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魔界の少女  作者: YossiDragon
第四章:七月 現在『欠けた一部と空白の四年間の記憶』編
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第五十六話「ランチまでに見つけろ、ドキドキかくれんぼ!」・2

後半、某変態が暴走するのでご注意。

「そ、そう言えば父さん……庭はもういいのか?」


 まだ残りのメンバーを探し終えていない俺は、少し焦り気味に尋ねる。


「ああ、うちの庭は相変わらず広いなと思いながら、母さんや唯と話していた。それに、もうそろそろお昼の時間だからな! 響史も全くご飯を食べていないだろう? 久しぶりに、家族揃って昼ごはんを食べようじゃないか!」


 そう言って父さんはその場に立ち上がる。気づけば俺の股間の痛みは、少々緩和していた。いや、あまりにも衝撃的事実を知って痛みを忘れてしまっただけなのかもしれないが。

 それよりも、緊急事態だ。このままじゃ、皆を探せない。見つかったとしても、父さんや母さんがいる状態じゃあ逃がすことが出来ない。どうする!?

 俺が名案を考えていると、庭から姉ちゃんと母さんも戻って来た。


「お庭のお花、水やりちゃんとやってくれてるのね?」


「え? あ、ああ……」


 少し考え事をしていたため、少し曖昧な返事になりながらも俺は応える。まぁ、ここ最近水やりをしているのは、霖だけどな。

 ん? 待てよ、そう言えば庭の方には――。

 

「あ、そういえば……響史、洗濯物の数がやけに多かった気がするのは、気のせいかしら?」


 や、やっぱりだ。最近の炊事洗濯は霖がやってくれてるが、洗濯物の中には、俺を含めて魔界の少女(あいつら)の制服がある!! さすがにスカートやブレザーはしょっちゅう洗濯はしないが、ぶ……ブラウスとか、し……下着とかがッ!!

 すっかり失念していた。もしかすると、バレた可能性も否めない。


「毎日一人で大変だったでしょう?」


「え? あ、ああ……うん。で、でも大分慣れたし、大丈夫さ」


 よ、よかった。どうやらギリギリバレてないらしい。運が良かったと、ここは素直に喜んでおこう。

 それよりも、これからどうするかだ。

 リビングには、俺を含めて母さん、父さん、姉ちゃんがいる。姉ちゃんは俺の味方だからいい。問題は、父さんと母さんだ。

 くっ、もうそろそろ正午……時間がないッ! あっ、そうだ!! 昼!!


「と、父さん! せっかく家族揃うならさ、亮祐もいないといけないんじゃないか?」


 と、俺は父さんに提案してみた。そう、現在亮祐は雛下の家にいる。つまり、車で迎えに行っている間に捜索する方法を考えたのだ。だが、問題はまだ残っている。

 そう、母さんだ。母さんの対処法が思いつかない。別に夫婦揃って迎えに行くほどの事ではないし……。


「う~ん、そうだな。響史の言う事も一理ある。せっかく家族が揃うなら、亮祐もいなくてはな」


 顎に手をやり唸った父さんは、壁にかけてある時計を一瞥し時間を確認すると、首肯して車のキーを手に取った。


「よし、じゃあちょっと亮祐を迎えに行ってくる。その間に、母さんは昼ごはんの準備を頼む」


「ええ、分かったわ。気を付けていってらっしゃい」


「ああ、行ってきます」


 久しぶりの夫婦の言葉のかけあい。母さんがいってらっしゃいと言い、父さんが行ってきますというこの毎日のやり取りが、とても懐かしい。何せ、四年ぶりなのだ。数字的にはそれほどでもないと感じるだろうが、一年は三百六十五日もあるのだ。その間、俺は毎日一人でその言葉を繰り返していた。これほどまでに悲しく、惨めな思いをすることがあろうか。


「ちょっと待って!」


 そう言って声をあげたのは、姉ちゃんだった。


「俺も行く」


「唯、どうして」


「いいから! 俺も、早く亮祐に会いたいんだよ!」


 姉ちゃんは、多少強引に父さんを言いくるめる。


「そ、そうか……まぁいい。それじゃあ、一緒に行こう」


「ああ!」


 こうして、姉ちゃんは父さんと一緒に雛下家へ車で向かう事になった。


「さて、それじゃあ久し振りの自宅で料理しようかしら」


 やる事が既に決まっている母さんは、両手を胸の前で合わせ、いつも着ていたエプロンを着用する。

 と、その時、母さんが疑問の声をあげた。


「あら?」


「どうかした?」


 俺が母さんの方に近づくと、そこにはエプロンがもう一着あった。


「これ、響史の?」


「え? あ、ああ……」


 厳密的には違う。


「少しサイズが小さくないかしら?」


 母さんが言うのも無理はない。なにせ、それは本来小学生サイズなのだから。というのも、このエプロンは俺が霖にプレゼントしたものだ。俺のエプロンでは、サイズが合わず危険かもしれなかったので、新しく買ってあげたのだ。あの時の霖の喜びっぷりは、俺も嬉しかった。


「き、気のせいだよ」


 俺はそう言いつつサッとそのエプロンを回収する。


「そう? まぁいいわ。さて、何を作ろうかしら……?」


 なるべく時間を稼ぎたい。こうなったら、母さんを台所に固定させ続けて、その間に探す作戦がいいだろう。よし、料理の品の数を多くするか、時間のかかるメニューを作ってもらおう。余った場合は、二階にいる魔界の少女(あいつら)にお裾分けすれば、万事解決だ。


「母さん、久しぶりに食べる母さんの料理は、手の込んだやつがいいな!」


「あらそう? でも、時間がかかるわよ? お腹空いてるなら、早く食べれた方がいいんじゃない?」


 頬に手を当て、小さく首を傾げる母さん。だが、ここで引き下がるわけにはいかない。時間稼ぎのためにも!


「お腹が減れば、その分たくさん食べられるし!」


「そうね。母さんも、久しぶりにあなた達にご飯を食べさせるものだから、腕が鳴るわ。任せて、腕によりをかけて美味しいお昼ご飯を作ってあげる♪」


 満面の笑みを浮かべ、母さんはそう言った。よし、これで何とかなる! はっきり言ってメニューが和洋折衷みたいな事になりそうだが、問題ない!

 これで母さんを台所に拘束させるという任務は完了した。父さんは車で行ってるから、戻る時間はそんなに稼げない。だが、四年間も亮祐を預けてたんだし、多少なりとも雛下家の家族と会話があるはずだ。それに頼るッ!!

 俺は改めて気を引き締めて、捜査(かくれんぼ)に取りかかった。

 と、その時俺の携帯に一件のメールが届いた。確認すると、姉ちゃんからだった。何でも、父さんの時間稼ぎをしてくれるとのこと。やはり、持つべきは頼りになる姉ちゃんだ。姉御肌とは、まさにこの事。

 それからしばらくして、俺は家具を見つめていた。厳密的には、家具の隣、柱と家具の間にある僅かな隙間だ。この空間に入り込めるのは、体の小さな子のみ。つまり、これに当てはまる人物は二人しかいない。

 霖と雪だ。

 さっそく俺は、少し屈んで膝に手を突き声をかける。


「もしもし、霖? それとも雪か? この際どっちでもいいんだけどさ、もしいるんなら姿を見せてくれないか?」


 はっきり言って確証はない。もしこれで間違いだった場合、俺はとても恥ずかしくてイタイやつになる。何せ、何もない所に話しかけている変人なのだから。

 だが、俺の賭けは成功した。


「見つかっちゃった、あ~あ」


 そう言って少し残念そうに透明化を解いたのは、雪だった。


「ようやく見つけた。ほら、急いで俺の部屋に行ってくれ! 父さん達が戻ってきたらさすがに庇いきれない!」


「わかった、お兄ちゃんをこまらせるわけにはいかないから」


 相変わらず眠たそうなトロンとした表情をしている雪は、棒付きキャンディーを舐めながらこの場を後にした。

 ええと、後いそうな場所は……。

 リビングをグルッと見渡す。こうして改めて見ると、隠れられそうな場所なんてなさそうだ。だが、このどこかにいるのは間違いない。

 露さん、霄、零、霖、そしてルナー。残るメンバーはこの五人。少々厄介な人物が二名ほどいるが、何とかなるだろう。

 時間は十一時四十五分。後十五分しかない。リビングはあらかた探したし、残りはダイニングか? って、それだとマズイぞ!? だって、ダイニングには楽しそうにハミングしてる母さんがいる。これじゃあ、探せない! くそ……しかも、台所に拘束状態にしちまったから、しばらくは動かないだろうし。最悪だ、策士策に溺れるとはまさにこのこと!

 くそ、リビングには本当に誰もいないのか!?

 こうなってくると、残りのメンツはリビングにいてほしいものだが、見渡してもどこにもいそうにない。にしてもおかしい。体格が俺くらいある霄は、もう見つかってもいい頃じゃないのか? 第一、身を隠そうにも――あっ!!

 俺はすっかり忘れてた。あいつはいつも庭で素振りしてる。ならば、今もそうなのではないか? でないと、隠れる場所がもうない。

 そう考えた俺は、庭に出てみた。周囲を見渡すが、気配は感じない。まぁ、気配を感じたら透明化が解けるはずだし、無理もないよな。う~ん、そうだ!!

 俺は、最終手段に出た。そう、あいつの好物を出すのだ。

 確か、病院で姉ちゃんにコンビニに行ってもらった時のあまりがあったはず。その中に、ツナマヨのおにぎりがあった!

 急いでコンビニの袋を探す。すると、ソファの近くに確かにあった。よし、これで釣る!

 握り拳でガッツポーズをし、俺はもう一度庭へ。

 袋を開けてツナマヨおにぎりの匂いを漂わせると、おにぎりの姿が消えた。庭へ続く窓の近くでおにぎりが瞬時に消える、ということは……。

 俺は真横を見た。そこは、ただの真っ白な壁。見れば、近くに木刀があった。間違いない……。


「霄、見つけたぞ!!」


「むぐっ!? ごほごほっ!! な、なぜ分かった!?」


 名前を呼ばれ、(むせ)た霄が咳き込みながら透明化を解く。その表情は、明らかに驚愕を露わにしている。


「当たり前だろ、おにぎりにつられて姿を現すとは……どんだけツナマヨが好きなんだよ」


「くっ、(はか)ったな……!? 響史、貴様っ!!」


 何やら、どこかの怪力少女と似たようなセリフだ。


「とにかく、文句は後回しだ。早く俺の部屋に逃げろ!!」


「……致し方ない。い、いいか? このツナマヨは私が食べたのだ。もう返さんからな?」


「いや、既に胃袋の中に消えてるのに、どうやって返すんだよ」


「それはやはり、指を喉に突っ込んで嘔吐(かえ)す――」


「それ、戻してるだけだから!! もれなく、ゲロまみれだから!!」


 思わずツッコんでしまう俺に、霄はふと苦笑する。


「ふっ、よく戻って来たな……響史」


「あ、ああ」


 何だか調子が狂う。

 とりあえず、霄も部屋に送ったことだし、これで残りは四人。厄介な人物がまだ片付いていないのが嫌な気配ムンムンだが……。

 庭からリビングへ戻り、何度目かの見渡し。気配はなし。

 少し疲れた俺は、嘆息して近くのソファに座ろうと歩み寄る。

 と、その時、何かに引っかかった。


「ぬわッ!?」


 俺は思わず倒れ込みそうになり、ソファに手を突こうとした。が、ソファに辿り着く前に何かに触れた。


「えッ!?」


 単なる偶然だが、見つけた。が、そのまま相手を押し倒す形になってしまう。

 片方の足は何かに引っかけたまま、もう片方の足はソファに膝をつくような感じ、片手は何かに触れたまま、もう片方の手は何かを掴んでいた。いや、掴んでいるというよりは、ソファに押さえつけるような感じか。

 手の感触からして、相手の体であることは確か。掴んでいるのは、細さ的にも手首か?

 膝には何かに挟まれてるような感覚がある。

 誰だ? 分からない。

 何やら嫌な予感がするが、

 すると、何やら声が聞こえてきた。微かに聞こえる小さな声……顔を近づける事でようやく聞き取れるそれは、声というか、苦しそうな喘ぎ声だった。


「はぁ、んっ……あぁ、っく……うぅ、んぁ……もっと、擦ってぇ」


「露さんですよね?」


 それだけで十分(じゅうぶん)だった。なんてったって、こんな卑猥な声をあげる人は、この人しかいないからだ。俺は、自信たっぷりに相手に言った。

 すると、相手の体が徐々に見えるようになった。

俺が触れている場所から順に姿が見えて行き、最後に顔が露わになる。呼吸が乱れ、小さな声を聴きとるために顔を近づけていたため、吐息が俺の鼻にかかる。

 目尻に涙を溜め、顔は真っ赤に紅潮、服装は少し乱れ、首筋に汗が垂れている。前髪も張りついて、まるで湯上りみたいだ。主に顔が火照っているのが原因みたいだが。

 って、そんなことはどうでもいい。何故にこの人はこんな興奮していらっしゃるんだ?

 ゆっくり相手の顔から自分の顔を放すと、俺が置いていた片手は、露さんの発展途上の胸の上だった。見事なまでにぺったんこだな。


「はぁ……はぁ、今……ぺったんこだって、思ったでしょ……? んっ、あぁ」


「あの、さっきから何でそんな色っぽい声をあげてるんですか?」


 (とろ)けた表情を浮かべて俺を見つめる露さんに、俺が半眼の眼差しで尋ねると、相手はこう返してきた。


「だって……んくっ、当たってるんだもん。響史くんの……ひ・ざ♪」


 自由な方の手を唇の傍に持っていき、その二文字を口にする。そして、ようやく俺は足元の確認をした。

 見れば、俺の脚は、あろうことか露さんの足と足の間に入っていた。


「うわぁあああ!?」


 ゴチンッ!!


 俺はびっくりして気が動転、バランス崩して床に体を打ち付けた。


「おおぅッ!?」


 凄まじい痛みに、俺は変な声をあげてしまう。

 すると、その変な音に母さんが声をかけてきた。


「どうかした、響史?」


「あっ、ごめん! だ、大丈夫!! いっつぅ~」


 母さんの問いに返し、それを終えてから再び痛みを訴える。


「ふふっ、お姉さんを押し倒すからよ~? まったく、突然大胆になっちゃって」


「ち、違いますよ! 足が何かに引っかかって……」


「まぁ、それ私の足だけど♪」


「犯人目の前!?」


 人差し指を顎にあてがい、可愛らしく小首を傾げながら露さんはそう言う。

 一方俺は、そんな露さんに一言物申す。


「ったく、押し倒されたくらいであんな声あげる人、普通いませんよ」


「あら、私がいるじゃない。お母さんがいなかったら私……危なかったかも?」


「んなッ!? ななな、何言ってるんですか!!」


 露さんの言葉に、俺は思わず顔を真っ赤にする。


「相変わらず、可愛い反応だなぁ。そんなんだから、イタズラしたくなっちゃうんだよ? さて、それじゃあ私は上にいるね?」


 最後まで妖しい笑みを浮かべていた露さんは、俺に手を振りながら足音を立てないように二階へと消えた。

 何だかドッと疲れたが、これで残りは三人。厄介な人物も残り一人。


「どこだ、どこにいる!?」


 俺は残り少ない人数に、疲れを感じるどころかやる気を満ち溢れさせる。


「やっぱり、ダイニングか?」


 もう一度ダイニングの方を見る。台所には、母さんが腰を振りながらハミングして鍋をかき回している。スープでも作っているのか?

 にしても、さすがに腰を振るのは遠慮しないだろうか……。

 変態軍団のやつらに見せたら、絶対何人かは反応しそうな動きだよな。ぽっくん辺りなら、「激写ですぞぉぉぉぉ」とか言いそうだ。

 しかし、探そうにも探せない。くそ、時間がないってのに。何か作戦を……。

 そうして思案すること二分。

 運が俺に味方した。


「あらやだ、お醤油が切れてるわ。卵とトマトも足りない……。響史、母さんちょっと近くのスーパーに出かけてくるから、お鍋を見ててくれるかしら?」


「あ、ああ分かった。気を付けて!」


「ええ」


 エプロンを畳んで近くのテーブルに置いた母さんは、お財布を持って少し慌ただしく家を飛び出していった。近くのスーパーまでなら、往復でも三十分はかかるだろう。タイムリミットの正午まで残り十分だし、時間はじゅうぶんにある。

 よし、これが最後のチャンス!

 俺は、鍋をかき回しつつダイニングの周辺を探った。

 すると、俺の背中にまとわりつくものがあった。腰辺りに、微かに当たる二つの物体。


「ま、まさか……」


 振り返ると、透明化が解けて幼女が姿を現す。霖だ。その双眸は潤んでいる。


「ちょ、ちょっと待て! 何で泣いてるんだ!?」


「お、お兄ちゃん……今までどこに行ってたの!? わ、私……お兄ちゃんがいなくて、寂しくて……! 一人で、料理とか洗濯とかして……うぅ、ぐすっ!」


 ついにグズりだした。

 おっと、こいつはまずい。

というわけで、庭から戻って来た両親にピンチに追いやられる響史。エプロンの件とか……。そして、唯奏が昼ご飯を用意している間に残りのメンバーを捜索。しかし、霄のツナマヨ大好きっぷりはヤバイですね。また、露さんの暴走っぷりがヤバイ。ホント、いろんな意味で危険すぎますこのお姉さん。三部へ続きます。

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