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魔界の少女  作者: YossiDragon
第三章:六月~七月 体育祭『変態軍団アスメフコーフェッグVS体育祭実行委員会』編
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第四十九話「体育祭(前編)」・3

●美脚レース


 第二種目はこれだ。これは、大きな棒の上にのっかり、それをゴールまで足だけを使って運ぶというものである。


「うむ、手を使ってはならんのか……。では、剣を足で――」


「おい、競技が変わるだろうが!! ちゃんとルールに(のっと)れっての!!」


「……ちっ」


「おい」


 ということで、美脚レースが始まった。霄は第三チームだ。一年二組の第一チームが出発する。


「ふぅ、にしても……何故こんなに太い棒に跨らねばならんのだ?」


 霄は疑問を抱いていた。別に棒に跨る必要はないのではないかと考えているのだ。しかしそういう競技なのだから仕方がない。


「頑張ってください、姉上」


 そう言って応援に来たのは、妹であり同じ剣士である零だった。


「うむ、……ところでどうして零がここにいるのだ? 確か、次の『パン食い競走』とやらに出るのではないのか?」


「はい、その準備で入場ゲートに立ったところ、霄姉さまが見えたので」


「そうだったのか。すまんな、わざわざ応援に来てもらって」


「い、いえ! そ、それでは頑張ってください」


 そう言って零は普段あまり表情を変えないにも関わらず、少し恥ずかしそうにその場を後にした。

 そして、第三チームの出発。


「よし、いざ参る!!」


 そう言って、まるで武士が決闘に向かうように掛け声をあげた霄は、足を動かしてその太い棒をゴールまで運んだ。

 三人で棒に跨り進むこの競技。しかし、なかなか棒は前に進まなかった。


「くっ、何故だ!? 何故進まない!!」


「す、水連寺さん、落ち着いて?」


「う、うむ」


 同じクラスの女子生徒に言われて今一度冷静になろうと深呼吸する霄。

 そうして中腹くらいまで進んだところで、ある部分に違和感が生じた。


――な、何なのだこの感覚は……? ん、股に何かが食い込んで……?



 そう、この学園の体操服はブルマではないにしろ、物凄く丈の短い短パンなのが問題だった。その上、足をたくさん動かすこの競技。動く度にどんどん位置がズレ、下着が食い込んでしまうのだ。


「おのれ、そうか! こんな所にこんな卑劣な罠が潜んでいようとは! おのれ変態共め!!」


「い、いやこれは別に七つの贖罪じゃないわよ?」


 と、霄がわけのわからないところで燃えているのを、苦笑しながら制する女子生徒。


「こうなれば、是が非でもゴールしてみせるぞ!!」


『う、うん!』


 霄の勢いに気圧されて、思わず頷く二人の女子。


「ぬおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!! 魔界最強の剣士と謳われたこの水連寺霄を、ナメるなぁああああああああっ!!!」


「え、魔界?」


 霄の叫び声のある一部に疑問を抱く女子だが、本気パワーを出した霄の猛スピードに思考回路が追いつかず、気づいた時には他の女子はヘトヘト。

 だが、第三チームは、霄達一年二組が一番乗りだった。


「よし、私達の勝利だ!!」


 ゴールしてからもしばらくは、霄の闘気が冷めることはなかった。

 そうこうして一年二組は美脚レースにて一位に輝いた。


●パン食い競走


 第三種目はこれだ。障害物競走の名前を少し改良したのがこれ。競技内容は単純。あらゆる障害物を乗り越え、一番最後にパンを口に咥えたまま麻袋でピョンピョンとんでゴールテープを切ればいいのだ。


「ふむ……どうやら簡単な競技のようですね。ですが、これは……」


 そう、このパン食い競走。楕円形のグラウンドを一周しなければならないのだが、同時に五人が走る。さらに――。


「ふっふっふ、この競技……この俺様が頂いた!」


「あら、三年生の私があなた達下級生に負けるとお思い?」


「おやぁ? 下級生をなめちゃいけないなぁ、先輩? あたし、こう見えて足には自信があるんだな~。それに、一番にあのパンを食べるのは……あ・た・し!」


「けっ、んだよ。何で高等部が三人もいるんだよ!」


 と、中等部が二人、高等部が三人と中等部、高等部の二つが混じっているのだ。


「……年上がこんなに?」


「おい、お前」


「? わ、私でしょうか?」


「そうだよ! お前も中等部だろ? あんな先輩共には絶対に負けんなよ?」


 いきなり同じ中等部の男子生徒に話しかけられた零は、少し戸惑いながらコクリと頷いていた。

 そんな光景を目にしていた応援席では――。


「あぁ~!? ち、ちょっと誰なの、私の可愛い可愛い零ちゃんをナンパしてる男子っ!!」


「いや、ナンパじゃないですよ。あなたじゃないんですから……」


「気に入らんな、あの様な場所で果たし状を渡すとは」


「いや、決闘しないから!! 何でそっちに持ってくんだよ! ただの一般生徒だから!!」


 同性愛者(シスコン)騎士(バカ)を相手に、響史が盛大にツッコミをかましていた。


「それでは位置について~、用意――」


 それぞれスタート位置につく選手。


「どんっ!」


 一斉にスタートするメンツ。


「うふふ、一位はあたくしよ!!」


「へんっ、一位は俺様のもんだ!!」


「あたしだよっ!!」


〈お~っと、高等部がやはり体力的にも優勢か~? 高等部三年生の小豆(あずき)選手、高等部二年生の光贋(こうがん)選手、高等部二年生の神王寺(しんおうじ)選手が後ろの中等部二人と軽く差をつけて第一の障害を突破しました~!! これはどうでしょうか、牡蒲校長?〉


〈そうねぇ~、鳳統くんはなかなかいい体をしてるわねぇ~、じゅるり〉


〈いや、そうじゃなくて……〉


〈まぁ、神王寺さんはあの生徒会長の妹さんだし、大丈夫なんじゃないかしら? それよりもあの光贋くんが――〉


〈だからそれから離れろつってんだろーが、オカマァァアァ!!!〉


〈何ですってェ!? アナタ、あたしが校長だってわかってんでしょーねぇ~!?〉


 と、再び騒ぎ出す二人。

 そうこうしている内に、第二の障害物に差し掛かる。


「へっへ~ん、一番の――」


 バシャアアアッ!!


 突然顔面に水がぶっかけられた。


「きゃああああ! な、何なんですのこの水は~!? た、体操服が濡れてしまいますわ~!!」


〈お~っとこれは、サービスかぁ~!? しか~し、残念ながら小豆選手は胸が小さいのであまりサービスとしてはイマイチで~す!!〉


「ちょっとお待ちなさい! 実況、後でいらっしゃいっ!?」


〈いやで~す!〉


 などと、小豆と実況がやりあっている内に――。


「ふんっ、俺は水も滴るいい男だからへっちゃらさ!」


「あたしだって水なんてへっちゃらだよ! 濡れようが透けようが関係ないよ!」


〈お~っと、ヘタレ小豆選手を差し置いてナルシスト光贋選手と食い意地神王寺選手が先の障害に!!〉


「んなっ、誰がヘタレですの!?」


 実況による聞き捨てならない肩書きを言われて憤慨する小豆。と、その横を中等部の二人も駆けていった。

 その様子を応援席にいた響史が見る。


「お、零も結構頑張ってるみたいだな!」


「いいわよ~! いけいけ、零ちゃ~ん!!」


 笑顔で応援する露を、響史は横目に半眼で見ていた。


〈次なる障害はハードルで~す!〉


 実況が声をかける。


「ふっふ~ん、ハードルなんてへっちゃらだよ!」


〈おっと、神王寺選手が先に進みました! 光贋選手は~?〉


「くっ、は……ハードルだと!?」


〈お~っと、どうやらヘタレはハードルが苦手なようで~す!〉


「おい、何故小豆と同じ肩書きなんだ! 後、せめて光贋選手をつけろ!!」


 と、実況に向けて文句を言う光贋。


〈はいはい、じゃあヘタレナルシスト光贋選手、とっとと先に進んでくださ~い〉


「くそッ!」


 何やら愚痴っている様子の光贋だったが、どうやらようやく意を決したらしく、ハードルを飛び越えようとした。

 刹那――。


「はぅあッ!?」


〈お~っと、光贋選手が金的をハードルにぶつけて悶絶で~す! おっ、これは……光贋選手が睾丸をガーン……ぷぷっ!〉


「てんめぇえぇぇぇぇ!! おううっ、た、玉がァァァァァァァ!!?」


〈ここで、ヘタレナルシスト睾丸野郎は退場で~す〉


「光贋だぁぁああああ!! いってぇええええええ!!!」


 こうして小豆に続いて光贋までもが退場してしまった。残ったのは中等部二人と高等部一人である。


「あっれ~、二人共退場しちゃったの? なっさけないな~まっ、結局はあたしが勝つんだし、どーでもいいけどね~」


 そう言って神王寺はたくさん吊り下げられているパンの目の前までやってきた。

 と、その時――。


〈お~っとこれはどういうことだ~?〉


「ん?」


 アナウンスの言葉に足を止めて振り返ってみると、ハードルをまるでなぎ倒すように猛スピードでこちらにやってくる青髪の少女の姿が――。

 そう、零だ。だが、妙だ。零の周囲には、何やら光に反射して何かが光っていた。また、さっきからハードルを飛び越えているように見えない。まるで、そのまま突進しているように見えるのだ。

 というのも、零ははなからハードルを飛び越えてはいなかったのだ。全て持ち前の二刀流の刀で切り倒していたのだ。


「姉上が勝ったのですから私も勝って見せます! 年上であろうと容赦はしません!!」


〈お~っと、どうやら水連寺選手は、先程の水連寺選手の妹のようで~す!! しかし、すごい! まるでハードルを飛び越えていないように見えます。それほどまでにハードルを飛び越えるのが早いとでも言うのかぁ~!!〉


――いや、ホントに飛び越えてねぇから。



 と、響史のツッコミがモノローグでつぶやかれたことは言うまでもない。


「ありゃりゃ、あれは想定外だな~。まっ、パンはすぐ目の前だし!」


 そう言って神王寺は頭上にぶら下がるパンに向かってぴょんとジャンプしてパンを咥えた。


「いっははひ~♪」


 と、零に見せつけようと後ろを振り返った刹那――。


「――っ!?」


 目の前――もとい、息がかかるくらい間近にその脅威は肉薄していた。


――やっば!?



 神王寺は、余裕綽々だったさっきまでとは異なり、焦燥感に駆られ、まるで猿のような身のこなしで崩れかけた体勢を立て直し、ゴールに向かってダッシュした。


「逃しません!」


 そう言って零の周囲がまたもや光り輝く。同時、真上から零の手元に一個のパンが落下してきた。


〈お~っとこれは手品か~? 水連寺選手の手元に突然吸い寄せられるようにパンが!?〉


 別に手品でも何でもなく、ルール違反なのだが呆気に取られて誰も気にしていなかった。

 そして、目の前にいる神王寺に向かってダッシュする零。


――げげっ、中学生があたしの足に!?



 神王寺は信じられなかった。今の今まで一度だって年上どころか自分よりも年下に負けたことがなかったのだ。そのため、ここまで追ってきた零の存在が脅威だった。


――絶対に負けるワケにはいかないっ!!



 必至に足を動かす神王寺。そうして、ようやく麻袋を手に取った神王寺は、猛スピードでジャンプした。しかし、先程のちょっとしたアクロバティックな動きで体力を消費したせいか、少しジャンプが遅れていた。

 一方――。


「おい、見ろ! ヘッヘッヘ、素晴らしい美乳だ! くく、さすがは神王寺天祢の妹――『神王寺(しんおうじ) 海璃(かいり)』だ! ジャンプする度に揺れるあの大きくも小さくもない、普乳であり美しい形ッ! くぅ~ッ、サイコーだ!!」


「そうカ~? やっぱしあっちの水連寺さんの妹とかいう零ちゃんの微乳の方が――」


「ぼく的には、次に出る羽鷺ちゃんが楽しみだな。あの童顔で小さな身長を使ってどうパンを取るのか、ワクワクしてしまうよ」


 敏郎の言葉を遮るように甘受郎がうっとりした表情を浮かべる。


「けっ、ロリコンにはわからないだろうゼ! 微乳の素晴らしさが分かんないのにロリコンだなんて、訳わかんねぇゼ!!」


 そう言って首を横に振り肩を竦める敏郎。

 相も変わらず、変態軍団は変態である。

というわけで、実況と解説の二人と選手とのやりとりもさることながら、変態軍団のセリフも変態過ぎです。しかし、まだ残り四部もあるんです。

で、次はウサギちゃんの出番です。さて、ウサギちゃんがどんな活躍を見せてくれるのか、楽しみですね。

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