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【第3話】公爵家の長男、アデルの改心

第3話では、ヨウスケがナーヴァル王国の公爵家長男・アデルとして目覚めます。

これまで傲慢でわがままだったアデルが、ヨウスケの優しさを宿すことでどう変わるのか――。

屋敷の女性たちに恐れられていた少年が、新しい一歩を踏み出す瞬間をお楽しみください。



気がつくと、ヨウスケは見知らぬ天井の下に横たわっていた。頭に鈍い痛みを覚えながら、手足や身体を動かす。

――あれ、何か……体が小さい?


腕や脚の感覚がいつもと違う。手を握ってみると、指先が細く華奢で、肌は柔らかい。

「……俺、どうなってる……?」


目の前に置かれた鏡を覗き込むと、真っ赤な髪と赤い瞳を持つ、美しい少年がこちらを見返していた。


「……これは……アデル……?」


激しい頭痛と共に、アデルとしての五年間の記憶が流れ込む。

――これまでのアデルは傲慢でわがまま、屋敷の女性たちを恐怖で支配していた。母や妹にまで横暴に振る舞い、使用人を泣かせることも日常茶飯事。


その光景を思い浮かべ、ヨウスケは真っ青になる。

(これは……イカン! 俺まで同じことを繰り返したら、ここで生きる意味がない!)


胸の奥で決意を固めたその時、扉の向こうから控えめなノックが響いた。


「どうぞ……」


扉が開き、母親とメイドのアリスが入ってきた。

母は水色の髪と瞳を持つ美しい公爵夫人シャーリー。優雅で気品あふれる姿は、屋敷の誰もが息をのむほどだった。(アデルの容姿は母親譲りのようだ)

アリスはまだ八歳ほどの小柄な少女だが、金髪青目で、可憐で慎ましやかな愛らしさを宿している。



「アデルちゃん……そろそろお勉強の時間よ……」

母は恐る恐る声をかけた。


アデルは一瞬、言葉に詰まる。いつもの彼なら癇癪を起こし、本を投げつける場面だ。


深呼吸し、ヨウスケとしての自分を思い出す。

「……わかりました。お母様。」


精一杯、柔らかな声で返す。


母とアリスは同時に顔を上げ、目を見開いた。

「……えっ?」

「……アデル様……?」


二人の視線は、信じられないものを見るようだった。無理もない。今までの自分は、あまりに酷すぎた。


「アデル……どこか具合でも悪いの?」

母の問いに、アデルは小さく首を振った。

「具合は悪くありません。ただ……少し、考えたんです。これからは……ちゃんと勉強して、大人になります。」


言葉にしながらも、自分でもぎこちなさを感じる。それでも、伝えずにはいられなかった。


母とアリスは互いに顔を見合わせる。

「……信じていいのかしら……?」小さく囁く母の声。


アデル――いや、ヨウスケは苦笑しながら心の中で呟く。

(今は信じてもらえなくてもいい。これから証明していけば……必ず。)


小さな胸に決意を抱きながら、アデルは微笑みを浮かべた。

――恐怖ではなく、尊敬と信頼を集める公爵家の長男として生きる、その第一歩だった。



---

アデルとして目覚めたヨウスケの心には、これまでにない優しさと決意が芽生えました。

まだ小さな子どもですが、その内面は強く、そして思いやりに満ちています。

次回からは、周囲との関係が少しずつ変わっていく様子を描いていきます。どうぞお楽しみに!



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