第7話:終わらない夢
朝の光が白銀の葉を透かして館に差し込む頃、レイリアンはアリアとともに中庭にいた。彼女は無言のまま、花の咲く石畳をゆっくりと歩く。
だがその足取りは、以前よりも確かだった。
「アリア」
レイリアンが呼びかけると、彼女はわずかに振り返る。けれどその瞳には、深い哀しみが宿っていた。
「わたし、もう、だめです。長くは・・・」
その言葉は、かすれながらも現実を突きつけるようだった。魂は崩壊し始めている。精霊術士の言葉が、確かにそれを告げていた。レイリアンは決意する。
「もう一度だけ、君と向き合いたい。共に過ごしたすべてを、語り合いたい」
その夜、二人は精霊の泉を訪れる。結ばれたあの場所で、ふたりは静かに向き合い、ひとつひとつの記憶を紐解いていった。
アリアは少しずつ、自らの記憶を取り戻していく。出会い、微笑み、抱擁、涙、そして別れ──それらが全て、美しく、痛ましく、そして確かなものとして彼女の中に再び灯る。
「あなたと過ごした時間・・・それが、今のわたしをここにいるようにしている」
彼女の言葉に、レイリアンは静かに頷いた。
「だったら、最後の時まで・・・君と共にある」
泉の水が微かに揺れ、月がふたりを照らしていた。
夜の森が、彼らの沈黙を受け入れるように、ただ優しく静まっていた。