ドーナツの味
いつもこの季節になると思い出してしまう、君とあの時に食べたドーナツの味。
何でもないことで笑って、怒って、泣いて。
その後にあの店に行ってドーナツを食べた。
モチモ手したドーナツが好きだった君は、並んだ中で一番安かったそれをいつもトレイに入れていた。
たまにあった全品100円セールでも、値段の変わらないそれをトレイに笑顔で入れていたんだ。
「せっかくのセールなんだから、いつもなら高いやつ買いなよ。」
私がそう言っても君はいつもにやにやしなから、
「そういうセールには流されない。自分の好きなものをセールだからって外したくない。」
って頑なに言うこと聞いてくれなかったね。あのやりとりが好きだったな。
寒い中、二人要りして帰ったあの通学路も、君は私の家に向かいなから、いつも私の勧めた道の逆を選んで走ったね。
わざと遠回りして、人気の少ない場所を進んで、二人だけの時間が少しでも長く続くようにしてくれてたんだよね。天邪鬼でひねくれものの君はそんなこと素直に言えるわけなかったよね。
その道の途中で、こっそりキスをした。何よりも温かかった。
だから、きっと私が愛を送りすぎたせいで、君はどこかへ行っちゃったんだよね。
わかってる。
白い息が空に向かう季節になると、私はいつも思い出してしまう。
ただ思い出すだけ。心が温まるわけでも、切なくなるわけでもない。
ただ、いつも思い出してしまう。
きっとそれだけのこと。
きっとそれだけのこと。
どこにでもある誰かの物語。
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これからものんびり頑張っていきます。
よろしくお願いします。




