表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/190

第七話 ペルシック先生ときどきインフラ整備

文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。

 ペルシックからは、社交界での基礎知識全般を教わった。ダンスや作法を覚えるのは、これから社交界デビューする令嬢には必要不可欠なことなのだが、アルメリアはこれらを仕事上で必要不可欠なこととして捉え必死で覚えた。

 勉強以外でもやらねばならないことがたくさんあり、作法やダンスは短期間で学ばねばならなかった。


「爺、(わたくし)には時間がありません。容赦せずにやってくださって結構ですわ」


 そうお願いすると、ペルシックは本当に容赦せずアルメリアに礼節やダンスを徹底的に叩き込んだ。厳しかったが、前世の記憶のあるアルメリアにとって、興味のある分野だったので楽しく覚えることができた。

 それに流石主人公のライバルなだけあって、物覚えも良くダンスの筋も良かった。アルメリアの努力もあり、一年もかからずにそれら全てを完璧にマスターすることができた。


 こうしてあっという間にペルシックの家庭教師としての役割はほぼ終わってしまったのだが、ペルシックは残り、アルメリアのそばで仕えてくれてくれることとなった。

 ペルシックは、アルメリアが指示する前に予測して行動するとても有能な人物であり、彼が来てからはアルメリアの作業量はだいぶ少なくなった。


 そうして慌ただしく日々が過ぎ去り、檸檬の初めての収穫ができるようになった頃、発酵塩レモンの効果が周知されるようになってきていた。そうして発酵塩レモンの効果が口伝えで国内全体に広まると、その情報は他国にもあっという間に伝わった。

 アルメリアはそれらを他国へ運搬するために、クンシラン領にある港を整備することも忘れなかった。


 そこでアルメリアは、アンジーファウンデーションとして、この時代にはない財団らしき組織を設立。運搬貿易部門や発酵塩レモンなどの健康食品を扱う販売部門を置き営業を始めた。するとアルメリアのところには国内外問わず、檸檬と発酵塩レモンの注文が殺到した。

 発酵塩レモンは城下町で『アンジーの塩レモン』という商品名で小売で売りだすと、調味料として市井でも流行りだし、アルメリアたちは発酵塩レモンの生産に追われることとなった。



 こうしてある程度安定した収入を得ることができるようになったアルメリアは、クンシラン家の領土内の上下水道の整備に本格的にのりだした。とくに道路に排泄物をぶちまけている様は、前世の記憶がよみがえった今、本当に我慢のならないものだった。

 水洗トイレの仕組みは簡単ですぐにでも作れるが、それを流す水がなかった。なので、建築士と相談しダムを建設することにした。下水の整備が上手く行けば、堆肥も大量に作ることができるようになるだろう。


 そして農業用には溜め池を作りそれを利用し、飲み水は井戸を掘りそれを利用することにした。井戸水はそのまま飲むときは必ず一度沸騰させてから飲むように徹底することも忘れなかった。


 そうこうしているうちに、檸檬の栽培や肥料、堆肥による肥えた土地によって、農作物の収穫量が増え、製品化していた木酢酢等も売れるようになった。

 すると、安定した職を求めて領土外からクンシランの領土へ移り住むもの達が増えた。結果的に人口が増え、更に領地が潤うこととなった。


 そこで今度は、優秀な人材を育成すべく専門性に優れた教育システムを作ることにした。それは前世で言うところの専門学校のようなものだった。

 ある程度学校で知識を学び、そのまま実際に働きながら技術を学ぶ。いずれは独立しても良いしそのままそこで働き続けることもできるようにするシステムだ。

 アルメリアは協力してくれる経営者がいないか、経営者のところへ出向き直接説明して歩いた。

 最初は話し半分に聞いていた経営者たちも、アルメリアの必死な説明を聞いているうちに、長い目で見れば自分たちにも損がないと理解し、協力を申し出てくれるようになった。

 後継者を育てたいと思っている経営者たちは、使用人や時に経営者自らを先生として派遣してくれたり、実習の場を提供してくれた。




 そうして目まぐるしく過ごしている中でも、アルメリアはいつも頭の片隅でシルやルク、マニやルフスのことが忘れられず、手を尽くして彼らを探し続けていた。


 ルクにプロポーズをされたとき、幼すぎてそれが恋なのか結婚がなんなのかも解らず、ただ嬉しくてプロポーズを受けた。

 今思い返すと、とても突然で不器用なプロポーズだったし、アルメリアの気持ちを考えていないものだった。だが真っすぐに気持ちをぶつけてきてくれたのがわかって、とても嬉しかった。アルメリアにとってはあれが初恋となった。

 初恋が突然の別れによって終わってしまったのはとてもつらかった。

 一方で、姉のように慕っていたシルが居なくなってしまったこと、そしてそれは孤児院によって売られてしまったからという、衝撃的な事実。

 それらがアルメリアにとっては忘れられない鮮烈な思い出として残った。

 アルメリアがシルに綺麗なドレスを着て羨ましい、と言ったときの彼女の顔を、アルメリアは今でも忘れることができなかった。シルはあのときどんな気持ちでいたのだろうか。おそらく、綺麗なドレスを着させられ、自分たちを買いに来たであろう大人にいやらしい、値踏みをするように見られたこともあっただろう。シルはそのときどんな気持ちだっただろうか、何も知らない自由なアルメリアを見て、どんな気持ちで遊んでくれていたのだろうか。そう思うと胸が締め付けられた。


 断罪も避けたいが、今のアルメリアを突き動かすものは、それらの出来事からくるものが大きかった。


 だが、孤児院はチューベローズが管轄している。貴族とはいえ、教会組織には容易に手出しすることはできず、情報が全く手に入らなかった。

 現状シルたちの行方は依然としてわからず、孤児たちを売っているという証拠をつかむなど夢のまた夢といったところだった。


 それに教会のことを本格的に調べる前に、一つ確認しなくてはならないことがあった。それは教会と両親は繋がっていないことの確認だった。もしかすると自分の両親も領民から搾取したり、教会と繋がっていて、人身売買に関わっているかもしれない。

 そう思うと恐ろしくて調べることをずっと避けていた。だが、これから先教会と対峙するのに、避けて通る訳にはいかなかった。

誤字脱字報告ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
評価・いいね・ブクマありがとうございます。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ