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【第4話】初めての授業と父の価値観

今回のエピソードでは、アデルが初めて真剣に勉強する姿を描きました。

今までわがまま放題だった彼が、ヨウスケとしての記憶と心を持つことで、少しずつ自分を変え始めます。

父や周囲の価値観にどう向き合うのか、そして自分の能力に気づく瞬間をお楽しみください。



窓から差し込む柔らかな午後の光が、机の上に置かれた教科書や筆記具を淡く照らす。


アデルは机に向かい、初めて真剣な眼差しでペンを握る。

今までは、周囲が言うことを何でも聞くため、勉強をまともにやったことはなかった。しかし今は違う。ヨウスケとしての記憶と意識がアデルの体に融合し、心は確かな決意で満ちていた。


教科書の文字を追うアデルの頭は、瞬く間に公式や概念を理解していく。

応用問題にも迷うことなく解答できる自分に気づき、内心で驚きと確信が交錯する。


> (今まではちゃんとやらなかっただけで、アデルは本当に頭が良かったんだな……)




女家庭教師のアンナは教科書を握りしめ、少し震える声で告げる。

「坊ちゃま……その……初めての授業で……こんなにも……本当に……お見事でございます……」


母も驚きの表情を浮かべる。

「アデルちゃん……こんなにも……!」


そのとき、書斎の扉が重く大きく開く。

赤髪赤目の公爵――アデルの父が現れた。威圧的な視線を投げかけるだけで、母もアンナも自然に頭を下げる。アデルも視線を伏せる。


公爵は鋭い目でアンナを睨みつけ、低く、厳しい声で問いかける。

「この子の学業の進み具合を報告せよ。手加減など一切せず、詳細に答えよ」


アンナは小さく息をのみ、震える声で答える。

「は、はい……坊ちゃまは……その……初めて真剣に授業を受けられましたが……理解力が非常に高く……応用問題も正確に……解答されております……」


公爵はさらに目を細め、迫る。

「具体的にはどうなのだ? 曖昧に答えるな!」


アンナは顔を伏せ、息を呑みながら続ける。

「坊ちゃまは……文章題も計算も……即座に理解され……驚異的な速度で問題を解かれております……!」


公爵は満足そうに笑みを浮かべ、アデルに向き直る。

「さすが、我が息子よ! 我が家の血筋は偉大だな!」


しかしアデルの胸には葛藤があった。

父の誇らしげな声は嬉しい。しかし、この男尊女卑の価値観――「女は男より愚かだ」という思想――は変わっていない。

(このままでは、皆が萎縮してしまう……)と考え、静かに抗議する。


「お父さま、アンナ先生にこわい声したらダメだよ。みんな、びっくりしちゃうから。やさしくしてあげて?」


書斎は一瞬静まり返る。母とアンナは顔を青ざめる。

公爵は低く笑いながらも鋭い視線をアデルに向ける。

「ハハハッ! さすが、アデルは他と違うな! 女にまで優しいとは……だが女は男より愚かだ。そこまで気を遣う必要はないぞ」


アデルは胸の内で唇を噛みしめる。

(まだまだ、価値観を変えるのは簡単じゃない……)


それでもアデルの瞳には確かな決意が光る。

これからたくさん学び、知識を増やし、立派な公爵となり、周りの価値観を変えていかねば――と心に誓うのだった。


アデルはまだ小さな少年ですが、その瞳には強い決意が宿っています。

天才的な理解力を持ちながらも、周囲を思いやる優しさを忘れない――そんな彼の成長を、これからも見守っていただければ嬉しいです。


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