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魔界の少女  作者: YossiDragon
第一章:四月~五月 護衛役『現れし青髪の脅威(前)』編
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第二十四話「不良VS怪力少女」・1

今回も二ページ構成です。

 ここは魔界…。暗く、毎日朝だろうと夜だろうと太陽の上らない真っ暗な薄暗闇…。何よりも、昼は火山などが活発に活動するのでそこまで寒くはないのだが、夜は活動が少ないうえに日も出ないという最悪の条件が重なり冷たい夜風がいつも吹き荒れるのだ。

 そして、現在人間界の時間軸で午前3:00を迎えた頃…。大魔王の城では新たな動きが始まっていた。


「呼んだか?」


 謎の少女が片手にハンマーを持ち、目の前の王座に座っている大魔王に(たず)ねる。


「ああ…。まさか、お前まで順番が回ってくることになるとは私も思ってもみなかった。

だが、現にこういう状況になってしまっている。これ以上、あの小娘を人間界に置いておくわけにはいかん…。やり方は全てお前に任せる…。必ず、あの二人を連れて帰って来い…いいな?」


 大魔王は重そうなハンマーを軽そうに担いで平気な顔をしている彼女を見ながら言った。


「ふっ…もちろんだ! アタシの力をなめんなよ? ヒメ達を騙してるっていう男に、アタシの力思い知らせてやる!」


 雫と同じ帽子をかぶり、そのつばの影に隠れてきれいな青い瞳が見える。彼女の意思の強さを感じた大魔王はニヤッと笑い彼女に言った。


「ふふふっ…その意気だ…。頼んだぞ?」


「任せとけ!」


 そう言って少女は、青い髪の毛を振り乱しながらハンマーを引きずり、その場から姿を消した。

 すると、少女とすれ違いに謎の男が一冊の本を抱えながら歩いてきた。すると、ふと男が下に目を向けると、彼女がハンマーを引きずっているせいで床が傷ついていた。それを見た男は、声を荒げていった。


「なあああぁああっ!!!? き、き…貴様何をしておるか! この床は高いのだぞ!?」


「うっさい、おっさん!」


「おっ……おっさん!?」


 男は眉をピクッと吊り上げ言った。


「今からアタシは仕事なんだ…。邪魔すんなよな…」


 そう言って少女はそのまま男の横を素通りしていった。


「くっ…あの女…。今度会ったら覚えておけよ? ったく…」


 男はぶつぶつ言いながら大魔王の間に入って行った。すると、大魔王が男の存在に気づき(たず)ねた。


「何をぶつぶつ言っている…?」


「いえ…。今しがた…水連寺一族のものが床を傷つけているのを目撃いたしまして、注意のほうを…」


「そうか…。アイルー…」


「は、はいっ!」


 アイルーと呼ばれる男は急に呼ばれて、焦りながら返事をした。


「その床はお前が直しておけ…いいな?」


「そ、そんな…」


「何か問題が?」


「うっ…わ、分かりました……」


――くっそ~、あんのこむすめぇえええええええ~~~~!!!!



 アイルーは声の出せる限り心の中で叫んだ。もちろん、その言葉は彼以外には誰にも聞こえない。


――☆★☆――


「へっくし! …ズズ…。あっ、ヤバ…風邪ひいたかな…。最近は冷え込むからな~……。

とにかく厚着して行くか!」


 少女は帽子を深くかぶり前に進もうと一歩踏み出した。

 と、その時、後ろから声をかけられた。


「待って!」


「ん?」


 少女は声のする方を向いた。


「はぁはぁ…。人間界に行くの、(みぞれ)?」


 それは澪だった。


「ん、うん…まぁね…」


 少し曖昧な感じで霙と呼ばれる少女は答えた。


「そう…。気をつけてね?」


「ふっ、あははは…。誰に言ってんの? 力では女――いや…男にも負けないと言われるアタシに人間なんかが勝てると思ってんの? んなわけないじゃん…。心配しなくても大丈夫だって!!」


 霙は腹を抱えながら笑って言った。片手でお腹を押さえながらもう片方の手でオーバーだなぁ~みたいな動きで手を動かす。そして、笑い声が収まったところで、目から涙の滴を人差し指で拭い取り澪に言った。


「じゃあ、そろそろ行くわ…。姉貴の仇はアタシがとってあげるから…安心して?」


「そ、そう? …銀髪の少年には気をつけてね?」


「分かったって!」


 まるで何度も繰り返す母親に言うように言い放った霙は、澪を後ろに下がらせると十分な距離をとって人間界へ飛ぶ準備を整えた。


「じゃあ、行ってくる!」


「…うん」


 霙はハンマーを小さくし背中のベルトに引っ掛けると、澪に向かって大きく手を振った。


――☆★☆――


 現在…午前四時…。夏に近づいてきたために最近は朝陽が昇るのが早い。


「うぅうぅぁああぁあわあああああわああああ!!!!」



ドシャーーン!!! ガラガララ…。パリン…。



 商店街の路地裏に響くガラス瓶の割れる音やアルミ缶などが転がる音。


「ごほっ! ごほっ! ったく…んだよここは…。標的の家のすぐ真ん前じゃなかったのかよ!? このアタシが着地ポイントの座標を間違えちまうなんてな…。チッ! 朝っぱらから調子狂うな…。……にしても、随分静まり返ってんな~」


 霙が舞い上がる砂ぼこりを吸い込まないように口と鼻を手で塞ぎながら小声で呟いた。

 さらに彼女は辺りを見回し、人気が全くしないことに少し驚きながら、


「人間界の朝ってのはこんなに静かなもんなのか? まぁいいや。それよりも、標的を探さないと…」


 と、面倒くさそうに頭をかきながら路地裏から抜け出した。

 霙の目の前には美しい人間界が広がっていた。まるで人間界に朝だと告げるかのようにゆっくりと太陽が昇る。そして、その太陽の光が人間界にそびえたつ高層ビルや山々をオレンジ色に染め上げる。

 彼女はその光景を見て、目を輝かせて魅入ってしまった。


「なっ…こ、こんな美しい景色が人間界にはあるのか? す、すごい…。ふっ…、アタシとしたことが、まさかこんな景色ごときに惑わされるなんてな…」


 そう言って彼女が目をつぶり俯いたその時、



ブッブゥー!!



 というクラクション音と、



ブロロロロロ…!!!



 というエンジン音が彼女の真横から聞こえてきた。

 すっかり他の事に気が回らなくなっていた霙も、さすがに自身の危機に感づいたのかサッと横を振り向いた。しかし、その時には既に大きな荷を積んだ大型トラックは彼女の目の前にあった。


「な、なっ…何なんだこのデカい鉄の塊は!!?」


 霙はトラックのことをそう呼んだ。確かにトラックの存在を知らない者にとってはただの邪魔な鉄くずに思えるかもしれない…。


「アタシの邪魔をすんなぁぁぁぁぁああああああ!!」


 彼女は不意に背中にあったハンマーを取り出し、孫悟空でおなじみの如意棒のようにハンマーを大きくし棒の長さを長くすると、それを思いっきり鉄の(トラックのこと)に向かって振り下ろした。

挿絵(By みてみん)


「はっ!?」


 しかし、霙はギリギリのところで思いとどまった。


――そう言えば、姉貴が……。




《いい霙? どんなことがあってもぜっ―――たいに力を使っちゃダメよ?》


 澪は言葉を溜めて霙に忠告した。


《どうしてだ、姉貴…》


 霙はいまいち理由が理解できずに首を傾げている。


《相手はただの人間…。標的以外にそんな力使ったら危険でしょ? それに、あなたは水連寺一族の中でも一番の力持ちと言われてるんだから…。それが兄である雫よりも強いってのが不思議だけどね…》


 澪は霙に嫌味のように言った。


《分かった…。極力避けるようにする…》


《極力っていうか絶対に使ったらダメだからね?》


 澪は霙の顔の目の前に人差し指を縦にして置き念押しした。


《分かった…わかったよ……》




――ってなことを言ってたな…。ちっ…メンドイな…。



「くぅっ!」


 霙はトラックのギリギリ手前で踏みとどまり、進行方向とは逆の方向に重心をかけるようにした。何とか勢いが収まり、彼女は重力に引っ張られて太陽の熱い日差しを浴びる前の少し冷えた状態のアスファルトの地面にペタンと座り込んだ。


「ふぅ~……」


 額から鼻に伝ってくる冷や汗を腕で拭い去りながら霙がため息をついていると、トラックの運転手が小麦色に日焼けした額を(さす)りながら窓から姿を現した。どうやら、慌てて急ブレーキを踏んだためにハンドルか何かにぶつけたようだ。


「っててて…。ったく、危ねぇな! 気をつけろぃ!!」


 そう言って運転手は大きなエンジン音を響かせ走り去って行った。去り際に浴びせられた真っ黒な排気ガスを浴びた霙は反射的に後ろに退いた。


「ゴホゴホッ!! ったく、何しやがんだてめぇ!! …っていない!?」


 目を開けた時には既に影も形もないトラックのスピードに驚愕した霙が前に歩こうと片足を上げた瞬間、彼女の体は後ろに傾いた。


「な、何だ!?」


 ふと後ろを振り返ると、そこは川だった。そう、ここは川のすぐ近くだったのだ。そして、霙はその淵にいたのだ。それが先ほどの排気ガスによる後ろへの退き…。とどめの彼女の前へ進むための一歩が原因で川に落ちることになってしまった。


「し、しまっ――」



ザッパーーーーーーンッ!!



 川の真上に吹き上がる水しぶき…。


「ぷは~っ! くっ…アタシとしたことがしくじったか…。こんな無様なことになるとは…」


 霙の身長的に考えて、水深は彼女がその場に立ちあがって首くらいまで深さがある。ちなみに彼女の身長は157cmくらいである。

 四角いコンクリートの板が敷き詰められた防壁を、霙はその隙間に手を伸ばしてロッククライミングのようにして上って行った。


「よ…いしょ…っと! ふぅ…」


 霙はゆっくりとその場に立ちあがった。服が水で濡れてしまい服の裾や水色の長い髪の毛から水滴がポタポタと落ちる。地面が水滴でどんどん濡れていき、彼女の足元にはいつしか小さな水たまりができていた。


「あ~ぁ…どうすっかな~…。このままじゃ風邪ひいちまうだろうし…。何かないかな~…」


 ぶつぶつと独り言のように呟き、霙は人間界に来て自分が最初にいた場所である路地裏に入って行った。そこからまるで野良猫のようにゴミ箱などを漁り始めた。


「おっ…これいいじゃん?」


 霙は少し嬉しそうに笑顔でそれを手に持ち目の前に広げてみた…。それは少しボロい感じの毛布だった。


「仕方ない…か。まぁ、風邪ひくよりはマシかもな…」


 ぶつぶつと文句を言いながらもボロ毛布を羽織りそれに(うずくま)る霙。髪の毛ごと毛布に(くる)まり毛布を頭にも被せた。帽子は邪魔なため自分の持っているバッグにしまった。そして、霙は路地裏から空を見上げた。


「こんな格好じゃ下着が服の上から薄く見えちまうし、標的に会うのは服が乾いてからにすっか…。あれ…そう思ったらだんだんと眠く……なって……――」


 彼女はコックリコックリ頭を傾けさせ、気づくと路地裏の中で眠ってしまっていた。




 時刻は午後六時…。すっかり日も暮れ、辺りも暗くなっていた。毛布にくるまった状態の霙は、完全に毛布の中のために路地裏にゴミを捨てに来た近所の人も全く気付かなかった。

 まぁ、それは今の彼女にとっては少しばかり有難かったかもしれない。


「ん……ふぅぁあ~~あ…。あっ!? しまった、つい気持ちよくて寝てしまった!! いっけない…今何時だ? くそ…時計か何かあればな…」


 霙が腕を見て時計がないのを少し残念そうに思いながら話していると、表通りの方が騒がしいことに気が付いた。


「なんだ? 朝とは違って随分と騒がしいな…」


 恐る恐る霙がゴミ箱の陰に隠れながら表通りを見てみると、そこにはたくさんの人が行き来していた。お年寄りや旅の人、買い物帰りの主婦や学校から家に帰宅する学生…、ありとあらゆる民間人があんなに静かだった朝方の道路を埋め尽くす。


「す、すごい…。これが人間界の朝と夜の違いなのか…」


 霙がほぉ~っ、と頷きながら納得して見ていると、目の前に標的が出現した。都立光影学園の制服に銀色の髪の毛…。それが賑やかな商店街の街灯に照らされ光っている。そう、神童響史だ。


――くっ…ふふふふふ…。まさか、向こうからやってくるとはな! 絶好の狩り時じゃないか! 見てろ…神童響史…。お前の首…必ずこのアタシが狩ってやる!



 霙はそう言って表通りに飛び出した。


「神…――」


 彼女が標的の名前を呼ぼうとしたその時、誰かに肩を人差し指でつつかれた。


「んだよ…今、取り込み中なんだよ!」


「ちょっと署までいいかな?」


 それは警官だった…。


「い…いや、ていうか誰だよあんたら…」


 無論初めて人間界を訪れた霙に取って住民の治安を維持している警察が理解できるわけもなく、意味不明と言った表情で彼らを見つめた。


「その格好…。恥ずかしくないのかい?」


「何かのコスプレ?」


 男警官の二人が霙のボロい毛布を見て言った。その表情は少し彼女をバカにしてるようだった。


「こすぷれ?」


 霙は謎の言葉にさらに疑問符が増える…。


「いや…アタシはただ、その…あっ、そう川に落ちて、それで服を乾かそうと思ってこれ着てて……」


「だったら家に帰って着替えればいいじゃないか!」


「……それは――」


 警官の言葉に、霙は次に言おうとしていた言葉を言えなくなってしまった。


「とにかく署に来てもらおう…」


「そ、そんな~! や、やめろ! アタシに気安く触んな! ていうか、あんたら何なんだよ! あんたらこそ何だよその格好…。カッコつけちゃってさ!!」


「こら! 大人をバカにするんじゃない! いいから、来るんだ…」


「くぅ~!! い、いや~~~~~~~!!!!!!」


 霙は澪に言われた言葉を守るため、本来の力を出すことが出来なかった。

 結局、霙はそのまま交番に連れて行かれてしまった。




 時刻は午後九時…。霙はやっと警官に解放され毛布を(まと)ったまま住宅地をトボトボ歩いていた。


「結局、今日なんにもしてない…。くそ…あいつらめ…。次に会ったら覚えてろよ! 今回は姉貴に言われて力を使えなかったが、次は本気で痛めつけてやる! あぁ、イライラする。もういい…。今日は早く寝て次の日に備える!」


 霙はなぜか誰もいない場所で勝手に怒っていた。すぐそばのブロック塀にもたれかかり、再び空を見上げた。真っ暗な空に点々と星が小さく輝いて見える。


「おやすみ…」


 独りで孤独に寂しくそう呟く霙…。体操座りで物思いに(ふけ)る彼女は心の中でふと思った。


――魔界にいる姉や妹は何をしているんだろうな…。こっちにいる姉や妹も気になる…。ヒメ達は無事だろうか…。



 そんなことを考えているうちに、彼女はまたしても眠ってしまった。




 午後十時…。すっかり暗くなった住宅地…。冷たい夜風が吹き、道路に落ちた木の葉が舞う。民家の家の中には、もう既に電気が消えている家もあれば、まだまだ電気を消さずに活動を続けている家もある。

 電灯のいくつかがバチバチッと音を立てながらジジジ…と言って光が点滅し続ける。そこに、不良集団が面白おかしく笑いながら歩いてきた。


「それでよぉ! その女がさ……」


「ぎゃはははは! マジでか? バリウケる!」


「やっぱ…それはよ――」


 と、彼らが霙のそばにやって来たその時、不良の男の一人が霙の足に引っかかりコケてしまった。


「いでっ! っつ~…って、てめぇ…どこ見てやがんだ……あぁ!?」


 不良の男は声を荒げて後ろを振り返った。そこには、ボロボロの毛布に(くる)まり、フードの端や毛布の裾から水色の髪の毛を覗かせる謎の人物が、足を放り出して寝ていた。


「おい、てめぇ聞いてんのかっつてんだよ!!」


「んん? うっさいな…人がせっかく気持ちよく寝てんのに…」


「んだ、ゴルァ!? 俺をナメてんのか? おもしれぇ…その度胸気に入った! お前は死刑決定だ!! お前ら、殺っちまえ!!」


「へい!」


「うおぉおおお!!!」


 どうやら、先ほど霙の足に引っかかってコケた男がこの不良集団のトップらしく、手下の不良たちに命令を下していた。

 手下の不良達は二、三十人で霙を取り囲み、ゴキゴキと手の関節を鳴らしながら円形に輪を作り、その中心に霙が来るようにしてジリジリと歩み寄って行った。


「くっ……こいつは、マズいな…――とでも言うと思ったか? と言っても、さすがのアタシもこの人数はヤバいかも…」


「ふっ…何、ブツブツ言ってやがる! 覚悟は決まったか? クソガキ…」


「ぐっ…お前、今何つった?」


「クソガキっつたんだよ! わ~ったか?」


 不良のリーダーは眉間にシワを寄せ、目を開かせて霙を見つめた。


「あんまり、アタシを怒らせない方が身のためだぞ?」


「へっ! それはこっちのセリフだっつ~の! お前こそ俺達をバカにしないほうが賢明だぜ? まぁ、今頃言っても遅いがな!」


「忠告はした…。つまり、お前たちが痛い目にあっても何も言い返すことはできないというわけだ!」


 そう言って霙はハンマーを大きく振り回し、ハンマー投げをする選手のようにその場で回転した。靴底がアスファルトとこすれ合い、摩擦によりキュッキュと音を立てながら煙を上げる。ハンマーは遠心力により今にも彼女の手から離れそうだ。しかし、それでも彼女がこの巨大なハンマーを持ち続けていられるのは、彼女の強力な握力があってこそだと思う。

 そして、彼女が円形を維持して攻撃しようと構えている不良達に攻撃しようとした次の瞬間、彼女はあることを思い出した。それは、先刻のトラックの時と同様、澪に言われた言葉だった。




《人間界で力なんか使ったらどうなるか分からないわよ? 特に霙の場合、まだ力が安定してないんだから、下手に感情が高ぶったりしてストッパーが外れたら取り返しがつかなくなるの! 最悪の場合、近くの人間はただじゃ済まないわね…》




「くっ…」


 結局、霙はその言葉が引っかかり全力を出せず、思わず威力を緩めてしまった。それが彼女の隙だった。


「へへっ…どういうつもりか知らねぇが、急に力を緩めやがって残念だったな…」


 不良のリーダーは霙の背後から彼女の両腕を取り押さえた。


「しまっ…――」


「もう終わりだ!」


 そう言ってリーダーは霙の後頭部に銃口を突き付けて引き金を引こうとした。すると、霙は目にメラメラと邪悪な光を燃やし、拘束されていた腕を振りほどいて不良のリーダーの頭をわしづかみにした。


「ぐぅぅぁああぁあああ!!!」


「許さない…。お前達だけは……人間のクセに、調子に乗るなぁぁぁぁぁあああああああ!!!」



ブゥゥゥンッ!! ズドォォォォォォォオオオオオオンッ!!!!



 霙は大声で叫びリーダーを投げ飛ばすと、ハンマーを振り上げ勢いよく振り下ろした。

 凄まじいパワーがアスファルトを破壊し、辺りにいた不良達はあちこちに吹き飛んで行った。


「はぁはぁ…。ダメだ…パワーを押さえられない…。ぐっ……まさか、こんなところで力を使うことになるなんてな…。アタシの力は安定していない…。何としてでも神童響史を探して…殺さないと…」


 霙は足を引きずりながら近くの光園――光影中央公園にやってきた。


「ここで休憩すっか…」


 そう言って彼女は辺りを見回しながら公園の中に入って行った。あらゆる遊具が設置されているここ中央公園は、光影都市の住宅地の中に一個しかない大きな公園で大抵の子供たちはここで遊ぶことが多い。

 霙は公園にはよくある水道を見つけた。


「水…!? ちょうどいいや、補給しとくか!」



キュッキュッ…。



 水道の蛇口を回し、霙の持っているハンマーの一部にある丸い穴の中に水をたっぷり入れてギリギリのところまで入れ終わると、蓋を閉めてハンマーをコンパクトなサイズまで小さくした。


「ふぅ…。まぁ…これで、いいか…」


 霙は結局そのままその公園で寝てしまった……。


――☆★☆――


 翌日、午前七時…。俺の家……。相変わらずの生活を送っていた俺は、自分の部屋のベッドで寝ていた。無論、左右には瑠璃達が寝ている。はっきり言って、嬉しいという気持ちよりも狭いという気持ちの方が勝っている…。何故かというと、このベッドはもともと一人用…。なのに、なぜか今では五、六人の悪魔の少女たちが寝ている。俺はそんな彼女たちに囲まれハーレム状態でいつも寝ている。しかし、いつまでもそういう状態を楽しみ続けるわけにもいかない。俺にも学生生活というものがある。そのため俺は、さっさと制服に着替え、下に駆け下りて朝ごはんを急いですませるというわけだ。だが、その行動はあくまでも過去の話。今は、彼女達を起こさなければならないのだ。なぜなら、彼女達も俺と同じく学校に通うことになってしまったからだ。全く、家にいるのが嫌だとか魔界からやってくる刺客のことが心配だとか、俺的には学校にいるほうが何かとメンドウだと思うのだが…。

 まぁ、そんなこんなでいつも俺は彼女達を起こすことに時間をくってしまう。しかも、彼女達は全員女子…。いきなり起きたと思えば寝起きのために寝ぼけたままその場で脱ぎだしたり、脱ぐ途中でまた寝てしまったり、階段からすっころんで俺を巻き添えにして一階に転げ落ちたりなど、アクシデントの連続…。

 そんな毎日を送っていたせいか風邪を引いて高熱が出てしまった。無論患者は――瑠璃だ。今までの話を聞いていた人は、大抵俺が苦労の連続で疲労で倒れたと思っただろうが、残念ながら俺ではない。俺もはっきり言って自分の体の構造を不思議に思っている。


――一体どういう体質をしているんだ?



 科学者か誰かに調べてほしいものだ……あっ、いや、いるにはいるか…1人…。ちなみにその一人というのは――。


「よっ、おっはよ~! 今日もいい朝ね!」


「……あっ、そうだね…」


「ちょっとちょっと! 何よ、そのトーン低めの軽い受け流しの挨拶は! あんた、私をどこまでバカにしたら気がすむわけ?」


「いや、だってお前バカじゃん?」


「なっ!? 私は科学者よ? バカなんかじゃないもん!」


 そう、彼女が先ほど言っていた科学者『ルナー=アルメニア=ベリリウム』だ。瑠璃と麗魅の母親の妹にして、瑠璃と麗魅の叔母…。見た目は確かに彼女達と同じ年齢。それには理由がある。瑠璃と麗魅の母親『セイラ=コスチトス=ベリリウム』とルナーは、すごく年が離れているのだ。何故かは俺も詳しい理由は聞かせてもらってない。


「そうか? じゃあ、どうしてそんな変な格好してるんだ?」


「えっ?」


 ルナーの姿をよく見てみると、彼女は天井裏から顔をひょっこりと出し、ちゅうぶらりんの状態で俺と対話していた。しかも白衣の下に何故か俺の姉の服を着て、顔に既にメガネをかけているのに額にサングラスを装着していた。


「うわぁあああ! こ、これはその…違うのよ? ただ、その…服がないから、この家で洋服探してたら偶然あんたの姉の服のサイズがピッタリで、しかもデザイン的に好きだから着てるとかそういんじゃないから!!」


 彼女の行動のすべてが今、彼女の言葉で明らかになった。


「あっ……そ」


 俺はルナーを憐みの表情で見つめた。


「何よ…その目は!」


「別に…。ていうか、こうやって話している間にも時間は刻々と過ぎてるのだが…?」


 横目で俺が壁にかけてある時計を指差しながらるナーに言う。


「うっさいわね! ていうか、さっさとその子たち起こして学校でも何でも行きなさいよ!」


 ルナーは腕組をして俺に舌を出してアカンベェをした。


「ていうか、その間お前何すんの?」


「そんなの、私の勝手でしょ?」


 俺の言葉に、ルナーはプイッとそっぽを向いて応える。


「いや、俺的に家を改造されたり荒らされたりするのは困るのだが…」


「そんな言い方しなくてもいいでしょ? ちょっとVersion Upするだけよっ!」


「何でそこだけ英語?」


 俺は彼女との対話に疲れを感じていた。

 と、その時、俺は風邪を引いている瑠璃と、目の前で暇を持て余しているルナーを交互に見た。そして、俺はあるアイデアを思い付いた。


「おぉーっ!」


「な、何よ…急に大声出して…」


「お前に頼みがある!」


「た、頼み…? まさか変なことさせるわけじゃないでしょうね?」


 少し後ろに下がりつつ俺に怪しい者を見るかのような視線を向けるルナー。


「一体お前は俺をどうイメージしてるんだ?」


「えっ? 変態…でしょ?」


「うっ! 何だその最悪な二文字は!!」


 俺は声を荒げて言った。


「だって、姪が言ってたわよ?」


「姪って――」


「そっ! 麗魅がね♪」


――あいつ~~!!



「そうだった、こんなことしてる場合じゃない! 急がないと学校に間に合わない! てことで、さっさと用件済ませるぞ?」


「えっ?」


 俺は彼女に何か言われる前に一方的に言葉を発した。


「瑠璃が今日、風邪引いてるんだ。だから、俺達が学校に行ってる間、お前に看病しててほしいんだ」


「え~~~っ!? なんで私が?」


「いや、かわいい姪のためじゃないか! そこはひと肌脱ごうぜ?」


「えっ? 脱ぐの?」


 慌てて自身の服を押さえて後ろに下がるルナーに、俺は顔の前で手を横に振り言った。


「いや、変な意味じゃなく……」


「わ、分かってるわよ!」


 ルナーは頬を赤らめながらそっぽを向いた。ツインテールに結んだ薄いエメラルド色の髪が彼女の顔の動きに合わせてなびく。


「じゃあ、時間もないし…行くな!」


「ちょっと、まだ私OKなんて一言も言ってないわよ?」


「後で何かしてやるから頼む!」


 俺はその時、何も考えずに軽く言ってしまった。まさか自分でまいた種に後で後悔するハメになるとはまったくもって思わなかったのだ。


――☆★☆――


 午前七時三十分…。

 一方霙はというと、既に響史の家の前にいた。


「ふっふっふ…ついに見つけたぞ! 神童響史の家! にしても、こんな普通の民家に住んでるとはな! アタシ的には、もっとこう飛○石か何かで空を飛ぶ、ラ○ュ○的なやつに住んでる王族の末裔かと思ってた……おっ! 出てきたぞ! しかも1人だけ…ふっ!

飛んで火に居る夏の虫とはこのことだ! 背後から忍び寄ってその首狩りとってやる! ヒメ達を助けるためだ…悪く思わないでくれよ?」


 霙はそう言ってハンマーを構えた。そして彼女は、住宅地の入り組んだ通路の角から響史の歩いている通路に飛び出した。

 と、その時、霙は自分の死角にいた男性の姿に気づかず、そのままその男性とぶつかってしまった。


「いった~! ったく、なんだよ! ちゃんと前向いて歩けよな!!」


「てめぇこそ、どこ向いて歩いてんだ! ちゃんと交通ルールを守って左右確認して歩け!」


 二人は互いに自分の思った意見を大声で叫び、相手の顔を確かめた。


「げっ! 昨日のおっさん!」


「ぐっ! 昨日の怪力娘!」


 彼らは互いに火花を散らし後ろに飛びのいた。そして互いに睨み合うと、いきなり戦いを始めた。


「いい加減アタシの邪魔すんなよ! アタシは忙しいんだよ!」


「だったら、おとなしく俺に負けな!」


 不良のリーダーはそう言って指をパチンと鳴らした。すると、なぜか昨日霙にボコ殴りを受けた男たちが出現した。


「くっ! 昨日より人数が増えてる!?」


「あたりめぇだ…。あれから、俺達はおめぇのこと探してたんだ! 必ず、お前を見つけて仕返しをするってな!」


「ガキか……」


 霙は横目でボソッと嫌味を言った。


「うっせえ~! やられたらやり返す! それが俺達のモットーだ!」


「開き直るな!」


「へへっ! 強がってられるのも今の内だぜ小娘!! これが何か分かるかぁ~?」


 そう言って懐に手を伸ばした不良リーダーは、上着の裏から何かを取り出そうとした。


「あっ、あああ…アレ? どこにいった…? くっそ~失くしたのか? アレ結構高かったんだぞぉお~おい!」


「アニキ! さっき、そこに落ちてやした!」


「おぉお! でかした! へっへっへ…これが何か分かるかぁ~?」


「………いや、何て言うか、カッコわる……」


「うっせぇぇぇええええ!!! 死にたくなかったらそこに(ひざまず)きな!」


 リーダーはニヤリと笑みを浮かべながら霙に近寄った。拳銃の銃口を突き付けながら――。


「ていうか、前もこんな状況なかったっけ?」


「ふっ…昨日の事だからな…よく覚えてるじゃねぇか! まぁ、今回そのおかしなハンマーは使わせねぇがな?」


「なっ!?」 


 霙はいつもなら背中にあるはずの武器のハンマーがないことに気づいた。


「は、ハンマーは!?」


「こっちだぜ?」


 手下の不良がハンマーを握りしめて霙のハンマーを振る。


「やめろ! 乱暴に扱うな!」


 霙はひどく興奮していた。どうやら、相当大切なもののようだ。

 そう考えた不良のリーダーは、シメたと思い口を開いて言った。


「へっ…これさえなけりゃ、お前も手が出せない…―」



ドゴッ!



「なっ…、かっ……えっ…」


 不良のリーダーは、自分のすぐ後ろのブロック塀に霙がすごい勢いでパンチをしているのを見ていた。

 肩を震わせながら涙目で目だけ後ろを見てみると、激しいヒビ割れが彼女の手跡から伸びていた。


「ひぃっ…!」


「よくも、アタシのお気に入りの武器をあんたらの汚らわしい手で触ったな~?」


 霙は、昨日とはまた別の邪悪なオーラでニヤリと歯を見せずに笑みを浮かべた。それは、いろんな意味で不気味だった。背筋に悪寒が走る不良達…。

 と、その時、何故か清々しいほど天気のいい青空から雷が落ちてきた。しかも、その雷は普通の雷とは違い緑色の稲妻だった。

 その稲妻は真っ直ぐ霙の体に直撃した。


「ぐぅうぁあああああ!!!!」


「な、何だ!?」


「ヤバいっすよアニキ! ここは一旦引いた方が…」


「いや、待て…やつの様子を見てみろ!」


「えっ…」


 不良達は雷が収まった後の目の前の光景を目の当たりにした。すさまじい稲妻をまともに受けた霙は、呼吸を乱しながらその場に立っていた。


「ありえねぇ…普通の人間なら死んでるはずだ!」


「バケモノか? こいつ…」


 不良達は口々に弱気な言葉を口にする。


「はぁはぁ…な、何だったんだ今の…あれ?」


 霙はその場に座り込んでしまった。


――なっ…体に力が入らない? どうなってんの? くっ…ん~! う~っ! だめだ、力が入んない!どうなってんだ!? くっ…このままじゃ不利だ…っつうか、今の雷なんだったんだ? とにかく、この場から逃げないと!



 霙は周囲の不良に目をまわした。見た感じ彼女は逃げ道を完全に不良に塞がれている。


「おめぇ…急にしおらしい顔になったな…さては、今の稲妻で何か起きたか? 例えば、力がなくなったとか?」


「!?」


 彼女は警戒を固める前に敵に図星の言葉を言われ、思わずそのことが表情に出てしまった。


「ち、違う!」


「くくっ! くぐぅふふっははははははは!!! 嘘つくの下手だなてめぇ…。その顔見れば簡単にわかるぜ? お前は力を失った…」


「くっ、こっち来んな!!」


 霙は右パンチを繰り出した。


「アニキ!!」


 手下たちはリーダーを助けようと、思わず体が動いてしまった。しかし、彼は彼女のパンチをくらうどころか簡単に受け止めていた。


「なっ!?」


「へへっ…さっきの時とは全く違ぇな? こんなんじゃ普通の女子高生と変わらねぇぜ? どうしたよ、昨日みたいにすんげぇことしてみろよ? あぁ!?」


 霙は彼の言葉一つ一つに威圧感を感じていた。自分は今、力を失ってしまっている。その原因が何なのかはよく分からないが、今のところ一番怪しいのはさっきの雷だ。だが、それを考える前に今はとりあえずこの場を切り抜けなければならない。誰かに助けを求めるか? しかし、辺りを通る通行人は誰もいない。恐らく、みんなただの一般人。その一般人の中ではこの不良たちに勝てるような力がないことを理解しているのだ。


「くっ、離せ……」


彼女は小声で言った。


「あぁ? 今なんつった? 小さかったぞ? まさか、離せっつったのか? 今のお前にそんなこと言う権利はねぇぞ? 今の権利者は俺だぁ! 今のお前には俺には勝てない!だから、こんなことやっても何も言えねぇんだよ!!」


 そう言って、不良のリーダーは霙が羽織っているボロい毛布をはぎとった。


「うわぁああ!! ややや、やめろ! 何すんだ! くっ…今すぐやめないと殺すぞ!?」


「やれるもんならやってみな小娘!」


 男の仕返しはまだ続く…。彼はさらに彼女の服に手を掛けた。


「や、やめろ! やめろ!!」


「へへっ…もう遅ぇ!!」


 力のない状態の霙は普通の女子高生と同じのため力負けし、男に上着を盗られてしまった。


「くうっ…! 力が戻ったら覚えてろよ?」


「ふっ! その時には、もうお前は昔の女にはなれないだろうぜ?」


「!? そ、それって…どういう――」


「ふっ…今にわかるさ!」


 そして、とうとう不良は彼女のスカートの裾に手をかけた。


「だ、ダメだ! それだけは…許してくれ!!」


「許してくれ…だぁ?」


「う…ゆ、許して……ください…」


 ついに霙は、プライドをはねのけて許しを請う言葉を口に出してしまった。


「くっくっく…その言葉…待ってたぜ? だが、あれだけボコ殴りにされたんだ…! ここまで来て後には引きさがれねぇよな! なぁ、お前ら?」


「へっへっへ…その通りですアニキ!」


「くっ…あんたら、こんなところでこんなことして誰かに気付かれても知んねぇぞ!?」


「ぶぁあ~か! こんなところに、一般人はやってこねぇさ! サツだって俺らには太刀打ちできねぇ…諦めな! お前が俺達に喧嘩を吹っかけなけりゃこんなことにはならなかったんだ! わ~ったか?」


 リーダーは周りを取り囲む不良の男たちを見てそれぞれ目で合図すると、彼女のスカートのチャックに手をかけた。

 ジジジ…とジッパーをおろし、ついに霙の白い日差しを浴びていない足からスカートが外されようとしたその時、鑑賞していた男たちの中に光影学園の制服を着た男子生徒が紛れていた


「ぬぅわぁああ!!」


「なんだ!?」


「あっ、どうも! いやぁ~連れがお世話になりまして…」


「はぁ? ツレだぁ? お前何モンだ…、この女とどういう関係だ?」


「えっ? えっと、その…あっ、義理の妹です…」


「誰だ、アンタ…」


 その霙の一言で全員が無言になった。


「おい、てめぇ嘘か?」


「うあぁああ!! お前、どうして話を合わせないんだよ!」


「はぁ? 何でアタシがあんたに話合わせなきゃなんないんだよ! 第一、あんたはアタシが殺す相手だぞ、神童響史!!」


「お前、護衛役?」


「なっ、こんなところでその言葉を口にすんな!!」


 霙は不良に取り押さえられているために仰向けで響史に言った。


「おいてめぇ、無視してんじゃねぇぞ!!」


 不良の一人がそう言って俺を突き飛ばした。


「うわっ!」


「なっ!?」


 響史は思った…。


――どうして、俺はこんなにアクシデントに巻き込まれるんだろう。今思えば小さい頃からそうだ。犬にぬいぐるみを取られそうになっている女の子を助けようとして犬と戦ったら、仲間の犬が大量出現し返り討ちにあったり、階段を降りていたら足が滑って転げ落ちたりなど様々。今回だってそうだ。たまたま学校に行こうとしていたら、目の前に不良の集団がたくさんいて何かを囲んでいたから、何事だろうと思って覗き込んだだけなのに…。まさか護衛役が襲われてるだなんて…。そして、今もそうだ。俺は、目の前の仰向けで取り押さえられている少女とキスをしていた。しかも、手はあってはならぬ位置にあった…。アレ? そういえば、随分前にもこんなことがあったような…。



「い、いっ…いやぁああああ!! 死ねっ、この変態!!!!」


「ぐるぅうぼおぉおおおお!!!!」



ギュルルルル…ドシャッ!! ズリリリリ…ドサ…。



 激しい効果音に舞い上がる砂煙。そして、シューシューと音を立てる響史の体。アスファルトとこすれ合い彼の制服はボロボロ…。そして彼は気づいた。霙はすさまじい怪力の持ち主だということを――。


「あれっ? 力が戻ってる…? ってことは――」



ドンッ!!



 霙は思いっきり気を溜めてアスファルトを殴った。すると、震度5はあるくらいの地響きが地面に横たわっている響史や不良達を襲った。


「なっ! て、てめぇ~! 力が戻りやがったのか?」


「ふっふっふ…どうやらそうみたいだな? あんたら、死ぬ覚悟は出来てんだろうな?」


「うぅぁ…ま、待ってくれ! 服は返す! この毛布も返すからよ! 頼むゆ…許してくれ――いや、許してください!!」


「もう遅いっ!!」



ドゴバキッゴシャッ!



「がっ! ぐはっ…ば、バケモノなんかじゃねぇ…か、カイブツだ!」



ブチッ…!



 何かが切れる音…。

 霙は傍に落ちていた小さなハンマーを拾い上げると、両手で握りしめ巨大化させた。そして、それを思い切り慣れた手つきで回し足を踏み込むと、目に炎をたぎらせながらハンマーを野球のバッドのように振るった。


「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええええ!!!」



カキーン!



「「「ぐぅわぁあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」」」



キラーン!



 光り輝く星…。それは何だか響史には綺麗に見えた。

というわけで、新たな護衛役の霙が登場です。急いがしくて久しぶりの投稿となりましたが、今回の話の内容も色々と盛り沢山です。

今回は不良が登場しましたが、ここで登場した不良リーダーは再び出ることになります。突然天から落ちてきた落雷によって一瞬力を失ってしまった霙に対し、優位に立つ不良たちでしたが、響史の乱入によってそれは防がれます。

ちなみに、霙は相当な力の持ち主なので、相手が例えゴツい男ばかりでも巨大ハンマーを振るうことで勝つことが出来ると思われます。

後半は、瑠璃を看病しているルナーが関係する話です。

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