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魔界の少女  作者: YossiDragon
第四章:七月 現在『欠けた一部と空白の四年間の記憶』編
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第五十六話「ランチまでに見つけろ、ドキドキかくれんぼ!」・3

「ま、待ってくれ! これにはいろいろと訳があってだな……後で説明するから、とりあえず二階で待っててくれ」


 俺はどうどうと霖を制止し、それから霖を二階に行かせた。ふぅ、余程皆も心配していたようだな。これは、いよいよ説明しないといけない。まぁ、遅かれ早かれ言うんだ。この期を逃す手はない。

 それに、母さんや父さんとも話すんだ。ついでに聞いてもらおう。


「あっ、鍋鍋!」


 少しボーッとしていた俺は、慌てて鍋をかき混ぜた。セーフ、ギリギリ焦がさなかった。


「後は零とルナーのみ。でも、零が隠れてそうな場所ってドコだ? そうだ、今は誰もいない。こうなったら……」


 最後の手段、これだけは使いたくなかったが、四の五の言ってる場合じゃない事は先刻承知の上。


「零、降参だ! 俺の負けでいい、姿を見せてくれッ!!」


 俺がそう言うと、ダイニングの方にあるテーブルの上の皿が動いた。


「私の勝ちですね、響史さん。ふふっ、あの時は負けてしまいましたが、今回は勝てました」


 零が姿を現したのは、テーブルの椅子の上。どうやら彼女は、ここに座っていたようだ。


「どうしてここに?」


「いえ、朝ごはんを頂いていたのですが、響史さんの母上と父上が帰られたので……この様な形に」


 零の丁寧な説明に、なるほどと俺は首肯する。


「とにかく、二階に行っててくれ」


「しかし……私はまだ、朝ごはんを――」


「じゃあ、皿ごと持ってって!」


 そう言って少し強引に皿を渡すと、零を二階に行かせた。

 これでようやく残り一人。にしても、降参したってのに姿を現さんとは、相変わらず天邪鬼だなルナーのやつ。


「ルナー、どこにいるんだ! 後はお前だけだ、いい加減姿を見せろ!!」


 声を張り上げてルナーの名前を呼ぶと、どこからか含み笑いが聞こえてきた。


「ふっふっふ、どうやら私を見つけられなかったみたいね……神童響史。この勝負、あなたの負けよっ!」


「って、何の勝負だよ!! あのな、別にかくれんぼしたくてやってるんじゃないんだぞ? いいから、どこにいるんだ!?」


 もったいぶるルナーに苛立った俺は、少し声を荒げて問い(ただ)す。そうしてやってきたのは、リビング。声はこちらからする。つまり、この周辺ということ。

 刹那――。


「きゃっ!?」


「え――ぐえッ!?」


 ドサッ!


 俺は、何かが落下してきたことによって、そのままうつ伏せに倒れた。その上に、誰かが同じくうつ伏せに乗っかっている。いや、この体格と肩甲骨付近に感じる二つの柔らかな重量は……ルナーだ。


「おい、重いからどけ」


「んなっ!? あなた、女の子にその言葉は禁句よ!?」


「知るかッ! 人様の上に落ちてきやがって……」


 俺が可能な限り首を回して、上に乗っかっているルナーを睨む。すると、射すくめられたルナーが申し訳なさそうに俺の上からどいた。


「ったく、お前はどこにいたんだ?」


 ずっと気になっていた隠れ場所を訊ねる。そう言えば、どうしてこいつは上から降って来た?


「天井よ」


 その解答に、俺は驚愕して唖然となる。だって普通かくれんぼで天井はありえない。いや、確かにこいつは天井裏とかから出没(ネズミみたいに)するが。


「いやいや、それはセコいだろ」


 顔の手前で手を振り、ないないと言う動きをする。


「仕方ないでしょ? 隠れる場所がなかったんだから! さて、あんたに訊きたいことは山ほどあるわ。無論、私じゃなくてあの子達だけど。それと、あんたには念のためにこれを渡しとくわ」


 そう言ってルナーから手渡されたのは、小さなブロック。白銀色に光り輝き、綺麗な光沢を放っている。大きさは角砂糖一個分。


「これは?」


「いろんな役目を果たしてくれるわ。私の持つ力の一つ……。音声機能もあるし、通話にも使えるし、後は……物々交換とかも出来るわ。と言っても、一方的に送る事も出来るけど」


 その機能説明に、俺は心底驚愕する。まさか、これにそれほどの力があるとは思わなかった。


「すげぇ……」


「ふふんっ、どんなもんよ!」


 別にルナーを褒めた訳ではないのだが、何を勘違いしてくれちゃったのか、ルナーは威張りながら腰に手を添える。同時、そのありえない胸がたゆんたゆん揺れるもんだから、思わず視線が泳いだ。


「こ、こっち見んなっ!!」


「俺のせいかよッ!?」


 バッと自身の胸を庇い身を屈めるルナーに、俺は理不尽だと思った。

 とにもかくにも、これで全員見つかった。

 と、その時、ガチャと玄関の扉が開く。


「マズイッ、帰って来た! 急いで二階に――」


 俺が慌ててルナーの方を振り向けば、そこには既に彼女の姿はなかった。どうにかしてこの場から退却したのだろうが、なかなか俊敏なやつだ。まるで、本物の忍者のようだ。

 とにかく、これで安全だ。


「ただいま、響史。ん? 母さんはどうした?」


「あっ、鍋!」


 俺は再び台所へ向かい、鍋の元へ。ふぅ、ギリギリ間に合った。


「響史、母さんは?」


「ああ、醤油とか他にもいくつか材料切らしてたとかで、買い物行った」


「そうか……近くのスーパーか?」


「多分」


「迎えに行ってくる」


「え?」


 俺が疑問の声をあげる頃には、既に父さんの姿はなかった。本当に迎えに行ったのか。


「ただいま、響史。ほら、亮祐も連れて来たぞ?」


 そう言って姉ちゃんが手を引いて連れてきたのは、俺の弟亮祐だった。久方ぶりだ。こうして会うのは、雪の時以来か……。

 あの時は巻き込んでしまって本当に悪いと思ってる。


「亮祐、久しぶりだな。元気にしてたか?」


「うん、兄ちゃんも元気だった?」


「ああ、まぁな」


 実際には七日間も眠っていた訳なんだが……。


「お姉ちゃんも、久しぶりだね!」


「お、おう。てか、さっき挨拶したろ?」


 姉ちゃんが、やれやれと腰に手を添えて言うと、亮祐は満面の笑みで言った。


「だって、お姉ちゃんにあったの久し振りなんだもん! どうして皆揃ったの?」


 遊園地に行くことになった子供並にはしゃいでいる亮祐。その喜び様を見ると、これからずっと一緒にいられるか分からない状況だと教えるわけにはいかない。


「……響史、さっき言ってた事ってホントなのか?」


 姉ちゃんの質問だ。俺は、その返答にコクリと首肯して応える。


「四年前の事はな。でも、それ以前の記憶は、少し曖昧だ。綺羅星幼稚園の事も、よく覚えてない」


「それって――」


「え?」


「い、いや……何でもない」


 何かを言い掛ける姉ちゃんだが、俺が訊ねようとすると話題を逸らされた。


「昼ごはん、何を食べるんだ?」


 その問いに、俺はさぁと答えた。本当に分からないのだ。


「多分、スープとかだと思うけど……」


 鍋を焦がさぬように未だにかきまぜながら、俺は言う。


「ふっ、その感じだと本当に四年間お前が自分で料理作ってたみたいだな」


「当たり前だろ、一人暮らししてたんだ。最初は最悪だったよ、全然上手くいかなくてさ? 忙しい時とかは、よくインスタントで凌いでたっけ……。懐かしいな、今ではここまで出来るようになったけど、それでもたまに失敗するんだよな。姉ちゃんは?」


「俺に料理は聞くな」


 うっ、鋭い視線を向けられた。余程苦手っぽいな。でも、おかしいな……小さい頃はよく母さんの手伝いしてたんだから、料理も少しはかじってるはずなんだけど。


「ただいまー」


「ただいま!」


 母さんと父さんが帰って来たようだ。玄関扉を開けてリビングへやってくると、食材の買い物袋を持った二人がいた。


「お待たせ、すぐに作るからね?」


 優しく笑んだ母さんは、そう一言告げて台所に戻る。

 結局、俺が手の込んだ料理を頼んだせいで、お昼ご飯を食べる事になったのは、午後一時を示す頃だった。


「いただきます!」


 父さんが手を合わせると、俺達も次いで合掌する。お箸を片手に、俺はご飯を口の中にかきこむ。うん、やっぱり美味しい。程よい柔かさで、おかずとよく合う。まさにコンビという感じだ。

 スープは、カボチャを摩り下ろした物だった。カボチャをミキサーにかけて、それを鍋に放り、温めていた。作っている過程をよく見ていなかったので、合っているかは分からない。何しろ、俺はスープなんて滅多に作らないからな。

 ちなみに、上に待たせてある魔界の少女(あいつら)も飢えているだろうということで、先程のルナーからもらったブロックを使用している。

 使用方法は、所謂通行口(ゲート)だ。これを通して彼女達にお昼ご飯を与える――もとい、送るのだ。

 現に、返って来る皿は全部綺麗に平らげてあった。


「響史、何をしているんだ?」


 時折、俺の行動の怪しさを訝しみ父さんが声をかけるが、何とかそれも誤魔化して切り抜ける。


「いや、何でもない。ちょっとお腹が膨れてきたかなぁ~って」


「もう、だから言ったでしょう? 大丈夫だって言うからこんなにたくさん作ったけど……食べられるの?」


 少し母さんが心配そうに俺を見る。いかん、また悲しい思いをさせる訳にはいかない。


「だ、大丈夫だって! ほら、この通りペロリ平らげてるから!」


「そ、そうね……。でも、無理してるんじゃない?」


「平気平気! なぁ、亮祐!」


 俺は、同意を求めようと弟の亮祐に振る。すると、唐突な質問にも関わらず、亮祐は満面の笑みでコクリ頷いた。


「うん! ママの作った料理、すっごく美味しい! 久しぶりに食べたから、何百倍も美味しいよ!」


 この年齢でお世辞は多分言えないだろう。だとすれば、この味の感想は素直に思った事を述べた物だと思われる。

 それを実の息子から聞いた母さんは、嬉しそうに頬を赤らめた。


「まぁ、嬉しい♪ そう言ってもらえると、ママも頑張って作った甲斐があるわ! ねぇ、こっちの唐揚げはどう?」


 他の料理の味も気になるのか、母さんが嬉々として亮祐の口元にあ~ん、と、唐揚げを運ぶ。亮祐は喜んで大きく口を開けて頬張る。


「もぐもぐ、美味しい!」


 亮祐の喜び様には、母さんも姉ちゃんも笑顔が(ほころ)ぶ。これが小さい子供の成し得る業なのか?

 とにかく、しばらくの間は昼ごはんに夢中でそれ以外の話題はなかった。

 そして、食事を終えて一息。母さんが冷たい麦茶を用意してくれたので、それを一口。


「ぷはぁ~、冷たくて美味いな!」


 グラスに注がれたお茶をテーブルに置き、俺は足をカーペットに投げ出す。やはり、こう暑いと早くカーペットを取り外したいものだ。だが、今はそれよりも先に話さなければならないことがある。

 それは、両親も理解しているようで昼食の時の表情から一変、引き締まった顔立ちになる。


「響史、そろそろ四年前やその他諸々についての話をしようと思う。全ての真相、これは……響史が知らなければならない事柄だ」


「そうだな、でも父さん……今日全て話すには時間が足りない。だからさ、今日は俺が一人暮らしをすることになった経緯と、母さんや父さんや姉ちゃんや亮祐について聞かせてくれないか?」


 実際、事の発端を話すとなれば、人が足りない。あの忌まわしい事件を思い出させるのは俺も気が引けるが、これを成し得なければ俺の記憶は完全復活を果たさない。そう、医者は言っていた。


「分かった、話そう」


 意を決したのか、父さんが一呼吸置いて説明を始めた。

というわけで、グズる霖を泣き止ませ、鍋の面倒を見る響史。残りの二人は、降参という形で見つけました。零はある意味すごいです。別の意味で凄いのはルナーですね。天井は予想外です。そして今回、ちょっとばかしルナーの能力を解放。響史にこうして能力を使うのは、二度目かと。

とにもかくにも、家族全員が揃いました。約四年ぶりです。

そして、昼ごはん。上にいる魔界の少女達には、響史が少しず料理を送るという方法で与えました。てなわけで四部に。

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