いい加減喉を刺してくれ
死にたい、それは日常的な病。
いつだって本気で思うが、いつだって本当には願わない。
◆◇◆
東海道線のホーム、先頭に立っている。
『まもなく7番線を列車が通過します。危ないですから──────』
毎朝、このアナウンスを聞いている。3分前の鈍行電車を毎朝見送っている。
生唾を飲み込み、汗が首筋を伝う。緊張は心臓を震わせ、脚は今か今かと怯えている。
80cmの遠い距離。
「すぅ……」
私のため息を、通勤列車が運んでいった。
◆◇◆
『昨年の自殺者数は全国で───────』
発作的にテレビの電源を消した、耳を塞ぐ行為に似ている。
テレビの音が消えて、ハロゲンヒーターの駆動音だけが部屋の空気を揺らしている。
びっくりするくらい、綺麗な火。自然と目が潤んでくる。
今日は調子が悪いから、明日に備えてもう寝よう。
そう考えた自分を、脳内で殺した。
本当に、綺麗な火。
◆◇◆
『ジリリリリリリリリリリリリリリ……』
寝坊した、8時過ぎを指す目覚まし時計。
もう全部辞めてしまおうか、、、なんて。
気だるげに身体を起こす。
カーテンが開いてる、そこに死神が立ってる。
自分と同じ顔の死神。巨大な鎌を骨になった喉に向けていて。
真顔で涙を流してる。
「──いい加減喉を刺してくれ」
渇いた口が、勝手に望んだ。死神は鎌を此方に向ける。
あぁ、やっぱり怖いんだ。毎晩使ってる出刃包丁を手に取って、彼の喉めがけて投げた。
骨の喉をすり抜け、窓ガラスに傷がつく。
ただそれで満足したのか、死神は歯をコツコツと鳴らして笑う。
その後、彼は窓から飛び降りていった。
また、誰かが死んだらしい。
他にも小説を書いています。
ぜひ読んでください。