【第1話】少女を救った日、僕は死んだ
今回の物語は、16歳の高校生・ヨウスケが現世で命を落とし、異世界で公爵家の長男として生まれ変わるお話の序章です。
夕暮れの帰り道。 山城ヨウスケは、友だちと肩を並べて笑いながら歩いていた。
「ヨウスケ、今日の数学マジで無理だった!」
「大丈夫、大丈夫。あとで一緒にやろう」
冗談を言い合い、笑い合う。 顔は冴えず、女の子から告白されるような人生ではなかった。 けれど、困っている相手を放っておけない優しさが、彼を友人たちの中心に立たせていた。
――そのときだった。
「きゃっ!」
甲高い悲鳴。 小学生くらいの少女が、横断歩道の真ん中で立ちすくんでいる。 猛スピードで迫る車。ブレーキ音が悲鳴のように響く。
考えるより先に、体が動いていた。
「危ない!」
ヨウスケは地面を蹴り、少女を力いっぱい抱き寄せる。 視界の端で、運転席の男の驚愕した表情が見えた。
――ドンッ!
激しい衝撃。 砕けるような痛みが全身を襲う。 空気が喉から抜け、意識が闇に飲み込まれていく。
最後に浮かんだのは―― 涙を浮かべて無事に立つ少女の姿。
(よかった……守れた……)
そう思った瞬間、ヨウスケの世界は静かに閉じた。
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今回はヨウスケの現世での献身と事故までを描き、異世界転生への橋渡しとして書きました。
次回から、異世界での新しい生活や女神ルミエールとの出会いが始まります。
どうぞお楽しみに☆