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第七十二話 アルメリアはわかってない

文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。

 そう言うと、ルーファスが素早く椅子を引いてくれたのでそこに座る。それを見てリカオンは明らかに不満そうな顔をしながら、アルメリアの隣に座った。

 アルメリアはその不満そうな顔をみて、リカオンがいつもの調子に戻ったと少し安心した。だが席につくなりリカオンは予想外のことを口にした。


「助祭、今は椅子を引くことを貴男に譲りましたが、本来アルメリアのサポートは僕の仕事です。あまり余計なことをされると困ります」


 思わず驚いてリカオンの顔を凝視すると、リカオンはそんなアルメリアに気づき微笑んで返した。


「貴女のサポートをするのは僕の努めです。当然でしょう?」


 リカオンの完璧主義は知っていたが、ここまでだったかしら? と驚いていると、リカオンはアルメリアの方へ体を向け、椅子の背もたれを掴んで身を乗り出し顔を近づけると言った。


「そうですよね? それがアルメリアをサポートする、僕の特権ですよね?」


 顔をそむけたいが、背もたれを掴むリカオンの腕に阻まれて横も向けず。近い! 近い! 近いですわ! と、心の中で叫びつつ懸命に仰け反るも、もう少しで唇が接触しそうだった。焦っていると、ルーファスが二人の間に両腕を入れてリカオンを引き離した。


「今は大切な話し合いの場です。リカオンの気持ちは分からなくありませんが、こういったことは正々堂々とやるべきことでしょう」


 ルーファスはアルメリアを手で庇いながら、リカオンを見下ろした。リカオンはわかりやすい作り笑いをルーファスに向ける。


「以前は自分もやっていたこととはいえ、いざこうやって自分が邪魔をされると、こんなにも腹が立つとは思いもよりませんでしたよ。まぁ、助祭が仰ることも一理ありますね。今はその言葉に従いますよ。父のこともなんとかしなければいけませんし」


 そう言って、リカオンは居住まいを正した。アルメリアはなにがなんだかといった感じで、まったく話について行けずにルーファスとリカオンの顔を交互に見た。するとルーファスが微笑んで言った。


「私も、貴女をお守りしますから安心して下さいね」


 アルメリアは意味がわからないままとにかく頷く。するとリカオンが振り向いて苦笑した。


「助祭様、アルメリアは意味がわかっていませんよ」


「それでも、お守りする気持ちにはかわりありませんから」


 二人はしばらく見つめ合うと、ルーファスはため息をついたあとアルメリアたちの向かいに座った。


「教会本部の設計図を、わざわざ写して下さってありごとうございました。かなり精巧に写し書きされていて驚きましたよ」


 ルーファスはアルメリアの写し書の設計図をテーブルに広げ、手のひらでそれを撫でると、嬉しそうに話しだした。


「やはりあの地下の洞窟は、教会本部へ繋がっているようですね」


「それは本当ですの?」


 ルーファスは大きく頷く。


「見てください。この地下の洞窟と繋がっているように書き足された部屋。これこそ三百年前に賊に人質が拘束されたという部屋なんです。そして今はこの部屋、なんの部屋になっているかわかりますか?」  


 アルメリアはもしやと思い、設計図から顔を上げると言った。


「書類保管庫ですの?!」


「その通りです。実はアルメリアと地下の洞窟の話をしていたときに、人質たちが閉じ込められていた場所が、現在書類保管庫になっていることは気づいていました。ですが、変に期待させてはいけないと思って黙っていたのです。すみません」


 申し訳無さそうにルーファスは頭を下げると、話を続ける。 


「それと、孤児院側の通路が残されていたということは、教会本部の通路も残されているのではないかと思うのです」


 横からリカオンが難しい顔をして口を挟んだ。


「でも今までその通路は発見されなかったのでしょう? もう通路は埋められているのかもしれませんよ」


 ルーファスは微笑む。


「一瞬私もそれは考えたのですが、教会本部はここ数百年外装の修復しかしていないのです。アルメリアが登城している間に、確認のため調べてみたのでそれは確かです。なので孤児院側の通路と同様に、そこにあるけれど、気づかれずに忘れ去られている。と、思った方が良いのではないでしょうか」


 リカオンが答える。


「だとしたら、その通路の上に物さえ載せられていなければ侵入は可能ですね」


 それを受けてアルメリアは首を振った。


「書類保管庫ですわよね? 書類が数年分保管されているならば、重いもので塞がれている可能生が高いですわ。書類棚とか、そうだとしたら下から押し開けるのは難しくなりますわね」


 ルーファスは一生懸命何かを思い出そうとしていた。おそらく、書類保管庫の内部の様子を思い出そうとしてくれているのだろう。


「たぶんですが、覚えている限りでは書類保管庫にはそんなに重たい棚はなかったと思います。それには理由があります。かなり昔の話になりますが、他の教会で、図書室として利用し本棚をたくさん並べていた部屋の床が、少し窪んでしまったことがあるのです。それで調べた結果、重いものを置きすぎた、と判断されたんですよ。それ以来重いもの、特に書類や本関係を置く棚の軽量化が図られ、そんなに重くならないように、調節して物を置くようになったのですよ」


「そうなんですのね、だから孤児院の地下倉庫もとても広いのに、空間を開けて物が置かれていたんですのね?」


「そうです。教会関係者は全員が教会本部であの積み方を習っているので、それが癖になってしまっているんですよね。地下倉庫は床が落ちることはないのに……、いや違う。そうか、地下倉庫の下には洞窟があるから、床が落ちることも考えられるのですね。昔の人は、地下に洞窟があると知っていたから、あんなに余裕のある積み方をするように、我々にも言い残していたのかもしれませんね」


 ルーファスは頷いて一人納得をしている。


 とにかく、教会本部につながっている可能性が少しでもあるならば、中へ行くしかない。三人ともそんな気持ちだった。特に他の二人は知らないことだが、アルメリアはこのままだとオルブライト子爵が亡くなってしまうこともわかっていたので、特に焦る気持ちが強かった。


 その日の夜は、まず行けるところまで行って探索するだけにして、明日の夜侵入することにした。どうせ入る場所は洞窟内なので、入るのは夜でも昼でも変わりなかったが、問題なのは洞窟内に危険な生物やトラップがあるかもしれないことだった。


 ところが、その日の夕方に信じられない知らせが届いた。明日の朝一番にオルブライト子爵の裁判をするという知らせだった。無罪を証明したければ、証拠を明日の裁判のときに提出しなければならなくなった。

誤字脱字報告ありがとうございます。

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