廊下を曲がろうとした。

 と、その時、向こうから来た誰かと接触しぶつかった。


「いってぇ!」


「ひぃぃぃぃいいいい! ごめんなさいッス! …って、なぜ裸!? ひぃ、すみませんッス!!」


 彼は、なぜか知らないが二回謝った。俺は、この特徴的な喋り方を聴いて瞬時に今朝の先輩だということに気付いた。


「まさか…あなたが、高地(たかち)先輩ですか?」


「えっ、どうして僕の名前を…」


「あ…いや、そのクラスのやつに聞いて…」


 俺は理由を説明した。すると、高地先輩は何かを思い出したのか、またしてもその場から逃げようとした。すると、いきなり俺を踏んづけて誰かが高地先輩の襟ぐりを掴んで引き戻した。


「グゥエッ!」


 突然のことに高地先輩は受け身をとることが出来ず、そのまま床に叩きつけられた。


「いった~…何するんスか、“金城(きんじょう)”さん…」


「く……、“(ひとみ)”って呼べって何度言えば分かるの?」


「ひぃぃぃいいい…ひ、瞳さん…」


 高地先輩は金城先輩の怖い目つきに気圧(けお)され、すぐに言いなおした。

 俺は踏んづけられた顔を優しくさすりながら上半身をゆっくり起こした。


「ってぇ…」


「あっ、ごめんね…大丈夫? あぁ…あなた、今朝の…えと、神童響史君だったかな?」


「え、ええ…。それよりも、どうしてまた先輩を?」


「こいつ…、私と生徒会の仕事やるの辞めるとか言い出して…だから、それを引き留めに来たの!」


 金城先輩は満面の笑みでそう言ったが、その後ろで高地先輩は手と顔の両方を激しく左右に振った。しかし、一度ギロッと金城先輩に睨みつけられると、すぐさま縦に何度も頷いた。どうやら、強さ的には金城先輩の方が上のようだ。

 と、その時、俺は高地先輩の腰のベルトから何かが垂れ下がってるのが見えた。そう、それは探しに探していた太陽系の守護者の証の指輪だった。


「なっ…」


「あっ…こ、これはその…親の形見で…」


 高地先輩は俺の視線に気づいたのか、慌ててそれをポケットの中に突っ込んだ。それを見て金城先輩は高地先輩に何かを伝えていたが、それが何かまでは解らなかった。


「それじゃあ、私達これから生徒会会議があるからこれで失礼するわね? ほら行くわよノロマ!!」


「ちょっ、ひっ引っ張らないでくださいッスぅぅぅぅ!」


 そう言って、金城先輩に引っ張られて高地先輩もその場を後にした。


挿絵(By みてみん)


――☆★☆――


 俺は、昼休み終了のチャイムと同時に自分の席に着いた。




 それから授業も終わり、俺たちは家へ帰った。今日は金曜…さらに、明日は週休日のために休み…つまり土日は休みということ…。久しぶりにゆっくり休みたいなという望みを抱きながら玄関のドアを開けた。すると、零が何かを俺に手渡した。


「ポストの中にこんなものが入ってました…」


 それを見て俺は首を傾げた。


「手紙?」


「そのようだな……一体何が書かれてるんだ?」


「とりあえず、中に入って見てみましょ?」


「そうだな…」


 俺達は家の中に入ると、リビングへと向かい手紙の内容を見た。そこには、『果たし状…。明日の0時きっかりに光影学園の屋上に参られよ! Venus&Earthより』と書かれていた。


「ヴィーナスとアースっていえば…―」


「金星と地球という意味だな…」


 霄が腕を組んで考え込む。すると、(みぞれ)が言った。


「面白い…相手になってやるよ!」


 急にその場に立ちあがる霙の行動に、俺は戸惑いながら言った。


「だが、何をやるのかまでは書かれてないぞ? それに、明日の0時つったらもう後数時間しかないぞ?」


「実力で挑む…それがあたしのモットーだ!」


 霙が自信満々に言う。しかし、相手がどんな方法で勝負を挑んでくるかは本当にわからない。この時、俺はせっかくの休日が潰れそうな悪い予感を身に感じていた。


――☆★☆――


 その日の夜は、晩御飯がなかなか喉を通らなかった。それは俺だけじゃなく皆もそうだった。皆、今日の真夜中の勝負に不安を感じていたのだ。すると、その気持ちを察したのか、それともこのまま重い空気にしたままでいるのが辛かったのか、瑠璃が切り出した。


「ま、まぁ…大丈夫だよ! 太陽や水星の守護者も倒せたんだし、今回もきっと…――」


 その途中で言葉は途切れた。言おうとする言葉がのどの奥で詰まってしまったのだ。


「と、とりあえずまぁそのなんだ…食べようぜ?」


 「そ、そうね…」


 皆は苦笑いをしながら黙々と晩御飯を食べ腹を満たした。腹が減っては戦は出来ぬ…。俺は心の中でそう思った。しかし、腹が満たされたことにより、俺は日頃の疲れからでもあるのだろうがだんだんと激しい睡魔に襲われ、そのまま机に突っ伏して眠りこけながら


――てか俺、水星の守護者である水滝さんは倒してないんだけど……。



 と、瑠璃が言った言葉に突っ込みながら完全に眠りの世界に入ってしまった…。


――☆★☆――


 気付けば、真夜中までもう後一時間ちょっとしかない。俺は寝ぼけた状態でその時計の示す針を見つめ一瞬動きを止めた。しかし、次の瞬間、俺はバッとその場に飛び起き慌てて他のメンバーを起こした。


「おい起きろ! もう時間がないッ!!」


「ん~…ふぁ~あ…えっ? もう時間なの?」


「学校へ行くぞ!」


「うん…」


 瑠璃達はすごく眠たそうでイラだっていたが、それは俺も同じ…。不思議なのがなぜこんなタイミングのいい時間に起きることが出来たのだろうかということ。だが、それは運が良かったととっておき、急いで学校へ向かった。

 夜の光影学園は、朝と異なり明るい印象がなくなり怖い印象を強くしていた。まさにギャップである。俺は思わず声を上げてしまいそうになったが、近所には住宅地が密集しているため迂闊(うかつ)に声をあげるわけにはいかなかった。

 校門のドアを開けた俺は、四つの扉のうちの一つの扉を開けた。なぜ、その扉だけ開いていたのかは自分でもよくわからない…。そして、暗がりの階段を懐中電灯で照らしながら上へと上がり、屋上へ辿りついた。その扉を開けると、そこにいたのは昼間何かと世話になった金城先輩と高地先輩だった。


「先輩…やっぱり先輩が守護者だったんですね?」


「ええ…、はっきり言って既にうっすらと勘付いてはいるんじゃないかって思ってはいたけど…。大した確信もなかったしずっと黙ってたの…。でも、あの時(あきら)のバカがドジってうっかり指輪を見せてしまった。あれはとんだ大失態だったわ…。まぁ、そのおかげでこうして確信を得ることが出来たんだけどね?」


 金城先輩はフェンスに手をあて、そこから周りの景色を眺めた。綺麗な町の街灯が何色もの眩い光を出し、冷たい街を太陽の代わりに明るく照らす。近くにある飛天(ひてん)タワーもライトアップされて綺麗に輝いていた。

 二人の先輩の顔がその光に淡く照らし出されている姿を見て、俺はその異常な力量を肌で感じ身震いした。


「今回……勝負の内容は何なんですか?」


「まぁまぁ、そう焦らなくてもいいわ…。暁、説明して…」


「はいッス……えと、今回の勝負は鬼ごっこの様な単純なものッス…。簡単に言えば、僕達二人を制限時間内に捕まえることが出来たらその時点で試合終了…守護者のリングを二つともあなた達に渡すッス…。でも、仮にそっちが負けた場合、既に手に入れている守護者のリングを返してもらうッスよ?」


 その無茶苦茶な条件に、俺は激怒して罵声(ばせい)を放った。


「何で頑張って手に入れた守護者の指輪を渡さねぇといけねぇんだよ!!」


 俺は言い切った後に相手が先輩だということを改めて思い出しハッとなった。

 高地先輩は少し怖くなったのか、オロオロして金城先輩の方を見た。しかし、金城先輩はツンとして何も手を貸してくれなかった。


「うぅ…と、とにかく内容は分かったッスね?」


「鬼ごっこみたいなことをやるってことだろ?」


「そうッス…。ちなみに制限時間は午前1時から午前6時の間…それまでに捕まえられなかった場合、失格となるッス…いいッスね?」


「場所は?」


「場所はこの学校全域…そして、メンバーは私達が逃げる役…それをあなた達全員が捕まえればそれで試合終了よ、いいわね?」


 俺は途中まで高地先輩が説明していたのに、なぜ突然、金城先輩が説明したのかわからないが、ルールの中で不思議とそれでいいのかと思う部分があったため、その部分を彼女に訊いた。


「相手は二人なのにこんなに大勢で捕まえにかかっていいんですか?」


「あら…、ハンデは不要だったかしら?」


 金城先輩はわざとらしく俺に言ってきた。俺は少しえっ、という感じがしたが何か裏がありそうな感じがしたため、その話はとりあえず呑んでおくことにした。


「じゃあ、始めるわよ? 鬼はそこのフェンスに立って目を伏せて…」


「10秒間声を出して数えた後開始ッスから…」


 俺たちは言われた通りにした。すると、この場から二人の声が聞こえなくなった。恐らく、もうどこかに逃げたのだろう。

 フェンスで10秒を口に出しながら数えた俺は、10秒数え終えるとフェンスから離れて屋上の入口から下へと駆け下りて捜索へと向かった。各々自分の気になる場所へと向かい二人を探す。しかし、相手もこちらにハンデをよこしてくるほどそう簡単には見つからないような場所に隠れているのだろう…。何せ、相手は生徒会のメンバーのうえに太陽系の守護者なんだ……この光影学園の中に知らない場所なんてあるはずがない。

 俺はとりあえず教室棟を巡回する捜査官のように懐中電灯を片手に捜索した。だが、どこにも二人の姿はない。こんな短時間でそう遠くにまで逃げられはしないはず…そう考えていた俺は、一番複雑な道になっている場所にやってきたがここにも二人はいない。


「どこにもいないな…」


 懐中電灯の向きを左右に変えながら照らすが、やはり二人どころか人影もない。仕方なく引き返した俺は、別の場所を探すことにした。


――☆★☆――


「どこにもいないね…」


「そうですわね……恐らく、こっちに来たと思ったのですけれど…。でも、私的にはお姉さまと二人きりというこの嬉しい時間をじっくりたっぷりと楽しみたいですわ!」


「そんなことしてる暇ないよ! 制限時間はあるんだし、その間に見つけないと今まで頑張って手に入れてきた守護者の指輪を全部返さないといけなくなるんだよ? 私は絶対にそんなのイヤだからね?」


「わ、分かってますわよ! ちょっとしたジョークですわ! でも、どうしてそこまでお姉さまが頑張るんですの? 神童響史のためですの?」


(あられ)は腕を組み、前を歩いている(たま)の後姿を見つめながら言った。


「ううん、姫様のためだよ!」


「姫様の?」


「うん……お母さんに会いたくても会えないなんてかわいそうじゃん! 私達は会おうと思えばいつでも会えるのに…」


「一つ言わせていただきますけれどお姉さま…、姫様はお母様には会えないですけれど、お父様には会えるじゃありませんか!」


「姫様はお父様よりも今はお母様に会いたいんだよ。私は姫様にずっと世話になってきたから、だから…これくらいはしないと…」


「お姉さま…」


 霰は霊の話を聴いて、少し悲しそうな顔をしながらも霊の後をついていき、高地暁と金城瞳を探しに向かった。


――☆★☆――


「はぁ…ったく、どこに隠れたんだ?」


 俺は辺りを見ながら二人を捜索していた。と、その時、ふと俺は夜の学校に訪れるのは初めてだなと思った。それからしばらく歩いていると、目の前に人影が見えた。


「いたっ!」


 俺は声を張り上げその人影の後を追った。そして、ルナーに一応と渡された連絡手段の小型無線を使って他のメンバーに協力要請した。


「おい、瑠璃! そっちに先輩の一人が向かった! どっちなのかは不明だが間違いない!!急いでその場に向かってくれ!」


 無線を使って瑠璃に指示をした俺は、先輩が向かった場所と位置を伝えると無線を切り替え霄に繋いだ。


「霄、聞こえるか?」


〈ああ…どうかしたのか?〉


「先輩の一人を今追ってる…。そっちは何か進展はあったか?」


〈いや…まだ一人も見つかっていない。すまない…〉


「いいって…それよりも、暗がりの学校は割と危険だからな…気をつけろよ?」


〈分かった…妹達にも伝えておく…〉


「ああ…よろしく頼む! それじゃな…」


 俺は無線を切ると全速力で廊下を走った。暗がりの廊下は肝試しをやっているかのように不気味で、夜のせいでもあるのだろうがうすら寒かった。そして、人影が暗がりの廊下を左に曲がったのを目撃した俺は、そのことを瑠璃に伝えた。


「瑠璃! そっちに行ったぞ!」


〈OK! こっちも今そっちに向かってる!!〉


「お~し、挟み撃ちだ!!」


 俺は角を曲がり人影を追い詰めたことを確信すると、そのまま前方に向かって勢いよく飛びかかった。


「捕まえた!」


「ひゃあ!」


「えっ瑠璃!?」



ドサッ!



 俺は慌てて体を起こした。懐中電灯を照らすと、そこにいたのは懐中電灯の光を浴びて眩しそうにしている瑠璃だった。


「お前どうしてここに?」


「だって、響史が挟み撃ちにしようって…」


「えっ? お前も捕まえてなかったのか?」


「うん…」


「じゃあ、さっきの人影は一体どこに行ったんだ!?」


「さあ…?」


 訳が分からないうえ、今起きた不気味な奇怪現象に俺と瑠璃は身震いした。不思議なことに、何故か冷たい夜風が俺達二人の体に吹き付けた。周りを見回すと、窓の一つが開いているのが見えた。


「まさか、ここから?」


「かもね…」


「じゃあ外に行ったのか!?」


「多分…」


「よ~し善は急げだ!」


「うん!」


 そう言って俺達二人はよくその場も確かめずに外へと向かった。


――☆★☆――


「ふぅ…どうやら、気づかれてなかったみたいッスね…」


 響史達がさっきまで居た暗がりの廊下から声がした。その声の正体は、生徒会美化委員会委員長の高地(たかち)(あきら)だった。しかも、信じられないことに暁は、廊下の天井に足をぴったりくっつけ天井からぶら下がっている状態になっていたのだ。


「ふぅ…重力操作で自分の体だけ重力反転するのはなかなか楽なもんじゃないッスね…」


 そう言って暁はその場にシュタッと着地し、携帯電話を使って誰かに電話した。


〈もしもし…誰? こんな遅くに〉


 その声は、同じく生徒会美化委員長の金城(きんじょう)(ひとみ)だった。瞳の声は、電話越しで聞くと少し声質が違った。そんなことを感じながら、暁は別の場所へと向かった。


――☆★☆――


 その頃、霊と霰は体育館に来ていた。なんとなく勘でここが怪しいと思ったからだ。

 暗幕の裏や、体育館では有名な秘密の開かずの間も調べ何もないことを確認した二人は、その場を後にしようとした。

 と、その時、ガタッという物音がした。静かで広い体育館にその効果音はすごく大きく響き渡り、無論二人にもその音は聞こえていた。


「お姉さま…今の…」


「うん、響史達じゃないみたい」


 互いに顔を見合わせた二人はゴクリと息を呑み、音の正体を確かめるために物音のした場所へゆっくりと歩み寄って行った。しかし、そこにいは誰もいない。


「気のせい…だったのかな?」


「う、上ですわ!!」


 霰の指さす方を向くと、上の照明道具などの銀のパイプの上に鉄棒の『飛行機』という技の準備の様な状態の瞳が居た。パイプを両手でつかんでいた瞳は、ニヤッと笑ったかと思うとその場から飛び降りた。体育館のステージから瞳のいる照明道具の設置されたパイプまでは結構な高さがあるのだが、瞳はそんなことは気にも留めずそのまま飛び降りた。

 真下に着地すると、拳を構え霊と霰に襲い掛かった。その姿はまるで鬼ごっこの鬼のようだった。


――ちょっ、どうして私達が鬼なのに鬼のような女に襲われかけてますの!?



 と、霰は心の中でそう思った。だが、相手は太陽系の守護者といえどただの人間…。悪魔にして大魔王の娘を守る護衛役である以上負けるわけにはいかなかったため、二人は必死に瞳の攻撃を躱していた。


「くっ、なかなかすばしっこいわね!」


「そちらこそ、なかなかの身のこなしですわ! 普通の人間なら、あの高さから飛び降りれば足を(くじ)くか骨折するはずですのにまったくの無傷…不思議でなりませんわ…」


「それが私の力のようなものだからね…」


 そう言って瞳は握り拳を作ると、霰のみぞおちを狙って拳を振るった。拳は見事クリティカルヒットし霰はみぞおちを押さえてその場に膝をついた。しかも、その硬さが尋常ではなかった。

 霰に駆け寄る霊は、ふっと瞳の方を向いた。


「な、何なのその手…」


「これ? これが私の力…『金剛硬化(こんごうこうか)』。あらゆる物を金属化させることが可能なの…それは人体も同じ…」


 瞳は、もう片方の手を自分の心臓の高さまで上げると力を込めた。すると、瞳の白い手が金属化して金色に光り輝いた。


「す、すごい…」


「ふふっ…これで分かったでしょ?」


 瞳は勝ち誇ったような目で二人を見下した。


「くっ、まだ負けだなんて認めてないですわよ!」


「霰の言うとおりだよ! 私達は負けない!!」


「その威勢がいつまで続くか…見ものだわ!」


 瞳が拳を構えると同時に霊と霰も武器を手にした。


「お姉さま…お姉さまは攻撃というよりも回復系に近いですので、ここは私にお任せを…」


「えっ、でも…」


「大丈夫ですわ! いざとなったら霄お姉さまや霙お姉さまを呼べばいいだけのことです…」


 霰は自分のことを心配してくれる霊に心配させないように言い、霊を後ろに下がらせた。

 そして霊が後ろに下がったのを確認すると、敵である瞳を睨みつけた。


「まぁ怖い怖い…。可愛い顔が台無しよ?」


「あなたも十分怖い顔してらっしゃいますわよ?」


「くっ!? ふふ…面白いわ…、その威勢がいつまで続くか見ものね…」


 金色の髪の毛が霊と霰が持つ懐中電灯に照らされ輝く…。それと同時に瞳はシュッと霰の真横に瞬間移動したように見えた。


「なっ!?」


「はい、おしまい……バイバイ♪」


 瞳はニヤッと笑みを浮かべ霰の顔を鷲掴(わしづか)みにすると、体育館のステージの床に勢いよく叩きつけた。


「ぐはっ!!」


 霰は床に後頭部を打ち付け動けなくなっていた。


「ぐぅ…」


「これでまず一人……次はあなたの番ね…たまちゃん?」


「うっ…あっそうだ!」


 霊はふと霰の言っていたことを思い出した。そう、“ピンチになったら仲間を呼ぶ”。

 そのことを思い出した霊は、慌てて響史に無線を繋げた。


「もしもし響史!?」


〈…ん、どうした…霊? 何かあったのか?〉


「今、金城先輩と戦ってるんだけど霰がやられちゃって…」


〈何ッ!? 分かった…今すぐそっちに向かうから待ってろ!!〉


「うん…」


 響史の言葉に、霊は少し心配だなと思いながら無線を切った。


「言いたいことは終わった?」


「わ、私はあなたには負けない!」


「じゃあ、あなたの持てるすべての力で私を倒してみなさい? どうせ無理でしょうけど…」


「むっ…いいよ! やってあげる!!」


 霊はまんまと相手の罠に引っかかり相手に攻撃した。


「やあっ!!」


「おっと! あら、これで終わり? つまんないわねぇ~…じゃあ、こっちから行くわよ」


 鋭い目つきで瞳は霊を見る。睨まれた霊は少し一、二歩後ずさりしたが、このまま負けたままでは悪魔として、護衛役の一人として情けないと思い、意を決して攻撃した。


「終わり……」


 その一言が瞳の口から(こぼ)れた瞬間、霊はその場に倒れた。


「どうして、僕がこんなひどいことをしないといけないんスか?」


「あら、あなたが勝手にやったことでしょ?」


「うっ…だってこうでもしないと、瞳さんがやられちゃうじゃないッスか…」


 暁は片手にスタンガンを持ち、もう片方の手を霊の体に添えて倒れ掛かりそうになる体を支えた。その横には、後頭部を打ち付け気絶している霰がいた。


「この二人には、しばらくの間おとなしくしていてもらおっか…」


「そうッスね…」


 暁は、霊と霰を左右の肩に(かつ)いで瞳の後についていった。

というわけで、前半部分が終わりました。久しぶりに登場した太陽系の守護者二人。今回は、金星と地球の守護者である生徒会二人の暁と瞳が響史に勝負を挑みました。二人は、相当なチームプレイで響史たちを翻弄してきます。初めは鬼ごっこをして決着をつけるはずだったのに、気づけば鬼であるはずの響史たちが逃げる側に追いかけられていると言った状態です。それにより、霊と霰の二人が犠牲になってしまいました。

後半では、もっと白熱した展開になると思います。

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