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第六十一話 いない存在のお茶会

文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。

 やはりムスカリは、リアムやスパルタカス、ルーファスがアルメリアの執務室に顔を出していることを知っているようだった。それはアルメリアも承知の上なので問題なかった。恐らくリカオンから伝わっているのだろう。

 だが、問題なのはそれを殿下が隠そうとしないことである。それは『なにをしていても全てわかっている』と、暗にアルメリアに伝えていると取れるからだ。

 そんなことを考えているアルメリアを余所に、二人は話を続けていた。


「確かに言われてみればそうですね。相談役の目の前で会議ができることですし、それは名案かもしれません。それにこちらで話し合いができれば、アルメリアの貴重な時間を有効に使えますね。ですが、お茶の時間を取って息抜きすることも必要なので、そんなに毎回はできませんけれど」


 そう言うとアドニスはアルメリアに向き直る。


「どうでしょうか?」


 急に話をふられ、アルメリアは慌てて返事をした。


「もちろん、反対する理由がありませんもの、かまいませんわ。ここにいらした方全員が、自分の意見を自由に言えるようにしたいので、それだけ協力していただければ問題ありませんわ」


 ムスカリがアルメリアの顔を覗き込む。


「自分の意見を自由に……か。君らしいな」


 そう言って微笑んだ。そこでアドニスが大きく咳払いをする。


「殿下、近すぎです」


 ムスカリは顔を上げてアドニスを睨む。


「君は本当に邪魔だな」


 そう言うと、ふとなにかを思い出したように言った。


「そういえば君はアルメリアの初登城の日、廊下ですれ違うときに、私からアルメリアが見えないように立って彼女を隠したな? お陰で私はあの日アルメリアに気づけず、会うことがかなわなかった。あのときから君は邪魔をしていたが、このさいだから言っておこう。彼女に先に目をつけたのは、私だということを忘れてもらっては困る」


 そう言われたアドニスは、大きくため息をついた。


「はい、承知していますとも。殿下の仰っていたご令嬢が、アルメリアだと気づいたときには、それはもう大変ショックを受けましたから」


 と、そこでアドニスがアルメリアの背後にあるドアに視線を向けた。アルメリアもその視線の先をたどって振り返ると、そこにリアムとスパルタカスが立っていた。

 リアムはムスカリに視線を向けたまま固まっており、スパルタカスは頭を下げていた。ムスカリは愉快そうにリアムに話しかける。


「リアム、どうした?」


「なんでもありません。いらせられるとは思いもよらなかったものですから」


 そう答えると頭を下げたのち、話を続ける。


「私はお邪魔でしょうか? でしたら今日は下がらせていただきます」


 ムスカリはアドニスを指差して言った。


「邪魔物はそこにもいる。一人増えようが二人増えようが変わりない。座れ。お前もだスパルタカス」


 そう言うと、アルメリアに向き直る。


「かまわないね?」


「はい、もちろんでございます」


 笑顔で返すと、ムスカリは悲しそうに微笑んだ。

 リアムとスパルタカスがソファに腰かけると、お茶が運ばれて来る。それを見届けるとアドニスが口を開いた。


「今日、ここには殿下はおいでになっていません。ですから、自由に発言し意見することが許されています。お茶をしながら有意義な時間を過ごしましょう」


 すると、リアムもスパルタカスもどういう状況か理解したように軽く二度三度頷いていた。アドニスは話を続ける。


「ところで、私は以前から思っていたことがあるのです。クンシラン領のインフラは、本当に目を見張るものがあります。あの技術を、ロベリア国全土に広げたら、ロベリア国の国力がもっと上がるのではないでしょうか?」


 その意見に真っ先に食いついたのは、以外にもムスカリだった。


「私もそれには賛成だな。経営している農園や養蜂に関しては、クンシラン家の私的財産だ。手出しするつもりはない。だが、インフラに関しては技術提供をしてもらい、我が国全土に広めたいと私も思っている」


 そう言ったあと、アルメリアに向き直る。


「もちろん、技術提供をするクンシラン家には報酬を払おう。そう言うことで、すぐにでも取りかかりたい」


 突然の話でアルメリアは面食らった。技術提供に意義はない。だが、アルメリアの年齢や性別による他の貴族たちからの偏見により、反対されることを危惧した。そしてなにより、今はそれを実行すべきタイミングではない。


「お申し出、大変感激いたしております。(わたくし)も今後の展望としては、そうなれば良いと常々考えておりました。ですが、現在騎士団の調査中でございます。処分される兵士や騎士もいるかと存じます。まずは兵士の補充、そして編成をし十分な訓練を積ませ、足元を磐石にしてからでも遅くはありません」


 そう答え、恐る恐るムスカリの顔色を伺うと彼は嬉しそうに微笑んでいた。


「そうか、わかった。君の意見を尊重しよう。アドニス聞いていたね、私は彼女の意見に賛成だ。彼女は国の大事にもしっかりと意見できることが確認されたな。では、今後は当面騎士団の建て直しに注力し、それからインフラに取りかかろう」



 それを聞いてアドニスは悔しそうな表情を見せた。なぜなら、今後ロベリア国全土のインフラ整備をすることになれば、公で話し合いをする必要がある。そうなったときに、アルメリアの意見をムスカリが聞き入れ尊重したとなれば、アルメリアが国の政にも関われる存在だと証明することになるからだ。

 上手い具合に誘導され発言してしまったのを反省しつつ、アルメリアはムスカリの言うことには裏がある、と思いながら話さねばならないと肝に銘じた。それと同時にこれから先、ずっとムスカリと関わり続けると明言させられたことに気づいた。

 ムスカリは嬉しそうにアルメリアに畳み掛ける。


「今後もよろしく頼む」


「はい、殿下。仰せのままに」


 そう言ったあと、インフラ整備について一つムスカリに説明しなければならないことを思い出す。


「殿下、インフラについてですが、一つ申し上げたいことがあります」


「なんだ?」


「はい。インフラ整備を一斉に行うと人手が必要になります。なので、一斉雇用をし作業員を増やしてしまうと、今度はインフラ整備が終わったときに職のない者が多く出てしまうのです。(わたくし)の領地では農園を経営しておりましたので、幸いそちらの人手が足りないのを補うことによって、問題を回避できましたが、そういった受け入れ先のない領地では難しいかもしれません」



誤字脱字報告ありがとうございます。


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