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魔界の少女  作者: YossiDragon
第一章:四月~五月 護衛役『現れし青髪の脅威(前)』編
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第十七話「編入テスト」・1

今回は二ページ構成です。

 家に帰ると、俺はさっそくありとあらゆる辞書を取り出し、リビングに運んだ。


「こんなにたくさん、何に使うんだ?」


「何って、日本語の勉強に決まってるだろ?」


 当たり前だろという顔で、霄の疑問に答える俺。それに対し、彼女は腕組をして頷いた。


「ほう。だが、こんなにたくさん使う必要あるのか?」


「何しろ、俺達の世界には大量の言葉があるからな。……これだけあれば、一応足りるかな」


 俺は最後の分厚い辞書の一冊をテーブルにドサリと置くと、バッグをそこらへんにポイッと置いて、座布団の敷かれた床に座った。それから俺は、さっきから首を絞められている気がしてネクタイを緩めた。


「ふぅ~。さてと、まずはひらがなから勉強するか?」


「ひらがな?」


 霊がきょとんとした顔で首を傾げ、気になるワードを反芻する。


「ああ。大抵の日本語は、ひらがな、カタカナ、漢字の三つに分かれていて、それらを多種多様して言葉を生み出していくんだ。例えばそうだな……、『千里の道も一歩から』とかいう風に、漢字とひらがなを一緒に使ったりもするし、『ひらがな』だって、漢字で書くと『平仮名』って書くしな……」


「へぇ~。日本語ってなかなか面白いんだね~♪」


 霊が頬に手を当てて両肘をテーブルに置き、まるで他人事の様に言った。


「言っとくが、お前も受けるんだぞ?」


「ええ~っ!? 私も~!?」


「当たり前だろうが!」


 勝手に自分は関係ないと思っていたらしい霊の反応に、俺は少しムッとしながら言った。

 その時、俺はルリ達が普通に日本語を言葉にしていることを改めて思いだし言った。


「……っていうか、お前ら既に日本語口にしてるじゃん!?」


「ああ、これは『言語翻訳機』と言ってな? その場その場に応じた言語に翻訳することが出来るのだ。だから、私が今魔語を使って喋っていたとしても、日本語に翻訳されるというわけだ」


 俺は、霄の説明を聞いてある程度理解し、すごいと思った。


「それって、誰が作ったんだ?」


「これも、少し前に姫様が話したという話に出てきた、姫様の叔母様が作ったものだ」


「なるほど、発明家も凄いな」


 霄の説明に、俺は納得の頷きを見せた。


「とりあえず、日本語の勉強の続きしよ?」


「そうですね……」


 ルリの叔母だという発明家に感心する俺を他所に、ルリがさっそく辞書を片手に持ち、それに零も賛同して辞書を開いた。




 あれからどれくらいの時間が経っただろうか? 日も暮れて、辺りもすっかり真っ暗になってしまった。

 時計を見てみると、時刻は午後五時を指していた。

 俺は丁度いいタイミングだと思い、とりあえず今まで勉強したことの復習をするために、ルリ達から辞書を受け取ると、さっそく問題を出した。


「じゃあ、まずはこの問題だ……。『謎』←何と読む?」


「はい!」


 俺は、元気よく手を上げるルリに解答権を与えた。


「答えは、『めい』です!!」


「ぶぅ~!! 『めい』じゃなくて、『なぞ』な?」


「あ、そうだった。てへへ……」


 このお茶目さがなんとも言えない。


「じゃあ、次の問題。今度のは少し難しいかもしれないな……。『鮪』←何と読む?」


「はいはいは~い!!」


 俺は、凄くテンションアゲアゲの霊を当てた。


「答えは『マグロ』です!!」


「すげ~、合ってる! じゃあ、次の問題は分かるかな? 『鮃』←何と読む?」


「『ヒラメ』!!」


 何でこいつは、魚の名前は全部当てやがるんだ。


「じゃあ、『鯨』←これは?」


「『くじら』!!!」


「くっ、正解だ……」


 全く、どんだけ魚好きなんだ?

 俺は、ある意味霊を尊敬した。


「まぁ、いいや……じゃあ『胡桃』←これは?」


「う~ん、『ごま』?」


 少しイタズラ的意味も含めて魚から離れると、案の定霊は唸った末に恐る恐る解答した。


「う~ん、惜しいな……」


「分かったぞ、『くるみ』だ!」


「おっ、凄いな霄……合ってるぞ?」


 本当に吃驚(びっくり)した。まさか、剣術馬鹿と思っていた霄が解答出来るとは、露ほども思わなかったのだ。

 一方、解答した当人の霄も少し意外だったようで、心底嬉しそうに声をあげた。


「おお、本当か?」


「ああ!」


「それは良かった」


 俺は思った。

 だんだん魔界の少女(こいつら)は成長していっている。問題もどんどん解いてるし……この調子なら、テストももしかすると、もしかするんじゃ――




 それからさらに一時間が経過し、時刻は六時……。


「じゃあ、そろそろテストの一つ前の問題を解いてみるか?」


「そうですね。そろそろ人間界のテストの形式も見てみたいですし」


 うわっ、零がめっさ専門的なこと言ってる……。

 普段からは想像できない零の姿を垣間見た気がして、俺は少しビビッた。


「ちなみに、お前らの通ってた魔界学園って、偏差値幾つ?」


 ちょっとした興味本位で尋ねてみる。すると、返って来たのは信じられない数値だった。


「偏差値ですか? ざっと、八十~九十はいってたはずですけど……」


 少し記憶が不確かなのか、虚空を見ながら言う零に、俺は驚愕する。


 うえぇぇええ~~~~!!? 桁が違いすぎるぅぅぅぅぅッ!! いや、厳密的に言えば、光影学園は偏差値六十くらいで数字的にはそこまで変わらないけど、俺的には二十も差があったら、桁が違うんだよッ!

 俺が心の中で叫んでいると、追い討ちをかけるように霄が少し微笑みながら言った。


「言っておくが、魔界学園を卒業して護衛役になるためには、偏差値八十以上は勿論のこと、単位も全て取っておかないといけないからな?」


 ぬわぁんだとぉぉぉぉぉッ!!? てか、単位もあんのかよ!!

 俺は頭が爆発しそうだった。ていうか、それくらい信じられなかった。だって、戦っていない日常生活での魔界の少女(こいつら)の見た目は、のほほんと平和ボケしていて、大抵何処にでもいそうな奴らだったからだ。

 でもまさか、そんな奴らがこんなにも頭が良かったなんて……。そんなやつらに俺は、得意気に日本語を教えていたってのか? なんか俺、めっさカッコワルイじゃん!!



「まぁまぁ、そんな気を落とさないで……? 私は、偏差値そんなに高くないから……。ね?」


 色々とショックを受けて呆然としている俺に、優しさからか、ルリがそう声をかけてくれる。


「じゃあ、お前偏差値幾つ?」


「えっ? え~と、確か七十だったかな?」


「てめぇもあっちの仲間だろがッ!!」


 何だか裏切られた気分に陥り、俺は部屋の隅っこで体操座りをしたまま微動だにしないように丸まった。てか、普通ありえないだろ。ルリが七十!? だって、あんな天然なのに……いや、それは関係ないか。


「ねぇ響史。そんなに落ち込まないでよ~。私達、まだ本番のひとつ前のテストをやってないよ?」


「グスッ……そこに置いてあるだろ? 時間は四十五分だから。……じゃ」


 俺は机の上に置いてあるテスト用紙を指さして場所を伝えると、再び憂鬱状態に移行した。


「まぁ、響史があんな感じだから……私達だけで始めちゃおっか♪」


「そうだな。ではとりあえず、一番上に置いてある奴から……。ムッ! これは……私の一番苦手とする科目――英語ではないか!!」


「やった~、私の一番好きな教科だ~!! じゃあ、時間計ってやってみよ~」


 向こうからは、楽しそうにはしゃいでいる少女達の声。

 こっちでは、一人寂しく床に指で文字を書いている。

 俺は、あまりにも退屈なのと日頃の疲れが溜まっていたせいか、いつの間にか体操座りしたまま眠っていた。




 気がつくと、ルリに肩をポンポン叩かれていた。


「あれっ、俺寝てたのか……?」


「そうだよ?」


 涎までくっていたようで、それを目の前にいるルリに見られないように拭う。

 それからルリに用件を尋ねた。


「それで、何かあったのか?」


「うん、終わったよ?」


「えっ、終わったって……あんなにたくさん教科あったのに?」


「うん……」


 俺はその言葉に一瞬疑いを持った。なにせ、魔界の少女(こいつら)は十教科あったテストを、たったの百分で全て終わらせたからだ。


「う、ウソだろ……? あれ、でも霊テスト受けてないじゃん?」


 驚愕しながら彼女達の答案用紙を眺めていると、俺はふと霊がテストを受けていない事を発見した。その点について掘り下げると、霄が口を開いた。


「ああ、霊はダメだ」


「え?」


 一瞬、何がダメなのかと思った。


「ていうか、霊も護衛役だから偏差値八十以上……なんだよな?」


「ううん、私は偏差値五十九だよ?」


「ご、五十九!? でも、護衛役になるには単位を取って、偏差値八十以上なんじゃ……?」


「ああ。霊はな、普段は偏差値五十九なのだが、ある条件によってはその隠された力を発揮して、偏差値八十以上になるのだ」


 俺は何が何なのか分からず、とりあえず話を聞くことにした。


「そう……アレは凄く寒くて、日本で言うコタツが凄く恋しかった冬の時期。二学期も終わりだってことで、終業式前のテストをやることになったんだよ。その時、事件は起こった!!




《くぅお~ら、ローニャ! お前はまたしてもこんなヘンテコな落書きばっかりして。ちゃんとマジメにテストをせんか!!》


《だって、全然面白くないし分かんないんだも~ん!!》


《くわぁあああああっつッ!! この世の中にな、解けない問題なんて存在しないんだよォォォォ!!!》


《だってぇ~》


《はぁ~。お前はそれでも、あの最強――いや、最凶と謂われてきたルドラと水連寺一族の娘なのか?》


《そんなの、私には関係ないも~ん!!》


《先生に対して何という口の聞き方だ!! まぁ仕方がない……ローニャ=ミケ=ルドラ、これを見ろ!!! 》




 その時私は見てしまった! そう、伝説の“アレ”を!!」


「伝説の“アレ”??」


 俺は、そのアレというのが凄く気になってしょうがなかった。




「《このツナ缶が眼に入らぬかぁぁぁぁぁあああっ!!》


《あぁ!? それは、超限定の『プレミア極上ツナ缶』!! 欲しいぃぃぃぃぃ――うわっ!!》



ドサッ!



《ダメぇ~!! タダでは上げられません~~!!》


《ふんっ! ……ケチ!》


挿絵(By みてみん)


《なっ、ケチとは何だケチとは~!! 仕方がない、もしもこのテストでお前が満点を取れれば、このツナ缶をくれてやる!》


《ホント~?》


《……ああ》


《やった~!!》


 そう言って私は先生と約束をし、テストに取り組んだ。

 結果……。


《終わったよ~!》


《本当だろうな? ムムッ……一応やってはいるようだな。どれどれ、ムムッ……○、○、○――》


 そう、全て正解だったの!! しかも、クラスであのテスト満点だったの私だけ! 奇跡に近くない? ね、ね!?」


「あ、ああ、そうだな……」


 俺は何とも現金な奴だな~と思いながら、話の続きを聞く事にした。


「《じゃ、約束通り、このツナ缶はもらうね~》


《く~っ、約束は約束だからな……持ってけドロボ~!!》


――こうして私は、当日も同じ様にしてテストでいい結果を取り、無事に魔界学園を卒業できたのでした~。終わり♪」


 何とも非現実的な話だなと思った。その話を最後まで聞き終えた俺の反応を見た霄は、俺の肩を叩いて言った。


「要するにだ。明日、あのオカマ校長に提出するテストで五百点以上取るためには、さっき霊が言っていた先生の方法に似たやり方を使えばいいのだ」


「くっ、それって軽く餌で釣るのと同じことだよな?」


「まぁ、そうだな……」


 俺の言葉に、霄も思うところはあるのだろう。まぁでも仕方がない。他に方法もないし……。

 そう頭の中で考えた俺は、思い切って霊に提案した。


「霊、もしも明日提出するこの十教科のテストで五百点以上取れたら、ご褒美として特別に大量の魚料理を振舞ってやるぞ?」


「えっ、本当!?」


 よほど俺が作る大量の魚料理が食べたいのか、霊は眼を爛々と輝かせて言った。


「分かった! 絶対だからね!?」


「あ、ああ……」


 相手の勢いに少々圧されながらも、俺は約束すると言った。すると、いきなり霊は服の袖を捲くりおでこに鉢巻をすると、眉毛をキリッと吊り上げて真剣な眼差しで教科書を開き、俺の手からシャーペンを抜き取って別の白紙だらけのノートに、さらさらと問題を解き始めた。

 さっきまでの明るいムードメーカーの様な立ち位置の霊が、急に真面目ムードに変わったため少し驚いたが、彼女もマジメにやればここまで変わるのだという事に、改めて気付いた。

 俺は時間を確認し、そろそろ夕食の時間だということを思い出して急いで支度をした。

 料理をせっせと作っている間でも、彼女達は一言も言葉を話さず、黙々と勉強をしていた。その姿を見て何故か少しホッとして、俺はそのまま料理を作り続けた。

 俺が料理を完成させ、それぞれの分量に合わせてご飯をよそい分けると、丁度ルリ達も勉強を終えている頃だった。


「おっ、丁度終わったみたいだな。とりあえずご飯食べようぜ?」


「うん!」


 ルリは俺から食器を受け取ると、それぞれの目の前のテーブルの位置に置いた。


「いっただっきま~す!!」


 俺の掛け声を合図に、全員が手を合わせる。

 今日の晩御飯のメニューは、いつもとあまり変わらぬ和食の定番メニュー。白ご飯と、煮魚と、カボチャの味噌汁。そして極めつけは、テスト以外の入試などでもよく使う、豚カツ……。まぁ、"勝つ"っていうゲン担ぎ的な意味があるみたいだが、効果があるかどうかは定かではない。たまたま豚肉が安かったってのもある。

 俺はテレビを付け、いろんな番組を見ながらご飯を食べた。今日もまた、彼女達の会話は無し。まぁいいか……こいつらもテスト勉強で少し疲れてるだろうからな。


「言っておくが、別にテスト勉強で疲れているから、お前の話相手をしない訳ではないぞ?」


――ッ!? だから、何で人の心を読んでんだ!!? まあ今はそれはおいておくか。何だか俺も最近ツッコんでばっかりで疲れたからな。たまには俺にも休養は必要だ……。

 そう思い、俺はそれ以上の言葉を止めた。

 すると、霄から話題を振ってきた。


「ところで響史。実は、お前に言っておきたいことがあるのだ」


「言っておきたいこと?」


「ああ……明日のことなんだが、学園に入るのは別に構わないのだが、零の事をちゃんと考えてくれているのか?」


「あっ!?」


 俺は彼女に言われ、改めてその事について考えさせられた。

 そう、俺やルリ、また、護衛役の霄達は、光影学園の高等部で何の問題もないのだが、零は一人中等部だ。

 まさに、そのことを計算に入れるのをすっかり忘れていた。


「そっか……。どうしよう、零、お前は一人で大丈夫か?」


「別に一人でも何の心配もないのはないのですが、少し問題が……」


「何だ? 言ってみてくれ」


「私、ちゃんと他の人間と馴染めるでしょうか?」


 てっきり俺は、彼女の質問がもっと深い意味を持つものなのではないかと、少しドキドキしてしまったが、どうやらその心配はないようだ。俺は少し安心したせいか「ふっ」と失笑し、少し顔を俯かせている零に言った。

というわけで、自宅でテスト勉強です。といっても、実質ほとんどの時間を日本語学習に割いてしまいましたが(笑)。しかし、さすがは偏差値80を持つ彼女たち。日本語を完璧にマスターした彼女たちは本来かかる時間よりももっと早くにテストを終わらせてしまいました。

また、改めて霊の物事に対しての現金さが理解出来たことと思います。おいしい魚料理を食べるがために、偏差値80の威力を解放するという……。

次回は、二つの条件の一つ――お金のことについての話を書こうと思います。

微妙な所で区切らせてしまい申し訳ありません。

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