第四十九話「体育祭(前編)」・5
「にゅるぅふふふふ、七つの贖罪の一つ目からこの調子では、今後が楽しみで仕方ありませぬなぁ~! にゅるぅふふふふ!!」
そう言ってぽっくんはまた何処かへ姿をくらました。忍者かあの男は。
と、そうこうして結局七つの贖罪の一つ目の競技が幕を閉じた。だが、まだ悲劇は一つ終わっただけ。まだ残り六つもあるのだ。気を引き締めてかからねば!
●大玉転がし
五番目の種目はこれだった。まぁ、連続で七つの贖罪じゃなくてよかった。
「次は私の番だね♪」
これをすごく楽しみにしていた霊が満面の笑みを浮かべている。
「頑張ってください、お姉様♪」
「う、うん……」
あれ、霰に応援された途端一気に肩を落としたぞ?
「おい、霊……あからさまにそんな態度取るなよ……」
「だ、だってぇ」
少し唇を尖らせて不貞腐れる霊。一方霰は……。
「ぐすっ……お姉ざまぁ~」
涙目になる霰。何か、いっつもこいつに色々と馬鹿にされてるが、こういう時になるとやっぱり可哀想だわ。ちなみに、体操服は着替えているのでもう透けて下着が見えて鼻血がドバシャァ! なんてことはない。まぁ、男子共に舌打ちされまくったが、無視だ。
「じゃあ、行ってくるね」
そう言って大きく手を振り入場ゲートに向かう霊。
「うぉぉぉぉぉぉ、脇が、脇がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
何やらどっかから柿谷先輩の声が聞こえた気がしたが、スルーした。さしずめ、霊が大きく手を振るもんだから脇が見えると言いたいのだろう。
〈それでは大玉転がしを始めてくださ~い〉
アナウンスの合図で係がピストルを発射する。その瞬間、霊が目をキラ~ンと光らせて猛ダッシュを始めた。
「うにゃにゃにゃにゃ~!!」
普通ここはうりゃりゃりゃ~とか何だろうが、まぁ……霊だからな。にしても、やはり早い。てか、三人で動かすはずがいつの間にか一人で動かしてるし。
〈お~っと、水連寺選手早い早い! 猛スピードでゴールに――って、あれ? 何かこっち来てない? ねぇこっち来てない? か、かかか解説の牡蒲校長! これはどう思います!?〉
〈退散ね〉
〈た、たたた退散~ッ!!〉
ドッガァアァァァァンッ!!!
アナウンスと解説の牡蒲校長がいるテントに盛大に突っ込む大玉。
「あちゃ~、まっ……なんとかにゃるにゃる♪」
「いや、ならねぇよ!!」
俺は大声をあげてツッコんだ。
その後、霊は無事ゴールを果たした。危うく他のクラスに負けそうになっていたが、ギリギリ霊が一位だった。てか、もしもここで霊が負けたら適任としか言えないこの競技に霊が出た意味がない。ただでさえ、この競技の選出はくじなんだ。勝ってもらわないと困る。
●お宝探し
六番目の種目はこれだ。はっきり言ってお宝とか言っても別段高価な物というわけではなかった。このプログラムを見た当初、爺ちゃんが投資してやろうかとも言っていたが、そんなことしたら大変なことになりそうだったので、遠慮することにした。で、お宝探しというのはあくまで自分達で集めたてか、勝手に没収されたお宝だった。なので、俺達も一体何を盗られたのか知らない。てかこれ、窃盗じゃね?
〈それでは、一年生の皆さん位置についてくださ~い〉
アナウンスの野郎がテントから声を張り上げる。しかし、あんな事件(大玉転がしでの悲劇)に見舞われた癖にもうテント復活してるし。
「よーい、ドンッ!」
ピストルの発射音と同時、その場から走り出す俺達。場所はこの学園中。制限時間は三十分。で、お宝を見つけた人が勝者だ。制限時間内に見つけられなかった人が負けということになる。ちなみに、複数発見はダメ。一人一個となっている。
「……どっから探すかな」
俺は周囲を見渡しながらどこかに落ちていないか確認した。が、どこにもない。
「ん? 響史ではないか。お宝は見つかったか?」
「いや、ダメだ。う~ん……案外わかりやすい所に落ちてると思ったんだけどな。そういうお前は?」
俺は嘆息しつつ、どうせ霄もまだだろうと思いながら訊いてみた。すると、霄が何かを取り出した。
「こんなものを手に入れた」
「って、お宝ゲットしたのかよ!? よく見つけられたな。どこにあったんだ?」
「うむ、実はな……曲がり角で男子生徒に出くわしてな? その男がお宝を持っていたので剣を向けたら、くれたのだ」
「うん、おかしいよね? 何で男子生徒に剣向けてんの!? それ軽い脅迫じゃねぇか!! ルール違反だろそれ!! てか、監視カメラで見られてるはずじゃ――」
「それならば問題ない、全て破壊した」
「競技ルール守れぇぇぇぇッ!!!」
結局俺よりも先に霄がお宝をゲットしてしまったが、別に同じ白ブロックなので問題はそれほどない。
と、そこで俺はあるものを見つけた。
「こ、これは……ッ!?」
俺が見つけた物……それはエロ本だった。だが、敢えて言おう。これは、女子にとってはただのゴミでしかない。
と、その時だった。俺が手を伸ばして本を取ろうとすると、そこに何者かの手がヌッと伸びてきたのだ。そのしなやかな手を見れば、それが同性か異性かくらいは分かる。異性だ。
「あ、あの……それ譲って?」
そう言ってきた女子……その姿には忘れもしないくらい見覚えがあった。頭から生え――てはいないが、装着している二本の長い耳。そして、みんな体操服なのに若干一名だけ異なるその服装――バニーガール。
そう、羽鷺美夕先輩だ。
「さ、さっきはすみませんでした! 思いっきりタメ口で喋ってしまって!! ま、まさか先輩だとは思わず! そ、その小学生とか言っちゃって!!」
「うぅ……ぐすっ」
「ええ、何で泣き出すんです!? ち、ちょっと待ってくださいよ」
「ひぐっ……お願い、その本ちょーだい?」
――いや、本って……これエロ本ですよ? そんな格好でそんなロリ顔でこんなエロ本持ってたら色々アウトなのでは!? いや、変態軍団ははしゃぎまくってどんちゃん騒ぎかもしれないけど!
「えぐっ、ぐれないの~?」
鼻声で涙を目尻にため、ぐずりだす先輩。てか、先輩としての威厳はないのか?
「……わ、分かりました。あ、あげますよ」
「あ、ありがとう! 大好き!」
「え!?」
突然泣き止んで俺に抱きついてくる羽鷺ちゃ――もとい、羽鷺先輩。てか、こんな姿誰かに見られたら――あっ、そうか。今は誰もいないのか。
〈お~っと、神童選手! バニーコスの羽鷺先輩に抱きつかれてニヤついております!! これはもしやのロリコンかぁ~?〉
――しまったぁあああああああ!! 監視カメラで見られてるの忘れてたぁぁぁぁぁ!! てかおい実況! 誤解を生む言い方するんじゃねぇ!!
「ろりこん?」
「あぁ、な、何でもありませんよ! ハハハ」
〈あら、ウサギちゃん。ロリコンっていうのはね? ロリータコンプレックスの略称でね? 世代が一億光年ほどかけ離れた女子に対して性愛を抱く変態共のことをいうのよ? まぁ、他にも性的嗜好だとか恋愛感情だとか色々あるけれど、軽くまとめたら……クズってことね!〉
――オカマてんめぇぇええええええ!! ここで解説という立ち位置発揮すんなぁぁぁ! つーか、一億光年ってどんだけ離れてんだよ!! てか、クズってそこまで言わなくてもいいんじゃねぇの!? いや、否定したら俺がロリコンを助ける→ロリコンか!? ということになるけれども!!
「ロリコン……なの?」
「ち、違いますよ! 俺はそういうんじゃなくてですね……というか、いい加減離れてもらえませんかね?」
「いや?」
――うぐッ!? そ、そんな愛くるしい上目遣いで俺を見ないでくれ! いかん、これ以上新たな扉をこじ開けるワケにはいかない!! ただでさえ、霖や雪や奈緒によって急行ロリ列車とかいうものまで発動してんだから!! てか、ロリっ子にはないものをあなたはお持ちなんですよ!! その大きな物体をお腹に押し付けないでくれぇええええ!!!
「いや……嫌じゃないんですけど、むしろ気持ち――じゃなくて。あまりくっついてると、他の生徒に大変な目に遭わされそうなんで。それに、お宝ゲットしたんですから早くゴールに行かないと」
「うん、そうだね。ありがと……お兄ちゃん、優しいんだね」
「お、お兄ちゃ……ん!?」
――ぐはぁッ!? なんだこのキャラは!? 何でこんな濃いキャラが生徒会にいんだよ!! いや、確かにぽっくんとかいう変態野郎とか、二重人格の体育委員長である火元とかいるけどさ!!
「あ、あの……お兄ちゃんって?」
「あ、ごめん。みゆ、ついつい赤の他人の男の人見ると、お兄ちゃんっていう癖があって……。ほら、よく先生のことをママって呼ぶでしょ? あれだよ」
――いや、あれと一緒にしていいレベル越えてませんかね!?
「そ、そう……なんですか。ま、まぁとにかく急いでください。時間もう後ちょっとしかありませんし」
「うん、あ……そういえばこの本――」
「あ、それは!」
すっかり忠告するのを忘れていた。こんな純粋無垢な女の子があんな汚れた物を見てしまったらいけない。が、既に手遅れだった。顔を盛大に真っ赤に――はしていないが、それでも少し恥ずかしそうに口元に手を運んでページをめくっている羽鷺先輩。いかん、汚れてしまう!
「せ、先輩!!」
「ね、ねぇ……? この女の人は何してるの?」
「え――そ、それは……」
こ、答えられるわけがない。それに、この映像は監視カメラで見られていることを忘れてはいけない!! 会場には一般の観客がいる。そう、即ち本物の幼年幼女がいるわけだ。だが、ここで考えて欲しい。既にエロ本が映っている時点でアウトなのではないか……と。
〈お~っと、神童選手、純粋無垢でプリティでピュアピュアな羽鷺ちゃんにイケないことを教えてしまうのか~?〉
――てめこら、実況ッ! さっきからお前楽しんでんだろ!! てか何だよ「プリティでピュアピュア」って! それ完全に二人はナントカの影響だろが!!
「……せ――」
「せ?」
「せっかくで悪いんですけど、時間を優先しましょう! さ、ゴールに行ってください!!」
〈――チッ、チキン野郎が〉
「てめ実況、マジぶっ殺すぞ!!」
「ぶ、ぶっとばすの?」
「あ、ち、違うんですよ? そ、そういうんじゃなくって」
〈ぷぷっ、怯えられてるよ~?〉
――マジうぜぇええええええ! 誰かこの実況ぶっ飛ばしてくれぇぇええええ!!
「じゃあね、ばいば~い」
「あ、ば、ばいばい」
〈ぎゃはははははは、いい年こいて「ばいばい」だってよ! ぎゃはは――あれ? え、何君達? え、よくも羽鷺ちゃんを馬鹿にしたなって? あ、ち、違うんですよ旦那~。私が言ったのはあくまであのロリコン野郎で――ぎゃぁあああああああああ!!!〉
どうやら制裁をくだされたようだ。ヘッ、ざまぁ。てか、誰がロリコンだおい!
と、まぁ思わず手を振ってしまったが、あの歩き方といい声といい、羽鷺美夕……恐ろしい子。
そうこうして、結局俺は一つもお宝を取れなかった。
●天を掴め! 雲梯のサイドツアー
第七種目はこれだ。普通七だからラッキーとか思うんだろうが、これはアンラッキーでしかない。だって、七つの贖罪の一つなのだから。そう、これは脇フェチ野郎の柿谷脇衛門先輩が立案したものだ。要は、雲梯に捕まっている時に体操服の袖口から脇が見えるだけだ。うん、つまりあの人はそれが目的なのだ。いやはや、思考が偏りすぎている。別に、脇なんて脇じゃないか。
問題は出る選手なのだが――。
「よっと! うっし、準備運動はばっちしだな!」
何やら満足している様子の霙。そう、出るのはこいつだ。まぁ確かに雲梯とか運動出来るやつ向けの種目にはこいつが一番向いてるだろうからな。
「な、なぁ……霙。気合十分のトコ悪いんだけどよ、いいのか? その……袖口から脇が見えるんだぞ?」
少し小声でそう忠告するが――。
「はぁ? 脇? んなもん気にしねぇよ! そんなことよりあたしが勝つぜ? 絶対に一年二組が優勝だかんな?」
「あ、あぁそうだな」
どうやら男勝りなこいつはちっとも気にしていないらしい。うん、少しは女の子っぽく振る舞えというものだ。まぁ、朝方パンツ見られた時にはジャーマンくらわされたけど。
と、その時だった。
「ん? 響史?」
その声に思わず俺は背筋が凍りつく。
というわけで、解説がここで力を発揮し、実況が制裁されました! まぁ当然の報いですね。で、四部に引き続きまたもやウサギちゃん登場です。今回はお宝探しに登場ですね。ちなみに、これは生徒各二種目出れるので、この全員参加のお宝探しを除いて後一つウサギちゃんは出れるわけです。さぁ、一体何の種目に出るのやら。まぁ、予想はできるかと。
で、ここで響史の名前を呼ぶ何者かが! 果たしてその正体とは!?
六部目に続きます!




