第2話 緑の悪鬼、襲撃
草を踏みしめる音が、静かな森に響いていた。
さっき見たあの生き物——ゴブリン。
ゲームや物語でしか見たことのない存在が、今、確かにこの世界にいる。
「……冗談だろ」
呟きながらも、俺は剣を握り直す。
目の前のゴブリンは三体。どれも粗末な刃物を持っていて、こちらを睨んでいた。
次の瞬間、甲高い声を上げて一斉に飛びかかってくる。
「くそっ!」
とっさに剣を振るう。
一体の腕を弾き、距離を取る。しかし別の一体が横から突っ込んできた。
鋭い刃が腕を掠める。
「っ……!」
痛みを覚悟した。
だが、不思議なことに痛みはすぐに消えた。
腕を見る。
そこには、さっきまであったはずの傷が……ほとんど残っていない。
「……は?」
一瞬、思考が止まる。
ゴブリンは構わず襲ってくる。
もう一度、刃が身体に当たる。
だが——
「……また?」
傷が深くならない。
むしろ、さっきよりも身体がその攻撃に慣れている気がする。
まるで、攻撃に適応しているみたいだ。
「……そういう力なのか?」
確信はない。
けれど、もしそうなら——
俺は一歩踏み出した。
ゴブリンの攻撃を受けながら距離を詰める。
そして、振り下ろした剣が一体の肩を切り裂いた。
甲高い悲鳴。
残りの二体は一瞬ひるむ。
「……なるほどな」
身体の奥で、何かが理解できた気がした。
完全に無傷というわけじゃない。
けれど、攻撃を受けるたびに身体がそれに慣れていく。
まるで、生きるために身体が勝手に進化しているような感覚。
「これが……俺の力か」
そう呟いたとき、森の奥から小さな悲鳴が聞こえた。
人の声だ。
ゴブリンたちもその方向を振り向く。
村人だ。
一瞬だけ迷う。
だが、次の瞬間には身体が動いていた。
「……行くしかないだろ」
剣を握り直し、俺は森の奥へ走り出した。
この世界で生きるために。
そして、自分の力を知るために。




