表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔界の少女  作者: YossiDragon
第一章:四月~五月 護衛役『現れし青髪の脅威(前)』編
29/267

第二十五話「緑の髪の不審者」・1

二話構成です。

 時刻は2:22…。もうまもなく五時間目の授業が終わりを告げる。ちなみに先生は俺達のクラスの担任である下倉先生…。担当教科は数学…。俺は、相も変わらず教科書を机の上に立て爆睡していた。しかし、事件はまさにその時起こった。

 急に扉が開きそこに現れたのは、熱を出して家にいるはずの瑠璃だった。彼女は制服を着てここに来ていた。

 皆は瑠璃のその姿を見て瑠璃が二人いるということでパニックに陥った。


「ど、どうして瑠璃ちゃんが二人?」


「どういうことだよ神童!?」


 ついにはその理由を俺に訊いてくるやつまで現れる始末…。俺はすっかりまいってしまった。すると、瑠璃は顔を火照らせながら麗魅が座っている瑠璃の席の真横にやってきた。


「麗魅…、変わり身ご苦労様…。もう…、私は…大丈夫…だから。…れ、み…は帰って…いい…――」


 最後まで言葉を出せず、瑠璃は体をふらつかせ前屈みに倒れた。


「ちょっ…お姉さま!?」


 その“お姉さま”という言葉に皆は耳を疑った。そう、彼女は瑠璃ではなく彼女の双子の妹――麗魅だったのだ。


「なっ! お前、どうしてここに来たんだよ…!!」


 慌てて駆け寄った俺が瑠璃に問い詰める。


「えへへ…来ちゃった。ごめんね響史。私、どうしても麗魅のことが心配で…」


 そう言って瑠璃はまた気を失った。すると、事態の収拾に下倉先生がパンパンと手を叩き言った。


「え~みなさん…落ち着いてまず席についてください!! 後、神童君…どういうことなのか訳を聞かせてもらえますか?」


「は…はい!」


 俺はつくづくついてないと思いながら説明を始めた。




「――なるほど…。つまり、彼女は瑠璃さんではなく、瑠璃さんの双子の妹である麗魅さんだったと…」


「な…ななな…ってことは、神童お前…妹が二人居たっていうのか? しかも、こんなかわいい子が!?」


 変態バカこと亮太郎が、俺を震える人差し指で指さしながら言った。


「ま、まぁな…」


――これまた、ややこしいことに…。



挿絵(By みてみん)


「とりあえず状況は解りました…。神童くん、一先ず彼女を保健室に連れて行ってあげて下さい…」


 先生に言われ、体が異常に熱くなっている瑠璃をおぶった俺は、彼女を保健室まで走って行った。


――☆★☆――




ガララ…。



「せんせ――っていないのか」


 俺は扉を片手で開け中に保健室の先生がいないことが分かると、彼女をベッドに寝かせた。

 すると、さっき扉を閉めたはずの扉が再び開き、そこに誰かが入ってきた。それは保健室の先生だった。


「先生!?」


「あら、神童君じゃない…。どうかしたの…って、その子…瑠璃さんじゃないの!! 何かあったの? すごく顔が赤いけれど…」


 保険医の『楠木(くすのき) 美佳(みか)』先生が彼女の表情を見て心配そうに言う。俺は、状況を手っ取り早く説明しどうすればいいのかを訊いた。すると、先生は彼女が汗をすごくかいていることに気づき俺に言った。


「…それよりも、まずは彼女の汗流してあげたら? 汗で濡れて気持ち悪いでしょう…。今、お湯で温めた布持ってくるから、それで彼女の背中とか……拭いてあげなさい?」


「先生…、なぜ一瞬間が開いたんですか?」


「まぁ、そんな細かいことは気にせずに。ささっ、はいこれタオルね? これ、お湯の入ったヤカンと、これが水受けね?」


 そう言ってえらく準備のいい先生は俺に様々な道具を手渡すと、デスクの回る椅子に座り背もたれにもたれかかってはぁ~とため息をついた。

 俺は、参ったな~と心の中で呟きながら瑠璃の背中に手を回し、とりあえず彼女の上半身を起こした。それだけで、俺の手は彼女の汗ですっかり濡れてしまった。


「本当に大丈夫か?」


「う…うん…あっ、服脱がなきゃダメだよね?」


 瑠璃はハァハァとすごく辛そうに吐息をもらす。俺は、その姿がかわいそうでならなかった。急いでこの状態から回復させてやりたいと思った。


「…ねぇ、響史…。お願いがあるんだけど…」


「ん? なんだ?」


 俺は少しでも瑠璃の力になれればと頼みを聴くことにした。しかし、瑠璃の口から出た要望は少し難易度の高いものだった。


「…ボタン取れないの…。取ってくれない?」


 と、言って瑠璃が俺に頼んできたのは自身のカッターシャツの白くて小さいボタン外しだった。


「なっ! お前…あの時以来全然頼んでこないから、てっきり外せるようになったものだと…」


「今までは霄達や霊達にお願いしてたの…。麗魅が来てからは妹に任せっきりだけど…」


 瑠璃の冗談を言える状態からまだヤバイ状態まではいっていないようだ。だが、油断は禁物…。何せ、相手は悪魔…。人間と違ってその症状がひどくならないとも言い切れない。もし、万が一の時があった場合、大魔王の手によって人間界は確実に滅ぼされる!!

 俺はゴクリと息を呑みながら、瑠璃の第一ボタンに手をかけた。彼女のあごに垂れた汗が手の甲に滴となって落ちる。

 そして、ある程度のボタンを外し終えると、俺は瑠璃に後ろを向くように言い後ろに向かせると、背中にお湯で温めたタオルを当て汗を拭ってやった。普段は自分のしか洗ったことがないため力加減は自由なのだが、今回は他人の背中を拭く…。ある程度の力加減をしてやらないと、下手をすれば傷つけたりなどということにもなりかねない。

 俺は再度細心の注意を払いながら瑠璃の綺麗な背中全体を拭いた。

 その後、彼女の腕、首…顔と拭いていき、大体拭けるところは拭き終わった。しかし、俺は途中で手を止めた。第一の難関…、それは言うまでもない…――胸だ。最初に言っておくが、現在俺が汗を拭いている相手は女…。対して、拭いている人物は男…。亮太郎なら飛びついてまでもやっているだろうが、あいにく俺はそんな度胸持ち合わせていない。俺は一瞬、楠木先生に助けを求めたが、先生は午後の紅茶を満喫中のため俺の言葉など全く耳に入っていない。それでも一応、先生に声をかけてみた。


「あの~、先生…――」


「断る!」


「あの…まだ何も言っていないんですけど…」


「言わなくてもその様子で分かるわ…。大方、最初の難関ってやつに悩まされてるんでしょ?」


「ええ…まぁ」


 俺は頭をかいた。先生はティーカップを資料で散らかったデスクに置き、俺のところまで歩いてきた。


「ごほん! アドバイスをあげましょうか?」


「いいアイデアがあるんですか?」


「まぁ…ね。どう、聞きたい?」


「是非とも!!」


 既に手段のない俺は急いで先生からアドバイスを聴こうとした。


「そう…。じゃあ、まず目をつぶって……」


「はい…」


「次に、タオルを持って…」


「はい…」


「GO!!」


「GO…って! ゴーじゃないですよ!! これじゃ、ただ単に心を無にしろって言ってるみたいなもんじゃないですか!!」


 俺の言葉に先生は驚きの様子だった。


「よく分かったわね。…まぁ、要するにそういうことね…」


「んなことして視覚を失ったとしても、聴覚と触覚で終わりですよ!!」


「確かにそうね…。でも、ここはグッと我慢よ!!」


「そんな…」


 先生に親指を突きだされもう手はないと俺は決心した。そして、意を決した俺はタオル片手に瑠璃の右肩に手を置いた。

 その時、俺はキーンコーンカーンコーンと授業の終了を告げるチャイムが鳴ったことに気付いていなかった。

 保健室に忍び寄る謎の影…。その影は邪悪なオーラを身にまとい、一歩一歩確実に保健室との距離を縮めていた。


「ふぅ、…行くぞ!!」


「…うん」


 瑠璃に確認を取った俺は、ついに瑠璃の胸へと手を伸ばした。



ガラララ…。



 その音に、俺はピタッと手の動きを止めた。目の前にいたのは、鬼――ではなく怒りに身を任せ恐ろしい形相で睨みつけている麗魅だった。


「お、お前…どうしてここに…!?」


「お姉さまの…様子を確認しにきたのよ。…そしたら、あんたがお姉さまの体を拭いてるっていうじゃない…。そんなこと許さない! お姉さまの体には、何人(なんぴと)たりとも触れさせはしない!! ……なっ!」


 その時、俺は瑠璃の肩に直に手を置いていることにようやく気が付いた。慌てて手をどかした時には、もう遅かった。俺は、彼女にボコボコにされ気絶した。




 再び目覚めた時にはもう、既に俺は自宅の自室のベッドの上だった。


「はっ!!」


 俺は慌てて上半身を起こした。だが、それと同時にズキッと痛みが走るのを感じ慌てて自分の体を見た。すると、それはもう酷かった。顔はあざだらけ…。額には包帯…。鼻には絆創膏。腕や足…、お腹や胸などありとあらゆる部位に包帯や絆創膏、布当てなどが施されていた。



ガチャッ!



 という扉の開く音に、俺は何故か敏感に反応した。


「あっ…起きたんだね…。もう、大変だったんだよ? 気絶した響史をまだボコボコにするんだもん麗魅姫ったら…。大丈夫だった? 痛くない? 一応、応急処置はその場が保健室だっただけに早く済んだんだけど、その傷…治るのに結構時間かかるんだって…」


「そうか…」


 俺は、霊に気絶した後の説明をされてボソッと一言だけ返した。


「晩御飯が出来たらしいぞ?」


 霄が俺の部屋にズカズカと入ってきて言った。


「なぁ霄…。麗魅…、どんな感じだ?」


「何がだ?」


「だから…怒ってるのかどうかってこと…」


「そりゃあもうカンカンだ!」


「…やっぱりそうか」


 納得の表情を浮かべ、ため息をつく俺…。すると噂をすれば麗魅がやってきた。


「このバカ! 変態…いつまで寝てるつもり?」


「い…いや、起きてるけど…」


「あっそ! だったら、さっさと下に降りて食べてくれない? 片づけられないんだけど?」


「ていうか…皿を片づけるのは俺なんだしお前には関係ないだろ?」


 麗魅の言葉に少しムッときた俺は、ついカッとなって歯向かった。しかし、このまま麗魅と言い争うわけにもいかないため、俺は仕方なく下に降りて晩御飯を食べた。だが、目の前にはじ~っと俺をまるでケダモノの様に見つめる麗魅が見ているため、なかなか食べ物が喉を通っていなかった。


「な、なぁ…食べる時くらい自由にさせてくれないか? 食べ物が喉を通らない!」


「うっさい! いいからあんたはおとなしく晩御飯食べなさい!!」


 俺ははぁとため息をつきながら結局1時間ほど時間をかけて晩御飯を食べ終えた。


――☆★☆――


 その頃、光影都市の住宅街にて緑色の髪の毛の少女が響史の家の前に数時間立ち止まっていた。

 しかし、インターホンを押す訳でもなければ気になるというわけでもないようで…遠くから通行人が来たのを確認すると、そそくさとその場を立ち去って行った。


「ふふっ…神童響史くんか…。おもしろそうね…」


 そう言って、不審な行動をとり続けていた少女は、その場から姿を消した。


――☆★☆――


 次の日の朝…。俺はなぜか自然と目が覚め、ベッドに横になったまま手をピンと上に伸ばした。そして、力尽きたようにその手をベッドに下ろそうとしたその時、俺は何か柔らかいものに手が触れるのを感じた。

 俺はその時、自分が周囲を悪魔の少女たちに囲まれている事をすっかり忘れていたのだ。


「なっ!?」


 俺が触れていたのは、事もあろうか麗魅の胸だった。


「……あんた、その手…一体どういうつもり? 昨日のお姉さまに続いて私まで襲おうって…こと?」


 麗魅の恐ろしいオーラに、俺は恐れ(おのの)いた。


「待て待て! 俺はただ…その、ちょっと寝ぼけてただけで…!」


「寝ぼけてたなんていう言い訳が通じるわけないでしょうが!!」


 そう言って麗魅はボキボキと指を鳴らし、ベッドから抜け出した俺にゆっくりと歩み寄ってきた。

 このまま捕まれば何をされるか分からないという危機感を感じた俺は、その場から逃げようとドアへと駆け出した。しかし、麗魅は瞬時にそれを察知し、ガシッと服の襟元を掴むと、グイッとこちらへ引き戻した。俺は服に首を絞められ一瞬息が出来ず、そのまま地面に倒れこんだ。


「いてて…」


「つ~かま~えた!!」


「い……ぎ、ぎゃぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!」


 今日もまた、波乱万丈の一日が幕を開けたのだった……。




 気付けば俺は、またしてもボロボロの状態になっていた。しかし、なぜこうもボロボロの姿になるのだろうか。

 その時、霄が何やら険しい顔でいるのに気づき訊いた。


「どうかしたのかお前……。何かあるのか?」


「うむ…、今そこに緑色の髪の毛の女がいて…」


「緑色の髪の毛…? ってことは、護衛役じゃないのか?」


「恐らくな…何しろ、護衛役ならば必ず髪の毛は水色と決まっているからな…」


「確かに……」


 俺は、一応脳内の一部に残しておきそれから下に降りると、零があらかじめ用意しておいてくれた朝食を食べ学校へと向かった。

 相変わらず時刻はギリギリ…。だが、俺には例の秘密の抜け道があるから心配ない……そう思っていた。


「な、なんだこれは!?」


 目の前にあったのは、通行止めの看板と交通を取り締まる男の人達…。


「あの…ここ通れないんですか?」


「すまんね…。昨夜電柱の一部が融解してて、その原因を突き止めるのと修復するので通行止めになっているんだ。悪いが別の道を通ってくれたまえ!!」


 そう言ってその人は向こうに行ってしまった。


「…どうする?」


「引き換えそっか…」


「そうですね…」


 結局、引き返すしか手のなかった俺達は急いできた道を戻り、そこから別の道を通って学校へと急いだ。

 と、その時、俺はあることを思い出した。


「あっ、そういえば…家の鍵閉め忘れた!!」


「だが、もう正門前だぞ?」


「大丈夫、何とか間に合うはずだ! お前達は先に行っててくれ!!」


「響史、気をつけてね?」


「おう!!」


 俺は彼女達だけでも先に行かせ一人で家に戻ろうとした。何せ、こいつらを一緒に連れて行けばまた途中で道に迷うかもしれないという可能性があったからだ。一人で行った方が行きも帰りも楽に違いない。

 家に帰りついた俺は、玄関ドアの鍵穴に鍵を差し込み回そうとした。

 と、その時、俺はあることに気付いた。


「あれっ? もう既に閉まってる…」


――☆★☆――


 学校の昇降口前。


「あっ、そういえば…鍵閉めてるの忘れてました…」


「えっ、それって…つまり、響史は無駄足ってこと?」


「まぁそうなりますね」


 零の冷静な顔を見て、霊は少し響史のことを哀れに思いながら上靴に履き替えた。


――☆★☆――


「はぁはぁ…やっと着いた。にしても、随分と皆登校時間遅いな…。やっぱ皆あの通行止めくらってたのか? とにかく、急がないと麗魅達が待ってるからな…」


 息を切らしながらも必死に走る俺…。すると、目の前に霄が朝方言っていた人に違いない緑色の髪の毛の少女がいた。髪の毛は腰辺りまであり、長い前髪に緑色の瞳が隠れていた。


――あの子が霄の言っていた子か…。ってあれ? あの子、俺と同じ学校の制服!? どういうことだ? しかも、あのネクタイの色は黄色…ということは高2? ていうか、気のせいだろうか…。心なしか俺のことを見ているような…。



 そんなことを心の中で呟きながら進んでいたその時、その少女がボソボソと何かを呟いた。


「えっ!?」


 俺が何を言ったのだろうとふと振り返ったその時、俺の唇を何かが塞いだ。何だか、すごく柔らかい…。

 そう、それはさっきの女子生徒だった。俺は驚いた拍子にそのまま後ろに倒れて尻餅をつき、イタタタと尻をさすった。


「な、何するんだいきなり!」


「…ふふふ、あなた面白いわね~。タマちゃんや霙ちゃん達が気に入るのも頷ける…。でも、まだ足りない。あなたには欠けてる何かがある…」


 少女は謎の言葉を残し、そそくさと昇降口に駆けて行った。俺はしばらくの間放心状態に陥ったが、チャイムの鳴る音で我に返り慌てて昇降口へと向かった。

 教室へ向かって階段を駆け上がり自分の教室の扉を開ける。そして、自分の席の位置を確かめると、そこに早歩きで向かい着席した。


「ん? 響史…護衛役に会ったのか?」


「うわぁ! 何だよいきなり…」


「質問に答えろ!」


 霄は少しムキになって俺に問いただす。


「い、いや…護衛役には会ってない…」


「には…?」


「ああ…。実は、朝方お前が言ってた緑色の髪の毛の少女に会って……」


「それで?」


「そいつが、さっき正門前にウチの学校の制服来て誰かのこと待ってた…」


「それで終わりか?」


「…う、………スを…」


「ん? よく聞こえないぞ?」


 俺にわざとらしく訊ねる霄は、もう一度その重要な言葉を言うように促した。


「くっ…キスだよ! キスされたんだ!!」


 思わず大声を上げてしまった。そのせいで、他のクラスメイトにまでそのことがバレてしまった。一番にその言葉にくいついてきたのは、予想通り亮太郎だった。


「おい! 神童!! 今の言葉どういうことだ? キスしたって誰と? 一体いつ? どこで? キスはどっちからしたんだ?」


 様々なシチュエーション設定を俺に訊いてくる。だが、俺的には何故こいつに教えてやらないといけないんだ、という気持ちでそのまま黙秘を続けた。するとタイミングよく下倉先生がやってきたため、席に着くことになり亮太郎の質問に対する答えはしばらくの間保留ということになった。


「ふぅ…」


 と、俺はひとまず一安心だ。そしてホームルームが始まり先生の長い話が始まった。




 それから数十分が経ち、ようやく先生の話から解放された俺達は、自由な一時を満喫した。

 その時、大抵のやつが先生のうんざりするような長話につきあってイライラしていたため、俺の驚きのキス疑惑のことを忘れてくれて助かった。だが、亮太郎は忘れていなかった。

 亮太郎は真っ直ぐ俺のところに向かってくる。しかし、ここでまたしても奇跡。下倉先生が亮太郎の名前を呼び、どこかに連れて行ってくれたのだ。


「ありがとう先生!」


 俺は珍しく先生にお礼を言った。そして、霄や他の護衛役に先ほどの出来事のおおまかな内容を伝えた。すると、その内容を小耳に挟んだのか、麗魅が俺が喋っているというのにその話に割り込んできた。


「ちょっと、あんたついに年上の女性にまで手を出したの? しかも公の場でキスだなんて…信じられない!!」


「お前な…ものすんごい勘違いしてるぞ!? いいか? 俺はキスしたんじゃなくてされたの! 受け身なの!! 分かる~?」


「そんなの信じられるわけないでしょ? あんなことした後なんだし…」


 麗魅は顔を赤らめそっぽを向いて言った。相手が何のことを話しているのかを理解した瞬間、俺の顔も思わず赤らんでしまった。


「あ~、響史顔赤くなってる~!」


 と、霊が冷やかす声が聞こえるが、俺はそれどころではなかった。しかし、本当に先ほどの女子生徒…。一体、誰なのだろうか? 護衛役でないとすれば、どういった理由で俺に近づいてきたのか…。

俺はそのことが気がかりでならなかった。




 気付けばもう昼休み…。俺はなかなか(はし)が進まずにいた。今朝の少女のことをず~っと気にかけていたからである。


「そんなに考え込んだっていいことないですわよ?」


 いつもは俺が霊と仲良くしているからと嫉妬心を抱き俺に敵対心を向けている霰が、さすがに俺の様子を見て心配してくれたのか、珍しく話しかけてきた。


「ん? ああ…」


「そんなに気になるのならば探してみたらいかがですの?」


「探す…?」


「はい…相手はこの学園の制服を着てらっしゃったのでしょう? ならば、この学園にいることは間違いないんですの!」


「だが、この学園は一学年だけで六クラスもあるんだぞ? その上、一クラス大体45、6人だし…相当時間かかると思うぞ?」


 すると、せっかく人がアイデアを出してやったのに否定するような言葉で返してきたことにイラッと来たのか、霰は少し声を荒くして言い返した。


「だったら自分で考えてくださいですの! …もう、私は考えてあげませんから…」


 そう言って霰は教室から出て行った。俺はそんな霰の後姿を見ていた。

 と、その時、霰の横を緑色の髪の毛の少女が、開きっぱなしの窓から吹き込んでくる風に髪の毛をなびかせ、同じ学年の先輩と談笑しながら歩いていくのが目に入った。


「なっ!?」


 俺は思わずその場に立ちあがった。


「どうしたんだ…急に立ち上がって…。食事中に立ち上がるとは行儀が悪いぞ響史?」


 霄が俺に箸を持ったまま指摘した。

というわけで、相変わらず様々なハプニングに巻き込まれる響史。その度に麗魅にボコボコにされて苦労が絶えない彼は、いつか過労で死にやしないかと思ってしまいます(笑)。

それはさておき、気になる謎の人物――緑髪の少女。一体彼女は何者なのか、後半に続きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ