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第四十二話 キャサリンとの邂逅

文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。

 おしゃべりしながら食事を楽しむと、食べ終わった子どもから順に自分の食器を片付け、遊びに外へ飛び出す。アルメリアも食器を片付けると、子どもたちの遊びに付き合った。リカオンは男の子たちに囲まれ、抱っこやら肩車やらねだられている。

 そうこうしているうちにひとり、ふたりと重たくなった瞼を擦る子が出始めた。他の子より少し年上なエイダが、後ろからアルメリアの服の裾を引っ張った。


「アンジーお姉ちゃん、ケイトちゃんが眠いって!」


 ケイトは最後に両親からもらったという大切なマフラーをぎゅっと抱きしめながら不貞腐れたように言った。


「まだ、眠くないもん」


「嘘だぁ、ケイトがそのマフラー出してくるときは眠いときだもん」


 アルメリアは慌ててルーファスにお昼寝の準備をするか確認した。この世界でも幼い子どもたちはお昼寝をする。


「おや、もうそんな時間でしたね。では準備をしましょう」


 目を擦っていた子どもたちは、ベッドへ連れていくと早々に布団に潜り込みすぐに眠りに落ちた。何人かの子たちはアルメリアたちがいるせいもあり、興奮して眠れないようだった。

 アルメリアはタオルケットを持つと、ソファへ座り眠れない子どもたちを集め横に座らせる。

 本を読んで聞かせようとしたが、印刷技術がないこの世界では、本はとても高価なものだった。

 もちろん孤児院にそんな高価な本が置いてあるはずもなかった。

 そこで、アルメリアは自分の知っているシンデレラや白雪姫、人魚姫などの物語を話して聞かせた。話し始めると、最初はきらきらと瞳を輝かせて聞いていた子どもたちも、次第に眠りに落ちていった。

 全員が眠りについたところで、リカオンと協力してそっとベッドへ寝かせる。

 タオルケットが足りなかったので探そうとリネン庫へ行くと、どこにしまっているのだろうと思い見回した。


「タオルケットはそこの棚」


 振り向くとここでは一番年上のキャサリンが立っていた。

 キャサリンは他の子より年上なのもあるだろうが、なんとなく人を信用してないような一歩引いた距離感を保つ子だった。ここに来るまでにきっとなにかあったのだろう。今日来たばかりのアルメリアが、知ったふうに声をかけ信用を得ようなんておこがましいと思い、あまり声をかけずにいた。


「場所がわからない私のために、わざわざついてきてくれたの? ありがとう」


「べつに。お姉さんが探しまくって、散らかされても困るし」


 その様子を見て、誰かに似ているとタオルケット片手にぼんやりキャサリンを見つめる。


「なに? 生意気とか言うわけ?」


「違うの。誰かに似ていると思って……」


 アルメリアは誰に似ているのか、キャサリンを見つめながら考える。そして気づいた。


「リカオンだわ! 貴女、弟のリカオンにそっくりなのよ」


 キャサリンは驚いた顔をしたあと、気を取り戻したようにアルメリアを睨むと言い返す。


「で? 弟のリカオンも私も嫌いってわけよね。ムカつくんでしょ?」


 アルメリアは微笑んだ。


「なにいってるの、本当に可愛いわね。とってもいい子なのに、そうやって突っ張ってるところとか、うまく付き合うことができなくて生意気なこと言っちゃうところとか。本当にたまらないのよね」


 そう言って思わずキャサリンの手を取って両手で包み込んだ。


「ちょっと! 離してよ! 馬鹿にしてんの?」


 アルメリアはそう言われてすぐに体を離す。


「ごめん、嫌だったよね。でも貴女みたいな子、大好きなのよね。もちろん弟のリカオンも大好きよ?」


 そう言うと、キャサリンは顔を赤くした。


「べつに、あんたの手暖かくて嫌じゃないけど。って、う、うるさいんだから! あんたなんて早く帰っちゃえばいいのに」


 そう言ったあと、キャサリンは言ったことを後悔したような顔をしてアルメリアを見つめた。アルメリアは優しく頷く。


「うん、わかった。また来るからね?」


 そう返すと、キャサリンは顔を赤くしたままダッシュで去っていった。


「本当に、リカオンそっくり。ツンデレで可愛いのよね。リカオンもだけど、周囲の大人がみんなあの性格を理解してくれるといいんだけど」


 アルメリアはそう呟くと、寝室へ戻った。


 寝室でタオルケットをかけて、全員寝ているのを確認すると、肩を叩かれる。振り向くとソフィアがアルメリアたちを呼んでいた。


「お疲れ様、お茶にするよ」


 ソフィアは小声でそう言って、アルメリアとリカオンを厨房へ連れてきた。


「今日初めてだってのに、あんたたち凄いね。もう一週間ぐらいここにいるみたいじゃない」


「いいえ、ソフィアさんが色々助けてくれるお陰です。お手を煩わせてすみません、ありがとうございます」


 そう言って軽く頭を下げ、お茶をいただく。


「ところであんたたち、この孤児院の裏にはものすごく綺麗な泉があるんだよ。せっかく来たんだから、見たことないならそのお茶を飲んだあといっておいで」


 アルメリアは仕事を抜けるのは申し訳なく思ったので断ることした。


「いいえ、今日は仕事なので……」


「見てみたいです。姉さんと一緒に行ってきますね!」


 アルメリアが話しているのを遮って、リカオンが強引に返事をした。驚いてリカオンの横顔を見つめると、こちらを向いて笑顔で言った。


「ね、行こうよ姉さん」


 アルメリアは思わず頷く。リカオンが自己主張をすることは少ない。そのリカオンが行きたいのならそれもかまわないと思った。アルメリアはソフィアに向き直る。


「すみません、なるべく早く戻りますね」


「いいよ、ゆっくりしといで。行き方を教えてあげるよ」


 ソフィアは優しく微笑んで行き方を説明した。そんなに遠くなく、本当に孤児院の裏手のようだった。


「はぐれるといけないから、ふたりとも手をつないで行った方がいいよ」


 姉弟でも腹違いと話してあるせいか、なぜかソフィアがアルメリアとリカオンをくっつけようとしているように感じた。

 アルメリアがそんなソフィアに苦笑いをしていると、なぜかリカオンがアルメリアの手を握り先を歩き始めた。


「リカオン、ソフィアはふざけているだけですわ。無理しなくても大丈夫ですわよ?」


 そう小声で呟く。リカオンは振り向きもせずアルメリアに答える。


「無理はしていないので大丈夫です。はぐれたら困るでしょう?」


 それもそうかと思い直し、アルメリアはリカオンの手を握り返した。


 孤児院の裏の林を通り抜けると、すぐに泉にたどり着いた。エメラルドグリーンと所々ブルーの澄んだ大小の丸い美しい泉が数個あり、とても神秘的な景色だった。


「綺麗! こんなに素敵な泉がこんなに近くにありましたのね!」


「そうです。ここの水を飲むと健康に良いとか、そんなことを言われていますよ」


 オルブライト領のことなので、流石に泉のことをリカオンは知っていたようだ。それなのに、何故リカオンはここに来たがったのだろう。そう思っていると不思議そうに見つめているアルメリアに気づいたのか、気まずそうにリカオンは口を開いた。

誤字脱字報告ありがとうございます。

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